魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す

第二十四話 AAA

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「ジンいい加減起きろ!」
「もう少しだけ寝かせてくれ」
 白く輝く日差しが窓から寝室を照らす。
 だが睡眠を堪能している俺にとっては耳元で飛び回る鬱陶し虫とさほど変わりはない。
 ましてや虫以上に煩い奴が俺の至福の一時を邪魔しようとしているのだから気分は最悪だ。

「休みだからといってこんな堕落した生活は私が許さん!」
「やめてぇ!」
「気持ち悪い声を出すな!」
 掛け布団を奪われてしまった俺は仕方なく起きることにした。ふぅあ~ネム。寮を抜け出して久々に夜の街でハッスルしたせいで寝るのが遅かったからな。仕方が無いか。

「まったくどうして寮生活を送っているのにこうも堕落した生活が出来るんだ」
「それが俺だからだ」
「胸を張って言うことじゃないだろ。ほら、いい加減顔を洗ってシャキッとしろ」
「へいへい。ったくお前は俺の嫁かよ」
 まだはっきりとしない視界のままベットから立ち上がりながら、冗談交じりに愚痴る。

「なっ!何を馬鹿な事を言ってるんだ!」
「なに赤くなってるんだよ。ただの冗談だろうが」
「変な冗談を言うな馬鹿者!」
「グヘッ!」
 思いっきり後頭部を殴られた俺はその勢いで玄関まで吹き飛ばされた。ったくこんなことで肉体強化の魔法を使うなよな。てか暴力は駄目だろ。暴力は。
 顔に青痣を作ってしまった俺はそのままジュリアスと適当に一日を過ごした。
 で、その次の日からは憂鬱にして億劫な一週間の始まりだ。ああ、どうして休日と平日が逆じゃないんだ!どうして五日も勉強や仕事をしないといけないんだ!どうして休日は二日しかないんだ!これを考えた奴は鬼だ!悪魔だ!このままだと憎しみで頭がおかしくなりそうだ。
 前世では社畜の如く生活していた俺。働きたくない好きな事だけして悠々自適な生活を送りたいとどれだけ臨んだ事か。
 きっとそんな願望やあの島での培った価値観などが混じって今の人格になったんだろうな。


 で、時は経ち金曜日。
 ああ、なんて素晴らしい日なんだ!今日はいよいよ武闘大会参加受付日。
 説明などもあってか午前中で授業は終わり午後からは面倒だが爺婆共の話を聞くだけ、そして明日から待ちに待った休日。ああ、なんて素晴らしい日なんだ!

「ジンが今なにを思っているのか見ただけで分かるな」
 俺の目の前でご飯を食べるジュリアスの一言にレオリオたちは苦笑いを浮かべていた。
 午前中の授業は終わり、昼休みになった俺たちはいつものメンバーでご飯を食べていた。因みにイザベラたちはアンドレアたちとバルコニーでご飯を食べていた。

「ほんとだぜ。月曜日なんて死んだ魚の目してたくせに」
「今は元気いっぱいだもんね」
「これほど己の感情が表情に出る人を初めて見ました」
 ジュリアスたちが色んな事を言っているがどうでもいい。俺にとって今日は天国へのカウントダウンが始まろうとしているんだからな。

「ジン忘れるなよ。武闘大会の説明が終わったらみんなで受付に行くんだからな」
 これで、俺は自由になれる!

「聞いちゃいないな」
「まったく……」
 ジュリアスは呆れ額に手を当て、レオリオたちは苦笑いを浮かべていた。

「どうしたんだ午前中の授業で疲れたのか?」
「なぁ、私はコイツを殴っても良いだろうか?」
 食事も終わっていないのに何故か席から立ち上がったジュリアスはドス黒いオーラを漂わせながら握りこぶしを振り上げていた。

「ジュリアス君落ち着いて!」
「そうです。喧嘩は駄目です!」
 そんなジュリアスをエミリアとフェリシティーが慌てて止めていた。まったく明日が休みだからって元気いっぱいだな。そんなに楽しみなのか。
 そんで時間は流れて昼休みが終わり全校生徒は超デカイ多目的ホールに集められた。正直内装は国会議事堂かと最初は思ったけどな。
 んで、俺は一番最後列の席で学園長たちの話を聞かずにお昼寝を堪能する。爺婆の話を聞いても口煩いだけだからな。
 話が終わったのか生徒たちが次々と外に出て行く足音で目を覚ました俺は合流したジュリアスたちと一緒に受付に向かう。

「あの感じだと今年は出場者が多そうだな」
「そうね。なんたって代表選手には豪華商品が贈られるんだから」
「それに有名デザイナーによる戦闘服を無料で製作してくれますしね」
「軍務科も冒険科も闘争心を燃やしまくりだ」
 なんだか色んな話をしているが正直俺にはどうでもいい話だ。豪華商品がなんだか知らないがどうせ武器だろうし、服もそこまで興味ないからな。
 受付に行くと既に沢山の生徒によって行列が出来ていた。

「これは……凄いな」
「これ、冒険科の生徒だけよね?」
「そうです」
 説明会を終えて受付に向かうとそこには大蛇の如き、長蛇の列が出来ていた。
 団体戦は最初科ごとにするため受付が別になっている。それでも並ぶ生徒の数は尋常ではなかった。流石はマンモス学園生徒数が半端ない。

「これなら先に個人戦に参加登録してきたほうが良さそうだな」
 俺がそう呟くとレオリオたちが返答してきた。

「個人戦かぁ~……私はパスかな」
「私も遠慮させてもらいます」
「俺も団体戦だけで十分だ」
「なら、個人戦は私とジンだけだな」
「おい、なんで俺まで出ないといけないんだ」
「出ないのか?」
「出てなんかメリットあるのか?」
「メリットって優勝し代表になるだけでも就職に優位だし、名誉な事だぞ」
「名誉で腹は膨れねぇよ」
「まったく……」
 俺の言葉に嘆息するジュリアス。なんで嘆息するんだ?あたりまえだろ。

「でも優勝して代表選手に選ばれたら学園側が一つだけなんでも願いを叶えてくれるらしいよ」
「本当か!」
「もちろん、叶えられる範囲だけど」
「よし、出よう!」
「なんて愚かな」
「凄い。目がころころ変わってますね。お金、お肉、卑猥な顔。欲望を曝け出してますね」
 ジュリアスの言葉にやる気が出た俺は即座に参加する事を決意したが、何故かジュリアスは呆れて額に手を当て、エミリアは驚きつつも興味津々に俺の顔を見ていた。
 俺の顔に何か付いているのか?いや、今はそんな事どうでも良い。いったいなにを叶えて貰おうか!大金でも良いか。そうすれば働かなくてすむし、いや最高級のお肉一年分も捨てがたい。それよりも女か。最高の美女でも良いな!ああ、駄目だ。妄想が膨らんで止まらないぜ。

「ほら行くぞジン。先に個人戦の参加登録をすませるぞ」
「おう!」
「すまないが私たちの変わりに並んでおいてくれ」
「分かった」
「任せて」
 俺とジュリアスは個人戦に登録すべく列に並ぶ。団体戦より遥かに人数が少ない個人戦受付は比較的短い時間で受付まで辿り着けた。
 先にジュリアスが受付の女性の前に立つ。あ、あの受付少し頬を赤らめた。ま、ジュリアスは美少年だからな。仕方が無い。胸糞悪いが。

「お名前をどうぞ」
「冒険科四年一組出席番号三番、ジュリアス・L・シュカルプです」
「はい。それでは使用する武器と得意な属性を教えてください」
「武器は魔導武器の刀。得意な属性は氷です」
「解りました。それでは以上になります」
 思った以上に楽な参加手続きなんだな。
 そう思いながらある疑問が浮かんだ。

「自分の名前と所属場所を言うのは分かるんだが、武器や魔法も言わないと駄目なのか?」
「パンフレットを作るのに必要なんだ」
「なるほどな」
 パンフレットか。と言うよりもどんな選手が出ているのかを明確にするためだろう。
 勿論それだけじゃない筈だ。簡単に思いつく事で言えば、事前に相手の情報を手に入れられるため戦い方が練られる事だろう。きっと先生たちはそう言った事前の行動も見たいんだろう。

「では、次の方どうぞ」
 俺はジュリアスと場所を入れ替わる。今度は頬を赤らめないか。ケッ!

「お名前をお願いします」
「冒険科四年十一組出席番号は………何番だ?」
「生徒手帳に書いてあるだろ!」
 ポケットから取り出した生徒手帳を開く。

「えっと……出席番号は42番、オニガワラ・ジンだ」
「では武器と得意属性を教えてください」
「そうだな……武器はパチンコ玉」
「パ、パチンコ玉ですか?」
 意外な武器に聞き返して来る受付嬢。それだけありえないのだろう。ま、剣や銃といった武器を使用する中1人だけパチンコ玉だもんな。仕方がない。

「そうだ」
「では得意な属性は?」
「無い」
「えっとそれはつまり無属性だけと言う事ですか?」
「違う俺は魔力が無いんだ」
「え?」
 俺の言葉に受付嬢と俺の後ろに並ぶ生徒たちからざわめきが起こり騒々しくなる。ま、当然の反応だな。

「え~とそれで参加するのですか?」
「駄目なのか?」
「い、いえ!そんな事はありません!」
 ま、どうみても魔力無しが出場なんて馬鹿げてるって思ってるんだろうな。それもこの国は魔法主義なところがあるからな。当然の反応だな。

「登録完了しました」
「了解。ジュリアス行こうぜ」
「あ、ああ」
 なんだか不機嫌だがどうしたんだ?ま、良いか。
 俺とジュリアスはその後レオリオたちと合流した。

「あれ?ジュリアス君不機嫌そうだけどどうしたの?」
「あ、いや大したことじゃないんだ」
「なら教えてよ」
「………ただ、ジンが魔力無しと知ったからなのか蔑んだ目で見てくるから腹が立つだけだ」
「なるほどね」
 ジュリアスの言葉を理解したのかエミリアたちは微笑を浮かべていた。

「別に俺のことなんだから気にすること無いだろ」
「そ、それはそうなんだが……」
 そんな俺の言葉に更に落ち込むジュリアス。

「ジン……」
「ん?どうしたんだお前ら疲れきったような表情をして」
 レオリオが俺の名前を呼んだので視線を向けるとレオリオたち3人から酷いと言わんばかりの疲れ切った顔をしていた。

「酷いよ~」
「え?」
「はい、まったく酷いです」
「おいおいどうしたんだよ急に!」
 まったく意味が解らない。誰か説明してくれ。

「それよりも正直に答えて良かったのか?」
 レオリオがそんな事を言ってるくるが意味が分からん。
 首を傾げる俺を見たレオリオは嘆息して言い直す。

「だから素直に自分の弱点を教えて良かったのか言ってるんだ」
「そういうことか。別に構わねぇよ。戦い方は色々だからな」
「だけどよ。弱点が知れたらそれだけ不利になるんだぞ。そうなれば団体戦だって不利だぜ」
「確かにそうかもな。だけどお前らは俺と戦った事があるから分かるだろ。本当に不利だと思うか?」
 俺の言葉に目を見開けたかと思えば、すぐに笑みを浮かべた。

「確かにそうだな」
「ええ、そうですね」
「思えないよねぇ~」
「だろ。だったら問題ない」
 俺たちの顔に不安は微塵もない。あるのは笑顔と早く闘ってみたいという思いのみ!

「それでは次のチームお願いします」
 ようやく俺たちの番が回ってきた。

「それでは学年、クラス、名前とチーム名とリーダーが誰なのかこれに記入してください」
 個人戦の時とは違い自分たちで記入するんだな。

「誰が最初に書く?」
「なら、私から書こう」
 ジュリアスが記入していく。
 その次にエミリア、フェリシティー、レオリオの順番に記入していき、最後に俺だ。
 ええっと、なになに。まずは学年、クラス、名前を書いて。で、得意な魔法と武器を記入するのか。個人戦と一緒だな。少し違うとすれば使役している魔物がいるなら記入するぐらいか。
 同じ事を二度書くほど面倒なことはないが個人戦では受付嬢が参加登録の内容を書いてくれたから問題ない。
 で、最後にチーム名とリーダーか。

「なら、リーダーはジュリアスだな」
「待て!」
「ん?どうした?」
 慌てて止めに入る。

「どうして私なんだ!」
「だって一組だし」
「それは関係ないだろ!」
「いや、だって実力的に考えたら」
「それを言うならジンでも良いじゃないか!」
「えー嫌だ。メンドクサイ」
「なっ!なんだその理由は!」
 だってリーダーになったら色々と雑務がありそうだし。

「ま、普通に考えたらここは言いだしっぺがやるのが筋だよな」
「おい、レオリオお前は俺の味方じゃないのか!」
「いや、味方とか関係なく常識的にそうだろ」
「ふっ、俺に常識が通用すると思うなよ」
「格好つけても駄目だからな」
「チッ」
「でも普通に考えてそうだよね」
「はい。作戦やフォーメーションも全てジンさんが考えているわけですし」
「うっ」
 まずい。非常にこの流れは拙い。リーダーなんかに選ばれればそれだけで目立つし、雑務や会議やら絶対面倒のオンパレードだ。ここはなんとしても回避しなければ!

「なら、リーダーはジンでけ――」
「待て」
 レオリオが決め手となるセリフを言い終わる前に割り込む。危なかった!

「なんだ、まだ文句でもあるのか?」
「確かに作戦立案や指示を出すのは俺だ。だが、リーダーの欄に俺の名前を書く必要がどこにある?」
「ジン、なに変なこと言ってるんだ?」
「だから、すでに闘いは始まっているということだ」
 その言葉に全員の表情が変わる。よし、良い流れだ。

「それは……どういうことだ?」
「この紙に書かれた事は後日スマホやモニターで閲覧可能になるんだよな?」
「その通りだ。一部のデータは非表示にされるが、チームメンバーや戦闘スタイル、属性なのが見ることができる」
「それを見て作戦立案を行うわけだよな?」
「なにを当たり前のことを」
「つまり、誰もがスマホやモニターに表示された内容を疑わないわけだよな?」
「「「っ!」」」
 その言葉に全員が虚を衝かれた表示になる。よし、予想通りだ。

「ジン、先に言っておくが偽の情報を記入することは規則で禁止されいる」
「それは、使えない属性を記入して使える属性を記入しないことととかだろ?」
「そ、そうだ……」
「だいたいリーダー、イコール作戦を考えたり指示を出したりする人じゃないんだからな。大きな組織なら作戦本部や参謀が居るんだからな」
「まあそれは、そうだが……」
「だから、相手にはリーダーはジュリアスと思わせ本当は俺ということにするのさ」
「つまり表向きはジュリアスだけど、本当はジンってことか?」
「そうだ」
「影から操る首謀者ってことだね」
「闇の支配者ですね」
「た、確かに間違っちゃいないが二人の言い方だと俺が悪人に聞こえるんだが?」
「「気にしないで」」
 それで誤魔化したつもりか。ま、これ以上なにか言ったところで時間の無駄だから何もいわないが。

「みんな分かって貰えたようだしジュリアスで良いな?」
「「「賛成!」」」
「納得はいかないが、レオリオたちも賛成していることだしな」
 よし!どうにか面倒事は回避できた。後はジュリアスの名前を記入するだけだ。ふふ、自分の話術の凄さに笑いが出そうだ。

「それで、チーム名はどうするんだ?」
「さっきまでとモチベーションの差が凄いな」
「そうだな」
「えっと『さっきまでとはモチベーションの差が凄いな』っともうこれで良いや」
「良いわけないだろ!」
「ぐへっ!」
 頭部に突如強烈な鈍痛が襲ってくる。ああ、超痛てぇ!

「まったくそんなチーム名で出されたら一生の恥だ!」
「面白いとは思うけど、嫌だな」
「そうだね」
「もう少し真面目に考えてください」
「なら、素晴らしい名前を思いついてるんだよな?」
 スッ

「おい」
 俺の問いに一瞬にして目を逸らすジュリアスたち。

「なら、もうこれでいいや」
「「「「待って!」」」」
 提出しようとしたらジュリアス達全員に腕や肩を鷲掴みにされて止められてしまった。まったく文句だけ言いやがって。否定するだけなら楽で良いよな。

「ならどうするんだよ」
「そ、それは……」
「チームメイトなんだし皆で考えようよ」
「そうだな」
「はい。それが良いと思います」
 結局スタンダードな提案で俺たちは案を出し合うが。

「『赤薔薇の隼団』ってのはどうだ?」
「「「「却下」」」」
 ジュリアスの提案に俺たちの声が重なる。そんな背中がむず痒くなるような名前なんて絶対に嫌だ!

「お、これはどうだ!『ロングロングロングロングロングソード』ってのは」
「「「「却下」」」」
 そんなに長い剣を持って何がしたいんだ?てか、まずまともに振れるのか?

「ならこう言うのはどうかな。『丸ごとリブロース』」
「「「却下」」」
「賛成!」
 ジュリアスたちは反対だったみたいだ。

「ジン、どうして賛成なんだ?」
「え、だって美味しそうだったから」
「そんな理由で賛成するな!」
 ったく美味しい、可愛いは正義だろうに。なにが駄目なんだ。

「では、次は私ですね。『ああっ、なんて愚かなの!けして叶う事の無いと分かっているのに、どうして私は貴方に恋をしてしまったの!』ではどうでしょうか」
「「「「却下」」」」
「ですよね」
「クソッ!俺のロングロングロングロングロングソードより長いだと!」
 レオリオは悔しそうに握り拳を震わせる。別に悔しがるところでも競うような事でもないだろ。

「フェリーの場合はチーム名と言うより、台詞みたいな感じだったけどね」
 結局その後も色々な名前が提案されたが全て却下された。ま、当たり前だよな。
 ロイヤルハイパースペシャルロングロングロングロングロングソードとか、超肉厚スペアリブとか、紅の薔薇の団とかどう考えても賛成しないよな。だってこの世は十人十色。人それぞれで好みも感性も違うんだからよ。いや、提案する俺たちに問題があるのか?

「あの……そろそろ決めて貰えないでしょうか?」
 受付の人が申し訳なさそうに聞いてくる。どうやら俺たちのせいで進まないらしい。

「流石に決めないと駄目だな」
「そうだな」
「そうだね」
「悪ふざけが過ぎました」
「だから最初に言った俺のにしておけばよかったのに」
「お前のが一番駄目だ」
 ジュリアスよ、そこまでド直球に言わなくても良いだろ。俺悲しくて泣いちゃうぞ。
 でもこのままなのは駄目だしな。仕方が無い。
 俺は話し合うジュリアスたちを放置して用紙に記入する。

「これで頼む」
「しまっ――!」
 慌てて止めに入ろうとするジュリアスたちだったが既に遅し!

「分かりました。これで登録しておきます」
 受付係によって登録されてしまった。

「ジン!私たちの大切なチーム名をなんだと思ってるんだ!」
「や、やめろ!し、死ぬ!」
「窒息死しろ!」
 胸倉を思いっきりつかまれた俺。やばい、本当に息が出来ない!

「すいません!」
「はい。なんでしょうか?」
「なんて名前で登録されたんですか?」
 エミリアは慌てて受付係に確認した。俺ってそんなに信用ないんだな。

「えっと貴方たちのチーム名は――」
「「「「チーム名は?」」」」
 ジュリアスまで俺を放置して聞きに行ってしまった。

「『AAAノーネーム』ですね」
「「「「AAAノーネーム」」」」
 その名前を聞いて固まる。あ、これってもしかして激怒して俺が殺されるパターンなんじゃ。

「良いんじゃないか?」
「うん、私は賛成!」
「何色にも染まらない。そんな響きですね」
「ま、悪くはないな」
 あれ?意外と高評価。俺の予想とは違ったけど気にって貰えたおかげで死なずにすんだし。結果オーライだな。

「で、ジン」
「なんだ?」
「どう言う意味でこの名前にしたんだ?」
「適当に。名前が決まらないなら名無しでも良いかなって」
「ま、そんな事だろうと思ったよ」
 そんな俺の答えにジュリアスは呆れる。分かっていたんなら聞くな。

「でも、格好良いし良いんじゃないか?」
「そうだね」
「私も反対する理由はありません」
「ま、私も反対する理由は見当たらないな」
 こうして俺たちのチーム『AAAノーネーム』が誕生した。
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