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107・新年あけましておめでとうございます
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107・新年あけましておめでとうございます
「新年あけましておめでとうございます」
こんなあいさつをして向き合う家族全員がぺこりと頭を下げる。そのあと、お雑煮とおせちを食べてお年玉というボーナスをもらう。とまぁ、ここまでは今までと同じ流れ。
でも今年はここからが違うんだ。ほんとうなら友だちと会って手合わせをしに行ったり会話をしたりとするところなのだけれど、今年は着物を着て家族全員で神社に行くのみならず、光の家族と合流するという展開が待っている。
「ん……」
いまわたしは正月用の着物、オレンジ色をお祖母ちゃんに整えてもらっている。いやぁ、元旦から気合が入るってすごくキモチいい。うっかりすると光とわたしは別の家で暮らしている夫婦って、そんな錯覚が意識のど真ん中に練り込まれてしまいそうになる。そして午前10時、うちの家族全員と光の家族全員が〇〇神宮で対面。これこそ家族付き合いのだいご味!
「光、あけましておめでとうございます」
「あ、マリー、あけましておめでとうございます。おぉ、オレンジの着物とマリーってめっちゃ似合っている。一目見ただけで心臓の動きに異変が生じそうになる」
「おぉ、光、女心がわかるようになってきたね。それで光も着物だったらカンペキだったかなぁと思ったりして」
「おれは別にふつうでいいんだよ」
「どうして?」
「男は別にふつうとか地味でもいいじゃん。要は魅力的な女の子が今のマリーみたいに輝けばオーケー。いわゆる相対性の完成」
「光、なんか口がうまくなってない? 心配だ」
「なんだよ心配って」
「浮気とかするなよ……って、光なんかと付き合う悪趣味な女はわたし以外にいないか」
「悪かったな不良物件で……」
「あぁ、ごめん、拗ねないで、光、大好きだよ」
「あぁ、うっせー」
と、朝から心地よくテンションが高い我らはみんなで手合わせをしてお願い事をしてUターンしたら、今度は境内の茶屋にお立ち寄りするんだ。これだけ揃っているのにすぐさまお開きなんて、そんな無粋は許さないぞ的な話。
「よいしょっと。旨そうだねぇ」
わたしは一番奥のテーブルで光と2人だけで座って向き合い、真ん中に置いた焼餅と甘酒を見る。
「マリー」
「なに?」
「甘酒とかだいじょうぶなの?」
「あ、もしかして子ども扱いしてる?」
「ぷっ! マリーが大人とか……」
「なんか言ったか!」
「な、何でもないです」
「うわぁ、この焼餅のおいしいこと、これはたまらないねぇ」
「マジで脳がとろけるって旨さだなぁ。絶妙な焼き具合に餅の食感と甘みが来て、そこに醤油が日本人殺しなうま味一撃を混ぜ込んでくる」
「お、光の語彙力が来た!」
「で、地味な脇役って腹巻こと海苔が醤油と餅のハーモニーに何気ないプロフェッショナル的な一味を添えてくる。おれはつぶやかずにいられないであります。たったこれだけの大きさひとつを味わうだけで日本人に生まれてよかったと思えるなんて、最初にこれをやった人はまさに偉人であると、そう断言して胃袋を満たすのであります」
「おぉ、よくできました!」
とまぁ、2人でイチャイチャたのしくやっていたのだけれど、急に目の前がボーッと……ちょっとばっかり空気がユラユラっとするように見えてきた。
「ん……光……」
「どうしたの?」
「わたしの巨乳ってふくらみが熱くなってきちゃった……」
「ブッ! ごほごほ……マリーさん、いきなり変な言い方するのやめてください!」
「んぅ……変な言い方?」
「え、ちょっとマリー」
わたしは急に胸が熱くなったと同時に、なんかこう光に対してやんわりいら立ちを覚え始めた。だから移動して光の隣に座る。
「光!」
「な、なんですか」
「わたしは妻として光に言いたい事はいっぱいあるんだぞ」
「妻ってなんだよ……っていうかマリー、酔ったな?」
「問題はわたしじゃないんだよ、光なんだよ、わかる」
「なに……何が言いたいんですか?」
「だいたい、光はわたしに対するかまいが少ないんだよ。わたしだから、んぅっつ……やさしいわたしだからいいようなものの、んぅ! 他の女だったら絶対に言われているんだからね」
「なんて?」
「なんてつめたいやつ、彼女に対する配慮がまったくない! って。そう言われないのはわたしがやさしいからなんだぞ、わかってる? ねぇ、そういう大事なところわかってる?」
「わかっています……マリーはやさしい女の子だって思っています」
「ふん、またいつものしおらしい態度に出たりして」
「え、ちょっと待ってマリー、もう飲まない方がいいって」
「あぁ、うるさい。こういうとき、旦那はどうあるべきか光は知らないのですか?」
「旦那じゃないし……」
「妻が飲む時はやさしく見守って、なんかあったら妻の体をギュウっと抱きしめてすべての責任を負う、んぅ! そ、それが旦那のあるべき姿っていうか、姿でしょう」
「マリー……」
「ひく……ん! で、光……」
「はい……なんですか?」
「ちょっとでも、ひくんぅ! わ、わたしに悪いと思っているなら、うんぐ! い、いまわたしにキスでもするべし」
「マリー一回外に出よう。冷たい空気に当たろう」
「なに、抱いてくれるの!?」
「怖いこと言うな」
「あぁ、抱いてくれるまで動かないからね」
「あぁ、もう!」
で、ここでわたしの記憶は途切れるんだ。ハッと気がついたら自分の部屋にいて、なんだっけ? とか思って下に降りていくと、お父さんにお母さんにお祖母ちゃんにと3人からこっぴどく怒られた。
「えぇ、そんなに醜態さらした? うそだぁ、すごいショックなんだけれど」
わたしは気落ちしながら部屋に戻りスマホを見る。すると光からラインが来ていて「だいじょうぶか?」 と書いてあった。あぁ、やっぱり光はやさしいと思って、なぐさめて……と送ったら、すぐに返事が来て書いてあった。
―マリーは正月の神さまから一度ビンタされるべしー
「新年あけましておめでとうございます」
こんなあいさつをして向き合う家族全員がぺこりと頭を下げる。そのあと、お雑煮とおせちを食べてお年玉というボーナスをもらう。とまぁ、ここまでは今までと同じ流れ。
でも今年はここからが違うんだ。ほんとうなら友だちと会って手合わせをしに行ったり会話をしたりとするところなのだけれど、今年は着物を着て家族全員で神社に行くのみならず、光の家族と合流するという展開が待っている。
「ん……」
いまわたしは正月用の着物、オレンジ色をお祖母ちゃんに整えてもらっている。いやぁ、元旦から気合が入るってすごくキモチいい。うっかりすると光とわたしは別の家で暮らしている夫婦って、そんな錯覚が意識のど真ん中に練り込まれてしまいそうになる。そして午前10時、うちの家族全員と光の家族全員が〇〇神宮で対面。これこそ家族付き合いのだいご味!
「光、あけましておめでとうございます」
「あ、マリー、あけましておめでとうございます。おぉ、オレンジの着物とマリーってめっちゃ似合っている。一目見ただけで心臓の動きに異変が生じそうになる」
「おぉ、光、女心がわかるようになってきたね。それで光も着物だったらカンペキだったかなぁと思ったりして」
「おれは別にふつうでいいんだよ」
「どうして?」
「男は別にふつうとか地味でもいいじゃん。要は魅力的な女の子が今のマリーみたいに輝けばオーケー。いわゆる相対性の完成」
「光、なんか口がうまくなってない? 心配だ」
「なんだよ心配って」
「浮気とかするなよ……って、光なんかと付き合う悪趣味な女はわたし以外にいないか」
「悪かったな不良物件で……」
「あぁ、ごめん、拗ねないで、光、大好きだよ」
「あぁ、うっせー」
と、朝から心地よくテンションが高い我らはみんなで手合わせをしてお願い事をしてUターンしたら、今度は境内の茶屋にお立ち寄りするんだ。これだけ揃っているのにすぐさまお開きなんて、そんな無粋は許さないぞ的な話。
「よいしょっと。旨そうだねぇ」
わたしは一番奥のテーブルで光と2人だけで座って向き合い、真ん中に置いた焼餅と甘酒を見る。
「マリー」
「なに?」
「甘酒とかだいじょうぶなの?」
「あ、もしかして子ども扱いしてる?」
「ぷっ! マリーが大人とか……」
「なんか言ったか!」
「な、何でもないです」
「うわぁ、この焼餅のおいしいこと、これはたまらないねぇ」
「マジで脳がとろけるって旨さだなぁ。絶妙な焼き具合に餅の食感と甘みが来て、そこに醤油が日本人殺しなうま味一撃を混ぜ込んでくる」
「お、光の語彙力が来た!」
「で、地味な脇役って腹巻こと海苔が醤油と餅のハーモニーに何気ないプロフェッショナル的な一味を添えてくる。おれはつぶやかずにいられないであります。たったこれだけの大きさひとつを味わうだけで日本人に生まれてよかったと思えるなんて、最初にこれをやった人はまさに偉人であると、そう断言して胃袋を満たすのであります」
「おぉ、よくできました!」
とまぁ、2人でイチャイチャたのしくやっていたのだけれど、急に目の前がボーッと……ちょっとばっかり空気がユラユラっとするように見えてきた。
「ん……光……」
「どうしたの?」
「わたしの巨乳ってふくらみが熱くなってきちゃった……」
「ブッ! ごほごほ……マリーさん、いきなり変な言い方するのやめてください!」
「んぅ……変な言い方?」
「え、ちょっとマリー」
わたしは急に胸が熱くなったと同時に、なんかこう光に対してやんわりいら立ちを覚え始めた。だから移動して光の隣に座る。
「光!」
「な、なんですか」
「わたしは妻として光に言いたい事はいっぱいあるんだぞ」
「妻ってなんだよ……っていうかマリー、酔ったな?」
「問題はわたしじゃないんだよ、光なんだよ、わかる」
「なに……何が言いたいんですか?」
「だいたい、光はわたしに対するかまいが少ないんだよ。わたしだから、んぅっつ……やさしいわたしだからいいようなものの、んぅ! 他の女だったら絶対に言われているんだからね」
「なんて?」
「なんてつめたいやつ、彼女に対する配慮がまったくない! って。そう言われないのはわたしがやさしいからなんだぞ、わかってる? ねぇ、そういう大事なところわかってる?」
「わかっています……マリーはやさしい女の子だって思っています」
「ふん、またいつものしおらしい態度に出たりして」
「え、ちょっと待ってマリー、もう飲まない方がいいって」
「あぁ、うるさい。こういうとき、旦那はどうあるべきか光は知らないのですか?」
「旦那じゃないし……」
「妻が飲む時はやさしく見守って、なんかあったら妻の体をギュウっと抱きしめてすべての責任を負う、んぅ! そ、それが旦那のあるべき姿っていうか、姿でしょう」
「マリー……」
「ひく……ん! で、光……」
「はい……なんですか?」
「ちょっとでも、ひくんぅ! わ、わたしに悪いと思っているなら、うんぐ! い、いまわたしにキスでもするべし」
「マリー一回外に出よう。冷たい空気に当たろう」
「なに、抱いてくれるの!?」
「怖いこと言うな」
「あぁ、抱いてくれるまで動かないからね」
「あぁ、もう!」
で、ここでわたしの記憶は途切れるんだ。ハッと気がついたら自分の部屋にいて、なんだっけ? とか思って下に降りていくと、お父さんにお母さんにお祖母ちゃんにと3人からこっぴどく怒られた。
「えぇ、そんなに醜態さらした? うそだぁ、すごいショックなんだけれど」
わたしは気落ちしながら部屋に戻りスマホを見る。すると光からラインが来ていて「だいじょうぶか?」 と書いてあった。あぁ、やっぱり光はやさしいと思って、なぐさめて……と送ったら、すぐに返事が来て書いてあった。
―マリーは正月の神さまから一度ビンタされるべしー
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