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第二章 初デート
第十話 ここで武野の日常
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突然だが、うちの学校には寮がある。全寮制ではなく、希望者だけが入寮している形だが、費用も高く人気が少ない。だが、勉強時間が嫌でも確保できるという点ではとても素晴らしいと思う。
俺は、中一の頃に勉強を頑張ってするためということで、この寮に入った。今ではそんな気はまるでなく、ただ住み慣れたからという理由で残っているだけなのだけれど。やめる必要も感じないし。
冬休みが明けてしまう始業式という悪魔のような行事の前日、俺は寮にある自室へと帰って来た。部屋の広さは六畳くらいで狭いが、住めば都である。居心地はとてもいい。
荷ほどきもほどほどに俺はベッドに寝転がると、ぐてーっとしばらくだらけていた。
すると、部屋のドアをノックして、誰かが俺の部屋に入って来た。
「よう」
「ああ、宗谷先輩ですか、お疲れ様です」
現れたのは、同じく寮に住んでいる高二の宗谷浩太先輩だった。
おもしろい先輩だが、人とは若干感性がずれていると俺は思う。この人の行動をおかしいなと思うことがたびたびあるのだ。
背は高く、ルックスは普通。黒縁の眼鏡を掛けていて(この学校の脅威の眼鏡率)あまり清潔感は無い感じがする。
宗谷先輩は、部屋の奥にあるイスに座ると、話を切り出した。
「冬休みどうだった?」
「まあ、楽しかったですよ」
「へー、じゃあ、彼女とはどうなの? もうデートした?」
俺をからかうようにニヤニヤとしながら、宗谷先輩は彼女について聞いてきた。
宗也先輩にはもう彼女ができたことを話しており、俺が不安になったときに愚痴をぶつけている。言い方を悪くすれば、ストレスのはけ口にしている。
宗也先輩は生粋のいじられキャラだと俺は思っている。きっと、本人はそう思ってはいないだろうけど。なんせ、いじられキャラである俺にまでいじられているのだから、相当マズいのではないだろうか。
まあ、いじられているってことはそれだけ親しまれているってことだから、嫌われていることは全くないのだけれど…そう、だよね? そうじゃなかったら俺まで嫌われてることになっちゃうんですけど…。
閑話休題。
俺はニヤニヤと笑みを浮かべている宗谷先輩に、おどけた様子で言った。
「聞いてくださいよ先輩!」
「おう、どうした?」
「僕、初デートなのにやらかしまくったんですよ! クレープ溢したりとか、変なこと聞いちゃったりとか。あと、自分から手を繋げなかったんです!」
実はあの後、俺は激しく後悔したことがあった。それは、双葉に手を繋がせてしまったことだ。
思えば、必死に俺を少し距離がある築港駅まで送ろうとしていたのは、手を繋ぎたかったからかもしれないのだ。それに気づかず俺は彼女をすぐそばの高松駅で見送ろうとし、あまつさえ手を繋いでやることすらできなかった。
それがどうしようもなくひどいことに思えて、俺は自分の鈍感さと無能さに打ちひしがれたのだった。
「え? 手繋いだんだ。おめでと」
「おめでと、じゃないんですよ!」
俺の気持ちも知らず、能天気にそんなことを言う先輩に少し大げさにツッコミを入れる。
「確かに先輩にはわからない気持ちかもしれません、彼女いたことないから! でも、僕はすっごく苦しいんですよ、彼女に申し訳ないことしたって。先輩と違って彼女がいるから! それなのに先輩は笑いながら『おめでと』って、ふざけてるんですか! 彼女いないからって!」
「彼女彼女うるさいな! いいんだよ、俺はいなくてって!」
強がりに聞こえなくもないが、たぶん本心なんだと俺は思う。それでも俺は先輩をからかいたくなってあえて言った。
「強がりですか?」
「強がりじゃねえよ」
「彼女いないからって調子に乗るんじゃねえ!」
「どういうことだよ!」
俺は先輩とそんなやり取りを楽しみながら一日を過ごしたのだった。
…え? こんだけだよ?
俺は、中一の頃に勉強を頑張ってするためということで、この寮に入った。今ではそんな気はまるでなく、ただ住み慣れたからという理由で残っているだけなのだけれど。やめる必要も感じないし。
冬休みが明けてしまう始業式という悪魔のような行事の前日、俺は寮にある自室へと帰って来た。部屋の広さは六畳くらいで狭いが、住めば都である。居心地はとてもいい。
荷ほどきもほどほどに俺はベッドに寝転がると、ぐてーっとしばらくだらけていた。
すると、部屋のドアをノックして、誰かが俺の部屋に入って来た。
「よう」
「ああ、宗谷先輩ですか、お疲れ様です」
現れたのは、同じく寮に住んでいる高二の宗谷浩太先輩だった。
おもしろい先輩だが、人とは若干感性がずれていると俺は思う。この人の行動をおかしいなと思うことがたびたびあるのだ。
背は高く、ルックスは普通。黒縁の眼鏡を掛けていて(この学校の脅威の眼鏡率)あまり清潔感は無い感じがする。
宗谷先輩は、部屋の奥にあるイスに座ると、話を切り出した。
「冬休みどうだった?」
「まあ、楽しかったですよ」
「へー、じゃあ、彼女とはどうなの? もうデートした?」
俺をからかうようにニヤニヤとしながら、宗谷先輩は彼女について聞いてきた。
宗也先輩にはもう彼女ができたことを話しており、俺が不安になったときに愚痴をぶつけている。言い方を悪くすれば、ストレスのはけ口にしている。
宗也先輩は生粋のいじられキャラだと俺は思っている。きっと、本人はそう思ってはいないだろうけど。なんせ、いじられキャラである俺にまでいじられているのだから、相当マズいのではないだろうか。
まあ、いじられているってことはそれだけ親しまれているってことだから、嫌われていることは全くないのだけれど…そう、だよね? そうじゃなかったら俺まで嫌われてることになっちゃうんですけど…。
閑話休題。
俺はニヤニヤと笑みを浮かべている宗谷先輩に、おどけた様子で言った。
「聞いてくださいよ先輩!」
「おう、どうした?」
「僕、初デートなのにやらかしまくったんですよ! クレープ溢したりとか、変なこと聞いちゃったりとか。あと、自分から手を繋げなかったんです!」
実はあの後、俺は激しく後悔したことがあった。それは、双葉に手を繋がせてしまったことだ。
思えば、必死に俺を少し距離がある築港駅まで送ろうとしていたのは、手を繋ぎたかったからかもしれないのだ。それに気づかず俺は彼女をすぐそばの高松駅で見送ろうとし、あまつさえ手を繋いでやることすらできなかった。
それがどうしようもなくひどいことに思えて、俺は自分の鈍感さと無能さに打ちひしがれたのだった。
「え? 手繋いだんだ。おめでと」
「おめでと、じゃないんですよ!」
俺の気持ちも知らず、能天気にそんなことを言う先輩に少し大げさにツッコミを入れる。
「確かに先輩にはわからない気持ちかもしれません、彼女いたことないから! でも、僕はすっごく苦しいんですよ、彼女に申し訳ないことしたって。先輩と違って彼女がいるから! それなのに先輩は笑いながら『おめでと』って、ふざけてるんですか! 彼女いないからって!」
「彼女彼女うるさいな! いいんだよ、俺はいなくてって!」
強がりに聞こえなくもないが、たぶん本心なんだと俺は思う。それでも俺は先輩をからかいたくなってあえて言った。
「強がりですか?」
「強がりじゃねえよ」
「彼女いないからって調子に乗るんじゃねえ!」
「どういうことだよ!」
俺は先輩とそんなやり取りを楽しみながら一日を過ごしたのだった。
…え? こんだけだよ?
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