異世界✕兄妹✕姉妹

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ポニーVSエリス

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43・ポニーVSエリス


 今まさに階段を降り始めたポニーと多貴の戦いが始まると思われた。しかしそれをだまって見ていられない者が一人、それこそが他でもないポニーの姉ことエリス。

「え、エリス?」

 突然エリスが自分の前に立ったので多貴にあった高ぶりが一時停止する。

「多貴、ここはわたしが戦う。そうよ、そうでないといけないの」

 エリスの髪の毛が風に揺れるサマは美しく、スーッと多貴に流れてくるにおいは良いモノで、内面の自信少しばかり格好よいって表現を立ち上げる。それはポニーを散々に幻滅させた情けない姉とは別人の顔。とはいえ、ポニーはそういうのを見てカンゲキ! って風にはならない。だから冷めた口調で言い放つ。

「出てこなくてもいい存在が出てきた。まぁ、なんとなくわかっているんだけどひとつ質問してあげる。その、自信に満ちてかつ少し幼い顔ってどこから来るの? 何をしたの? 言ってみなさいよ、堂々と」

「マルチバースと現在の融合を使ったの。それは反則だと承知していても、わたしがポニーと戦うにはそれしかないと思った」

 エリスは真剣な面持ちで手短に経緯を語った。

「あぁ、やっぱりね。そういう事でもしないとありえない変貌だもん。多貴の凛々しい感じですら意外だけど、お姉ちゃんの場合は異常過ぎて笑えない。そう、そこまでしてわたしと戦いと思ったんだ? けっこうなことって言ってあげる、半分だけね」

「半分だけ?」

「当たり前。だってそれコツコツ努力して強くなったって話とちがうじゃん。そんな事までして勝ちたいか? って話じゃん。それを姉が妹にやるなんて恥ずかしいと思わない? ま、いいけどね、なぜならわたしは負けないから」

 ポニーがゴールドにして切れ味バツグンの剣を手に持つ。そしてためいきを一つ落としたら次にニヤっとし身構える。

「せっかくお姉ちゃんと戦えるんだもん、どうせなら楽しませて欲しいと思うわ。だからさっそく行くよ」

 妹のその声を聞くと姉が銀色の剣を持ってかまえた。そして小さく一呼吸すると先手必勝とばかりポニーが剣をブン! と豪快に振った。

「ミルキースマイル!」

 ポニーが声と同時に放ったのは白く輝く複数の白玉。それらが多方向からギュゥン! と唸りながらエリスに向かってくる。

「せい!」

 エリスが華麗に舞った。いやらしく時間差を持っていろんな方向から襲ってくる白珠を剣で斬り落としていく。それは戦いをホリーと多貴が見入ってしまうような動き。しかしそういう動作中にエリスは気づく。

(ポニーは?)

 そう、妹の姿が前にない。後ろを取られた? そう思ったエリス、白珠を斬り落とした次、剣を右手一本で持ち思いっきり横に振った。するとそれは空振りって手応えだけで終わってしまう。

「残念! こっち側でした。右利きでは左に振りづらいもんだからね」

 体勢を戻す前のエリスが左側に目を向ければ、すごいスピードで迫ってくるポニーの姿あり。

「もらった!」

 ニヤっと笑ったポニーの剣が下から上に振り上がる。まともに食らったら肉体に線が一本入ったり、もしかすると体が左右に割れて中身がドッパーンみたいな事になるのかもしれない。

「む!」

 しかし驚いたことにポニーの剣も空振りという音しか立てられなかった。なぜならエリスの体が一早く宙に浮かび後方へ逃げたからだ。あまりにも速く見事なバク宙による回避。それはポニーの両目をパチクリさせるに値するモノ。

「お、お姉ちゃんがバク宙とか……そんなの想像した事なかったよ」

 思わず顔を赤らめてしまうポニーだった。

「では、今度はわたしがいく」

 パープルドレスのエリスの顔は安定して凛々しい。そしてその自信がスカスカなモノではないって自信を相手に伝える。

「おもしろい。お姉ちゃんに攻められるなんて人生初、たのしみ」

 元々年齢相応もしくはやや幼く見えるポニーだが、それよりもうちょい幼く見えてきた。それは姉との戦いに子供っぽい興奮を感じてしまうからだった。幼い頃にこういう事をしたかったんだ! という心残りが晴れるという喜びなのかもしれない。

「スウィフトハンド!」

 掛け声とともにエリスの剣がポニーに攻め込始めた。一体どういう技? と思いながら受け止めていたポニーの剣であるが、段々と動きが速くなっていくことに気づく。それもどんどん踊るように舞う。

「お、お、お?」

 ポニーの表情がおどろきに変わっていく。ただスピードがあるだけでなく適度に剣が重い事が、それが姉の攻撃だって事に衝撃を受けて止まない。

「反則技まで使った以上、わたしは姉としてポニーに勝つ!」

 姉の決意と声は妹を押しているように見えた。でも次第にポニーの顔には焦りではなく余裕みたいなモノが浮かぶ。

「わたしに勝つって? ほんとうにそう思ってんの?」

 互いの剣がぶつかったとき、ポニーはそのままグッと押し込みの力を入れる。こうすると剣はぶつかったまま押し合いって形になる。

「お姉ちゃんがわたしに勝ってるのは……おっぱいの大きさだけでしょう」

 右手一本で剣を持つポニー、左手を伸ばすと姉のドレスにあるFカップのふくらみをギュッとつかむ。

「はんぅ!」

 ビクンとし顔が桃色になるエリス。

「お姉ちゃん、今まで散々エレガント優先で生きてきたじゃん。だったらこの豊かでやわらかいおっぱいを有効利用すればいいじゃん。こんな風に戦うんじゃなく、どこぞの男を胸に抱いて結ばれたらいいんじゃない?」

「な、なにを……」

「あ、もしかして……多貴を抱いたりした? やった? 長い夜を熱く重なり合って過ごしたりした?」

「ぽ、ポニー、い、いい加減にしないと」

「なにかな? おっぱいが感じて困っているお姉ちゃん」

「女のくせに女を侮辱するなんて許さないわよ」

「ぷっ! 笑っちゃう」

 ポニーの手がエリスのふくらみから離れる。だから怒ったエリスが先ほどの舞いを再開させようとする。だがそれより早くポニーの攻撃が来た。

「ダーン!」

 子供っぽくはしゃぐみたいな声がすると、エリスはポニーに思いっきり足を踏まれていた。いかんせんハイヒールでやられたモノだから、あぅ! と声を出すだけでは済まない。剣こそ手から離しはしなかったが、ガクッと膝が落ちてしまう。するとポニーが透き通ったような笑みを浮かべ、両手に持つ剣を大きく振り下ろさんと動く。

「く!」

 振り下ろされた剣に当たることなく、すばやい動きで後方に飛んで逃げるエリス。それを見たポニーは剣を脇に挟み軽く拍手をした。

「お見事。今のはよく避けたってホメてあげるよ。それと正直に言うとちょっとうれしい。だってお姉ちゃんといっしょに強くなりたいとか思ってたもんね。こんな事ができたらたのしいだろうなって想像も一杯したよ。だからいまたのしいとか言いたいキブン」

 こうしてエリスが立ち上がったら再び戦いが始まる……と思われた。しかしどうして、突然にエリスがドキッとして顔面を引きつらせる。

(あ……)

 右手の剣を下に向けたあげく、左手を谷間に当て、急にかわいい女の子を気取るみたいな顔をポニーに見せる。

「うん?」

 このマジメっぽい流れで急に何? と思うポニーだった。もしかすると相手を油断させるためにやっているのかと疑ってみたりもする。
 だがどうだろうエリスが一向に構えようとしない。それどころか凛々しさを失った気弱なお姫様ってオーラを浮かべ、小さい音を立てながら後ずさりを始めた。

「う……」

 一体エリスに何が起こったのか? それはマルチバース活用の欠点、すなわち別宇宙から引っ張り込んだ自分との融合が急に終わってしまったのだ。もしかすると先ほどポニーに胸をつかまれたことによる戸惑いが原因かもしれない。いま、エリスの中には別宇宙の剣の腕があるエリスはいない。それは自分の宇宙に戻ってしまったわけであり、ここにいるのはポニーが情けない女と言い続けてきた姉以外のなんでもない。

「なに、それ演技? それとも急に何かが故障したとかなの?」

 ポニーは剣先を下に向けたら、ゆっくりと姉に向かって歩き出す。するとどうだろう、相手はかわいく怯えながら後ずさりを続ける。

「動くな!」

 急に大きな声を出して相手をびっくりさせるポニー。するとビクン! となったエリスがバカ正直に停止。震えながら見つめる先を妹から下の地面へと移動させる。

「お姉ちゃん」

「ぅ……」

「顔を上げて、ほら、早く」

 待ちきれないとばかり接近していたポニーが片手の先をエリスのあご下に当てる。そうして恐る恐る上げられた姉の顔を見ると言わずにいられないから言う。

「なんて顔してるの? さっきまでの凛々しい感じはどうしたの?」

「わ、わたし……わたしは……」

「ったく……妹に対してそんなに怯えるなんてクソじゃん」

 ポニーの手がスッとエリスの顔から離れる。でも至近距離で見つめられるから姉は緊張の震えを止められない。

「まぁ、こんなもんだよ。だってマルチバースなんてイカサマだもん。お姉ちゃん、いかなる事も自分の努力で身に着けてナンボだよ、わかる?」

 クスっと笑ったポニーは姉に背を向ける。それでも何かをしてくるわけでない姉に向かってもうひとつ大事なことをつぶやく。

「イカサマの実力なんて途切れて当たり前。ま、これは仕方ない。以後はお姉ちゃんがほんとうの努力でもすればいいだけの事。ただし……ひとつだけ許せないって思うことがあるよ。ったく……イカサマだったとわかっていても、凛々しいとかつよいってお姉ちゃんに少しの間とはいえ胸がときめいた。そういう自分が許せないよ、なんかこう腹が立って仕方ないよ!」

 ポニーは最後の方で少し声を荒げた。そして振り向いたと思いきや、思いっきり姉の頬にビンタをひとつかます。

「あんぅ!」

 ビッターン! って音がすると同時に手を頬に当てるエリス。両目にツーっと涙を浮かべる姿は気の毒ですらある。

「ホリー」

 突然ポニーから名前を呼ばれホリーがドキッとした。

「は、はい!」

「あんたには色々感謝してる。だからついで、このジャマなお姉ちゃんを適当に慰めてやって。わたしはこれから多貴と戦わなきゃいけない。ジャマにならないところで、その泣き虫な巨乳をなだめてやってよ」

「わ、わかりました」

「あ、そうそうひとつ質問してもいい?」

「な、なんですか?」

「あんた多貴と仲良くなったよね?」

「そ、それはまぁ……当然という感じで、もちろん仲間的なモノとしてです」

「まさか……やったりした? セックス」

「してませんよ、何言ってるんですか!」

「聞いてみたかっただけよ。あんたと多貴は似合わないから安心したわ」

 いたずらっぽく笑ったポニー、多貴にお似合いなのはエリーかな? なんて言いかけた。でも言わないでおこうって電流が走ったのか、結局それは言わず多貴の方へと向く。妹を取り戻したいと思い、別人みたいになってやってきた多貴と向かい合うのだった。
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