6 / 6
2-4
しおりを挟む
「その通り、君が言っていることはもっともだよ。」
綾人は璃に背を向けたままそう言った。
「君はこの天界が何によって成り立っていると思う?」
「何によってですか?」
「そうだ。分かるかい?」
「(・・・・)地上と言いたいんですよね。」
綾人は璃の方へ振り返り、
歩み寄りながら話をし始めた。
「税を地上から集め地位に応じた金銭が各家に支給され、多くの家はその金銭を資本にし企業や財閥のようなものを運営しさらに多くの金銭を得る。
そして地上の作物や資源を買いそれを使って暮らしている。昔は違ったかもしれないが、現在では確実に地上なくてして天界は成り立たない。」
「・・・・・」
綾人の言っていることは事実だろう。
「でもそれが、どうしたと言うんですか?
仮にそうだとして、貴方は何がいいたいんてすか?」
綾人が話をしているのは、天界が地上を食い物にしているという事実の確認であり、今更その事を確認したところで意味がない。
「これはとんでもない事態なんだよ。
・・・・あるいはもう遅いかもしれない。
なぜ今まで天界と地上が争いを起こしてなかったんだと思う?」
「・・・それは、天界が力で抑えつけてきたからです。」
天界の人間は地上の人間と比べて魔力か大きい、それに昔は大妖精も天界の味方だった。誰がそんな天界にわざわざ喧嘩をうるだろうか。
「でもそれはあくまで過去の話になってきていると私は思っている。」
「ここ近年、地上の魔力の平均が上がっている。
それに魔動技術も凄まじい勢いで上がってきている。
今の地上が抵抗出来ない程弱くないと思わないかい?」
「それは・・・」
「仮に今はそうではなくても、このまま時が経てば地上は更に強くなる。対して天界の戦力は何方かと言えば弱まってきているように私は思える。
そして、もしも今までの天界と地上の力バランスが崩れれば・・・・・」
「今までの不満は爆発して争いは起こるかもしれませんね。」
「仮に不満を爆発させて武力的な形でなくとも、天界からの解放を望むことは間違いないだろう。
しかし、地上の独立を認めれば天界は成り立たない。
そしてそれを避けるべく武力に頼るだろう。」
「まぁ、どちらにしても戦争になる可能性が高い。
いえ、ほぼ確実と言えます。」
それほどまでに天界と地上の関係は悪いのだから。
「私は、それを何とかして避けたいと思っている。」
その言葉と同時に綾人は私の正面に座る。
「戦争となれば、確実に双方多大な死傷者が出る。
それは避けなくてはならない。
そしてそれを避けるには、天界の人間の意識を正すしかないと私は思っている。」
「正すですか?」
「はるか昔は決して今ほど仲は険悪ではなかったんだよ。我が一族は当主であった者が死ぬ時に、その生涯の記憶を残すという事をしていてね、新たな当主となった者はその記憶を見る権利が与えられる。」
「それを見たからいいきれると?」
「ああ、現状に至った原因もわかった。現在とかこの違いもね。」
「違いですか?」
「それは天界の人間の意識だったよ。
過去の天界の人々は決して、
今のように対して食いものになどしていなかった。
神官たちは危険を顧みず地上に向かい慈善事業わ行い、
騎士団も度々地上に向かい魔物を狩っていた。
地上の人々に天界の人間の嫌う理由は無かったんだ。」
「本当にそうなのですか?」
「確かなことだ。当時の天界院当主も私兵団を率いて、
度々地上の魔物を借りに行っていたらしい。」
誇りに思っているよと言って微笑み、再び真剣な表情に戻る。
「私がそれらを見て出した結論は、天界に地上を見下す風潮がでた事が原因だということだ。昔は天界が魔物などの危険から助け、そのお礼として地上が作物などを献上するという関係だった。それが歪んでしまった。」
「自分たちの助けがなければ、地上の人間は生けていけない。って考えだしたって感じですかね。」
「そうだ。地上からの献上された作物などのおかげで自分たちの生活ができているというのに、それを忘れ去り、その結果今の風潮なんだよ。」
綾人の言う、過去と現在を比べているのなら信用も出来るだろう。しかし
「それは、尚更どうしようもできないことでは?」
風潮など変えようと思っても簡単に変えられるものではない。
「難しいのはわかっているし、正直な話上手くいくという確証もない。しかし他の方法よりはずっと可能性のある方法を考えた。」
そう話す綾人の瞳は真っ直ぐ璃を見る。
「それが、君なんだよ。星宮さん。」
「はい?」
「大事なのは、原因である地上を見下す風潮を正す事だ。だからその原因を正すために君を呼んだのさ。」
「いえ、意味がわからないのですか?」
「簡単なことだよ。君は自分の思うままに勉学に励んでくれればいい。
純粋な地上の人間である君が、天界で平均以上の魔力を持って、この学院で良い成績を残す。
それが風潮の改善に確実に繋がる。」
「そんなことで上手くいくんでしょうか?」
「ここに通っている生徒は、誰もが少なからず政治に影響を及ぼし得る人間ばかりだ。しかも2、3年で社会に出る。流石に一年で結果を出そうとは思っていないさ。
来年からも毎年実力のある特待生を受け入れていく。
三年かけて生徒の考え方をゆっくり変えていくのが理想だ。」
ここまでの説明をされると何となく納得しそうになる。
「そのために出来るだけ優秀な人間をこちらに送ってくれと彼に頼んだしね。
どうか、協力してくれないか?」
「(あぁ、そういう事か。
所々、抜けている記憶があるって事ね。
というか、あのおっさん絶対わざと説明しなかったわね・・・・・)」
完全に学園長の手の上ってことか。
璃の性格的にもここまで来て断れないと踏んでのことだろう。
「(まぁ、私の目的の邪魔にはならないし
どうせなら上手く利用して自分の目的達成の助けとする方が有意義だわ。それに・・・・)」
そうなれば璃の出す答えは一つしかない。
「わかりました。微力ながら協力させていただきます。」
「ありがとう。あと注意点なんだが・・・」
「この話は他言無用とかですか?」
「そうだ。あと、こちらからの支援はほぼ出来ないと思ってくれ。あくまで君には純粋な実力で頑張ってもらわないと意味がないからね。」
「そうですね。八百長では計画が上手く行きませんね。
了解しました。」
「よし、それでは聖先生を呼ぼう。寮に向かってくれ。」
そう言ってから綾人はどこかに電話をかけはじめた。
恐らく匠に連絡をとっているのだろう。
綾人は璃に背を向けたままそう言った。
「君はこの天界が何によって成り立っていると思う?」
「何によってですか?」
「そうだ。分かるかい?」
「(・・・・)地上と言いたいんですよね。」
綾人は璃の方へ振り返り、
歩み寄りながら話をし始めた。
「税を地上から集め地位に応じた金銭が各家に支給され、多くの家はその金銭を資本にし企業や財閥のようなものを運営しさらに多くの金銭を得る。
そして地上の作物や資源を買いそれを使って暮らしている。昔は違ったかもしれないが、現在では確実に地上なくてして天界は成り立たない。」
「・・・・・」
綾人の言っていることは事実だろう。
「でもそれが、どうしたと言うんですか?
仮にそうだとして、貴方は何がいいたいんてすか?」
綾人が話をしているのは、天界が地上を食い物にしているという事実の確認であり、今更その事を確認したところで意味がない。
「これはとんでもない事態なんだよ。
・・・・あるいはもう遅いかもしれない。
なぜ今まで天界と地上が争いを起こしてなかったんだと思う?」
「・・・それは、天界が力で抑えつけてきたからです。」
天界の人間は地上の人間と比べて魔力か大きい、それに昔は大妖精も天界の味方だった。誰がそんな天界にわざわざ喧嘩をうるだろうか。
「でもそれはあくまで過去の話になってきていると私は思っている。」
「ここ近年、地上の魔力の平均が上がっている。
それに魔動技術も凄まじい勢いで上がってきている。
今の地上が抵抗出来ない程弱くないと思わないかい?」
「それは・・・」
「仮に今はそうではなくても、このまま時が経てば地上は更に強くなる。対して天界の戦力は何方かと言えば弱まってきているように私は思える。
そして、もしも今までの天界と地上の力バランスが崩れれば・・・・・」
「今までの不満は爆発して争いは起こるかもしれませんね。」
「仮に不満を爆発させて武力的な形でなくとも、天界からの解放を望むことは間違いないだろう。
しかし、地上の独立を認めれば天界は成り立たない。
そしてそれを避けるべく武力に頼るだろう。」
「まぁ、どちらにしても戦争になる可能性が高い。
いえ、ほぼ確実と言えます。」
それほどまでに天界と地上の関係は悪いのだから。
「私は、それを何とかして避けたいと思っている。」
その言葉と同時に綾人は私の正面に座る。
「戦争となれば、確実に双方多大な死傷者が出る。
それは避けなくてはならない。
そしてそれを避けるには、天界の人間の意識を正すしかないと私は思っている。」
「正すですか?」
「はるか昔は決して今ほど仲は険悪ではなかったんだよ。我が一族は当主であった者が死ぬ時に、その生涯の記憶を残すという事をしていてね、新たな当主となった者はその記憶を見る権利が与えられる。」
「それを見たからいいきれると?」
「ああ、現状に至った原因もわかった。現在とかこの違いもね。」
「違いですか?」
「それは天界の人間の意識だったよ。
過去の天界の人々は決して、
今のように対して食いものになどしていなかった。
神官たちは危険を顧みず地上に向かい慈善事業わ行い、
騎士団も度々地上に向かい魔物を狩っていた。
地上の人々に天界の人間の嫌う理由は無かったんだ。」
「本当にそうなのですか?」
「確かなことだ。当時の天界院当主も私兵団を率いて、
度々地上の魔物を借りに行っていたらしい。」
誇りに思っているよと言って微笑み、再び真剣な表情に戻る。
「私がそれらを見て出した結論は、天界に地上を見下す風潮がでた事が原因だということだ。昔は天界が魔物などの危険から助け、そのお礼として地上が作物などを献上するという関係だった。それが歪んでしまった。」
「自分たちの助けがなければ、地上の人間は生けていけない。って考えだしたって感じですかね。」
「そうだ。地上からの献上された作物などのおかげで自分たちの生活ができているというのに、それを忘れ去り、その結果今の風潮なんだよ。」
綾人の言う、過去と現在を比べているのなら信用も出来るだろう。しかし
「それは、尚更どうしようもできないことでは?」
風潮など変えようと思っても簡単に変えられるものではない。
「難しいのはわかっているし、正直な話上手くいくという確証もない。しかし他の方法よりはずっと可能性のある方法を考えた。」
そう話す綾人の瞳は真っ直ぐ璃を見る。
「それが、君なんだよ。星宮さん。」
「はい?」
「大事なのは、原因である地上を見下す風潮を正す事だ。だからその原因を正すために君を呼んだのさ。」
「いえ、意味がわからないのですか?」
「簡単なことだよ。君は自分の思うままに勉学に励んでくれればいい。
純粋な地上の人間である君が、天界で平均以上の魔力を持って、この学院で良い成績を残す。
それが風潮の改善に確実に繋がる。」
「そんなことで上手くいくんでしょうか?」
「ここに通っている生徒は、誰もが少なからず政治に影響を及ぼし得る人間ばかりだ。しかも2、3年で社会に出る。流石に一年で結果を出そうとは思っていないさ。
来年からも毎年実力のある特待生を受け入れていく。
三年かけて生徒の考え方をゆっくり変えていくのが理想だ。」
ここまでの説明をされると何となく納得しそうになる。
「そのために出来るだけ優秀な人間をこちらに送ってくれと彼に頼んだしね。
どうか、協力してくれないか?」
「(あぁ、そういう事か。
所々、抜けている記憶があるって事ね。
というか、あのおっさん絶対わざと説明しなかったわね・・・・・)」
完全に学園長の手の上ってことか。
璃の性格的にもここまで来て断れないと踏んでのことだろう。
「(まぁ、私の目的の邪魔にはならないし
どうせなら上手く利用して自分の目的達成の助けとする方が有意義だわ。それに・・・・)」
そうなれば璃の出す答えは一つしかない。
「わかりました。微力ながら協力させていただきます。」
「ありがとう。あと注意点なんだが・・・」
「この話は他言無用とかですか?」
「そうだ。あと、こちらからの支援はほぼ出来ないと思ってくれ。あくまで君には純粋な実力で頑張ってもらわないと意味がないからね。」
「そうですね。八百長では計画が上手く行きませんね。
了解しました。」
「よし、それでは聖先生を呼ぼう。寮に向かってくれ。」
そう言ってから綾人はどこかに電話をかけはじめた。
恐らく匠に連絡をとっているのだろう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる