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第25話
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それから俺達は話し合い、キーサが魔法を使う事にした。
キーサが使う魔法は簡単に言えば通信魔法。そんな魔法はないけど、キーサが考えて作ってくれた。
まずキーサが人族の国と魔族の国の国境に結界を張る。この結界には攻撃を防ぐ機能は無いけど、人族の国への侵入者が通ると、それを感知する機能がある。侵入者を感知すると、俺達が持つ事になる札が反応して、魔族の襲撃が分かるようになっている。
「これなら安心だな。さすがキーサだ!」
「まったくだな。魔法を自分で作り出すなんて普通は考えられない」
「それは私が天才魔法使いだからよ。どんな魔法でも作りたい放題ね」
そう言ってキーサは微笑む。
その日は3人で休憩する事にし、翌朝、キーサは侵入を感知する結界を張った。俺とゼルスも一緒に行動していたんだけど、結界を張る時間が僅か数分だった事に俺達は本当に驚いた。だって国と国の国境に結界を張るわけだろ?短時間で張れるなんて、流石のキーサでも難しいと思ってたんだ。それなのに、あっさりと結界を張った。
「キーサ、凄すぎて何も言えないよ」
正直な感想を口にする。
「まあね。自分で言い出した事だし、素早くやり遂げるわよ。それと、これが札ね」
そう言ってキーサは俺とゼルスに札を渡す。
「これが侵入を報せてくれる札か?もう作ったのか」
「魔力を込めるだけだもの。簡単に壊れないようになってるから安心してね」
「ああ、ありがとう」
「これで安心してダンジョンに篭れるな」
「そうだな」
そして、その日の内に俺達はダンジョンに篭り始めた。その際、ギルドに言ってルミンさんに半年ほど篭る事を報告している。
しかし3ヶ月後。俺は奇妙な光景に遭遇する。ダンジョンの500階層に通じる階段でゼルスとキーサが立ち止まっていたのだ。一向に降りる気配がない。
「どうしたんだ?こんな場所で逢い引きか?」
俺は冗談っぽく言ってみる。
「おう、タロウか。もうここまで来たんだな」
「ああ。ところで何をしてるんだ?」
「この先は500階層。今までと同じならボス的なモンスターが存在している筈だ」
「そうだな」
「この先の気配を感じるか?」
「ん?…ああ、強そうだな」
500階層にいるボスモンスターはどうやら強そうだ。それだけでも楽しみになってくる。俺はつい笑ってしまう。
「それだけか?」
「それだけ、とは?」
「この気配、かなり強い。正直、不気味でもある」
「まあ、そうだな。でも強そうじゃないか!」
「俺も強者との闘いは好きだけど、この相手は少し違う」
ゼルスがこんな風に思うのは珍しいな。でも俺は闘いたい。ただ不気味だと言っているのは分かる。下からの気配は本当に不気味そのものだった。
「だから下に行かないのか?」
「いや、2人だけなら止めておこうと思ったけど、タロウが来て3人になったのなら、進もうと思う」
「じゃあ、俺は良いタイミングで来たんだな」
「ふふ、そうね。それじゃあ、行きましょうか」
「ああ」
「おう」
俺達は階段を降りて、500階層に到達する。そこは天井までの高さが5メートルほどの広い空間だった。
「誰もいないな」
「いつもの事じゃない?」
「そうだな。ボスモンスターは何もない空間から現れるからな」
そんな事を話していると、前方に光が集まり始め、光が収まると、そこには真っ白な人が立っていた。身長は150センチほど。完全に真っ白だ。白い肌とかじゃない。白い物が人型に固まっている感じ。目や鼻、耳や口、髪の毛などもない。正直、怖い。
「はは、俺が何かに対して怖いなんて思うのは初めてだな」
戦場を傭兵として駆け抜けた事もあるけど、銃を持った敵兵を怖いと思った事はなかった。でも、この白い存在は怖いと思える。
仕方ない。俺は自分の頭の経絡を圧した。効果は恐怖心を感じなくさせるものだ。
「これはマズイわね」
「ああ、1人で来なくて正解だった。悔しいけど、1人だと勝てない」
キーサとゼルスは口々にそう言う。この間、白い人型は立っているだけで攻撃してこようとしない。
「タロウ、お前は勝つ自信があるか?」
「難しいな。正面から気配を感じると、強い事が分かる。俺より少し強いかもしれない」
「そうか。とりあえず、攻撃してみるか?」
「それなら私が攻撃してみるわ。遠距離攻撃なら魔法使いの私が得意だからね」
「本気でいくのか?」
「ええ。ただ相手の弱点属性が分からないから、炎魔法でいこうかしら。まずは私達に魔法の威力がこないように結界を張って、と。それじゃあ行くわよ。…炎の嵐」
キーサが言った直後、空間を炎の嵐が吹き荒れる。
「すごいな」
そう呟いてしまう。白い人型の姿は炎で見えない。ふと地面を見ると、ダンジョンの地面が少し溶けていた。そんなに熱量があるのか。これだけの威力があれば、魔龍でも簡単に燃え尽きるだろうな。
約10分後。
「気配が消えない…」
キーサが呟く。未だに白い人型の姿は炎で見えないけど、気配は消えていない。つまり、まだ生きている。
「とりあえず、魔法を解除するわね」
そう言ってキーサが魔法を解除すると、炎の嵐が消えた。
そこには白い人型が元の位置で立っていた。
「あれを耐えたの?」
「次は俺だ。単純に物理攻撃ならどうだ?」
そう言ってゼルスは一気に距離を詰めると、剣を左から右に振る。しかし白い人型の首に当たりはしたが斬る事はできず、剣が首で止められる。
「なんだと!?」
ゼルスが驚くのも分かる。あの剣速なら避ける事はほぼ不可能だろう。ゼルスも気を扱えるようで、剣に気を通して斬れ味を良くしていた。それなのに止められたのだ。驚くのも当然だろう。
「くそ!」
ゼルスは何度も他の部位を斬ろうとしているけど全く斬れない。ゼルスは驚愕しながらも俺達のところに戻ってくる。
「攻撃されているのに反撃をしてこないな」
「そうね。私の攻撃を受けた後も何もしてこなかったし」
確かにまったく攻撃してこないな。
「次は俺だな」
俺は一気に距離を詰めると、右拳に気を集中させて、白い人型の頭部を殴った。しかし拳はきちんと当たったのに、白い人型は微動だにしない。攻撃がまったく効いていないみたいだ。キーサの魔法が効かなかったし、ゼルスの剣が防がれた事も分かっているから、そこまで驚きはしない。その後も幾度も攻撃をしたけど、攻撃が全く効かなかった。
「く!」
俺は距離をとってゼルス達の元に帰る。
「攻撃が効かないな」
「無効化してるようには見えないから、防御力が高いのかしら」
「あれ、もう終わりなの?」
「喋った!?」
白い人型が喋った!口がないのに喋っているのが不思議だけど、確かに音として聞こえる。頭の中に聞こえるわけではない。
「最近、ダンジョンを一気に攻略している人間がいるから、どれだけ強いのかなとワクワクしたのに、拍子抜けだな」
「…お前は何者なんだ?」
「僕かい?僕はダンジョンマスターだよ」
「ダンジョンマスター!?そんな存在がいるのか?じゃあ、ここはダンジョンの最深部なのか?」
「ううん、違うよ。僕はただ、ダンジョンを急に突破し始めた人間がどの程度の強さなのか知りたくて来たんだ」
「単なる興味本位か」
「そういう事になるね」
白い人型の言葉に俺達は驚くしかなかった。
「とりあえず、ダンジョンマスターの僕の力を見せておくね」
そう言うとダンジョンマスターは右掌をキーサに向ける。直後、掌から直径1メートルほどの光線がキーサめがけて放たれる。キーサは魔法で結界を張るが、光線は簡単に結界を貫通し、キーサに命中した。その威力が凄まじかったのか、魔法防御力が高い筈のキーサが倒れる。死んではいないようだ。
「次はきみだ」
ダンジョンマスターは白い剣を作り出し、ゼルスに斬りかかる。ゼルスは剣で防ごうとするけど、ダンジョンマスターは剣の軌道を変えて、ゼルスの横腹を斬る。いや、峰打ちだったのか、ゼルスの横腹は斬れていない。しかしゼルスはその威力で倒れる。ゼルスも死んではいない。
「最後はきみだ」
俺の目の前に現れたダンジョンマスターはそう言うと、俺の腹を殴る。
「ぐあっ!」
防ごうと思ったけど、ダンジョンマスターの攻撃速度が速くて防ぐ事も避ける事も捌く事もできなかった。格闘技試合で、どれだけ腹を殴られても痛くなかった俺だけど、この攻撃にはたまらず倒れる。
「…強いな…」
これで俺の人生は終わりか。まあ最後は絶対的な強者に挑んで負けたのだから悔いはない…と言えば嘘になる。ルミンさんに告白もしたかったし、ソフィアの成長を見たかった。それだけが残念だ。
「あれ?もしかして僕が君達を殺すと思ってる?」
ダンジョンマスターがそんな事を言う。
「…殺さないのか?」
「さっき言ったよね?君達の強さが知りたくて来たって。強さが分かったから、殺す事はしないよ」
その言葉に少しだけ安堵する。ダンジョンマスターの言葉の真偽が分からないから、完全に安心する事はできない。
「僕はダンジョンの最深部にいるよ。ダンジョンを進むなら、いつか最深部で僕に会えるかもね。でも、それまでに強くなっておいてよ?今のままだと、少しも僕に勝てる可能性はないから。それじゃあね」
そう言うと、ダンジョンマスターは消えた。
「…本当に見逃されたのか?」
ダンジョンマスターが消えて数分が経ってもダンジョンマスターが現れない。油断させてトドメをさすといった作戦ではないのかもしれない。
「ゼルス、キーサ、大丈夫か?」
「ああ…なんとかな」
「大丈夫よ…魔法での攻撃で倒れるなんて初めてかも」
キーサが初めてって言うくらいだから、よほど凄い魔法だったんだろうな。
それから少し休憩をして、俺達は地上に戻った。
キーサが使う魔法は簡単に言えば通信魔法。そんな魔法はないけど、キーサが考えて作ってくれた。
まずキーサが人族の国と魔族の国の国境に結界を張る。この結界には攻撃を防ぐ機能は無いけど、人族の国への侵入者が通ると、それを感知する機能がある。侵入者を感知すると、俺達が持つ事になる札が反応して、魔族の襲撃が分かるようになっている。
「これなら安心だな。さすがキーサだ!」
「まったくだな。魔法を自分で作り出すなんて普通は考えられない」
「それは私が天才魔法使いだからよ。どんな魔法でも作りたい放題ね」
そう言ってキーサは微笑む。
その日は3人で休憩する事にし、翌朝、キーサは侵入を感知する結界を張った。俺とゼルスも一緒に行動していたんだけど、結界を張る時間が僅か数分だった事に俺達は本当に驚いた。だって国と国の国境に結界を張るわけだろ?短時間で張れるなんて、流石のキーサでも難しいと思ってたんだ。それなのに、あっさりと結界を張った。
「キーサ、凄すぎて何も言えないよ」
正直な感想を口にする。
「まあね。自分で言い出した事だし、素早くやり遂げるわよ。それと、これが札ね」
そう言ってキーサは俺とゼルスに札を渡す。
「これが侵入を報せてくれる札か?もう作ったのか」
「魔力を込めるだけだもの。簡単に壊れないようになってるから安心してね」
「ああ、ありがとう」
「これで安心してダンジョンに篭れるな」
「そうだな」
そして、その日の内に俺達はダンジョンに篭り始めた。その際、ギルドに言ってルミンさんに半年ほど篭る事を報告している。
しかし3ヶ月後。俺は奇妙な光景に遭遇する。ダンジョンの500階層に通じる階段でゼルスとキーサが立ち止まっていたのだ。一向に降りる気配がない。
「どうしたんだ?こんな場所で逢い引きか?」
俺は冗談っぽく言ってみる。
「おう、タロウか。もうここまで来たんだな」
「ああ。ところで何をしてるんだ?」
「この先は500階層。今までと同じならボス的なモンスターが存在している筈だ」
「そうだな」
「この先の気配を感じるか?」
「ん?…ああ、強そうだな」
500階層にいるボスモンスターはどうやら強そうだ。それだけでも楽しみになってくる。俺はつい笑ってしまう。
「それだけか?」
「それだけ、とは?」
「この気配、かなり強い。正直、不気味でもある」
「まあ、そうだな。でも強そうじゃないか!」
「俺も強者との闘いは好きだけど、この相手は少し違う」
ゼルスがこんな風に思うのは珍しいな。でも俺は闘いたい。ただ不気味だと言っているのは分かる。下からの気配は本当に不気味そのものだった。
「だから下に行かないのか?」
「いや、2人だけなら止めておこうと思ったけど、タロウが来て3人になったのなら、進もうと思う」
「じゃあ、俺は良いタイミングで来たんだな」
「ふふ、そうね。それじゃあ、行きましょうか」
「ああ」
「おう」
俺達は階段を降りて、500階層に到達する。そこは天井までの高さが5メートルほどの広い空間だった。
「誰もいないな」
「いつもの事じゃない?」
「そうだな。ボスモンスターは何もない空間から現れるからな」
そんな事を話していると、前方に光が集まり始め、光が収まると、そこには真っ白な人が立っていた。身長は150センチほど。完全に真っ白だ。白い肌とかじゃない。白い物が人型に固まっている感じ。目や鼻、耳や口、髪の毛などもない。正直、怖い。
「はは、俺が何かに対して怖いなんて思うのは初めてだな」
戦場を傭兵として駆け抜けた事もあるけど、銃を持った敵兵を怖いと思った事はなかった。でも、この白い存在は怖いと思える。
仕方ない。俺は自分の頭の経絡を圧した。効果は恐怖心を感じなくさせるものだ。
「これはマズイわね」
「ああ、1人で来なくて正解だった。悔しいけど、1人だと勝てない」
キーサとゼルスは口々にそう言う。この間、白い人型は立っているだけで攻撃してこようとしない。
「タロウ、お前は勝つ自信があるか?」
「難しいな。正面から気配を感じると、強い事が分かる。俺より少し強いかもしれない」
「そうか。とりあえず、攻撃してみるか?」
「それなら私が攻撃してみるわ。遠距離攻撃なら魔法使いの私が得意だからね」
「本気でいくのか?」
「ええ。ただ相手の弱点属性が分からないから、炎魔法でいこうかしら。まずは私達に魔法の威力がこないように結界を張って、と。それじゃあ行くわよ。…炎の嵐」
キーサが言った直後、空間を炎の嵐が吹き荒れる。
「すごいな」
そう呟いてしまう。白い人型の姿は炎で見えない。ふと地面を見ると、ダンジョンの地面が少し溶けていた。そんなに熱量があるのか。これだけの威力があれば、魔龍でも簡単に燃え尽きるだろうな。
約10分後。
「気配が消えない…」
キーサが呟く。未だに白い人型の姿は炎で見えないけど、気配は消えていない。つまり、まだ生きている。
「とりあえず、魔法を解除するわね」
そう言ってキーサが魔法を解除すると、炎の嵐が消えた。
そこには白い人型が元の位置で立っていた。
「あれを耐えたの?」
「次は俺だ。単純に物理攻撃ならどうだ?」
そう言ってゼルスは一気に距離を詰めると、剣を左から右に振る。しかし白い人型の首に当たりはしたが斬る事はできず、剣が首で止められる。
「なんだと!?」
ゼルスが驚くのも分かる。あの剣速なら避ける事はほぼ不可能だろう。ゼルスも気を扱えるようで、剣に気を通して斬れ味を良くしていた。それなのに止められたのだ。驚くのも当然だろう。
「くそ!」
ゼルスは何度も他の部位を斬ろうとしているけど全く斬れない。ゼルスは驚愕しながらも俺達のところに戻ってくる。
「攻撃されているのに反撃をしてこないな」
「そうね。私の攻撃を受けた後も何もしてこなかったし」
確かにまったく攻撃してこないな。
「次は俺だな」
俺は一気に距離を詰めると、右拳に気を集中させて、白い人型の頭部を殴った。しかし拳はきちんと当たったのに、白い人型は微動だにしない。攻撃がまったく効いていないみたいだ。キーサの魔法が効かなかったし、ゼルスの剣が防がれた事も分かっているから、そこまで驚きはしない。その後も幾度も攻撃をしたけど、攻撃が全く効かなかった。
「く!」
俺は距離をとってゼルス達の元に帰る。
「攻撃が効かないな」
「無効化してるようには見えないから、防御力が高いのかしら」
「あれ、もう終わりなの?」
「喋った!?」
白い人型が喋った!口がないのに喋っているのが不思議だけど、確かに音として聞こえる。頭の中に聞こえるわけではない。
「最近、ダンジョンを一気に攻略している人間がいるから、どれだけ強いのかなとワクワクしたのに、拍子抜けだな」
「…お前は何者なんだ?」
「僕かい?僕はダンジョンマスターだよ」
「ダンジョンマスター!?そんな存在がいるのか?じゃあ、ここはダンジョンの最深部なのか?」
「ううん、違うよ。僕はただ、ダンジョンを急に突破し始めた人間がどの程度の強さなのか知りたくて来たんだ」
「単なる興味本位か」
「そういう事になるね」
白い人型の言葉に俺達は驚くしかなかった。
「とりあえず、ダンジョンマスターの僕の力を見せておくね」
そう言うとダンジョンマスターは右掌をキーサに向ける。直後、掌から直径1メートルほどの光線がキーサめがけて放たれる。キーサは魔法で結界を張るが、光線は簡単に結界を貫通し、キーサに命中した。その威力が凄まじかったのか、魔法防御力が高い筈のキーサが倒れる。死んではいないようだ。
「次はきみだ」
ダンジョンマスターは白い剣を作り出し、ゼルスに斬りかかる。ゼルスは剣で防ごうとするけど、ダンジョンマスターは剣の軌道を変えて、ゼルスの横腹を斬る。いや、峰打ちだったのか、ゼルスの横腹は斬れていない。しかしゼルスはその威力で倒れる。ゼルスも死んではいない。
「最後はきみだ」
俺の目の前に現れたダンジョンマスターはそう言うと、俺の腹を殴る。
「ぐあっ!」
防ごうと思ったけど、ダンジョンマスターの攻撃速度が速くて防ぐ事も避ける事も捌く事もできなかった。格闘技試合で、どれだけ腹を殴られても痛くなかった俺だけど、この攻撃にはたまらず倒れる。
「…強いな…」
これで俺の人生は終わりか。まあ最後は絶対的な強者に挑んで負けたのだから悔いはない…と言えば嘘になる。ルミンさんに告白もしたかったし、ソフィアの成長を見たかった。それだけが残念だ。
「あれ?もしかして僕が君達を殺すと思ってる?」
ダンジョンマスターがそんな事を言う。
「…殺さないのか?」
「さっき言ったよね?君達の強さが知りたくて来たって。強さが分かったから、殺す事はしないよ」
その言葉に少しだけ安堵する。ダンジョンマスターの言葉の真偽が分からないから、完全に安心する事はできない。
「僕はダンジョンの最深部にいるよ。ダンジョンを進むなら、いつか最深部で僕に会えるかもね。でも、それまでに強くなっておいてよ?今のままだと、少しも僕に勝てる可能性はないから。それじゃあね」
そう言うと、ダンジョンマスターは消えた。
「…本当に見逃されたのか?」
ダンジョンマスターが消えて数分が経ってもダンジョンマスターが現れない。油断させてトドメをさすといった作戦ではないのかもしれない。
「ゼルス、キーサ、大丈夫か?」
「ああ…なんとかな」
「大丈夫よ…魔法での攻撃で倒れるなんて初めてかも」
キーサが初めてって言うくらいだから、よほど凄い魔法だったんだろうな。
それから少し休憩をして、俺達は地上に戻った。
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