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博愛主義
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最近、ようやく俺にも彼女ができた。
彼女は誰にでも優しく、皆に好かれている、俺にとっては高根の花だった。
俺は容姿にも自信がなく、男なのに身長150cmほどで、彼女よりも10cm以上低い。
周りから「可愛い」と、よく言われているが、大学生にもなって異性として見られていないということだ。
付き合うきっかけは、彼女がケガした子犬を大学に連れてきたことだった。
息も絶え絶えで、もう助からないんじゃないかと周りの誰もが感じていたが、「病院に連れていくから、誰か車を出してください」と、必死に頭を下げていた。
いつも遠くで見ているだけの俺は、そんな姿を見て車を出す決意をした。
車内でも彼女はずっと子犬に向かって「シロ、大丈夫だよ。シロは絶対助けるから」と、声をかけ続けていた。
動物病院に運ばれるとすぐに治療が始まった。
結果、子犬は助からなかった。
彼女の洋服は子犬の血で真っ赤に染まっていたが、そんなこと全然気にせず子供のように泣いていた。
俺は見ていることしかできなかった。
先生からの説明も俺が代わりに聞いたが、彼女が気になり過ぎて頭に入ってこなかった。
今回の治療費も彼女負担でいいのかとか、そんな話だったと思う。
しばらくして落ち着いた彼女は何度も何度も俺に頭を下げ、お礼がしたいからと連絡先を教えてきた。
「私は菊池 佳奈と言います。お名前を教えていただけますか?」
「あぁ、あの文学部2年の中西 緑郎と申します」
――それが彼女との馴初めで、二か月前の話。
それから順調に交際を続けていると思っていたが、未だに彼女の部屋に訪れたことはない。
二人とも地方出身で、アパートの一人暮らしだが、デートはもっぱら俺の部屋になっている。
「ペットがいるから」「部屋が汚いから」「シロがケガしてて」と、なかなか彼女の部屋に行くOKが出ない。
確かに彼女は頻繁にケガした犬を連れてきては、病院に運んでいた。
その捨て犬たちを自分の部屋で飼っているのだろう。
誰にでも分け隔てなく平等に愛情を注げる、必死になれる彼女に、異常に感じるときもある。
そんなある日、彼女から突然笑顔が消えてしまった。
「シロが死んじゃった……」と、ふさぎ込んでいた。
なぐさめるため、一人にできないと初めて彼女の部屋に行くことになった。
女性の一人暮らしとは思えないほど部屋は散らかっていて、生ごみのすえたような臭いが充満している。
彼女は部屋のベットうえで膝を抱えて座ったまま。
重い静けさが部屋を包んで、俺はいたたまれなくなりあえて明るい声を出してみた。
「ペットが亡くなったのは――」
「――シロ」
「え?」
「……名前」
彼女のペットの名前はシロだったようだ。
「あ、偶然だね。俺は、なかにしろくろうで、俺もシロだね」と、明るくふざけてみた。
彼女は少しだけ笑顔が見せて「中西君がシロ?」と、聞いてきた。
「俺がシロになっちゃうよ~。ワンワン。いつもシロにしているみたいに甘えていいんだよ」と、勢いで彼女の隣に座り肩を抱きながら言う。
「ありがとう。じゃあ、いつもみたいに――」
彼女は誰にでも優しく、皆に好かれている、俺にとっては高根の花だった。
俺は容姿にも自信がなく、男なのに身長150cmほどで、彼女よりも10cm以上低い。
周りから「可愛い」と、よく言われているが、大学生にもなって異性として見られていないということだ。
付き合うきっかけは、彼女がケガした子犬を大学に連れてきたことだった。
息も絶え絶えで、もう助からないんじゃないかと周りの誰もが感じていたが、「病院に連れていくから、誰か車を出してください」と、必死に頭を下げていた。
いつも遠くで見ているだけの俺は、そんな姿を見て車を出す決意をした。
車内でも彼女はずっと子犬に向かって「シロ、大丈夫だよ。シロは絶対助けるから」と、声をかけ続けていた。
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結果、子犬は助からなかった。
彼女の洋服は子犬の血で真っ赤に染まっていたが、そんなこと全然気にせず子供のように泣いていた。
俺は見ていることしかできなかった。
先生からの説明も俺が代わりに聞いたが、彼女が気になり過ぎて頭に入ってこなかった。
今回の治療費も彼女負担でいいのかとか、そんな話だったと思う。
しばらくして落ち着いた彼女は何度も何度も俺に頭を下げ、お礼がしたいからと連絡先を教えてきた。
「私は菊池 佳奈と言います。お名前を教えていただけますか?」
「あぁ、あの文学部2年の中西 緑郎と申します」
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「ペットがいるから」「部屋が汚いから」「シロがケガしてて」と、なかなか彼女の部屋に行くOKが出ない。
確かに彼女は頻繁にケガした犬を連れてきては、病院に運んでいた。
その捨て犬たちを自分の部屋で飼っているのだろう。
誰にでも分け隔てなく平等に愛情を注げる、必死になれる彼女に、異常に感じるときもある。
そんなある日、彼女から突然笑顔が消えてしまった。
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「え?」
「……名前」
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