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98・光が記憶喪失ぅ? 3

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 98・光が記憶喪失ぅ? 3


「光」
 わたしはちょっと乱暴気味にミニテーブルを動かしどかした。そして驚いた光の両肩をつかんで向きを変えさせしっかりと向き合わさせる。

「な、なんですか」

「光……」

「ちょ、ちょっと何を」

「だいじょうぶ、怖がらないで」

 わたしは光にクッと密接したら、そのまま両腕を背中に回しギュウっと抱きしめた。

「はんぅ!」

「あぁ、だいじょうぶ、だいじょうぶだよ……」

 わたしはドキドキして暴れだしそうなやさしく抱きしめながら、右手でやんわりと後頭部を撫でてやる。

「光……」

 わたしは何かを言わせようと思ったのだけれど、いまの光がいろいろ感じ思って震えているという事実が生々しく伝わってきたので、そのまま何も言わず抱きしめ続けるとした。

「光……」

 少ししてわたしは抱きしめを解除し、今度は光の両肩をつかんでキスするしかないんじゃない? 的な距離で見つめ合う。

 キスしたら思い出すかも……唇を重ねお互いに共通のドキドキ電流を味わえば光のエラーが修復されるかもしれない。だから唇を重ねたいのだけれど、でも……唇を重ねる初めてのキスって大事だからなぁ……ここでやってしまうのは……という気もする。

「光、わたしのこと、思い出せ……」

 わたしは唇の重ねではなく、ゆっくりと震えている光の頬にクッと唇を当てるにした。

「ん……」

 2回口づけしてから顔を離したら、そこには何とも形容し難い表情で固まっている光がいる。

「光、わたしは……」

 そう言ったときだった。動揺しすぎている光がちょっと後退しようとして足を滑らせた。だからわたし達は同時におどろいたゆえに倒れ込む。そして光が仰向けになってわたしが上からギュウっとかぶさるってドキドキするのがお約束ってカタチになったりする。

「ん……ごめんね」

 気恥ずかしくなったわたしが体の力を抜いたとき、下の光がジタバタ動いて言ったんだ。ちょっとマリー何してるんだよ! と。

「光?」

「光じゃない、何やってんだよ……と、とにかくどいてくれ」

「わたしのこと思い出したんだ?」

「だからわけのわからないことを……早く……どいて」

「思い出した……治った……よかった……」
 わたしはたまらず両目から涙を流してしまう。それを見られたくないから顔をちょっと横に向け、光に言うしかなかった。

「もうちょっとこのままでいさせて」

「はぁ? ま、マリー? どうしたんだよ」

「バカ……全部光が悪いんだ……ったく女心を弄ぶように心配させたりして!」

 これで光の記憶喪失は無事に治った。まったく何にも覚えていないというのがこっちとしてはちょっとくやしい。だからふっと思っちゃうんだよね。あのまま記憶を戻さず自分好みの男子になるよう再教育すればよかったのかなぁとか。
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