翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)

jun( ̄▽ ̄)ノ

文字の大きさ
16 / 73

16・ゲーマーへの道、まだまだ厳しく

しおりを挟む

「ん……」

 望が腕組みをした。午後8時30分、机上のモニターを見つめながら、どうすれば順位を上げられるか? どうすればムカつく奴らを見返せるかと、レースゲームについて真剣に考えてみる。
 
 つい先日、ひたすら道路の真ん中を走ればオーケーだろう! と思い、確かにそれは少しの効果があると判明した。だが逆に言えば少ししかなく、望というプレーヤを躍進させるにはつながらなかった。

「真ん中を優雅な魚が泳ぐみたいに走り続ける、これはまちがっていないと思う。だったら何が足りないんだろうか」

 望、マウスをつかみユーチューブに切り替えた。そして他プレーヤーとかうまい奴のプレイ動画を見てみる。するとひとつ気になる事が発生する。

「中ニトロの連打?」

 画面に映る他プレーヤー動画を見ると、車を加速させるためのニトロには3つあって、もっとも威力が弱いけれどすぐに使える「弱ニトロ」と、それなりに加速する「中ニトロ」、そしてニトロゲージはすぐ無くなるけれど爆発のごとくスピードアップする「大ニトロ」と3つある。

 他プレーヤーは中ニトロを連発する。ニトロゲージがちょっとでも上がるとすぐ中ニトロを使う。

「え、これが速くなる秘訣? マジで?」

 早速、ゲーム画面に戻りお気に入りのACRを選択し練習ステージを呼び出した。が、しかし、動画で見たようにバカのごとく中ニトロを連打しても目に見えて早くなるという気はしない。数秒ごとに少しばかりの中ニトロ(ゲージがすぐにはたまらないから)をやって、ビシュン! と音がしても、まるで1cmの背伸びをする程度にしか伸びない。それは必死こいている気の毒な人という感じになっていく。

「え……やっぱりちがうよね、これが答えじゃないよね。確かに他のやつは中ニトロ連発で速く走っていたけれど、でも……やっていたらちがうという気がする。っていうかだんだんイライラしてきた」

 すんげぇフラストレーション! と思った望、ニトロゲージが最大になるまでガマンしてから、爆発の大ニトロを使う。

 ドン! っとナイスな効果音が鳴って車が変身したヒーローみたいに超スピードとなる。その一瞬はオーガズムに匹敵する快感。

「あ、やべぇ!」

 快感にブルっていた望、突然カーブが出てきて焦る。それはどぎついモノではなくゆるいモノであったがヤバいのだ。ニトロの爆走は終わっているが最高速度状態なので、このままでは曲がれずにクラッシュする! と望の命が緊張で冷える。

「あんぅ!」

 反射的に、とっさに、ゲーマーにふさわしい反射神経にて望の手がコントローラーのドリフトボタンを押した。いつもなら慎重に減速してからドリフトをするのだが、ここではそのままドリフト。だがそれが思いもしない発見につながった!

「え?」

 それは目覚めを誘う偶然だった。ハイスピードであったにも関わらず、ドリフト開始の位置がジャストミートだったのだ。それがハンドリング性能の良さと重なったことで、車は減速せずにクイっと……なんとうつくしい泳ぎ! という風にゆるいカーブを曲がった。

「うぉ……曲がれるんだ? ハンドリング性能の良い車なら減速しなくてもジャストミートでこんなきれいに曲がれるんだ? 今まで知らなかったよ、知らなかったよぉ」

 快感、めっちゃ快感、また再びオーガズムに匹敵する快感がこみ上げてきた。皮膚の皮が2枚ほど一気にめくれ新しい自分が出てきたぜ! という気もした。

「うっひょー曲がれるじゃん、今まで減速していたのがバカ丸出しって話じゃん。これ、これだよ、絶対にこれで飛躍的にアップするはずだよ」

 望は髪の毛が逆立つほどに興奮したが、それはムリもないこと。望にはドリフトをかけるジャストミートという感覚が優れていたのだ。ここでドリフト! とか教わる必要がなかった。これに関してはゲーマーらしい天性のモノ。

「さすがにどぎついカーブはムリか……だけど、それ以外ならドリフトをかけるタイミングを間違えなければ減速してからドリフトなんてやらなくてもいいんだ」

 こうなると人は試さずにいられない。人が積極的に命を燃やしたがる最大の理由は、自分の実力を試し、可能なら他者を地獄に蹴落としビクトリーしたいと思うから。

「よし今度こそ、おまえら全員地獄に落としてやるからな」

 他プレーヤーとの競争モードを選び、他の7人が選ばれるのを待つ。その間、望の心臓は早く戦いたいと疼きまくっていた。

「行くぜACR」

 望の声と同時にレースが始まった。偶然にもステージは太くて長い直線が多いステージが選ばれた。つまり全体にとてもゆるいカーブが多く、今の望が望むモノでしかないってこと。

「まず真ん中……真ん中を走るんだ……」

 勝てる……と思うから冷静になれ! と自分に言い聞かせる。だがどうしてかトップのやつはすぐ離れていく。2位のやつもそれを追いかけ離れていく。

「く……いつも思うけれど、あの速さはいったいなんだ……」

 なぜおまえらそんなに速いんだよ! といきなり腹が立ってきた。が、いまの望は5位くらいを安定してキープする。油断するとすぐ6位とか7位に転落するだろうが、そうでなければ4位から3位とかが普通に狙えるかもしれない。

「見ろ、この華麗なるドリフト!」

 吠える望のACRがカーブへ突入するが、減速せずにスーッと入っていくのは才能めいていた。追いかけてくる下位プレーヤーのドリフトと比較すると、望ACRのなめらかさはまぶしいと言ってもいい。

 それまでは減速してからドリフトというムダな事をしていた。だからいま、望の車は先行するモノをしっかり追いかけられそうだと思われた。コーナーに入って曲がっている間、その間は大いなる飛躍! だった。

 しかし……しかし……追いつけない! 3位の車ならもしかして……と、薄い希望が見えなくもないが2位は非常に遠く、1位にいたっては別の世界だ。

「あ!」

 なぜ追いつけないんだ! といら立っていたら、後ろからスーッと追い抜かれてしまう。とりあえず4位! とか思っていたら転落してしまった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 結局、終わってみれば望のACRは5位だった。6位じゃなくてよかったね……とか、ちょっとはマシになったじゃん! ではなく、 やっぱりその程度かよ! という悔しさが望にはげしく襲い掛かる。

「うあぁぁ、ふざけんな、ふざけんな! あいつら絶対イカサマだろう、おかしいんだよ、1+1は3とか言っているくらいおかしいんだよ、クソぉ! おまえら全員死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!」

 望は部屋の中央で実にゲーマーらしく発狂していた。それはゲーマーに必要な熱い心であり、ゲーマーの暴言とはゲーマーのたましいであり生き様なのだ。

「ハァハァ……」

 散々に吠えまくったことで、湧き上がっていたゲーマーらしい殺意は収まった。そしてゲーマーらしい落ち着きを取り戻すと、なぜダメなんだ……と、また考えながら練習を始める。コントローラーを持ち、真剣な面持ちでプレイする

「ん……」

 いま、望は胸の内で思う。ムカつく他プレーヤーというのを見返し1位になりたいと同時にもうひとつ……彼女である佐藤翠名にかっこういい姿を見せたいと。すごいね! と翠名に言われ密かにデレデレしたいと思う望だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...