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-はじまりの陰謀-編
別れの時
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カセレス......あの魔人を倒してから1ヶ月が経った。
ーーコンコン、ガチャッ
皆が寝静まり、開いた窓から虫の音が聞こえる頃。
部屋のドアを叩いたのは、俺と同様に居酒屋タラサの部屋を間借りしているエリシアだった。
営業も再開して、エリシアとイルンはこの居酒屋の2大看板娘、なんて言われている。
バイトなんてしたことのないエリシアは毎日、楽しそうに働いていた。
「エイトさん、そろそろ......」
白のネグリジェに身を包む彼女は、神妙な面持ちで相談を持ちかける。
「はい、わかっています。明後日にでも出発しましょう」
この1ヶ月、いろいろと準備をしてきた。
今の自分がどこまでやれるかの確認。
それから長くなるであろう旅に備えて、道具をチマチマと購入してアイテムボックスに詰めたり。
イルンとルビーにはまだ言えていない。明日にでも話そうかと思っている。
エリシアはどこか申し訳そうな表情のまま、自室へと戻っていった。
「......イルンとルビーのためにも、ボロスなんぞに世界を破壊されるわけにはいかない」
最初は断りづらくて受けた神殺しの依頼だが、やらなければいけない理由ができてしまった。
いくら気弱な俺でも、守るべきものがあるなら戦うさ。そこまで男は捨てていない。
......と格好つけてみたものの、できれば戦いたくないのが本音ではあるが。
「さて、どう説明したもんかね......」
天井を見つめながら、頭の下で手を組んで考えているうちに眠ってしまったーー。
「......トさん、朝......すよ。エイトさん......」
全身に揺れを感じて、開ききらない目で原因を確認する。あぁ、考えすぎて寝てしまったのか。
俺がなかなか起きないからか、イルンは頬を染めながら、小さな声で独り言を言い始めた。
「......まだ起きてないですよね?......だっ、旦那さま......大好きですっ......きゃっ」
一人で何を言っているんだか......こっちまで恥ずかしくなる。
でもこういうところが好きだったりするんだよな。
「......イルン」
「わあっ......! エイトさん起きてたんですか!? 今の話、聞いてませんよね!?」
盛大にパニクっていて面白い。
「これは違うんです!」と言いたげに顔の前でブンブンと振る両手のうち、片方を引いてイルンを抱き寄せる。
「エッ、エイトさん!? どどど、どうし! ふぁっ!?」
「聞いてくれ、イルン。俺はしばらくエリシアとここを離れないといけない。どうしてもやらないといけないことがあるんだ」
エリシアという名前を聞いて一瞬、ピクッとしたイルンだったが、俺の真面目な雰囲気を理解したのか、落ち着いて聞いてくれた。
「エイトさんがやらないとダメなことなんですよね......もしかしてわたしをさらった魔人と関係あったりしますか?」
本当にこの子はアホなのかと思えば、勘がいい。
「詳しくは言えない。でも長い旅になるだろうし、危険も伴う。だけど必ずイルンの元に帰ってくるから、信じて待っていて欲しい」
イルンは不安そうに何か言いたげな表情をして、その言葉を飲み込む。
そして次の瞬間にはいつもの明るい笑顔に戻って、俺の問いかけに答える。
「わかりました! 待ってますから絶対に帰ってきてくださいね!」
帰ってきてくださいね! の「ね!」の部分で再度、思いっきり抱きしめられ、その勢いでベッドに倒されるエイト。
「イ、イルン......く、くるじい......! 離して......ギブギブ」
「あははは、いやでーす。エイトさんが悪いんですからね」
大声で笑って、楽しそうに足をバタバタとさせるイルン。
しばらく騒いでから、また少し寂しそうな目をする。
俺は彼女の頬に手を沿わせて、初めてその言葉を伝えた。
「......好きだよ、イルン」
答えるように彼女も顔を近づけて、言う。
「わたしも大好きです、ずっとずっと大好きですよ、エイトさん」
二人はそっと、口付けを交わしたーー。
日中、エイトが向かっているのはギルドだった。
目的はもちろん、ルビーに街を出ると伝えること。
元々は大型の案件でも受けて、それを理由にしばらくここを離れると二人に伝えるつもりで考えていたのだが、朝から予定が狂ってしまった。
ーーガチャッ
(ガヤガヤ......)
まったく、今日も大量に冒険者がいる。良くも悪くも仕事があるということなんだろう。人が多いのは苦手なんだがな。
「こんにちは、ルビーさん」
「わっ、あなた! じゃなくて、エイトさん! えっ、なんでここにっ」
ガタガタ、と書類やらなんやらをひっくり返すルビー。
なるほど、こっちは「あなた」ときたか。
普段ならこんなドジなことはやらかさないが、いきなり職場に婚約者が現れれば、焦りもするらしい。
突然のあなた呼びで、周囲の視線は一瞬にして集まる。
「あいつがルビーの婚約者か?」
「くそっ、俺のルビーさんをよくも......!」
「弱そうなヤツだな、やっちまうか?」
やっちまうか? とか聞こえたんだけど! やられそうなんだけどお!?
俺が指輪をプレゼントした次の日。職場に出勤した彼女の薬指に気付いて、同僚からキャッキャと話題になり、それがその場にいた冒険者に広まって、軽く騒ぎを起こしたそうだ。
すげえな、ルビーの人気。
どうやらエイト抹殺計画もあったらしいが、それはルビーが悲しむだろうということで、解決したらしい。恐ろしすぎるだろ! 物騒なんだよ!
まあキングゴブリンから奪った殺気感知スキルがあるから、下手に殺されることはないだろうけど。
とはいえ、この騒ぎではまともに話もできそうにないので、俺とルビーは別室に移動した。
「すいません、いきなり来てしまって......」
「いえ、謝ることはありません。わ、私も会いたかったですし......」
視線を横にずらしてモジモジするルビー。かわいい。
「実は大型の案件を受けようと思いまして......ドラゴン討伐とか」
大型案件ーープラチナやブラックレベルになると、移動や準備だけで1ヶ月かかるのは普通で、ものによっては1年以上かけて行うものもある。
街を出る理由としては怪しまれないだろう。
「ダメです、受けさせません」
ーー断られた。え、断られることある? 顔怖いって。
「案件の受注って冒険者の自由......だったはずでは?」
「どうせそれが目的じゃないですよね」
バレてる~。
「い、いや、俺もそろそろ挑戦してみようかな~、とか。ハハ」
「本当のこと言わないと怒りますよ?」
こわい!! すでに怒ってるじゃん!!
観念したエイトは、重い口を開いた。
「ほ、本当のことは言えません。ですが、エリシアとやらなければいけないことがあるんです。それは俺にしかできないことで......なのでしばらく帰ってこれません」
ルビーは考え込んで、そして納得する。彼女は賢いから、なんとなく理解したのだろう。いきなりエリシアを連れて帰ってきたこと、魔人の存在、自動マッピングという弱いスキルでキングゴブリンを倒せたこと。
エイトがただの気弱な冒険者ではないと。
「......そうですか。あなたはどれだけ言っても聞きませんしね。わかりました」
俺のことをよくわかってらっしゃる。
「ありがとうございます」
「でもこれだけは約束してください」
「なんですか?」
冷たい氷のような形相が、溶けるように変わっていく。
「絶対、無事に帰ってきてください。あなたは、わっ、私の夫なんですからね!」
フッ、この言いたがりめ。さっきまでの雰囲気はどうした。
「わかっています。こんなにかわいい妻を残して死ねませんからね」
「かっ、かわ......! つまっ! 妻......へへ」
彼女たちへの想いが一層と強くなっていく。早く帰ってきたいなあ。
ボロスの蛮行は必ず止めてやる。
密かに燃えている俺に向かって、ルビーは思い出したかのように話し始めた。
「そうだ、案件をいくつか受けていくのはいいと思いますよ。旅の途中で倒すかもしれませんし」
「たしかに。それもそうですね。さすがです、ルビーさん」
「いえいえ。お金は大事ですからね。エイトさんが帰ってきたら、結婚式を挙げないといけませんし、家も建てなければいけません。稼げるなら稼いでおかないと」
そういうことかあ。こういうところしっかりしてるなあ。
ルビーの尻に敷かれる未来が見えるエイトだった。
「では、これで手続きをしておきます。出発はいつなんですか?」
「明日の早朝に行こうと思っています」
再び、受付に戻って案件を精査していた俺とルビー。
プラチナやブラック、ゴールドの案件をいくつかピックアップして受注した。おそらく、途中のギルドでも別で受けたりするだろうけど。
「随分と急ですね。私たちに言いづらかったのはわかりますが、もっと早めに言わないとダメですよ」
すべてお見通しなようで。
「はい......すいません......」
ずっと怒られてる。なんか情けなくなってきた。
「それでは」と、トボトボ扉に向かって歩き出すエイト。
それを呼び止めるみたいに、ルビーは立ち上がってエイトを追いかけた。
ーータッタッタッ
「待ってください、エイトさん。忘れ物です」
「はい? 忘れものなんてーーんっ!?」
振り返った瞬間、俺の言葉を閉じ込めるようにプルンとした唇で覆われる。
ーーキスされた。大勢の前で。
ルビーさん? いくらなんでも大胆すぎやしませんか?
「いってらっしゃい。愛してますよ、あなた」
「......はい、俺もです......」
鏡を見ていないからわからないが、自分の顔が茹でタコになっている気がする。
これは不意打ちすぎるって。
そんな二人の世界をぶち壊すように怒号の嵐が始まった。
「てめえ、俺のルビーちゃんに何してくれてんだ!!!」
俺がやったんじゃないんだけど。
「やっていいことと悪いことがあんだろ!!」
婚約者だから問題ないはずでは?
「今すぐぶち殺してやる!! 表でろゴラァ!」
「イルンちゃんにルビーちゃんとか、どんだけ贅沢なんだお前! 槍の雨でも降ってきて死ね!!」
「きゃ~! ルビーちゃん大胆~!」
なんか歓声も混じってるな。
「ど、どうするんですか、ルビーさん......。このままじゃ俺、殺されそうなんですけど」
「ふふ、知りません。嘘ついて出て行こうとしたエイトさんが悪いんですからね」
根に持ってるうう!! 心配かけないように考えたのにいい!!
この後、しばらくギルドから出してもらえなかったーー。
ーーコンコン、ガチャッ
皆が寝静まり、開いた窓から虫の音が聞こえる頃。
部屋のドアを叩いたのは、俺と同様に居酒屋タラサの部屋を間借りしているエリシアだった。
営業も再開して、エリシアとイルンはこの居酒屋の2大看板娘、なんて言われている。
バイトなんてしたことのないエリシアは毎日、楽しそうに働いていた。
「エイトさん、そろそろ......」
白のネグリジェに身を包む彼女は、神妙な面持ちで相談を持ちかける。
「はい、わかっています。明後日にでも出発しましょう」
この1ヶ月、いろいろと準備をしてきた。
今の自分がどこまでやれるかの確認。
それから長くなるであろう旅に備えて、道具をチマチマと購入してアイテムボックスに詰めたり。
イルンとルビーにはまだ言えていない。明日にでも話そうかと思っている。
エリシアはどこか申し訳そうな表情のまま、自室へと戻っていった。
「......イルンとルビーのためにも、ボロスなんぞに世界を破壊されるわけにはいかない」
最初は断りづらくて受けた神殺しの依頼だが、やらなければいけない理由ができてしまった。
いくら気弱な俺でも、守るべきものがあるなら戦うさ。そこまで男は捨てていない。
......と格好つけてみたものの、できれば戦いたくないのが本音ではあるが。
「さて、どう説明したもんかね......」
天井を見つめながら、頭の下で手を組んで考えているうちに眠ってしまったーー。
「......トさん、朝......すよ。エイトさん......」
全身に揺れを感じて、開ききらない目で原因を確認する。あぁ、考えすぎて寝てしまったのか。
俺がなかなか起きないからか、イルンは頬を染めながら、小さな声で独り言を言い始めた。
「......まだ起きてないですよね?......だっ、旦那さま......大好きですっ......きゃっ」
一人で何を言っているんだか......こっちまで恥ずかしくなる。
でもこういうところが好きだったりするんだよな。
「......イルン」
「わあっ......! エイトさん起きてたんですか!? 今の話、聞いてませんよね!?」
盛大にパニクっていて面白い。
「これは違うんです!」と言いたげに顔の前でブンブンと振る両手のうち、片方を引いてイルンを抱き寄せる。
「エッ、エイトさん!? どどど、どうし! ふぁっ!?」
「聞いてくれ、イルン。俺はしばらくエリシアとここを離れないといけない。どうしてもやらないといけないことがあるんだ」
エリシアという名前を聞いて一瞬、ピクッとしたイルンだったが、俺の真面目な雰囲気を理解したのか、落ち着いて聞いてくれた。
「エイトさんがやらないとダメなことなんですよね......もしかしてわたしをさらった魔人と関係あったりしますか?」
本当にこの子はアホなのかと思えば、勘がいい。
「詳しくは言えない。でも長い旅になるだろうし、危険も伴う。だけど必ずイルンの元に帰ってくるから、信じて待っていて欲しい」
イルンは不安そうに何か言いたげな表情をして、その言葉を飲み込む。
そして次の瞬間にはいつもの明るい笑顔に戻って、俺の問いかけに答える。
「わかりました! 待ってますから絶対に帰ってきてくださいね!」
帰ってきてくださいね! の「ね!」の部分で再度、思いっきり抱きしめられ、その勢いでベッドに倒されるエイト。
「イ、イルン......く、くるじい......! 離して......ギブギブ」
「あははは、いやでーす。エイトさんが悪いんですからね」
大声で笑って、楽しそうに足をバタバタとさせるイルン。
しばらく騒いでから、また少し寂しそうな目をする。
俺は彼女の頬に手を沿わせて、初めてその言葉を伝えた。
「......好きだよ、イルン」
答えるように彼女も顔を近づけて、言う。
「わたしも大好きです、ずっとずっと大好きですよ、エイトさん」
二人はそっと、口付けを交わしたーー。
日中、エイトが向かっているのはギルドだった。
目的はもちろん、ルビーに街を出ると伝えること。
元々は大型の案件でも受けて、それを理由にしばらくここを離れると二人に伝えるつもりで考えていたのだが、朝から予定が狂ってしまった。
ーーガチャッ
(ガヤガヤ......)
まったく、今日も大量に冒険者がいる。良くも悪くも仕事があるということなんだろう。人が多いのは苦手なんだがな。
「こんにちは、ルビーさん」
「わっ、あなた! じゃなくて、エイトさん! えっ、なんでここにっ」
ガタガタ、と書類やらなんやらをひっくり返すルビー。
なるほど、こっちは「あなた」ときたか。
普段ならこんなドジなことはやらかさないが、いきなり職場に婚約者が現れれば、焦りもするらしい。
突然のあなた呼びで、周囲の視線は一瞬にして集まる。
「あいつがルビーの婚約者か?」
「くそっ、俺のルビーさんをよくも......!」
「弱そうなヤツだな、やっちまうか?」
やっちまうか? とか聞こえたんだけど! やられそうなんだけどお!?
俺が指輪をプレゼントした次の日。職場に出勤した彼女の薬指に気付いて、同僚からキャッキャと話題になり、それがその場にいた冒険者に広まって、軽く騒ぎを起こしたそうだ。
すげえな、ルビーの人気。
どうやらエイト抹殺計画もあったらしいが、それはルビーが悲しむだろうということで、解決したらしい。恐ろしすぎるだろ! 物騒なんだよ!
まあキングゴブリンから奪った殺気感知スキルがあるから、下手に殺されることはないだろうけど。
とはいえ、この騒ぎではまともに話もできそうにないので、俺とルビーは別室に移動した。
「すいません、いきなり来てしまって......」
「いえ、謝ることはありません。わ、私も会いたかったですし......」
視線を横にずらしてモジモジするルビー。かわいい。
「実は大型の案件を受けようと思いまして......ドラゴン討伐とか」
大型案件ーープラチナやブラックレベルになると、移動や準備だけで1ヶ月かかるのは普通で、ものによっては1年以上かけて行うものもある。
街を出る理由としては怪しまれないだろう。
「ダメです、受けさせません」
ーー断られた。え、断られることある? 顔怖いって。
「案件の受注って冒険者の自由......だったはずでは?」
「どうせそれが目的じゃないですよね」
バレてる~。
「い、いや、俺もそろそろ挑戦してみようかな~、とか。ハハ」
「本当のこと言わないと怒りますよ?」
こわい!! すでに怒ってるじゃん!!
観念したエイトは、重い口を開いた。
「ほ、本当のことは言えません。ですが、エリシアとやらなければいけないことがあるんです。それは俺にしかできないことで......なのでしばらく帰ってこれません」
ルビーは考え込んで、そして納得する。彼女は賢いから、なんとなく理解したのだろう。いきなりエリシアを連れて帰ってきたこと、魔人の存在、自動マッピングという弱いスキルでキングゴブリンを倒せたこと。
エイトがただの気弱な冒険者ではないと。
「......そうですか。あなたはどれだけ言っても聞きませんしね。わかりました」
俺のことをよくわかってらっしゃる。
「ありがとうございます」
「でもこれだけは約束してください」
「なんですか?」
冷たい氷のような形相が、溶けるように変わっていく。
「絶対、無事に帰ってきてください。あなたは、わっ、私の夫なんですからね!」
フッ、この言いたがりめ。さっきまでの雰囲気はどうした。
「わかっています。こんなにかわいい妻を残して死ねませんからね」
「かっ、かわ......! つまっ! 妻......へへ」
彼女たちへの想いが一層と強くなっていく。早く帰ってきたいなあ。
ボロスの蛮行は必ず止めてやる。
密かに燃えている俺に向かって、ルビーは思い出したかのように話し始めた。
「そうだ、案件をいくつか受けていくのはいいと思いますよ。旅の途中で倒すかもしれませんし」
「たしかに。それもそうですね。さすがです、ルビーさん」
「いえいえ。お金は大事ですからね。エイトさんが帰ってきたら、結婚式を挙げないといけませんし、家も建てなければいけません。稼げるなら稼いでおかないと」
そういうことかあ。こういうところしっかりしてるなあ。
ルビーの尻に敷かれる未来が見えるエイトだった。
「では、これで手続きをしておきます。出発はいつなんですか?」
「明日の早朝に行こうと思っています」
再び、受付に戻って案件を精査していた俺とルビー。
プラチナやブラック、ゴールドの案件をいくつかピックアップして受注した。おそらく、途中のギルドでも別で受けたりするだろうけど。
「随分と急ですね。私たちに言いづらかったのはわかりますが、もっと早めに言わないとダメですよ」
すべてお見通しなようで。
「はい......すいません......」
ずっと怒られてる。なんか情けなくなってきた。
「それでは」と、トボトボ扉に向かって歩き出すエイト。
それを呼び止めるみたいに、ルビーは立ち上がってエイトを追いかけた。
ーータッタッタッ
「待ってください、エイトさん。忘れ物です」
「はい? 忘れものなんてーーんっ!?」
振り返った瞬間、俺の言葉を閉じ込めるようにプルンとした唇で覆われる。
ーーキスされた。大勢の前で。
ルビーさん? いくらなんでも大胆すぎやしませんか?
「いってらっしゃい。愛してますよ、あなた」
「......はい、俺もです......」
鏡を見ていないからわからないが、自分の顔が茹でタコになっている気がする。
これは不意打ちすぎるって。
そんな二人の世界をぶち壊すように怒号の嵐が始まった。
「てめえ、俺のルビーちゃんに何してくれてんだ!!!」
俺がやったんじゃないんだけど。
「やっていいことと悪いことがあんだろ!!」
婚約者だから問題ないはずでは?
「今すぐぶち殺してやる!! 表でろゴラァ!」
「イルンちゃんにルビーちゃんとか、どんだけ贅沢なんだお前! 槍の雨でも降ってきて死ね!!」
「きゃ~! ルビーちゃん大胆~!」
なんか歓声も混じってるな。
「ど、どうするんですか、ルビーさん......。このままじゃ俺、殺されそうなんですけど」
「ふふ、知りません。嘘ついて出て行こうとしたエイトさんが悪いんですからね」
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