88 / 97
7章 魔導学園 1年生編
87話 午後
しおりを挟む俺は本棟を出て適当な売店で食料を調達して昼ご飯を綺麗な庭を眼前に柔らかい日にあたりながら木の幹に寄り添う形で座っていた。
優勝商品か……
そう、魔導修練際のトップの学園には様々な優勝特典が付く。1つ目がその年卒業の生徒への破格の優遇制度だ。卒業後は帝国の騎士として従事したり冒険者をやったり商人や旅人など生徒それぞれやりたいことは分かれる。例えば帝国騎士ならいきなり上官を任されたりなど優遇されたり冒険者ならいきなり高いランクから商人なら帝国お墨付きとして売り上げの5パーセントを国から支援してもらえたりなど他にも山ほどある。
ただそれも実力がなければ続いていかないのでこれをうまく使っている生徒はかなり少ないと言われている。
そりゃまず優勝して、そのあとの仕事でも成功してとなるとそう甘くはない。
確実なのは他の人達よりは成功する確率が高いということだけだ。
学園側にも当然メリットはあって、学園運営資金の補助が国から支給されさらに先生の給料が上がるとウタゲ先生は豪語していた。主にそれ目的でやる気満々なのだろうがなんにせよやる気があることはいいことだ。
まだまだ他にもあるみたいだが全部が全部毎回確実にあるわけではないので分からないらしいが、これだけ優勝商品が揃えられるとそりゃ嫌でもやる気はでる。
野菜サンドを頬張りながらアイテムボックスに冷えて入っているトマトジュースを取り出しちびちび飲む。
うん……鮮度良好。
俺は昼ごはんを食べ終えてそのまま図書館へ向かう。図書館ではハヤトと待ち合わせしているが時間がまだ余裕があるので先に寮に戻って返したい本を持ってくることにした。
*
「なんだか見るたび来るたびに寂れてないかここ……」
中は綺麗なのに……外観をもっと綺麗にしてここに来やすいようにすれば人は増えるだろうに……
心の中で改善案をいくつか候補に出すが即座に撤回する。そう、ここはこの雰囲気を楽しむ場所だからな。
待ち合わせ時刻より早めに着いたので先に借りていた本を返すことにした。
カウンターに置いてある魔法陣の描かれた開いた本の横にある返却口に本を入れる。
「う……うみゅ……む……」
あれ?この返却口音声機能なんてあったっけ?
という冗談はさておき。カウンターの奥に置いてある見るからに柔らかそうな赤いソファの上で以前出会った少女が気持ち良さそうによだれをソファに垂らしながら昼寝していた。
しばし様子を見ていると真上を向いて寝ていたのだが寝返りを打とうとしてソファの背の部分に顔を埋める。
数秒後息苦しくなったのか大きく回転してソファの背の反対側へ移動するが体の半分がソファからはみ出しそのまま体重を支えきれなくなり顔を下にしてその流れに任せ落下する。
「ふべっ……すー……す……すー」
嘘だろこの状況下で起きないのか……
俺は仕方なくその少女を抱きかかえソファの上に少女を置こうとした時——
「やあアキト久しぶりだね!」
突然現れたハヤトに気づけず少女を抱きかかえたまま静止してしまう。
この姿を見たハヤトも笑顔のまま静止していた。
この状態の何秒かで頭をフル回転して言い訳を考えるがこんなことそうそうあることではないので都合の良い言い訳が思い浮かぶわけでもなく……
「いや、これは……なんだ……なんだっけ?」
「いやいやそれは僕が聞きたいところだよ!アキトがまさかロリ……」
「おい!それ以上は言うな。——断じて違う!」
最後のところを少し低いトーンで言うことで真剣さをアピールしてみたが無駄に終わりそうだ。
ハヤトは冗談だよと言うように肩をすくめ俺と同様に本を返す。
俺はその様子を見てからこの少女をソファの上にそっと慎重に置く。
「で、その子は?」
「名前も知らん……」
「え?」
「いや、本当に」
*
「へぇーそんなことがあったのかー」
あれから俺達はソファのある場所に座りトマトジュースをご馳走しながらあの少女との出会いの経緯を説明していた。
「でも不思議だねこの時間帯何もしてないと教師にいちゃもんつけられるのに」
「ああ、それは俺も思ったんだよ」
それ対策で図書館で一応本を並べてページを開いたり閉じたりしているわけで……
「クラスは黒聖だしアキトはひょっとしたら同じクラスかもしれないよ」
「冗談はやめてくれなんか本当にありそうだから怖い」
「まああの少女のことは一旦置いといて本題に入ろうか」
「そうだな」
俺はトマトジュースを一口、口内に含め喉の渇きを潤し本題に入る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほぉーやっと書類が片付いたわい」
学園長はそう言いながら肩を軽く2、3度叩いている。私は呆れざまに学園長に現実を叩きつける。
「学園長毎年この時期は分かっているとは思っていますが魔導修練際の書類がまだまだたんまりありますので」
「ほっほっほ。少し休憩じゃ」
そう言って学園長はそのまま窓を開け飛び降りる。
「学園長!!」
「ひゃっほーい!!」
まるで子供のようにはしゃぎながら飛び降りていってしまった。まぁ毎度のことなのでもう驚きはしませんが単純に私の仕事量が増えるのでやめて欲しいものです。
学園長の場合窓から飛び降りた場合は何か気になることが発生して仕事を放棄してでもやりたい案件だったっけ?
これは学園長を観察していて分かったことでこのケースは滅多にないので忘れていた。
はぁー何もないといいですが……
学園長が飛び降りて行った開けっ放しの窓に近く。本当に、ここまで何mあると思ってるんですかね学園長は!
高いところが苦手な私はなるべく下を見ないようにして窓を閉める。
魔導修練際……今年はどうなるのやら。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった
夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。
辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた
平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。
それから幾千年。
現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。
そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。
ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。
だが彼自身はまだ知らない。
自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。
竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。
これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる