戦場の茶会...Rivisited

藤 和香円

文字の大きさ
1 / 4

終戦

しおりを挟む
 夜のとばりが下りる。
布を張ったような暗黒へ、何処からか、蜘蛛糸ほどのもやがすっと弧を描いた。かと思えば、あたりは真っ白な濃霧のうむに包まれる。
戦地に再び、宵闇よいやみが訪れたのだ。

 淡い身の丈のシルエットが、その距離を詰めるにつれ、見上げる程まで高くなる。
樹皮は音も立てずに剥がれ落ち、蝶のように鮮やかな野の鳥たちが、身を休めていた小枝は、まさしく灰の如く土に還っていく。この夜更けをもってようやく冬を迎えたかのように、枯葉を散らしている。
その大木は、朽ちていた。

 つるぎの音が、耳に残っている。
終戦が告げられたというのに、美しい眺望ちょうぼうが、大地を染め上げることはない。
水を打ったような寂しさと、泥土でいどに噴き出す血生臭さが、足下あしもとに埋もれる骸骨をも、見えもしない蛍の羽音をも想像させる。
それは、うるわしき風物へ抱くはかなさへと姿を変え、未知の感覚を突いた。

 この人型ひとがたは、過ぎ去った過去に考えを巡らせ、小さな岩に腰かけている。
全て見たのだ。
振り返る過去は、それは残酷で、罪にあふれていた。誰もが、罪深く死んでゆく。まるで、けものの様だ。残虐な獣を放ち、死にあいをさせた。
弾の如き雨を降らし、核の如きいかずちを落とす、大きな黒雲が一つ去った今、この人型は、考えを巡らせている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...