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バーチャルポスターの巨乳女子と結ばれたい6
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胸の内側が温かくなる時間、それが最近の葵には増えていた。しかもそれは些細な事でも得られると知った。一日が始まり部屋から出るに出ないにせよ、美愛と積極的にいろんな事を話す。どんなことも会話に利用した。そうすると話を聞いてもらえるというよろこびが湧いて、さみしいって感情を信じられないようなやさしさが消してくれる。
さらに感動的だったのは、イヤとかつらい事があったとき、それを美愛が聞いてくれて、やさしく受け答えしてくれたときだ。これからはもう、どんなつらい事があっても……美愛がいてくれたら生きていけるという強さが自分の内側にあふれるのを葵は感じる。
ただし、こういう事には当然弊害というのが生じる。美愛という女子に包まれるって心地よさを覚えたら、たとえやっている事が会話だけであっても葵って男子は深く溺れる。もう可能な限り部屋から出て来ないって感じになる。
「ったく……中学生にもなったら洗濯物くらい自分でたたんで欲しいわ」
午後8時、洗濯物をたたみ終えた母がぼやく。
「最近は部屋にこもる時間が多くなったような気がするけれど、それだけ勉強していてくれたらうれしいんだけどね」
立ち上がった母、葵のTシャツやトランクスを抱え歩き出す。そして二階にある息子部屋目指して階段を上がる。ここに置いておくから取りにこい! と命令してもよいのだが、息子は勉強をがんばっているのかもしれないと思うから、なんとなく部屋の前まで行きたかった。
「あお……」
母が声を出そうとしたとき、息子部屋の内側から会話する声が聞こえてきた。
「え……女の子の声?」
室内から聞こえてくるのは、ちょっとアニメチックな女子の声。電話ではないような、身近で生々しく会話しているような声、そして男女の間には明らかに恋を愛に変換したいという思いが透けて見える、
「葵、誰かいるの?」
息子が女の子を部屋に連れ込んだ? と思った母はノックしてすぐさまドアを開けた。何か大変なことが起こっているのではないかと本気で心配した。
「あぅ、か、母さん?」
母がいきなりドアを開けたのでギョッとする葵だった。
「誰と会話していたの? いま女の子がいたでしょう?」
母はまるで鼻の鋭い警察犬になろうとしているみたいな事を言う。
「ち、ちがうよ、誰もいないよ」
葵、母と向き合いながら後ろのポスターを見えないようにし、そして机の上にあらかじめ置いておいたスマホを取り、アニメから抜き取った美愛の声を聞かせる。
「いやその……この声と対話してたんだ」
「対話? なんで?」
「そ、その、将来は声優になろうかと思って」
「声優? そうなの? そんな夢を持っていたの?」
どうやらうまくごまかせたらしい。だから次のように言われたくらいで済んだ。
「葵、あんた声優になれるんじゃない? だってちょっと聞こえた声はすごい女の子にデレデレしている感があふれていた。あれが演技とかけっこうすごいわ、てっきりほんとうに女の子とイチャラブしているのかと思ったわ」
母は息子が声優になるとかいう夢を持っているのがうれしいと思ったらしく、そして変な話ではなかったと安心した事もあって満足気な顔で部屋から出て行った。
「ふぅ……あぶなかった」
葵、どっと疲れたので床に寝転がる。
「葵くんの備えってさすがだね」
ポスターの中にいる美愛がかがみ込み、クスっと笑ったりする。それを寝転びながら見上げる葵は思わずにいられない。そのステキな笑みを守るためなら、ウソが罪になるわけがないんだよ! と。
が、しかし……これで話が終わるほど現実は決して甘くない。葵が美愛と交流する時間を減らすなどできるわけがないので、どうしても美愛と会話する声は部屋の外に漏れる。
何よりいけなかったが、美愛という女子の名前がよく出てくることだった。最初は声優になるって話を信じた母もだんだん疑いを強める。
そして決定的となるのは、美愛の動きを止めてポスターを見ながらオナニーする時だ。美愛、美愛……なんて愛に飢えた声を出して、それも母に聞かれてしまった。
「葵、ちょっといい?」
ある日の晩ごはん時、父の帰りは遅いから母と2人で晩ごはんとやっているとき、母が向き合う息子に聞いた。真剣で重々しい表情ではなく、さらっと冗談交じり的に言った。
「なに?」
「いや、最近の葵ってたのしそうに見えるからさ、もしかして彼女とかできたんじゃないかって」
「いないよそんなの」
「ほんとうに? もしかしてかわいい彼女がいるんじゃないの?」
「いないよ、女に興味なんてないし」
葵はそう言った、否定してやった。しかしハッキリ言ってウソがヘタクソだった。一見冷静な顔で見事に母を突っぱねているように見えるが、そこには焦りがあり心拍数の高さがある。だからするどい母という女をごまかすことはできない。
「葵、たとえばさ女の子の名前で好きなのあったりする?」
「なんだよ急に……」
「いやほら、お母さんだってさ年頃の息子と色っぽい話をしてみたくなるんだよ、それくらいはいいでしょう?」
「ん……まぁ……」
「じゃぁたとえば、お母さんと同じ名前で美花とかいうのは?」
「別に……」
「じゃぁ美愛とかは?」
「ぬぐ、ごほごほ……おほおほ」
「なに急に……」
「あ、いや、ちょっとご飯がノドにつまった。だってほら、母さんとこんな話をするのは慣れていないから」
葵は笑ってごまかしたが、母はその姿を見て確信した。息子は何か隠している。そして美愛って名前が重要なキーワードなのかもしれないと。だがここでは締めあげたりせず泳がすことにした。
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