8 / 58
第一章 告白
第七話 鍋パ(6/24修正)
しおりを挟む
端島と相坂がゲームを楽しんでいるのを見ている間に、鍋の準備ができたらしく、俺たちはダイニングに集まった。
さて、鍋と言えば、古来よりコミュニケーションの場として大いに活躍してきたもののひとつである。そして、鍋を囲む人の中に、誰か話したい人がいるという場合、その座る位置というのはとても重要なものとなってくる。つまり、俺が何を言いたいのかというと…。
双葉の横に座りたいなあ、と。
だが、困った。双葉が席に着いてから座ってしまうと、俺が双葉の気持ちを知っていることを知っている相坂と一香に怪しまれてしまう。だからといって、俺が先に座ってしまうと、下手したら双葉が俺の横に座らないというパターンが生まれてしまう。
俺がどうしたものかとうんうん唸っていると、先ほどまでゲームに興じていた端島が、てくてくと一番奥側のイスへ座った。
「俺、あんま食べる気ないからここでいいよ」
「はあ? 作ったんだから食べてよ」
「…ああ、食べる食べる」
一香が少し怒った様子で端島を咎めるが、彼は何食わぬ顔で流した。俺が座る場所で悩んでいるのに、いい気なものだ。
余談だが、端島と一香は付き合っている。リア充というやつだ。死ね。消えろ。爆散しろ。
もともと中二のころに二か月間付き合っていたのだが、とあることがきっかけで別れ、今年の十一月に復縁したという運びだ。
ぶっちゃけ、続くかどうかは微妙なところだと俺は思うが、それは二人次第だろう。
閑話休題。
俺がいの一番に座った端島のことを複雑な心境で見ていると、突然、相坂から背中を叩かれた。
「ほら、さっさと座りなよ」
「え、あ、おい!」
相坂はなぜか俺を、有無を言わせないように無理やり、端島の向かい側の真ん中の席に座らせた。そして、自分は俺の左隣に座ると、一瞬、一香と目配せを交わし、お互いに怪しげな笑みを浮かべた。
…一体なんだってんだ?
俺は二人が何をしたいのかわからなかったが、次の一香の一言で、全てを理解するのであった。
「ねえ、双葉、武野の隣に座りなよ!」
「え!?」
佐野と共に佇んでいた双葉は、手を口に当て、一香の言葉に驚きを表していた。
ここらへんで双葉のことをもう少し話しておこうか。
双葉は一香と容姿がほとんど変わらない。一卵性の双子なので、当然と言えばそうなのだけれども。髪型は一香より少し長めのショートボブ。ここにいるメンバーのなかで一番華奢な体つきをしており、触れれば壊れてしまうガラスのようだった。
俺から見る一香と双葉の違いは、その雰囲気だと俺は思う。一香からはそこはかとなく大人っぽさを感じるが、双葉からはあどけなさを感じる。綺麗と可愛い、どっちの形容詞が似合うかといったような話だ。
ともあれ、二人の目的は分かった。双葉を俺の横へと座らせる気なのだろう。しかし、俺が事情を知っているからといって、少し大胆な行動に出すぎではないだろうか。
一瞬、驚きに固まっていた双葉だったが、じたいを徐々に呑み込んでいったのか、顔を赤くして笑い始めた。
「あっはっは、ちょ、何でそうなるの!」
「私は綾と座るから。ねー、綾」
「そうだね。ウチらこっち座るから」
そう言って二人は端島の隣に、一香、佐野の順番で座っていった。
いよいよ逃げ場が無くなった双葉は、観念したようにゆっくりと俺の右隣に座った。
「…よろしく!」
「お、おう…」
双葉がやけくそのように、はたまた照れ隠しのように、シュタっと手を上げてそう言ってきたので、つい俺の返しが歯切れの悪いものになってしまった。…不覚だ。予想していなかった彼女の行動にたじろいでしまった。…可愛い。とにかく、その一言に尽きる。
それにしても、考え方がひとつ変わるだけで、こうも見方が変わるのかと、俺は今更ながらに思った。
恋とは、人を幸せにする魔法か、あるいは人を惑わす毒薬なのかもしれない。この気持ちが正しいのか間違っているのかは俺にはわからないが、ただ心が満たされていくのだけは確かだ。
それと同時に…さっそく平常心が崩れかかっているのも分かる。
(やばいぞ、俺! 平常心、平常心だ!)
結局、俺は自制をするのに精いっぱいで、鍋の味も皆との会話も、終わったころにはどこかへと吹っ飛んで行ってしまったのだった。
さて、鍋と言えば、古来よりコミュニケーションの場として大いに活躍してきたもののひとつである。そして、鍋を囲む人の中に、誰か話したい人がいるという場合、その座る位置というのはとても重要なものとなってくる。つまり、俺が何を言いたいのかというと…。
双葉の横に座りたいなあ、と。
だが、困った。双葉が席に着いてから座ってしまうと、俺が双葉の気持ちを知っていることを知っている相坂と一香に怪しまれてしまう。だからといって、俺が先に座ってしまうと、下手したら双葉が俺の横に座らないというパターンが生まれてしまう。
俺がどうしたものかとうんうん唸っていると、先ほどまでゲームに興じていた端島が、てくてくと一番奥側のイスへ座った。
「俺、あんま食べる気ないからここでいいよ」
「はあ? 作ったんだから食べてよ」
「…ああ、食べる食べる」
一香が少し怒った様子で端島を咎めるが、彼は何食わぬ顔で流した。俺が座る場所で悩んでいるのに、いい気なものだ。
余談だが、端島と一香は付き合っている。リア充というやつだ。死ね。消えろ。爆散しろ。
もともと中二のころに二か月間付き合っていたのだが、とあることがきっかけで別れ、今年の十一月に復縁したという運びだ。
ぶっちゃけ、続くかどうかは微妙なところだと俺は思うが、それは二人次第だろう。
閑話休題。
俺がいの一番に座った端島のことを複雑な心境で見ていると、突然、相坂から背中を叩かれた。
「ほら、さっさと座りなよ」
「え、あ、おい!」
相坂はなぜか俺を、有無を言わせないように無理やり、端島の向かい側の真ん中の席に座らせた。そして、自分は俺の左隣に座ると、一瞬、一香と目配せを交わし、お互いに怪しげな笑みを浮かべた。
…一体なんだってんだ?
俺は二人が何をしたいのかわからなかったが、次の一香の一言で、全てを理解するのであった。
「ねえ、双葉、武野の隣に座りなよ!」
「え!?」
佐野と共に佇んでいた双葉は、手を口に当て、一香の言葉に驚きを表していた。
ここらへんで双葉のことをもう少し話しておこうか。
双葉は一香と容姿がほとんど変わらない。一卵性の双子なので、当然と言えばそうなのだけれども。髪型は一香より少し長めのショートボブ。ここにいるメンバーのなかで一番華奢な体つきをしており、触れれば壊れてしまうガラスのようだった。
俺から見る一香と双葉の違いは、その雰囲気だと俺は思う。一香からはそこはかとなく大人っぽさを感じるが、双葉からはあどけなさを感じる。綺麗と可愛い、どっちの形容詞が似合うかといったような話だ。
ともあれ、二人の目的は分かった。双葉を俺の横へと座らせる気なのだろう。しかし、俺が事情を知っているからといって、少し大胆な行動に出すぎではないだろうか。
一瞬、驚きに固まっていた双葉だったが、じたいを徐々に呑み込んでいったのか、顔を赤くして笑い始めた。
「あっはっは、ちょ、何でそうなるの!」
「私は綾と座るから。ねー、綾」
「そうだね。ウチらこっち座るから」
そう言って二人は端島の隣に、一香、佐野の順番で座っていった。
いよいよ逃げ場が無くなった双葉は、観念したようにゆっくりと俺の右隣に座った。
「…よろしく!」
「お、おう…」
双葉がやけくそのように、はたまた照れ隠しのように、シュタっと手を上げてそう言ってきたので、つい俺の返しが歯切れの悪いものになってしまった。…不覚だ。予想していなかった彼女の行動にたじろいでしまった。…可愛い。とにかく、その一言に尽きる。
それにしても、考え方がひとつ変わるだけで、こうも見方が変わるのかと、俺は今更ながらに思った。
恋とは、人を幸せにする魔法か、あるいは人を惑わす毒薬なのかもしれない。この気持ちが正しいのか間違っているのかは俺にはわからないが、ただ心が満たされていくのだけは確かだ。
それと同時に…さっそく平常心が崩れかかっているのも分かる。
(やばいぞ、俺! 平常心、平常心だ!)
結局、俺は自制をするのに精いっぱいで、鍋の味も皆との会話も、終わったころにはどこかへと吹っ飛んで行ってしまったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる