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6章 入学試験 2次試験編
59話 最後の朝餐
しおりを挟む入学式当日、いつものルーティンを終わらせ汗を洗い流した後俺は鏡の前で新品の制服に袖を通す。ベルトが付いていなかったのでアイテムボックスにあった装飾品『高質なベルト』というアイテムを取り出し、ズボンのループにベルトを入れちょうど良い具合まで締める。そして、最後にそっとベルトの金具を閉じて準備完了だ。この時、若干ステータスが上がる。一応装備品扱いだそうです。
鏡に映る自分はいつもより……うん、全く変わらん。目の下の隈は相変わらず、ぼさっとした髪の毛。自分で言うのもなんだが、制服を着ているにも関わらず全くと言って若く見えん。
昨日の夜の内に部屋に置いてあった自分の物は全てアイテムボックスの中にしまった。今日でしばらくというか卒業までさよならだ。
俺はこの部屋に心の中で感謝を告げ最後のホルドさんの朝ごはんを食べに行く。
1階に降りるとホルドさんが朝ごはんを作っていた所だった。トルスはまだ自分の部屋で準備中だろう、他のみんなはまだ夢の中だ。
「おはようございます。ホルドさん」
「あら、おはようアキトちゃん」
俺は軽く挨拶を交わし、俺達がいつも使っている机を拭く。基本俺は朝早く起きるのでこうやって軽い手伝いをしている。
「今日で最後ね~♪」
「はい、ありがとうございました」
「こちらこそ楽しかったわ♪それにシロネちゃんのことよろしくね」
「任せてください……」
「それとね……この機会に良いと思ってねシロネちゃんには大方過去の事は話したわ」
ここで、ホルドさんが結構ショッキングなことを言い放った。もう少し時間を置くと思っていたがまさかこんなに早くなるとは。
でも、学園に入るとホルドさんの目も行き届かなくなるし妥当っちゃ妥当か……
「シロネはなんて?」
「大丈夫だって。それにみんなには心配かけたくないそうよ」
ちゃんと冷静に話は聞いてくれたようだ。
「このことはみんな知らない程になってるからくれぐれも頼んだわよ」
「分かりました」
そう言ってテーブルに朝ごはんを持ってきてくれる。そろそろみんな起き出す時間か。
そう思った矢先、階段を降りてくる音が聞こえる。この軽い感じの音はユイだろう。
「おはよう。いつも早い……アキトは…」
まだ寝たりないのか大きなあくびを手で抑え静止しながら降りてくるユイ。ユイもすでに制服に身を包んでおり、制服のスカートが普段のユイと違う雰囲気を醸し出しておりとても良く似合っている。
「おはようユイ。早起きが特技みたいなとこあるからな」
「まだみんな起きてないんだ」
俺の特技はスルーされちょっと悲しくはなったがもうこの手の攻撃は慣れっこである。
「もうすぐ起きてくると思うぞ」
ユイは俺の後ろを通り反対の向かいの席に着席する。すると、ユイがきてから数分置きに1階に集まりだし、20分もしない内に全員集まった。
今日は珍しくバルトもちゃんと起きている。まぁ絶対ナナミちゃんに起こしてもらったに違いないだろうが……
最後は全員で朝ごはんを食べようとメガネくんが提案したのだ。この宿屋に来て最初はみんな集まって食べてたが、最近はそれぞれやる事があってなかなか揃う機会がなかったから俺もメガネくんの提案に賛同したのだ。
「みんなありがとね協力してくれて」
「構わんさ」「最後くらいみんなで食べたいですよね」
まぁここでの最後の食事になる学園のご飯がどうなのかは知らないがホルドさんの料理は本当に美味しいので最初にこの味を味わってしまうと他のものでは物足りなく感じてしまわないか心配だ。
「じゃあ、食べようか。いただきます」
メガネくんを筆頭に皆食べ始める。
バルトの妹のナナミちゃんも今日で村に帰るらしく、昨日バルトと一緒に荷物を纏めていた。
最後の献立は川魚のグリルとこの近くの森で採れる根菜類がその脇に添えられている。そしてスープ。これは、お肉ときのこが具に入っており、あっさりして朝にはちょうど良くどこかお吸い物を彷彿とさせるような見た目だ。
ロールパンのような形のパンが2つが添えられており、スープにつけて食べたりそのまま食べたりとほとんど元の世界と同じような食べ方をする。
魚にパン……と日本人からはちょっと慣れない合わせ方だったが1日で偏見が吹き飛んだ。パンも外がサクッ中がもちもちではなく外も中ももちもちでスープに浸し魚の身を乗せ食べる。噛むとモチっとした感触がまず最初に来て、歯でパンを押しつぶすことで染みたスープが溢れ出し香りが口内に広がり、その染みたスープと魚の身がいい具合に絡み合い川魚の味付けの酸味と濃いめのスープと良く合う。
みんなご飯中は無言で黙々と食べる……普通雑談などを挟むのが食事の楽しみ方だろう。だが、ご飯が美味しいのでみんな無我夢中になり雑談どころではなくなるのだ。
パンとスープはおかわり自由でまさに言うことなしだ。
約30分かけ食事は終わる。みんな大体同じくらいのタイミングで食べ終わる。
しばしの沈黙、そして皆感慨に浸る。実を言うと俺はこの時間が一番好きだ。アイテムボックス内に大量にあるOOPARTSオンラインで作ったお茶を啜る。
そんなこんなで皆皿を厨房の洗い場まで運び、そろそろ出発の時刻になる。
「ほんと……寂しくなるわね~」
ホルドさんは宿屋の出入り口で準備している俺達のところまで見送りしてくれる。
「卒業したら、絶対にまた来ます」
エーフが泣きそうな顔で、ホルドさんに抱きつく。いや、もう涙を零していた。
「ホルドのご飯が食べれんのは痛手じゃの~」
「今度一度手合わせ願いたい」「本当に助かったぜ」
そう言ってトルスとバルトは同時にホルドさんと握手する。バルトが左手で、トルスは右手……がっしりと組み交わしている。
その後ろでナナミがバルトの頭を引っ叩いていた。
「お世話になりました……」
ユイも今回はバルトを引っ叩いてくれる役がいたのでしっかりと言えていた。
「本当にありがとうございました」
メガネくんが懇切丁寧にお辞儀をし、お礼を述べる。
そして、全員の視線が俺へ向かう。
うーむ。言いたいことは大概みんな言ってくれたしなぁ~俺は頭の中で言いたいことをある程度纏め口に出そうと思ったがこういう時って長々と喋るよりパッと一言の方がいいよな。うん、絶対にいいに決まっているはずだ……自分にそう言い聞かせる。
本当こういうのに弱い。
「宿代……しっかり稼げるよう精進します!!」
そう、これが最適解。
みんな、笑いをバレないよう抑えていたが全く意味がない。バルトがもう大笑いしていたからな!
ホルドさんも笑顔になる。
「そうね。みんなの活躍楽しみにしてるわん。宿代も期待してるわよ~誰が1番に払ってくれるかしらねん♪」
「それと……」
さっきまでの明る表情から一転。こちらをしっかりと見据え言い放つ。
『このパイオニアをありがとう、お互い頑張りましょん!』
「さ、もう時間でしょほら行きなさいな」
照れ隠しをするように俺達の背中を押し、外へと押し出してくる。俺達はそのままとんでもなく強い押しにされるがまま外に出る。
「頑張って来なさい、辛くなったらいつでも戻って来なさいなその時は雇ってあげるからねん~」
ホルドさんは一変しウィンクをかましこちらをロックオンする。
「本当にありがとうございました」
危険を感じたのでそのまま俺達は出発する。ホルドさんは俺達が見なくなるまでこちらを見ていてくれた。
途中、ナナミとも別れバルトがわんわん泣いてたが無理やりユイが引き剥がしズルズル引きずっている。こっちはこっちで本当困ったものだ。
そして、ついに俺達は学園の門をくぐる。
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