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優子暗殺計画 4

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 優子暗殺計画 4


「早く一発撃ってみたいよぉ!」

 本日の川瀬理恵は午後の4時頃、自室にて悶々としていた。

「撃ちたい、撃ちたい、撃ってみたい!」

 ベッドに腰かけ両手で頭を抱え、凶悪なる誘惑と格闘する。いったい何事かといえば、所有するバズーカーを撃ってみたい衝動に襲われているってことだった。

「暗殺予定日は今日じゃないけど……あぁもう思いっきりぶっ飛んでみたい!」

 危なっかしい衝動に悶える理恵だった。ただいまは夕方が見えてくる頃。この時間帯というのは当然だが目立つ。ビルの屋上からバズーカーをぶっ放すには適さない。やるのであれば、夜もしくは平和ボケしまくりな午前中がよろしい。

「わかっているけど……撃ってみたい……」

 理恵はだだっ子みたいに悶えた。何かの弾みでスイッチが押されてしまい、破壊欲がビリビリ刺激される。これは大変に粘着性のある誘惑だ。そこで理恵は妥協という2文字に負かされてしまう。

 購入したのはバズーカーと弾丸2発。重要なのは弾丸の数だ。2発撃ち込めばスゴい事になるだろうと思っての事だった。されども今は、こんな風に考えてしまう。

「ま、まぁ……一発でもいいんじゃないかぁ……一発は試し撃ちに使ってもいいんじゃないかなぁ」

 ジワジワっと胸に迫ってくる妥協。まだ金があるから使ってもだいじょうぶ! って、ギャンブル中毒者みたいな思考に脳が塗り替えられていく。

「よし、決めた。いきなり本番はよくない。やっぱり練習は大切だもんね」

 川瀬理恵が立つ。一度決めたらやるのが女! と意気込み、家を出て自転車にまたがった。黒いカゴには小さなバッグが入っているが、そこには小さくしてあるバズカーと弾丸一発が入れてある。表向きは女の子の持ち物で、中身は一撃必殺のおそろしいアイテムという次第。

「うっしゃぁ!」

 Dカップの胸にうずまくいけない興奮。人の道に外れるって罪の意識が、子どもっぽい刺激に覆われていた。危険なモノほど人の好奇心を突く。今の理恵も例外ではないから、グングン勢い任せに自転車を加速させていた。

「まずは小腹埋めの食料が必要かな」

 ギュイーンとタイヤへ負担をかけるようにブレーキング。とあるコンビニの前に愛車を止めると、中に入ってチョコレートとミニスナック、500mlのペットボトルジュースなどを買った。この購入にはちゃんとした理由がある。

 ビルの屋上へ行くためにはビルへ入らないといけない。でも夜になってからビルに入るというのは、その姿を見られると昼間よりヤバい。小学生が何してんだ? と補導される可能性大。もうちょい言うなら、ビルがある周辺の夜はちょい物騒でもある。よって夕方からビルに侵入し屋上へたどり着いておく。夜になって暗さが世界を覆った時、屋上から一発放つという段取り。

(よし……いないね)

 バッグに買い物袋を持った理恵、周囲に人目がない事を確認してから、お目当てのビルにサッと入る。それからすぐ階段を上がっていき屋上へ続くドアの前に立つ。

 ここのビルは屋上へ行けないようにドアにカギをかけていた。それで一安心と思うので、理恵がピッキングしたなんて気づいてない。このドアが開くなんて誰も想像すらしない。だからドアノブを回すと、当たり前のように屋上へたどり着けてしまう。

「うぅ~ん、屋上から見る夕焼けっていいなぁ」

 くぅーっと背伸びをし、でっかい薄暮って絵を目にする。ちょっとした神話気取りな空間に感じられた。いいねぇ……とつぶやき腰を下ろすと、夜って世界が広がるまで休憩とする。

「優子が消えれば……どう考えてもわたしの天下だよ。日本でナンバーワンの魅力的な巨乳女子、小6でDカップって希少価値、それがこのわたし川瀬理恵。周りから天然記念物みたいにチヤホヤされて将来は約束される。お金に困ることはないし、何をやるって夢も叶え放題。大人になったらいいところで結婚して、子どもは3人くらい作って、あとはシアワセと一緒に余生を過ごすだけ。うふふ、想像するだけでブルっちゃうね。いかにもわたしに似合うストーリーって感じだね」

 あーははははは! と余裕にゆとりを持って妄想。見た目はかわいい巨乳女子だが、中身は真っ黒なダークエンジェル。そんな理恵が愉快な想像をしまくる。そうやって時間は流れていった。きれいなオレンジ色だった世界が、ゆっくり死んで夜が到来する。

ーそうして午後8時ごろー

 暗い空をとぶ戦闘機があった。カエルーノ部隊の見回り機である。世界を守るために日々活動していると言えば立派だが、活動の動機として大きいのは優子を守るためだった。リーダーであるカエルーノがそういう思いを抱いている。

 ちょっと前に白い大蛇が優子を狙ったことがある(9~12話を参照) いつなんどき優子に大変な事が降りかからないか、そう思うから広いエリアを見回りさせているのだ。

「あ、あ、こちら303号。これといった異常なし」

 キュィーンと戦闘機を飛ばす303号は、あと1時間くらい見回ったら交代かぁと思い、色白美人な月がもたらす輝きを詩人気取りで楽しむ。

 そしてまさにこの頃、とあるビルの屋上にいた川瀬理恵が立つ! バズーカーに弾丸をセットすると、夜風が最高にキモチいい縁で構える。

 ピーピー! と小さな音を鳴らしながら、暗視スコープを見て確認。優子のいる学校方面へ合わせると、そのまま画面を拡大。

「おぉ……こんなに離れていても、学校が見えてきた。すご! 6年1組の窓ガラスに室内まで見える。これってカンペキ。撃ち込んだら全滅って感じかな」

 くふふ♪ と笑いながら発射しようとしたが……ここで賢者の意識がストップをかけた。

「あ、そうだ……いま教室を破壊したら計画が失敗してしまう!」

 ハッとたいせつな事に気づいてしまった。今ここで教室を破壊したら、当然大騒ぎになる。優子を含む生徒は6年1組以外のどこかに移動してしまう。教室に弾丸を撃ち込むのなら、優子の抹殺も同時でなければいけないって事。

「こ、ここまで来たら撃ちたい……何か他のところは……」

 学校方面で何かターゲットになるものは? と探してみるのだが、イライラして時間だけが過ぎていく。そこで何も考えずテキトーに選んでみることにした。

「そうだね、××公園の便所でも破壊してみよう」」

 グッとかまえる理恵、ピーピーと音を鳴らしながらロックオン設定に入る。狙うは××公園にある汚い公衆便所。あんなの壊したところで誰も困らないでしょう? と勝手に思いセット完了。

ーどっくん・どっくん・どっくんー

 不謹慎な心臓の高鳴り、それを持ってついに理恵が一発放った。

ードーンー

 日常生活では無縁のデカイ音が鳴る。それと同時にデカくてまぶしい光が外に出る。それはもう美しくておそろしいモノだった。暗い夜を切り裂く悪魔の光であり、○○小学校方面へとうなりながら飛んでいく。

「うん?」

 巡回中のカエル303号が異変に気づいた。

「なんだ、何が来るんだ?」

 ぎゅわーっと猛スピードで近づいてくる高熱源体、その正体が分からない303号はどのような行動を取ればいいのかと悩む。だが取るべきアクション一つしかない。

「く!」

 慌てて戦闘機を一回転させる。そうすると猛スピードの何かが間近を通り抜けていく。それは夜の暗さを引き裂くまぶしい光。それを見て303号はカエルーノに連絡を入れた。

「いますごい勢いで高熱源体が通り過ぎていきました。どうやら○○小学校方面に向かっている模様」

 その報告を耳にしたカエルーノがちょっと不安を覚えた。○○小学校と言えば優子が通うところだ。即座に心配になったので303号に問い返す。

「高熱源体とはどの程度のモノだった?」

「よくはわかりませんが……もしかするとミサイル弾かもしれません」

「なにぃ! それが○○小学校方面に放たれたというのか! 303号、どこで放たれたか探るんだ。なんでもいい、何かわかったすぐ報告を」

「了解しました!」

 303号の戦闘機が方向を変えた。謎の高熱源体が公園に到着し、きたない公衆便所を撃破したとかいうのは後回し。光の離れた方へと機体を進めた。

「この高さを横切ったというのは……高いところから放ったということだ。ビルか? ビルの屋上から撃ったということかもしれない」

 303号はコクピット画面をサーチモードライトに切り替える。そうやって赤い熱反応が浮かんでいる場所を探した。

「うん?」

 ひとつ温度の高い反応がある。そこまで降下しようかと思ったが、カメラをズームして見ることにした。するとどうだろう、暗いビルの上に誰かが立っている。

「女……女の子というべきか……」

 そういう存在がひとり、満足気に喜んでいる。そうして足元には熱が下がっている最中のモノが一つ。それは明らかにデカいわけで、ピストルなんて代物ではない。

「こちら303号、ビルの上に立つあやしい存在を発見しました」

 彼はカエルーノに報告をした。

「あやしい? それはどんなやつだ?」

「見取れる限りでは少女かと、あと放ったのはおそらくバズーカーではないかと思われます」

「少女? バズーカー? なんか特徴は?」

「特徴……多分小学生の高学年です。中野優子と同じくらいかもしれません。それとなく巨乳に見えますが、中野優子にはちょっと負けているって感じでしょうか」

「なに!?」

 カエルーノの頭がピーン! と音を立てた。303号から伝えられる情報で何がわかったのか? といえば、ひとつの可能性を読み取ったのである。

ーカエルーノの推測。もしかするとバズーカーを放った女子というのは、優子の巨乳に嫉妬する者かもしれない。その妬みから優子を攻撃しようとしたのではないか? こんな時間に一発放ったのはリハーサルであり、明日か近日中の午前に、学校へ向かって攻撃するのかもしれないー

「303号、○○小学校をリターンバリアで包んでおけ」

「リターンバリアを? 何時間設定で?」

「何か問題が起こるとすれば午前か昼間だ、だからとりあえず、明日の今時刻まで有効設定にしておいてくれ。強度および反射能力はフルマックスで頼む。優子さんに何かが起こるなどあってはならないのだから」

「了解!」

 カエルたちがそんな会話をしているとは想像もできない理恵、これは非常に楽しみだなぁと帰り支度を整えた。

「えっと明日は14日か……じゅうし……重死……ジューシーに優子が重死……わぉ! めっちゃステキじゃん。決めた! 明日の14日に決行する。中野優子のEカップは滅び、わたしのDカップが女神として伝説となる。うん、それでこそ物語が弾むってものよ」

 そんなおそろしい事をつぶやく理恵だった。かわいい顔に悪魔っぽいオーラを纏い、学校に何かがセットされているとは知る由もなく、ひとまずはビルの屋上を後にした。 
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