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第十八・大変だぞ3日後、悠は誰を選ぶのか
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第十八・大変だぞ3日後、悠は誰を選ぶのか
「ありがとうございました」
今日、悠はドラゴンのシッポを町で売りさばきお金を手にする。着々と貯金は進んでいると思ったら、近い内にスフレと同じような2階建てコンテナハウスを作れるかもとキモチが浮く。スフレの世話になりっぱなしではなく、自分も自分のお城でマイライフを構築したいと考える。
「しかし……」
町を散歩のつもりで歩きながら、あっちこっちからけっこうな目線が来ると意識せざるを得ない。町にいるのは女性ばっかりという事実はとっくに知っているし、女じゃない? という奇妙な目で見られるのもお約束。しかしジョーカーとの戦いが終わってからというもの、以前にも増して向かってくる目線が増えたように感じる。しかも女子が男子に胸をときめかせるような感じに思うので、奇妙かつテレくさいキモチが胸にジワーっと沸いてしまう。
「これがモテる男の苦悩とかいうのかな」
ひとりつぶやき、エヘっと笑ったりした。前世では妄想でしかなかった感覚に対し、これは決して悪くないぞ! と思い、ちょっと邪念交じりそうな心を落ち着かせるために走ろうと思う悠だった。
「ただいま!」
ランニングだのついでの軽いトレーニングだのを終えて悠が帰宅。するとお客さんが来ているというにぎやかさがドアを開けた瞬間に伝わってきた。
「パネトーネたちか」
今宵はみんなで夕飯しておしゃべりの花が咲くとか思った悠が手洗いとうがいを済ませれば、悠! と呼ぶ声。それはパネトーネの声だったが、早く! という誘い音色。しかも重要な内容だから早く! という感じいっぱい。
「ただいまって、オールスター勢ぞろい」
晩ごはんだと思ってテーブルにたどり着くと、そこにはスフレにパネトーネにクラフティにカッサータまでいて悠を入れて5人という華やかさ。しかし思いのほかにぎやかさがない。
「おかえり、とりあえず座って」
スフレに言われた悠、空いているイスに腰かけ緊張する。お腹が減ったとは思うが、まるで家庭裁判でもやるようなフンイキでは食欲にブレーキがかけられてしまう。
「で、誰から言うの?」
そう言ったパネトーネがさっそくつぶやき他女子に目をやる。
「え、なに、なんか大変な事でもあったの?」
グラスに入ったお茶を飲みながら悠が内心ドキドキしていると、クラフティがこの場の事情というのを説明し始めた。ここにいる全員、それぞれ悠に言いたい事ががあってここへ来た。各々自分が言いたい事を言うためだけにやってきたのだが、他の女子もみんな悠に言いたい事があるらしいから、いったいなんだ? と警戒するようなフンイキになってしまったとの事。
(え、べつに何も悪い事はしていない……)
先生に怒られるような話はどこにもないぞ? と生徒が思うような事を胸の内でつぶやく悠は落ち着けなくなっていく。
「ほらスフレ、あんたから言いなさいよ。あんたこの面々では一番地味なんだから」
パネトーネが相変わらず的に言うと、スフレは意外にもさっくり認めうなずき、顔をあ隠しながら悠に切り出した。
「3日後にお母さんが来るんだ。来て欲しいって言ったんだよ」
「お、お母さん?」
「だね。それはその……悠を紹介しようと思って」
「そ、そうなんだ?」
「いや、ほら……わたしと悠の関係を認めてもらおうかなぁとか思って」
「え?」
突然ドキッとさせられた悠だったが、ここでパネトーネが両手をテーブルにつけ立ち上がり、だまっていられないと声を出す。
「こらスフレ、あんた控えめっぽいくせして何大胆なことをしてんのよ」
「い、いいでしょう別に」
「よくない、よくない、お母さんに応援してもらって悠と結ばれようってあざとい感じがゴミのニオイみたいにプンプン漂ってるじゃん。それに3日後はわたしだって悠にたいせつな用事があるんだよ」
「何があると?」
「3日後はわたしの姉たちが来るように頼んであるの。わたしと悠が親しい関係にあるという物語を報告しなきゃいけないの。だからわたし優先、スフレのお母さんはまた日を改めるって事にしてよ」
「いや、パネトーネだってあざといじゃんか」
「なんですって!」
2人がギャーギャー言い争いに発展しかけると、ここでクラフティが顔を赤らめながら立ち上がりおほん! と咳払い。周りが静かになって目線を向けると、すぐさま自分の言いたい事を口の外に出す。
「3日後はダメだ。なぜなら3日後はわたしの妹たちが来る。悠とわたしの関係を報告するため。当然この話が優先されるべきだから、パネトーネもスフレも4日後とか5日後にして欲しい」
クラフティはここで赤い顔を優に向け、3日後によろしくと言う。しかし当然パネトーネはだまっていない。
「うわぁ、マジメそうな顔してゲス」
「お、おまえだってゲスだろう」
「わたしは姉を呼ぶんだよ? でもクラフティは妹を呼ぶ」
「何がどうちがうというんだ」
「年上って姉のくせに妹を利用する。その方がゲス。かわいそうな妹たち、ゲスな姉に利用されるなんてたまったもんじゃないね」
「なんだと!」
さっきより場のにぎやかさがアップ。悠としてはその間に割って入るのがやりにくい。かといって自分だけ知らん顔して夕飯を食べるとかいうこともできない。なんともやりづらい感じにまいってしまう。カッサータ? と、ひとりだまっている者に目を向ける。もしよかったら助けてくれませんか? と目線にヘルプってキモチを込める。
「うむ!」
悠の心が伝わったのかカッサータが声を出して立ち上がる。お! と思った悠はてっきり場の鎮静化をしてくれるのだとホッとした。でも実際にはそうではなく、とんでもない内容だった。パネトーネとクラフティとスフレの3人を落ち着かせてから、カッサータはしゃべりだす。
「この状況……誰が一番悪いか、誰に問題があるか、それは言うまでもなく悠。だから悠は3日後にすべての話につき合うはもちろん、誠実な態度というか心を示す必要がある。いや、そうした方がいいぞ悠、そうでないと危険だぞ?」
「き、危険?」
「町の女たちに言いふらしてやったからな」
「な、なにを?」
「悠という男は女の心と体の双方にキモチいいと快感を与えるのがうまいやつと言いふらした。だから町の女たちはエロい妄想をしている」
「ちょ、ちょっと……」
「誰かを選んでつき合えば町の女はあきらめると思うが、そうでなければ町の女は悠とセックスしたいって欲望を行動に移すかもしれないぞ?」
「えぇ……なんでそんな事……」
「なんで? 決まっている。悠が困っている姿を見てみたいからだ」
「あぁ……」
思わずテーブルにうつ伏せとかいうカタチをかましたくなった。だがここで家のインターホンが鳴ったので、息抜きしたいとばかりすぐ立ち上がる悠だった。
「ぼくが出るよ」
ほんのひとときでも息苦しい場所から逃げたかったゆえ、誰もいない玄関へ向かっていくと救われるように感じた。そして悠はハーイ! と返事をしてドアを開け、そこにいる者と対面。
「え……」
そこにいたのはショートヘアが似合う若くてステキな美人。牡丹色の着物にふっくらな胸のふくらみ具合がとろけるような魅惑を浮かべている。
「ちょっとだけ久しぶりだな」
「じょ、ジョーカー?」
「そうだ、今日は話があってきた」
「え、でもジョーカーって……もっと年寄りのはず」
「実年齢はな。だが悠と戦ってから変化が出た。なぜかエネルギーを消費をせずともこの姿でいられる。しかもあれだ、どうしてかブサイクな感じでしかなかった角も消えた。おまけに肌も体もすべてがみずみずしい。なぜだ? 悠、おまえ……わたしにどんな魔法をかけたというのだ?」
ジョーカーのきれいでやわらかい手がドキッとする悠の頬に当てられる。そうしてにっこり微笑むたまらない顔が接近してくると、なんともいいニオイがふわっと伝わり悠を夢心地に誘いかける。
「うん? 客人がいるのか?」
「ドラゴン女子たちが数人……」
「パネトーネにクラフティか、いいだろう。ではそこでわたしの話というのをしよう」
言ったジョーカーはスーッと手を悠から離し、4人の女子がいる場所へと足を運ぶ。そして全員をイスに座らせると、自分は悠の真後ろに立ち、ドキドキしている男子の両肩に両手を置き口にした。
「3日後、悠と話をさせてもらう。そこにはわたしの娘たちも参加するよう声をかけてある。つまりだな、わたしは大人の女として悠と愛し合いたいわけであり、正々堂々とやるために娘たちに報告する」
これには一同びっくり仰天。たまらずパネトーネは言った、ジョーカーが一番あざとい気がすると。クラフティは困惑した顔で続けて言う、ジョーカーのイメージが崩れるような事はしないで欲しいですと。スフレはなんと言っていいかわからず声が出ない。
「いやいや違うぞ、パネトーネにクラフティ、そしてそこの人間女子、たしかスフレだったか? おまえたちに対するわたしの親心だ」
「ジョーカー、このクラフティ、あなたの言っている意味がわかりません」
「つまりだな、おまえたち子どもに男はまだ早い。だから男におぼれると色々失敗するだろう。だからわたしが悠を引き受ける。カッサータ、こういう事ならおまえもわたしの味方をしてくれるだろう?」
言われたカッサータ、予想していなかった展開に顔を赤くして言葉をつまらせる。ジョーカーと悠が結ばれるなんて、そんなことがあってもいいのか! と言いた気でありながら、尊敬するジョーカーに物言いはしづらいと悩む感が生々しい。
「それに悠……」
「な、なにか?」
「悠だって……大人の女がいいのではないか? 自分で言うのはテレくさいが、この中ではわたしが一番包容力があるぞ?」
つぶやきクスっと笑うジョーカー、ほんのちょっと前かがみになったら、クイっと悠の後頭部を胸のふくらみって豊満部分に抱き寄せ、ついでに顔を悠の耳元に近づけ甘くていいニオイをプレゼント。
「ぼ、ぼくちょっと食事前の散歩でもしてくる」
たまらず悠が立ち上がる。するとパネトーネがわたしも行くと言いかけたが、ジョーカーは左手の平を立てて制止。悠は外に逃がしてやり、ここは女同士で大事な話をしようと言ってイスにお尻を落とす。
「女はあざといモノだ。仕方ない、そういう風に出来ているのだからな。しかし全員が身内を連れてひと固まりになってもまともに話などできるわけがない。そこでだ、3日後はどういう風に進めるか、つまり誰が何時にどれだけ悠と会話をするかスケジュールを立てよう。ここでは悠の事情は関係ない。この世は女が優先だからな、悠は決まったスケジュールにしたがってもらうだけ」
ジョーカーのこの提案を他女子はイヤだなぁと思った。しかしいずれも、一番おとなしい性格であろうスフレでさえ、自分の話が犠牲にされるのは絶対受け入れられないから、何時にどれだけ会話するという全員の話し合いに参加するは当然の事。
一方の悠、家を出たらけっこう暗くなっている外を走り始めた。お腹が減ったとかいう基本要求は鳴りを潜め、3日後にどうしたらいいんだ! という緊張で胸いっぱい、お腹いっぱい、頭もいっぱい。
「あぁ、ぼくどうしたらいいんだろう」
これまでまったくの非モテだった悠、圧倒的にモテるという男の悩みに直面。いったいどうしたらいいんだよぉ! と夜空に大きな声で叫んだりするのだった。
「ありがとうございました」
今日、悠はドラゴンのシッポを町で売りさばきお金を手にする。着々と貯金は進んでいると思ったら、近い内にスフレと同じような2階建てコンテナハウスを作れるかもとキモチが浮く。スフレの世話になりっぱなしではなく、自分も自分のお城でマイライフを構築したいと考える。
「しかし……」
町を散歩のつもりで歩きながら、あっちこっちからけっこうな目線が来ると意識せざるを得ない。町にいるのは女性ばっかりという事実はとっくに知っているし、女じゃない? という奇妙な目で見られるのもお約束。しかしジョーカーとの戦いが終わってからというもの、以前にも増して向かってくる目線が増えたように感じる。しかも女子が男子に胸をときめかせるような感じに思うので、奇妙かつテレくさいキモチが胸にジワーっと沸いてしまう。
「これがモテる男の苦悩とかいうのかな」
ひとりつぶやき、エヘっと笑ったりした。前世では妄想でしかなかった感覚に対し、これは決して悪くないぞ! と思い、ちょっと邪念交じりそうな心を落ち着かせるために走ろうと思う悠だった。
「ただいま!」
ランニングだのついでの軽いトレーニングだのを終えて悠が帰宅。するとお客さんが来ているというにぎやかさがドアを開けた瞬間に伝わってきた。
「パネトーネたちか」
今宵はみんなで夕飯しておしゃべりの花が咲くとか思った悠が手洗いとうがいを済ませれば、悠! と呼ぶ声。それはパネトーネの声だったが、早く! という誘い音色。しかも重要な内容だから早く! という感じいっぱい。
「ただいまって、オールスター勢ぞろい」
晩ごはんだと思ってテーブルにたどり着くと、そこにはスフレにパネトーネにクラフティにカッサータまでいて悠を入れて5人という華やかさ。しかし思いのほかにぎやかさがない。
「おかえり、とりあえず座って」
スフレに言われた悠、空いているイスに腰かけ緊張する。お腹が減ったとは思うが、まるで家庭裁判でもやるようなフンイキでは食欲にブレーキがかけられてしまう。
「で、誰から言うの?」
そう言ったパネトーネがさっそくつぶやき他女子に目をやる。
「え、なに、なんか大変な事でもあったの?」
グラスに入ったお茶を飲みながら悠が内心ドキドキしていると、クラフティがこの場の事情というのを説明し始めた。ここにいる全員、それぞれ悠に言いたい事ががあってここへ来た。各々自分が言いたい事を言うためだけにやってきたのだが、他の女子もみんな悠に言いたい事があるらしいから、いったいなんだ? と警戒するようなフンイキになってしまったとの事。
(え、べつに何も悪い事はしていない……)
先生に怒られるような話はどこにもないぞ? と生徒が思うような事を胸の内でつぶやく悠は落ち着けなくなっていく。
「ほらスフレ、あんたから言いなさいよ。あんたこの面々では一番地味なんだから」
パネトーネが相変わらず的に言うと、スフレは意外にもさっくり認めうなずき、顔をあ隠しながら悠に切り出した。
「3日後にお母さんが来るんだ。来て欲しいって言ったんだよ」
「お、お母さん?」
「だね。それはその……悠を紹介しようと思って」
「そ、そうなんだ?」
「いや、ほら……わたしと悠の関係を認めてもらおうかなぁとか思って」
「え?」
突然ドキッとさせられた悠だったが、ここでパネトーネが両手をテーブルにつけ立ち上がり、だまっていられないと声を出す。
「こらスフレ、あんた控えめっぽいくせして何大胆なことをしてんのよ」
「い、いいでしょう別に」
「よくない、よくない、お母さんに応援してもらって悠と結ばれようってあざとい感じがゴミのニオイみたいにプンプン漂ってるじゃん。それに3日後はわたしだって悠にたいせつな用事があるんだよ」
「何があると?」
「3日後はわたしの姉たちが来るように頼んであるの。わたしと悠が親しい関係にあるという物語を報告しなきゃいけないの。だからわたし優先、スフレのお母さんはまた日を改めるって事にしてよ」
「いや、パネトーネだってあざといじゃんか」
「なんですって!」
2人がギャーギャー言い争いに発展しかけると、ここでクラフティが顔を赤らめながら立ち上がりおほん! と咳払い。周りが静かになって目線を向けると、すぐさま自分の言いたい事を口の外に出す。
「3日後はダメだ。なぜなら3日後はわたしの妹たちが来る。悠とわたしの関係を報告するため。当然この話が優先されるべきだから、パネトーネもスフレも4日後とか5日後にして欲しい」
クラフティはここで赤い顔を優に向け、3日後によろしくと言う。しかし当然パネトーネはだまっていない。
「うわぁ、マジメそうな顔してゲス」
「お、おまえだってゲスだろう」
「わたしは姉を呼ぶんだよ? でもクラフティは妹を呼ぶ」
「何がどうちがうというんだ」
「年上って姉のくせに妹を利用する。その方がゲス。かわいそうな妹たち、ゲスな姉に利用されるなんてたまったもんじゃないね」
「なんだと!」
さっきより場のにぎやかさがアップ。悠としてはその間に割って入るのがやりにくい。かといって自分だけ知らん顔して夕飯を食べるとかいうこともできない。なんともやりづらい感じにまいってしまう。カッサータ? と、ひとりだまっている者に目を向ける。もしよかったら助けてくれませんか? と目線にヘルプってキモチを込める。
「うむ!」
悠の心が伝わったのかカッサータが声を出して立ち上がる。お! と思った悠はてっきり場の鎮静化をしてくれるのだとホッとした。でも実際にはそうではなく、とんでもない内容だった。パネトーネとクラフティとスフレの3人を落ち着かせてから、カッサータはしゃべりだす。
「この状況……誰が一番悪いか、誰に問題があるか、それは言うまでもなく悠。だから悠は3日後にすべての話につき合うはもちろん、誠実な態度というか心を示す必要がある。いや、そうした方がいいぞ悠、そうでないと危険だぞ?」
「き、危険?」
「町の女たちに言いふらしてやったからな」
「な、なにを?」
「悠という男は女の心と体の双方にキモチいいと快感を与えるのがうまいやつと言いふらした。だから町の女たちはエロい妄想をしている」
「ちょ、ちょっと……」
「誰かを選んでつき合えば町の女はあきらめると思うが、そうでなければ町の女は悠とセックスしたいって欲望を行動に移すかもしれないぞ?」
「えぇ……なんでそんな事……」
「なんで? 決まっている。悠が困っている姿を見てみたいからだ」
「あぁ……」
思わずテーブルにうつ伏せとかいうカタチをかましたくなった。だがここで家のインターホンが鳴ったので、息抜きしたいとばかりすぐ立ち上がる悠だった。
「ぼくが出るよ」
ほんのひとときでも息苦しい場所から逃げたかったゆえ、誰もいない玄関へ向かっていくと救われるように感じた。そして悠はハーイ! と返事をしてドアを開け、そこにいる者と対面。
「え……」
そこにいたのはショートヘアが似合う若くてステキな美人。牡丹色の着物にふっくらな胸のふくらみ具合がとろけるような魅惑を浮かべている。
「ちょっとだけ久しぶりだな」
「じょ、ジョーカー?」
「そうだ、今日は話があってきた」
「え、でもジョーカーって……もっと年寄りのはず」
「実年齢はな。だが悠と戦ってから変化が出た。なぜかエネルギーを消費をせずともこの姿でいられる。しかもあれだ、どうしてかブサイクな感じでしかなかった角も消えた。おまけに肌も体もすべてがみずみずしい。なぜだ? 悠、おまえ……わたしにどんな魔法をかけたというのだ?」
ジョーカーのきれいでやわらかい手がドキッとする悠の頬に当てられる。そうしてにっこり微笑むたまらない顔が接近してくると、なんともいいニオイがふわっと伝わり悠を夢心地に誘いかける。
「うん? 客人がいるのか?」
「ドラゴン女子たちが数人……」
「パネトーネにクラフティか、いいだろう。ではそこでわたしの話というのをしよう」
言ったジョーカーはスーッと手を悠から離し、4人の女子がいる場所へと足を運ぶ。そして全員をイスに座らせると、自分は悠の真後ろに立ち、ドキドキしている男子の両肩に両手を置き口にした。
「3日後、悠と話をさせてもらう。そこにはわたしの娘たちも参加するよう声をかけてある。つまりだな、わたしは大人の女として悠と愛し合いたいわけであり、正々堂々とやるために娘たちに報告する」
これには一同びっくり仰天。たまらずパネトーネは言った、ジョーカーが一番あざとい気がすると。クラフティは困惑した顔で続けて言う、ジョーカーのイメージが崩れるような事はしないで欲しいですと。スフレはなんと言っていいかわからず声が出ない。
「いやいや違うぞ、パネトーネにクラフティ、そしてそこの人間女子、たしかスフレだったか? おまえたちに対するわたしの親心だ」
「ジョーカー、このクラフティ、あなたの言っている意味がわかりません」
「つまりだな、おまえたち子どもに男はまだ早い。だから男におぼれると色々失敗するだろう。だからわたしが悠を引き受ける。カッサータ、こういう事ならおまえもわたしの味方をしてくれるだろう?」
言われたカッサータ、予想していなかった展開に顔を赤くして言葉をつまらせる。ジョーカーと悠が結ばれるなんて、そんなことがあってもいいのか! と言いた気でありながら、尊敬するジョーカーに物言いはしづらいと悩む感が生々しい。
「それに悠……」
「な、なにか?」
「悠だって……大人の女がいいのではないか? 自分で言うのはテレくさいが、この中ではわたしが一番包容力があるぞ?」
つぶやきクスっと笑うジョーカー、ほんのちょっと前かがみになったら、クイっと悠の後頭部を胸のふくらみって豊満部分に抱き寄せ、ついでに顔を悠の耳元に近づけ甘くていいニオイをプレゼント。
「ぼ、ぼくちょっと食事前の散歩でもしてくる」
たまらず悠が立ち上がる。するとパネトーネがわたしも行くと言いかけたが、ジョーカーは左手の平を立てて制止。悠は外に逃がしてやり、ここは女同士で大事な話をしようと言ってイスにお尻を落とす。
「女はあざといモノだ。仕方ない、そういう風に出来ているのだからな。しかし全員が身内を連れてひと固まりになってもまともに話などできるわけがない。そこでだ、3日後はどういう風に進めるか、つまり誰が何時にどれだけ悠と会話をするかスケジュールを立てよう。ここでは悠の事情は関係ない。この世は女が優先だからな、悠は決まったスケジュールにしたがってもらうだけ」
ジョーカーのこの提案を他女子はイヤだなぁと思った。しかしいずれも、一番おとなしい性格であろうスフレでさえ、自分の話が犠牲にされるのは絶対受け入れられないから、何時にどれだけ会話するという全員の話し合いに参加するは当然の事。
一方の悠、家を出たらけっこう暗くなっている外を走り始めた。お腹が減ったとかいう基本要求は鳴りを潜め、3日後にどうしたらいいんだ! という緊張で胸いっぱい、お腹いっぱい、頭もいっぱい。
「あぁ、ぼくどうしたらいいんだろう」
これまでまったくの非モテだった悠、圧倒的にモテるという男の悩みに直面。いったいどうしたらいいんだよぉ! と夜空に大きな声で叫んだりするのだった。
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