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40・メンタル潰し攻撃をくらった、望のピンチ! そこに女神さまが登場!
しおりを挟む「ん……5位か……」
午後9時、望の運転する車、グランスポーツがそういう順位に刻まれた。いまは5位は不本意みたいになりつつある望だが、感情が落ち着いているのは数回レースを重ねて3位という数字もけっこう刻んでいたから。
「ん?」
レースが終わるとクラブへの加入がやってきた。これも以前にはなかったことだ。ちょっとうまくなってくるとお誘いが増えてくる。そう、この世はつよい奴ほどモテるのだ、現実の世界もゲームの世界も。
「いらね……」
ここでも望はクラブへ入らなかった。なぜ未加入であり続けるのかといえば、クラブに入るといろいろ縛られるのが見えているから。そして正直にいえば他プレーヤーと仲良くするというのが正直うざいから。
「おれは孤独な戦士として戦うんだ」
つぶやきまた対戦モードのスタートボタンを押す。だが望は気づかなかった。たとえちょっとでも上手くなると、8人でやって3位がけっこう取れるくらいの実力になってくると、理不尽な妬みや注目を招いてしまうって事を。
「いくぜ!」
レースが始まって望が気合を入れた。だが次の瞬間、2台の車が尋常ではない走りをやり始めた。
「なんだ……」
望車の前で2台の赤いフェラリーがありえないほどクネクネ運転をする。それは使っている車のハンドリング性能が悪いとか、ビギナーで運転が下手なのか……ではなかった。明らかに望の視界をふさいでいるのだった。
「なんだよ、おまえらジャマなんだよ……」
前が見づらい、しかもひたすら酔っ払いダンスみたいなクネクネ動きをやられるのだから望の精神が虫歯みたいにぐらつき始める。
「く……」
いま、望の青い車はドリフトのタイミングを少しだがミスった。それは向上中の腕前ですぐにカバーしたが、フェラリー2台はそれでもまだまだ付きまとう。
「くっそぉ、おまえらジャマなんだよ、どけよ変態クソ野郎。なんだよ、おまえらいったい何なんだよ」
望の言葉がゲーマーらしく荒れてきた。なんだ、これはいったいなんだ……と、猛烈な勢いでストレスが上昇し運転の腕前が不安定になっていく。
いま望が直面しているのは性格の悪いプレーヤーがクラブ報酬を得るためにやる、悪の友情テクニックというモノ。1位になれる強者ではなく、上位に入れそうな金の卵辺りを狙い蹴落とす。
「く……いったいおれに何の恨みがあるっていうんだ」
望はストレスに溺れながらぼやくが、ちょっとでもうまくなると……こういううまい奴がいると認識され、だったらそいつぶっ殺さなきゃいけないよなって迷惑な感情を向けられたりもする、それがゲーマーの世界だ。
「もうすぐ危険ゾーンだ……注意しないと……」
このノルウェーというステージには注意する点が数か所あるのだが、避けて通れない上に油断禁物と望が意識する一か所がもうすぐやってくる。それはバカデカい障害物が2つ出現するところだ。少し距離を置いて左と右に置かれる。つまりプレーヤーは車のスピードを落とすことなく障害物の横を通るようにするか、障害物にタイミングよく回転体当たりをかまして強行突破しなければならない。ふつうに障害物に当たった場合はクラッシュしてあの世に導かれる。
「く、こ、こいつら……」
望、反射神経というモノでひとつめは避けた。だが少ししてすぐやってくる2つめ、これには対応ができなかった。
「あぅ……」
望の目が死を見たその瞬間、ドシャ! っとすごい音がした。それはかっこういい青色の車が勢いよく転がり大破する無残な光景。
「ぅ……く……」
本来ならうぁぁぁぁぁぁぁ! と絶叫するところだが、イヤがらせ攻撃をされまくっていたゆえ、怒りは発散でなく内にこもってしまう。
復活した望の車、だが後ろのプレーヤーたちが順調に走っていたので、8人中7位からリスタートとなる。残り15%という事実を思えば、もはや望が挽回して上位に食い込むなど不可能。
「くっそぉ……ふざけやがって……」
怒り心頭の望が立ち上がりかける。だがそのときピロピロっと音がして、他プレーヤーからのメッセージが来て表示された。それはゲーマーの世界が過酷であるという事実を赤らまさに物語るものだった。
―おまえ最近調子に乗りすぎ、死んでろバーカー
―やーい、やーい、ヘタレのへこき((´∀`))ー
この幼稚ながら日本刀みたいな攻撃力を持つメッセージは、望の内情をズバ! っと斬り裂くような威力を発した。
「んぅ!」
つめたい無情なメッセージ、幼稚だからこそ攻撃力は核兵器並み、そんなモノを見ても平然としていられるほど望の人間はできていない。それは排泄物にぎり汚れた手で心臓を掴まれ塗りたくられたようなショックなのだから。
「く……」
望、部屋の床に寝転がると心臓に手を当て苦しそうにハァハァとやる。心を、人としての心がぐにゃっと曲がってしまった。
「ぅ……く……」
まるで重油にまみれ窒息しそうなほどにハァハァやって、もう少しで目から涙が出そうになる。が、しかし……ここで望は踏ん張る。
「そ、そうだ……ゲームの世界はきびしいんだ、こんなのふつうの世界だって知っているんだ。わかっているじゃんか、こういう世界だって」
立て直した、望が復活した。あんなやつらに泣かされてたまるかと気を取り直し、再び対戦という燃え盛る場所に自分の身を投げ込む。
が、しかし……今宵はゲームの神が望に試練を与えると決めているようだ。マッチングが始まってしばらくすると、望は気づかなかったが、先ほどの2人がいたのである。
「よし、行くぞ」
望の青い車が走り出す。しかし次の瞬間、ゾッとするような衝撃が走る。
「なにぃ!」
そう、そうなのだ、先ほどと同じで赤い車がクネクネ走行で望の視界を潰しにかかってきたのだ。
「たとえ視界をふさがれたって……コースの暗記は出来ているんだ。ここは上海、さっきのノルウェーと同じようにはならないぞ」
望の声には自信があった。実際、視界つぶしって攻撃をされながらも安定した速度でがっちり真ん中を走り続ける。いい感じだと思われた、ジャマをされても3位か2位になって、ムカつく野郎に勝利できるという気がした。
しかし、人は正面にてひたすら左右に動くようなモノを見せられると……どうしても脳みそにぐらつきが生じる。見える部分の大半を殺されると、不安、いらつき、それらができるはずの能力を奪っていく。
「あぅ、し、しまった……」
望にしくじりが生じた。手前と奥に右へ曲がる道があるが、望はいつも奥の方を選んでいた。手前の方はカーブがきついので入るか入らないかあらかじめ決めて抜群のタイミングでドリフトせねば失敗する。だがいま、ジャマがきついので冷静な判断ができず、うっかり手前を曲がると変な位置でドリフトをしてしまう。
―ぐしゃー
大破する、転がり回る、むごたらしい光景が画面に映し出される。そして望の車が位置リセットされると順位は8位になっていた。声すら出せない望、いつもならやってられるか! と途中放棄もありえるが、今はただボーッと心を持たないロボットみたいに車を動かすだけだった。
ピピっと、レースが終わるとまたメッセージが来て表示される。それはゲーマーという人種が持つ粘着質な攻撃性そのもの。
―ヘタ過ぎて草、生きていて恥ずかしくないのかよー
―連続クラッシュおめでとうヽ(*´∀`*)ノ
望、イスから立ち上がってフラフラっと数歩進むと、また床にばったりと倒れてしまった。いやだ、もういやだ、生きているのがいやになった、もう死にたい……とか、生きる力を失った者みたいな声が床にこぼれおちる。
「もう……死ぬしかない……いやだよ……こんな世の中で生きていくなんて」
望が左肩を下にし砕かれた心の切なさを声にする。と、そのき、突然に部屋の電気がパッと消えた。
「停電?」
望は反射的にそう思ったが、モニターの電源は入っているから、部屋の電球が切れたのか、踏んだり蹴ったりだと沈む。だがふっと……暗いはずの部屋に妙な明るさが天井に生じたのである。
「ん?」
寝転がっていた望がグッと体を起こして顔を上げると、なんと天井から光り輝く誰かが舞い降りてきたではないか。
(あ、あれ?)
ドキドキする望だったが、舞降りてくる誰かを見てドキッとした。なぜなら光り輝くその人は、ショートレイヤーって髪型でふっくら&むっちりって体型で、そしてふっくら豊満でやわらかそうって巨乳の持ち主。言うなれば中2でFカップっておっぱいを思っている佐藤翠名みたいとしか思えなかったのである。
「望」
「は、はい……」
素直にすぐ返事をしたが、その光……というか翠名としか思えない女神さまの声は翠名に似ている気がした。だから望はますます妙なドキドキ度を高める。
「何を落ち込んでいるの?」
「ぅ……そ、それは……」
「いいのよ、つらい事があったら素直に吐き出しなさい。それは決して恥ずかしい事ではないの。なぜかわかる?」
「な、なぜですか?」
「たいせつなのは歩み続けること、戦い続けること、あきらめないこと。そのためなら弱音を吐いても恥ずかしくない。ほんとうに恥ずかしいのは逃げること」
「ぁ……ぅ」
望、女神さまのやさしい言葉にグッと胸がつまった。だからたったいま直面したひどい出来事を打ち明ける。
「そう、それは大変だったわね」
「あいつら人間のクズだから」
「でも、それが望の生きたいと思う世界なんでしょう?」
「ぅ……」
「望、100の勝負すべてを勝つ必要はない。くやしい思いをしたら、それを価値ある次の勝利につなげればいいの。ほんとうの成功をするためには、ガマンしなきゃいけない時間だってあるの」
そう言った女神さまが両手をクッと広げた。やさしい光に包まれ顔などは見えないが、でも望にとってはほんとうに翠名としか見えない。
「おいで」
女神さまがそう言ったとき、望の心は先ほどのハプニングによる怒りではなく、尊い真っ白って感じで埋められていた。
「望」
女神さまは両腕を動かすと、正面でドキッとした相手をやさしく豊かな胸に抱き寄せていく。
「はんぅ……」
ほんとうに……不思議でしかないがほんとうに……ムニュウっと大きくてやわらかい弾力が望の顔を包み込む。そのやわらかくてやさしいキモチ良さは信じられないレベルだが、そこにこれまた女体のいいニオイというのが伝わりたまらない。あまりにもキモチいいからジタバタすると、ムニュウっと豊満なふくらみに頬擦りをしてしまい、快感が上限知らずに押し上げられてしまう。
「望」
女神さまは豊満でやわらかい胸のふくらみに望の顔をやさしく抱きしめ頭をなで始めた。そしてこう言った。
「わたしが見守っているよ、だから望は安心してがんばり続ければいいんだよ。だいじょうぶ、望ならできるから、できるからね」
望、女神さまの胸にクッと顔を押し付け……そうだ、こんな事でへこたれている場合じゃないとつよいキモチを取り戻す。さすればその瞬間、パッと部屋の電気がついた。そしてあらあら……っと望はよろめく。
「め、女神さま……」
そうつぶやいたが明るい室内には誰もいない。いまのは夢だったのか? と思ったら、いやいや、あの大きくてやわらかいおっぱいのキモチ良さはめちゃくちゃすごかった! と、一瞬キモチがトロっとしかける。
「い、いや、ちゃんと感謝しないと……」
望、デレっとしかけた表情を引き締める。そしてイスに座ってモニターを見つめながらコントローラーをつかみ、ひとつ呼吸してからつぶやく。
「女神さま……ありがとう、おれがんばるから、絶対に負けないから」
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