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85)クリエートの神様
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これくらいで僕は空高くまで舞い上がりそうなくらいになる。
脈あり。好意あり。
美咲ちゃんは僕が好きなのではないの?
「私たち、けっこう似てるかもしれませんよね?」って言葉だけで、僕はそんなふうに受け取りましたよ。
もしかしてさっきから美咲君、君はゆかりちゃんをからかっていたけど。「ゆかりちゃんって監督さんのこと好きなんでしょ」とかって感じで。
実はあれ、本当は美咲君が僕のことを好きだからで、つまり僕への恋情の裏返しでゆかりちゃんをそんなことにしていただけで。
本当は美咲ちゃんも僕が好きなのだ!
美咲ちゃんのファンになってどれくらいの月日が経っただろうか。
僕はアイドルとしての美咲ちゃんが好きで、本当にそれだけで、別に彼女を恋人にしたいとか、付き合いとか、そんな大それたことを願ったことはないのだけど。
いや、本当だよ。嘘じゃない。
だって恋人がいる時点で、もうそれはアイドルじゃないじゃないですか!
たとえその相手が僕自身であっても、それはいけないね。これが僕のフィロソフィーだ。
しかしだ。しかし彼女がどうしてもっていうのならば、僕だってそれに応えないわけにはいかないよって思う。
自分の中の禁則を破っていい。
けっこう僕たちって年齢離れているけど、いいの?
それに僕はモテるタイプではないし、一緒に歩いても君は格好悪い思いをするかもしれないよ。
デートだってどこに行けばいいのかよくわからない。僕なんかと一緒に居ても楽しくないに違いない。
冷静にならずとも、どう考えても僕たちは不釣り合いだ・・・。
美咲ちゃん、こんな僕のどこを好きになってくれたんだよ?
でも、美咲ちゃんは大人しい女子ではなくて、けっこう活発で、頭が良くて、だからこそ随分と年上のほうが合うとかって自覚があって。
それに、もしかしたら僕の才能を認めてくれたのかもしれない。僕の映像クリエーターとしての才を。
だ、駄目だ!
僕は本当に声に出しそうになる。
こんなことじゃいけない! これは最後の悪魔からの誘いだよ。
僕は最後までこの作品の監督として、一切の私情を抜きにして、ただひたすら作品の完成に向かって歩まなければいけないのに。
それなのにここで欲望に負けて、恋情とか欲望に屈してはいけない。
きっと神に見放されてしまうよ! 僕にこの奇跡のような仕事を下さったチャンスの神様。
ここで美咲ちゃんを好きになって、美咲ちゃんに気を遣い、手心を加えて、毒にも薬にもならないぬるい映像を撮ったり、それだけじゃなくて、編集のときも出来るだけ露出の少ない映像を選んだりして、この作品を台無しにしてしまったり。
そう、僕にチャンスを下さったのは、恋愛の神様ではなくて、クリエートの神様だ。
僕は作品作りのために全力を尽くさなければいかない。恋なんてものに目を向けてはいけない。
作品のために頑張る。それ以外の感情は全て邪念。
「さあ、雑談は終わりだよ。撮影は大詰めだ」
「そのセリフ、さっきも聞きました」
「最後まで悔いのないように仕事をしよう」
「はーい」と二人は返事をする。
脈あり。好意あり。
美咲ちゃんは僕が好きなのではないの?
「私たち、けっこう似てるかもしれませんよね?」って言葉だけで、僕はそんなふうに受け取りましたよ。
もしかしてさっきから美咲君、君はゆかりちゃんをからかっていたけど。「ゆかりちゃんって監督さんのこと好きなんでしょ」とかって感じで。
実はあれ、本当は美咲君が僕のことを好きだからで、つまり僕への恋情の裏返しでゆかりちゃんをそんなことにしていただけで。
本当は美咲ちゃんも僕が好きなのだ!
美咲ちゃんのファンになってどれくらいの月日が経っただろうか。
僕はアイドルとしての美咲ちゃんが好きで、本当にそれだけで、別に彼女を恋人にしたいとか、付き合いとか、そんな大それたことを願ったことはないのだけど。
いや、本当だよ。嘘じゃない。
だって恋人がいる時点で、もうそれはアイドルじゃないじゃないですか!
たとえその相手が僕自身であっても、それはいけないね。これが僕のフィロソフィーだ。
しかしだ。しかし彼女がどうしてもっていうのならば、僕だってそれに応えないわけにはいかないよって思う。
自分の中の禁則を破っていい。
けっこう僕たちって年齢離れているけど、いいの?
それに僕はモテるタイプではないし、一緒に歩いても君は格好悪い思いをするかもしれないよ。
デートだってどこに行けばいいのかよくわからない。僕なんかと一緒に居ても楽しくないに違いない。
冷静にならずとも、どう考えても僕たちは不釣り合いだ・・・。
美咲ちゃん、こんな僕のどこを好きになってくれたんだよ?
でも、美咲ちゃんは大人しい女子ではなくて、けっこう活発で、頭が良くて、だからこそ随分と年上のほうが合うとかって自覚があって。
それに、もしかしたら僕の才能を認めてくれたのかもしれない。僕の映像クリエーターとしての才を。
だ、駄目だ!
僕は本当に声に出しそうになる。
こんなことじゃいけない! これは最後の悪魔からの誘いだよ。
僕は最後までこの作品の監督として、一切の私情を抜きにして、ただひたすら作品の完成に向かって歩まなければいけないのに。
それなのにここで欲望に負けて、恋情とか欲望に屈してはいけない。
きっと神に見放されてしまうよ! 僕にこの奇跡のような仕事を下さったチャンスの神様。
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