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1.メリーさん
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2023年12月、私の自宅にある手紙が届いた。真っ白で無機質な紙にゴシック体の黒い字で何か書かれている。
差出人は誰なのか、どこから出された手紙なのか書かれていないところを見ると、差出人の手によって直接投函されたものだろう。
去年職を失い、新しい就職先を探す気にもなれず、自堕落に月日を過ごしていた私。そんなミステリアスな手紙を読まずにはいられなかった。
「 私は20年間ある高校に勤めている。そして今年になって初めて教頭という地位に就くことができた。このポジションを狙っていたわけではないが、これが人生初の出世であると思うと、やはり誇らしいと感じる。
そんなある日のこと、少し仕事に熱中してしまい、いつのまにか夜9時になっていた。家に帰れば妻と2人の子供が待っている。急いで帰ろうとしたとき、携帯電話に電話がかかってきた。見たことのない番号だ。
『もしもし、私メリーさん。今、坂井原高校前駅にいるの。』
坂井原高校はうちの高校のことだ。有名な怪談でメリーさんというものがあるが、それを真似たものだろう。なぜ私はすぐにこれが悪ふざけだとわかったのか。自分をメリーさんだと言っておきながら、明らかに若い男性の声である。よく聞いてみると、まわりにケタケタと笑う同じく若い男性のような声が聞こえる。おそらく、この学校の生徒だろう。
何からつっこめばいいのかわからずにいると、すぐに電話は切れてしまった。かけ直そうとしたところ、
『私メリーさん。正面玄関前にいるの。』
再びすぐに電話は切れてしまった。先ほどと違うのは、今度は声が女性のそれであったこと。番号は先ほどと違っていた。女子生徒もこんな下らない悪ふざけにつきあうとは。私の頭にはすでに血が昇っていた。すると、また電話がかかってきた。
『もしもし、私メリーさん。今、校門前にいるの。』
電話すぐに切れた。次は1回目と同じ男性の声であった。元の怪談のオチは、『今、あなたの後ろにいるの。』というものだ。次は何が来るか考える前に、もう電話は鳴っている。
『もしもし、私メリーさん。今、職員室の前にいるの。』
どう彼らは本当に自分の後ろに現れるのか。どう説教をしようか。着信音が鳴ると同時に、指をスライドさせる。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの。』
電話は切れてしまった。後ろを振り返ると誰もいない。
結局、その日は何も起こらず家に帰った。後日、電話番号からあっさりと犯人が見つかった。2年生の男子生徒5人によるイタズラだった。本人たちになぜこんなことをしたのか、問い詰めてみると、
『メリーさんの真似をすると、本当のメリーさんから電話がかかってくるっていう噂があったんです。結局かかってこなかったんですけど。』」
次の日も、そのまた次の日も手紙は届いた。私はこれを「心霊郵便」と名づけ、それをここに綴っていこうと思う。
差出人は誰なのか、どこから出された手紙なのか書かれていないところを見ると、差出人の手によって直接投函されたものだろう。
去年職を失い、新しい就職先を探す気にもなれず、自堕落に月日を過ごしていた私。そんなミステリアスな手紙を読まずにはいられなかった。
「 私は20年間ある高校に勤めている。そして今年になって初めて教頭という地位に就くことができた。このポジションを狙っていたわけではないが、これが人生初の出世であると思うと、やはり誇らしいと感じる。
そんなある日のこと、少し仕事に熱中してしまい、いつのまにか夜9時になっていた。家に帰れば妻と2人の子供が待っている。急いで帰ろうとしたとき、携帯電話に電話がかかってきた。見たことのない番号だ。
『もしもし、私メリーさん。今、坂井原高校前駅にいるの。』
坂井原高校はうちの高校のことだ。有名な怪談でメリーさんというものがあるが、それを真似たものだろう。なぜ私はすぐにこれが悪ふざけだとわかったのか。自分をメリーさんだと言っておきながら、明らかに若い男性の声である。よく聞いてみると、まわりにケタケタと笑う同じく若い男性のような声が聞こえる。おそらく、この学校の生徒だろう。
何からつっこめばいいのかわからずにいると、すぐに電話は切れてしまった。かけ直そうとしたところ、
『私メリーさん。正面玄関前にいるの。』
再びすぐに電話は切れてしまった。先ほどと違うのは、今度は声が女性のそれであったこと。番号は先ほどと違っていた。女子生徒もこんな下らない悪ふざけにつきあうとは。私の頭にはすでに血が昇っていた。すると、また電話がかかってきた。
『もしもし、私メリーさん。今、校門前にいるの。』
電話すぐに切れた。次は1回目と同じ男性の声であった。元の怪談のオチは、『今、あなたの後ろにいるの。』というものだ。次は何が来るか考える前に、もう電話は鳴っている。
『もしもし、私メリーさん。今、職員室の前にいるの。』
どう彼らは本当に自分の後ろに現れるのか。どう説教をしようか。着信音が鳴ると同時に、指をスライドさせる。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの。』
電話は切れてしまった。後ろを振り返ると誰もいない。
結局、その日は何も起こらず家に帰った。後日、電話番号からあっさりと犯人が見つかった。2年生の男子生徒5人によるイタズラだった。本人たちになぜこんなことをしたのか、問い詰めてみると、
『メリーさんの真似をすると、本当のメリーさんから電話がかかってくるっていう噂があったんです。結局かかってこなかったんですけど。』」
次の日も、そのまた次の日も手紙は届いた。私はこれを「心霊郵便」と名づけ、それをここに綴っていこうと思う。
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