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2章 転生、新たな出会い

14話 シロネ・ラム

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 俺は絶句していた。



 そう俺は宿屋の扉を開けたはずだ…そうそのはずだ。



 扉を開けた先に店主らしき人が店番をしている、ガタイの良いワイルドイケメン風な男なのだが服と靴が女性物である。



 さらに化粧もしており、化粧素人の俺が見てもうまいと思った。

 ベタベタに塗るわけでもなく薄くもない、程よい中間量の塗りで自然体に合わせている。



 他に従業員が見当たらないのですごい不安を覚えたが、入ってしまった以上仕方がない。



 そう俺が覚悟を決めた瞬間ーー



「あら~いらっしゃい。こんな店に人なんて珍しいわね」



 こちらを舐め回すような目で見てくる。ただ見るというよりかは見定めると言った方が良いかもしれんが…



「今日は2人でいいかしらぁ~」



 この人、シロネの存在を。俺は無意識の内に店主を睨みつけてしまった。



「そんなに警戒しなくても大丈夫よぉ~」



 と、微笑みかけてくるが一瞬の隙がない。この人はシロネまではいかなくても相当な実力を持っている。



 するとシロネは、スゥッと音もなく影から姿を現す。



「久しぶりじゃの、ホルド」



 シロネが現れるとホルドという奴はパッとさっきの笑みとは違う満面の笑みでカウンターから思いっきりシロネに抱きつく。



「シロネちゃ~ん久しぶり~」



「ああぁ痛い痛いのじゃー」



 シロネは抱きつきから逃れようとするがそれを許さない。



 どんな腕力してんだこの人…





 そのあと10分くらいずっと抱きつかれていた、途中からあごひげジョリジョリというわけの分からん攻撃でシロネを瀕死の状態まで追い込んでいた。



**



 今は両者ともやっと落ち着きを取り戻していた。



「初めまして、アキトといいます」



 俺は挨拶する。



「よろくね、私はこの宿屋パイオニアの店主ホルドよ♪」



「ちなみにシロネちゃんとは昔からの仲なの、まぁ最近は全然来てくれなくて寂しかったけどね…」



 ホルドさんは一瞬表情が下を向くがすぐに笑顔に戻る。

 シロネはちなみに先に部屋のベッドで寝ている。さっきの抱きつきによりノックアウトである。





 ホルドさん店主の宿屋パイオニアは1階が食堂兼酒場で2階に寝起きする為の部屋がある。

 だが、この時間はほとんど客が居ない。たまに独り身の客が1杯飲んで出て行く程度だ。



 今は1階のカウンターテーブルに座りホルドさんと会話している。



 ホルドさんは俺が頼んだ昼ごはんを作りながら喋っているーー器用な人だ。



「アキトちゃんはシロネちゃんとどういう仲なの?」



 至極単純な質問、しかも目はふざけた感じではない。表向きはおちょくっているように 見えなくもないが瞳の奥深くに見えるそれは尋常ではないくらいの威圧感を持つ、それを料理しながら向けてくる。



 俺は回答を思案する、背中から生暖かい汗が1度も停止することなく滴る。



 お腹も良いぐいあいに空いてるのもあってか頭がよく回る。



 だが、思案した結果ーー

 斜め上な回答をするよりかは直球で問題ない、どうせ考えたところで相手の考えなんて分かるわけないのだから。





「ーー友達です」





 これ、めっちゃ恥ずかしいのな、こういうことは世界どこでも変わらないものだ。



「…そう」



 そのままホルドさんは出来た料理をカウンターに並べる。



 おぉこれはめっちゃ美味しそうな匂いに、見た目、すべてが完璧である。

 ただめっちゃ量は多いがーーそんなことは杞憂に終わる。



 俺は出された料理を10分足らずで食べ終わり、今は食後のデザートと何の果実か分からない飲み物をいただいている。





 あれからホルドさんは店の裏の食材を取りに行くと言って20分ほど経っている。





 ちょうどデザートを食べ終わった時ホルドさんは戻って来た。



 俺はお昼ごはのお礼を告げようと思った時ーー



「ちょっと話しておきたいことがあるの。アキトちゃんを見込んでね」



 減っていた飲み物を継ぎ足してくれる。



「シロネについてですか?…」



 ホルドさんはその通りと言わんばかりににっこり笑う。そのまま話を続ける。



「シロネちゃんが吸血鬼と人間のハーフってのは知ってるかしら?」



「ええ、それは聞いてますよ」



 それは、最初に会った時に聞いていた話だ。詳しくは話してもらってはいないけど。



 それを聞いて、ホルドさんは頭を下げる。



「シロネちゃんの友達になってくれてありがとうね。あの子ずっと一人だったから」





 俺はいきなり頭を下げて来たホルドさんに頭を上げるよう慌てて促す。





「俺なんかに頭を下げるのはやめてください!ホルドさん!!」





 ホルドさんは頭を上げると瞳に涙を溜めていた。



「今から話すことは他言無用よ。まあシロネちゃんが認めたアキトちゃんなら問題ないと思うけどねーー」



 それだけ言うと、ホルドさんは一拍置き話し始める。







「まずは私の立ち位置ってところね。とある事情で私の曾おじいさんが若い時に赤子のシロ



ネちゃんを譲り受けて来てね、自分一人で生きていけるまで面倒を見てたの。



 譲り受けた時に聞いた話しを代々私たちが受け継いでいるんだけどね私がこんなんでしょ



だからこの先どうするか考えていたのよ」





 ホルドさんは申し訳なさそうな口調で語る。





「それでねアキトちゃん私の代わりに受け継いで欲しいと思ってるの。こんなこと突然言



われても困るだろうし、まだ重要な中身すら話していないけどここでこれ以上先を聞くかど



うか決めてもらわないといけない。ここまでのところは他言無用で終わらせられるけどこ



の先を聞いた場合は私があなたを殺さないといけなくなる」





 そこまでを聞いて俺は考えていた。シロネは友達だ、だが命を賭けないといけない程の重要な話しになると話は違ってくるーーとはならん。



 こんなところで引き下がってたらけんに会った時顔をあわせられなくなる、俺が思う友達はそれ程重たいということを教えてやる。







「何も問題はない。ホルドさん話を続けてくれーー」





 こんなに早く回答が返ってくるとは思っていなかったのか、目を見開いて驚いている。





「分かったわアキトちゃん。ここからの話は誰にも聞かれたくないの場所を移動しましょ」



 そう言うとホルドさんはカウンターの奥さっきホルドさんが食材を取りに行っていた場所に誘導される。



 俺はそれに従いついて行く。





 そこは、完全に食料庫。いろんな食材の匂いが混ざってかなり濃い、鼻にツーンとくる。





「ここは、隠密に長けた部屋。いろんな隠蔽スキル、魔法を駆使して作られた部屋よ」



 それなら情報が漏れることは心配ないだろう。こういう裏路地という立地も計算に入れられているのか…



「じゃあ始めるわね」





 薄暗い部屋のなか俺たちは年季の入った横長の椅子に隣り合わせに座っている。



 お互いの息遣いが分かるくらい近い。いつもなら気恥ずかしさがあったりするが今は何も



感じない、ホルドさんもおちょくることなく真剣な表情はまったく変わっていない。





 それほど真剣なのだろう。







「この世界のどこかに吸血鬼だけしかいない村があってね、そこには約100人程の吸血鬼が



暮らしていたの。そしてその吸血鬼の中でも最強の実力を持っていたのがシロネの父ハク



ト・ラム。ハクトちゃんは若くして村のどの吸血鬼よりも強かった。ある日、ハクトちゃん



は村の近くで兵士に追われていた少女を助けたの。その少女こそがシロネちゃんのお母さん



クロネちゃんよ。



 クロネちゃんの村は他国の兵士に襲われ、命からがらクロネちゃんだけが逃げて来た。



 ハクトちゃんは、クロネちゃんを村に匿ったの。最初は仲間から批判されていたらしいんだけど徐々に受け入れてもらっていったわ。



 そして、なんだかんだあって結局2人は結ばれたわ。



 ここまではただの恋物語だけどねここからが問題ーー 」



 俺は呆然と窓からさす光を眺めながら話しを聞く。



 ホルドさんはここからさらにトーンを下げ話しに重みが増す。





「クロネちゃんを追っていた国の兵士がその村を見つけちゃったの、それを聞いた国はその国最強の騎士団をその村に派遣したのよ。



 そして、その村は壊滅。吸血鬼の皆んなはハクトちゃんとクロネちゃんを逃がすため自分達の命を投げ打ったの。



 2人は違う国へ逃げ込んだの、他国へ逃げ込めば流石に追っては来ないと思っていたのけど、その国は裏で繋がっていてね情報は垂れ流し…すぐさま2人は見つかったわ。



 クロネちゃんは命からがらシロネちゃんを私の曾おじいさんに託し、さらに自分が持っていたオーパーツアイテムをシロネちゃんに託したの。



 そしてクロネちゃんは捕まり吸血鬼を国に手配したという罪で死刑になり殺されたわ。



 ハクトちゃんはその国を壊滅状態まで戦い、その後の行方は分かってないの。





 それからシロネちゃんは表に出ないように私たちで育て、魔法やスキル自分を守るすべを教えてあげたの。



 冒険者になってからもいろいろあったらしいのだけれど私には心配かけたくないのか話してくれなかったわ。





 私も聞いたものだから大雑把になっちゃてるけどーー



 ここまでがシロネちゃんの話よ 」

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