僕と彼女のリア充ライフ

一条二豆

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第五章 僕と彼女の恋の形は

第五話 僕と彼女の恋の行方は…

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 翌日、俺は放課後の教室に双葉を呼び出した。ケータイが使えるのなら電話をかけたところだったが、寮にいるため面と向かって話すことにした。

 俺たちの、今後について。

 双葉は俺の様子を不審に思っているのか、怪訝そうな顔つきをしていた。

「それだ、話ってなに…?」

 空気を読んでか、双葉は神妙な面持ちで俺にそう尋ねた。
 今ならまだ引き返せる。適当な冗談でも言って場を和ませられれば、これから別れを切り出すようなことはしなくてすむ。
 だけど、俺はこの莫大な不安を抱えて、この先双葉の横で笑っていける気がしなかった。傷ついてまで彼女の隣にいようとするくらいなら、彼女の邪魔にならないように身を引いた方が幾分かマシだと思ったのだ。

 なにを考えているかわからない無表情で待つ双葉に、俺は意を決してその台詞を口にした。

「…別れよう」
「――っ!」

 俺はそう言いつつ、双葉から視線を逸らした。もし表情に異彩の揺らぎがなかったら、そう考えると、彼女の顔なんて見ていられなかった。
 求められたわけでもなく俺は言葉を紡ぐ。

「聞いたんだ…杉下の友達が、俺と双葉のことを喋ってるとこ」
「そしたら、杉下がもう俺に気がないって…そんなこと、言っててさ」
「…っ……ぅ」
「全然、気づかなかったよ。俺、鈍感だからさ…」
「……ぇ…………ぅ……っ」
「だからさ、別れよう。きっと俺がいても杉下の邪魔になるだけだろうからさ…」
「…っ……ヵ」
「…?」
「…バカッ!」

 教室内に小気味よい乾いた破裂音が鳴り響く。まぎれもない、俺が双葉に張り手を食らった音だった。
 俺はヒリヒリと痛む頬を押え、半ば無意識に視線を上げた。そして、俺の目に映り込んだのは、胸が頬よりも強く痛む光景だった。

 双葉が、泣いている。一生大切にしたいと思っていた彼女が、今目の前で大粒の涙をその目から流していた。

「ばかぁ…」

 俺はただ、弱々しい彼女の姿を呆然と立ち見ることしかできなかった。
 こんなにもぼろぼろと涙が零れ落ちていくのを、こんなにも唇が小刻みに震えるのを、俺は今まで見たことがなかった。それほど双葉は泣いていた。

「どうして…どうして、そんなこと言うの…?」

 その声はか細く、ふっと消えてしまいそうなほど小さい。それはまさしくか弱い一人の少女そのものだった。

「なんか一言、オレに言ってくれればいいじゃん…っ」
「それは…」

 そんなつもりはなかった、そんなことを言ってしまえばさらに彼女を傷つけてしまうことになるのは火を見るよりも明らかだ。
 彼女は涙を零し続ける。

「オレ、武野のこと好きだよ。好きじゃなくなったことなんて一瞬もない!」
「…っ!」
「なのに、別れようなんて思うわけないじゃん…!」
「…ごめん」
「ほんと鈍感だよ! バカだよ! もう救いようのないくらい大バカ者だよ!」
「……ごめん」

 双葉の怒りはもっともだ。俺は無神経にも、彼女のことをなにも考えずにあんなことを口にしてしまっていた。それに対して、俺はただ謝ることしかできなかった。
 しかし、怒りを撒く彼女の声は再び萎んでいき、ついにはまたか細いものになった。

「…でも、それでもオレは武野のことが好きなんだよ…!」

 双葉はこんなにも俺のことを好きでいてくれている。俺はそれをわかったつもりでいた。でも、実際には俺は彼女に想像の何倍も、何十倍も深く想われていた。
 そのことがどうにも情けなくて、俺は自然にぽろぽろと涙を零していた。

「疑って、悪かった…っ」
「…ううん」
「俺は鈍感でバカだよ。なにも考えやせずに杉下を傷つけた」
「…っぐす……ううん」
「こんなことじゃ、百年の恋も冷めちまうよな」
「…大丈夫、だよっ…っ」

 お互い、もう顔がぐちゃぐちゃだった。でも、なぜかその顔には笑顔が浮かんでいた。これからどうなるのかがわかっているように、二人の心が繋がっているかのように。

 俺は顔と同じくぐちゃぐちゃの声で、双葉に問いかける。

「でも、こんな俺でも、こんなバカな俺でも好きでいてくれるか…? こんな俺で、本当にいいのか…?」
「…ほんとにバカだね、武野は」

 双葉は赤くなった目元をぬぐい、短い距離を少し駆けると、俺の腰のあたりに思いっきり抱きついてきた。そして、下から覗き込むようにして、俺の心をいやすような彼女らしい笑顔を浮かべた。



「いいに決まってるでしょ、私はあなたを選んだんだから」



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