異世界✕兄妹✕姉妹

jun( ̄▽ ̄)ノ

文字の大きさ
14 / 46

軽快な剣士を目指すべし

しおりを挟む
14・軽快な剣士を目指すべし


 本日の多貴は朝から子どもっぽいソワソワドキドキをさせられていた。早朝の走りや筋トレなどでどっぷり汗を流してから朝食を済ませると、3人でとある店に出向いたのだ。それは武装商店というモノ。エリスがお金を出し、ホリーが品定めをし、多貴が剣を受け取るという話であった。

「ホリー、ぼくの剣なんだからぼくに持たせてよ」

 店から山へ向かっていくに辺り、多貴は年下みたいにぼやいた。見た目通りの15歳って感じで不満を声にする。

「まぁまぁ、お楽しみは後の方がいいでしょう」

 ニマっと笑うホリーに言わせると、実際の剣がどんなモノか知らない多貴だからこそ、いざ特訓を始めるまで剣に触れさせない方が驚きが大きくなる。それはやる気に新たな興奮をもたらすであろうとの事。

「それって高いモノだったの?」

 店の中でもそっちのけにされていたゆえ、多貴は暇つぶし的に聞いてみたりした。するとホリーは背中に5本の剣を持って歩きながら、信じられないほどの値段だよと真顔で言ってのけた。

「どのくらい?」

「一本で安い家が一軒建つくらい」

「うそ……」

「ま、おどろくほど高いことは事実だよ。だからさ、モノにできないとか諦めるって話になると格好悪いよ多貴くん。そんな事になったらエリスががっかりして泣いちゃうかもしれないよぉ」

 こんな会話をしながら2人は山の中に入って、そこそこ広いって場所にたどり着いたところで足を止めた。

「じゃぁ、説明しよう」

 ホリーは剣を地面に置くと、自分用に新たな2本を買ってもらったのだといい、それ以外の3本が多貴のモノだと述べる。

「でね、銀が2本、金が1本にした。でもさ多貴、金は腕が上がってからにして。練習には銀で行こう。で、2本あるとは言っても大事に使うように。当然手入れは自分の責任。つまり剣は多貴の一部でなければならないってことだね」

 ホリーはそう言うと多貴用である銀の剣を一本鞘から抜き出した。するとどうだろう、本物だからこその風格と輝きが見る多貴の心を刺激する。格好良さと危険にあこがれてしまう少年の心にとってはドストライクみたいなモノ。

「多貴」

「うん?」

「ほれ!」

「え、ちょっと」

 ホリーがホイッと剣を投げ渡したので、驚いた多貴が手を伸ばす。そして慌ててグリップを掴んだら、思いもしなかった事に驚く。

「ぅぉ……」

 手にした剣は予想しているより重たかったのだ。店にいる間ホリーは剣を多貴に触らせなかったが、今にしておどろく相手の顔を見てにんまり笑う。

「そこそこ重いでしょう」

「これで戦わなきゃいけないの?」

「練習用の軽いやつなんてやるだけムダ。そんな悠長にやっているヒマなんかない。それにあれだよ、その重さを軽快に扱えないとポニーにもお姉ちゃんにも勝てないよ?」

 ホリーは言うとTシャツの肩を軽く捲くる。教えるばかりだとなまるから、いっしょにやるなどとつぶやき自分のシルバーソードを手にする。

「多貴」

「なに?」

「多貴は運動神経に反射神経に良さそうだし、覚えれば華麗な動きもきっとできるんだろうね。でも基本っていうのがあるわけで、まずはその動きから体に叩き込もう。自由にやっちゃえ! っていうのはその後」

「わかった」

「じゃぁわたしと同じように構えて」

「こう?」

「そしてわたしと同じように同じスピードで剣を振ろう」

 ホリーはそう言ったのだが、見ていた多貴がだまっていられないくらいスローに動く。剣の重たさを味わい噛み締めているようなスローモーション。

「多貴、まずは剣の重さを自分の体に覚えさせないとね。筋肉を鍛えるって意味もある。だからさ、剣にたましいを注ぎ込むような感じでグゥっと重たくゆっくり続ける。だいたい1時間くらい」

「わかった」

 とりあえず了解! と返事をしたものの、やってみるとおそろしく体にきつさがかかる。剣におのれを注ぎ込むようなイメージの中、力の入れた体と小さく整え続ける呼吸が意外にも苦しかったりする。

(こ、これで1時間……)

「多貴、これやるとじれったいよねぇ。思いっきり剣を降って暴れたいよねぇ。そういうのはまだガマン。後でイヤほどさせてあげる。もう剣なんか見るのもイヤだって泣き出すくらいにね。だから今は靜かに1時間がんばろう」

 ホリーに言われ多貴は口を結んでやり続けることにした。時計がない、時間を教えてもらえない、そこでひたすら剣との一体化を思いながら重いスローモーションで振りを続けると10分が30分くらいになる。元より時間を長く感じる多貴にしてみれば、15分は1時間くらいに感じてならない。

(ぅ……)

 15分が経過すると汗がドロドロに流れてきた。呼吸が穏やかさを忘れ始める。だから多貴とホリーでは見た目のうつくしさが変わってくる。安定したつよさが継続できるというのは優雅に見えるものだと多貴は知った。

 そしていま、黙々とやっていると2人を影からこっそり見つめるのがエリスだった。剣を購入するのに必要なすさまじいお金もエリスにとっては微々たる数字以下。まさに地上最強の財務省ってレベル。

 しかし……2人を見つめるエリスの胸の内は物悲しい。こんな事でいいのだろうかって思いが湧き上がってくる。自分も多貴と同じように努力するべきでは? せっかくホリーがいるのだから自分も鍛えてもらったら? などなど思ったりもする。するとノドから声が出そうになったり、数歩前進して2人の間に割って入りたいなどと思い描く。もうちょっとで行動に出そうって感じまでいく。

 でもエリスは結局のところ勇気ある感じの動きは取れない。それをくやしいと思うから使い古した言い訳を利用する。

「明日……明日になったらわたしもホリーに鍛えて欲しいと伝えよう」

 そうつぶやき一人ホテルに向かっていく。莫大も莫大なお金があると同時に、何かあればポニーから救援が差し向けられるようにもできている。つまりエリスは究極的な安全を手にしている。だけどもその心は潤わない。自分はダメ人間という意識と格闘して、今日という日を過ごすだけ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...