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惑星オッパイダーに行きますか?4

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 惑星オッパイダーに行きますか?4


 真治はほんとうに地球から出て惑星オッパイダーに行ってしまうのか? 優子は朝からずーっと考え悩んだ。

―真治が地球から出ていくつもりだよー

 こんな事を朝の席で両親に言おうと思った。しかし惑星オッパイダーとか行っても親が信じるわけがない。それどころか「またくだらないマンガでも見ているんでしょう?」 と突っ込まれるのがオチ。

(行くわけない……と思うけど、行きそうな気もする……)

 ずーっとずーっとそんな事を考えていたら、あっという間に学校が終わった。まるでウソみたいな時間の流れ方だった。

 優子は友人たちの誘いを断って、ひとり裏山を歩いてためいきをくり返す。そうしてひと目の少ない場所で木を背にしたら、ドーン! っと沈むように腰を下ろす。

「惑星オッパイダーか……そういう星へ行くのが真治にとってのシアワセなのかな? だったら気持ちよく送り出すべきなのかな」

 そんな風に考えてはみたが、やはり納得できない。地球にいたってシアワセはつかめるだろう! そうするべきだろう! と言いたくなるわけで、ぐわーっと上がってきた勢いを思いっきり声に出す。

「あぁぁぁぁまったくもう!」

 むしゃくしゃの大爆発! というくらい声を出したら、ふっと聞き慣れた声を耳にする。

「優子さん、どうしました?」

 そう、そこにいるのはカエルーノだ。ほんとうはヒマだから散歩していたのだが、大切なパトロール中とかかっこういい事を言う。

「カエルーノか……」

 座っている優子の顔はとてもそっけない。二本足で歩く王子さまカエルなんぞに興味はない。とにかく今は弟の事で胸がいっぱい。

 一方のカエルーノ、優子に元気がないのでちょっと邪な考えを抱く。もしかして優子さんは悩んだりしている? 相談にのったり話を聞いたりすれば、それで印象がアップすれば……むふふ! みたいな展開が起こるかも! なんて多くの男子がふつうに思うような事を思う。

「優子さん、わたしでよければ話を聞きますよ」

「いいよべつに……」

「ダメです、優子さんみたいなステキな女の子に元気がないのは一大事です。優子さんの笑顔は太陽の次にたいせつなモノなんですから」

 カエルーノはそう言って優子の顔を見る。じゃぁ横に座ってとか言われたら、優子のハートに近づけた! なんてひとり勝手に喜ぶ。だからだろう、ついうっかりアッと躓いてしまう。

「あぅっち!」

 ドテ! っと転んだカエルーノ、そこには座っている優子のひざがあった。それはチェック柄ロングスカートに覆われているが、むっちり感やぬくもりをたっぷり伝えてくれる。

(おぉ……な、なんてキモチいいんだ! さ、さすが優子さんの膝枕!)

 あったかくてやわらかくていいキモチ! と、カエルーノは倒れた瞬間にホワーっとシアワセにおぼれた。

(ま、待てよ……も、もしかしてこれは……)

 焼けるぜハート! なんて感じで、カエルーノは顔を上に動かす。するとそこには思った通り、ボワン! と豊かでやわらかいTシャツのふくらみ具合がある。

(膝枕をしてもらいながら見つめられるなんて、シアワセ特急便って感じだ!))

 カエルーノはたまらない豊かさに見入るつもりだった。でもそんな事を優子が許すわけがない。

「むぅ! いつまで膝の上に寝転がってるの!」

 怒った優子がカエルーノをひざから退かす。

「し、失礼しました」

 残念……なんて思いは表に出さず、ひとまず優子の横に座って話を聞くカエルーノだった。

「わ、惑星オッパイダー? 真治くんがそこに?」

「連れて行かれそうなんだよ……たいせつな弟を奪われそうなんだよ」

「それはまた……」

 なんとなく空を見上げたカエルーノは思った。この広い宇宙にはイカした星があるものだなぁなどと。

「ねぇ、カエルーノ」

「な、なんでしょうか」

「あんたもかなりのおっぱい星人だよね? 巨乳って聞くだけでコロっとひっくり返るタイプだよね?」

「そ、それは……」

「じゃぁカエルーノもオッパイダーに行きたい? 誘われたらホイホイってついていく? そうでもしないとシアワセになれないと思っちゃう?」

 そんな風につぶやいた優子の表情はちょっとせつない色だった。Eカップとか89cmってふくらみの内側に、やるせないキモチが渦巻いているって見て取れる。それはカエルーノにしてみれば、ズキュン! とかバキューン! とかいうたぐいのモノ。この世に存在する唯一無二の萌えとしか思えない。

「優子さん、わたしは……わたしは……シアワセは地球でも得られると信じます。そうして希望を捨てず前向きに生きていきたいと思います。惑星オッパイダーなんて聞かされても関係ありません。地球で生まれたからには地球でシアワセを掴み取る。それが、それこそが……地球に生まれたモノの成すべきことだと思っていますよ」

 カエルーノが言い終えると、まるでバッチグーな演出って風が吹く。それに前髪を撫でられた優子がちょっとばかり顔を赤くしセリフを出す。

「カエルーノってたまに格好いい。いまのセリフ真治にも聞かせたい」

 そんなのを見るとカエルーノはボーッと焼け石のように熱くなる。そうして心の中で思うのだった。決まった、今のはめっちゃばり決まった! 優子さんのハートをゲットする日は近い! などと。

「わかりました優子さん、わたしが真治くんを救出しましょう」

「ほんとうに?」

「そのふざけた婦人警官はわたしが撃退してやりますよ」

「いいの? どうしてそんなに親切にしてくれるの?」

 優子に見つめられしカエルーノ、ここは下心がバレないように注意! としながら返す。

「わたしは困っている人を放ってはおけません。真治くんにも教えてあげたいのです、惑星オッパイダーだけがすべてじゃないって」

 ここでカエルーノは意図してセリフを一時停止。立ち上がりこの場を去らんと少し歩いてから、振り向かずに優子へ言う。

「優子さん、あなたに落ち込んだ顔は似合わない。あなたが笑顔を忘れそうっていうなら、このカエルーノが取り戻します。そうですよ、ステキな笑顔を守りたいって、それだけで戦う理由としては十分でしょう?」

 そう言ってから歩き出し、優子のいない場所までたどり着くと、片腕を天に突き上げジャンプ!
「決まった! 今のはウルトラ級に決まった! 優子さんがわたしにホレてしまうって日は近いかもしれないな。よし! 何が何でも真治くんを助けよう。そうして優子さんのハートをさらにつよく手繰り寄せるのだ」
 
 いぇい! と大いに盛り上がるカエルーノだった。そして時を同じくして中野家では真治が机に向かっていた。

「えっと……」

 何やらとても真剣に机上を見つめている。手にはシャーペンを持っているから熱心な勉強と見える。でも実際のところは別れの手紙を執筆中。

 真治は惑星オッパイダーに行き、そこで巨乳な彼女をこしらえシアワセになるんだと決めてしまった。そのためには両親も姉も友人も地球も捨てるつもりだ。涙を飲んでユメを現実に変換させようというのだった。

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、今までお世話になりました。ぼくは惑星オッパイダーに行きます。もう帰ってこないと思いますが、ぼくはだいじょうぶです。必ず、必ずシアワセになってみせます。だからお父さんもお母さんもお姉ちゃんも、みんな地球でシアワセになってください。今までほんとうにありがとうございました」

 書きながら時々ティッシュでチーン! とやる。感情が高ぶったらしく目に涙を浮かべてもいる。でもそれでも真治は惑星オッパイダーを選ぶ。

「シアワセは……行動力で勝ち取らなきゃいけないんだ」

 つぶやく少年はもう準備が出来ていた。実のところ本日はものすごく早い時間に起きて、着替えなどの荷物を裏山のある場所に隠しておいた。こうすれば手ブラで家を出られる。家族に怪しまれたり引き止められる事はなくなる。

「真治より……」

 少年が手紙を書き終えた。それを机の引き出しに入れると、おちつかない様子で部屋をウロウロし始める。もうちょい、もうちょい、もうちょい! と小さな声を出し続ける。真治が地球に別れを告げるって時間は、もうすぐそこまで迫っている。
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