魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す

第三十一話 武闘大会団体戦学科別代表選抜二回戦

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 午前中の試合が終わり俺たちは学食に来ていた。

「それでジン率直な感想を聞かしてくれ」
「美味い」
「誰もステーキバーガーの感想なんか求めてはいない!私が言っているのは午後から闘うチーム『オールシップ』の事だ!」
「そんなの最初から分かってるに決まってるだろ」
「だったら最初から答えろ!」
「ジュリアス君、そんなに怒らないで」
「そうです。ジンさんが不真面目な事は誰よりも知ってるはずです」
 何故かジュリアスを慰める過程で俺が貶されたんだが、これは教育委員会に報告しても良いだろうか。

「それでどうなんだ?」
「そうだな。結果だけで言うなら勝てるだろうな」
 そんな俺の言葉にレオリオたちに笑顔が浮かぶ。

「それじゃ、陣形を発表する前に相手の陣形をもう一度確認するぞ」
「確かオールシップは前衛二人。後衛三人だったな」
「そうだ、ハルバート使いと盾持ちの剣士。後衛は魔導小銃アサルトライフルが二人、魔導狙撃銃スナイパーライフルが一人だ。ましてや全員が三年三組のクラスメイト。きっと仲の良い奴らでチームを作ったんだろう。連携もかなり高かったからな」
「確かにあの連携は凄かったね」
「一番後ろの魔導狙撃銃スナイパーライフルを使っていた生徒は視野が広く援護射撃もとても上手でした」
 それぞれが感想を口にする。

「そこでだ。俺たちは前衛三人。後衛二人で行こうと思う」
「オールシップとは逆か」
「そうだ。で、まず前衛はジュリアスとレオリオそれからエミリアだ」
「え、私。ジン君じゃないの?」
 予想外だったのかエミリアは少し混乱しながら聞き返してきた。

「俺は相手の後衛に牽制する役目。でフェリシティーには相手のスナイパーを相手して貰いたい」
「それだとフェティーが一人になるよ」
「大丈夫だ。今回使い魔はフェリシティーのトアに出場して貰う」
「トアに!」
 流石のフェリシティーも驚いたようだな。

「そうだ。トア、主をしっかり守ってくれよ」
「クウッ!」
 俺の言葉が分かったのかトアは肉を食べながらも返事をした。

「で、前衛二人だがハルバート使いにはジュリアスが盾を使う剣士にはレオリオとエミリア二人で当たってくれ。もしもの時は俺が遊撃手となって前衛のサポートのも回るから」
「分かった」
「ああ、絶対倒してやるよ」
「任せて」
「私も全力で敵のスナイパーを倒してみせます」
 みんなが団結したところで俺たちは食堂をあとにした。さて午後からの試合が楽しみだ。


 時間も進んでいよいよ俺たちの初試合が始まる。

「ああ、血も涙も無い練習が蘇ってくる……危機察知向上のためにと朝は木刀で叩き起こされ、体力づくりだからと休みなしで全力ダッシュを100回。口答えするものなら拳や木刀での制裁。氷の雨にも負けず、刃の風にも負けず今まで本当に頑張ったな俺」
「思い出を捏造するな!」
「ぐへっ!」
「まったくいきなり思い出のナレーションを始めたかと思えば、全て自業自得だろ。平然と寝坊はするは、練習もサボろうとするは、屁理屈は口にする。挙句に模擬戦と登校時の記憶が混濁しているではないか!」
「そ、そうだったか」
 駄目だ。いきなりの右フックのせいで上手く喋れない。ジュリアスの奴めまた腕を上げたな。

「まあまあ二人とも、漫才はそこまでにして。早くステージに行こう。もう時間だよ」
「ま、待て!誰も私は漫才な――」
「おう、そうだな」
「お前も否定しろ!」
 まったくどうしてそんなに怒ってるんだ?そんなんじゃ恋人なんか出来ないぞ。

『次の試合のチームを紹介します。まずは一回戦で素晴らしい連携を見せてくれたチーム『オールシップ』!そして対戦相手は個人戦代表者もあるジュリアス君率いるチーム『AAAノーネーム』!』
 あの、俺も一応代表者なんだけど。

『それでは両チームリーダーから一言どうぞ!』
「先輩が相手でも俺たちは絶対に負けない!」
「誰が相手であろうと私たちは必ず勝ってみせる!」
『互いの闘志がぶつかりあっております。因みに実況は二年二組担任のミューラ・フォルスがお送りいたします』
 なんで団体戦だけ実況つきなんだ。誰も違和感とかないのかって普通に盛り上がってるし。

『それでは、主審の先生は試合開始の合図をお願いします!』
「それでは……試合開始です!」
 ミューラ先生に流されるまま試合が始まった。もう、分けが分からん。

「作戦通りに行くぞ!」
「「「おう!」」」
 ジュリアスの言葉にレオリオたちが答えながら各ターゲット目掛けて走っていった。さて、俺も自分の仕事をこなすとするかね。
 大きく横に展開した敵は近づいてくるエミリアたちに銃口を向けていた。

「攻撃させるわけないだろ」
「グアッ!」
 指で弾き飛ばしたパチンコ玉が相手の左肩に直撃するのを視界の端で確認した俺は反対側からジュリアスを狙うもう一人の敵にもパチンコ玉を弾き飛ばす。

「グッ!」
 お、コイツは声を抑え殺したか。だが、意味はないな。
 両手で二人の敵に向けてパチンコ玉を弾き飛ばし続ける。普通に接近して倒したほうが早いけど。それじゃ意味ないからな。今回はレオリオたちにこの試合の空気を身をもって知って貰い尚且つ、敵を倒して貰うのが目的だからな。

『おおっと、ジン選手!個人戦準決勝でも見せたパチンコ玉の攻撃で二人の敵をものの数分で倒してしまった!流石は個人戦代表選手だ!』
 一応覚えてはいたんだな。

『なんとジュリアス選手も敵を倒したぞ!始まって数分でオールシップの三名が早くもリタイアとなってしまったぞ!残り二人はこの後どうするのか!』
 なんとも好奇心を煽るのが上手い先生だな。実況アナウンサーにでもなった方が良かったんじゃないのか?なのでここからはミューラ先生の実況でお送り致します。

「俺たちは絶対に負けない!」
「グアッ!」
『おっとニミッツ選手の気合の一撃がレオリオ選手を吹き飛ばした!なんという力だああぁ!』
「よくもレオ君を!」
「チッ!」
『なんという一撃だ!華奢体で操る大槌からの一撃は地面にクレーターを作り上げたぞ!流石のミニッツ選手も顔を顰めているぞ!』
 思いのほかいい勝負だな。あの二人の実力から考えれば油断さえしなければ普通に勝てると思ったけがそうでもないか。流石は三組と言ったところか。

「ジュリアスもそう思うだろ?」
「試合中に寛ぐな馬鹿者!」
「グヘッ!」
『おっとこれはどういうことだ!?ジュリアス選手は何故か見方のジン選手を攻撃しているぞ!やはりジュリアス選手もジン選手が個人戦代表であることに不満なのか!』
「そうなのかジュリアス!」
「そんなわけあるか!先生もデタラメな事は言わないで下さい!」
『ごめんごめん、冗談だから。実況として盛り上げないとだから許して。ね?』
「はぁ……まったく勘弁してください」
「ジュリアス危ない!」
『オールシップの後衛ダーカ選手の一撃がジュリアス選手を襲った!しかし一瞬早く気がついたジン選手が庇ってどうにか回避したぞ!』
「チッ、勘の鋭いやつだな」
「ジュリアス大丈夫か?」
「あ、ああ……お前のお陰で掠り傷もない」
「そうか、それは良かった」
「っ!」
 まったく心配させるなよな。ん?なぜかジュリアスの顔が赤いがどうしたんだ?

『しかしそのせいでジン選手がジュリアス選手押し倒しているそんな光景です!まるでこれから禁断の行為が行われようとしている最中のようでだ!私も含め一部の女性にはご褒美です!』
「っ!早く離れろ馬鹿者!」
「グハッ!」
『おっと禁断の行為は惜しくも終わってしまったあああぁぁ!残念ながらジン選手のアプローチも失敗です!真に残念です』
「なにを言ってるんですか!」
『情報によりますとジン選手とジュリアス選手はおホモだちではないかという情報が入っております』
「先生、それも冗談ですよね?」
「いえ、事実です」
 あ、ジュリアスが完全に意気消沈してしまった。どうにかして戻ってきてくれ。

「てか、俺とジュリアスがおホモだちだったほうが良いのか?」
 ウンウン!!
 うわ、めっちゃ頷いてる。一部どころか大半の女子が目を輝かせながら頷いてるし。てかミューラ先生も興奮気味に頷いてるし。
 でもこれは使えるかもしれない。

「観客諸君俺たちを応援してくれ!そしたら俺とジュリアスが良いもの見せてやる!」
「ジン、何を言って――!」
『頑張れAAAノーネーム!負けるなAAAノーネーム!』
 一瞬にして演習場内がAAAノーネームの応援コールが轟く。どんだけだよ。

AAAノーネームAAAノーネームAAAノーネーム
 流石の俺もこれは予想外だな。ここまで腐女子が多いとは。流石はマンモス学園。

『凄い!凄いです!ジン選手の一言で演習場内の女子たちが一斉にAAAノーネームの応援を始めてしまいました!申し訳ありませんが一瞬だけ実況を止めます。頑張れAAAノーネーム!』
「ミューラ先生まで何を考えているんですか!」
「諦めろジュリアス。これが俺とお前の運命なんだ」
 そう呟きながら俺はジュリアスの首に手を回す。

「お、お前も何を考えて――」
『キャー!!』
 うん、オールシップの連中も流石に戸惑っているな。観客への小さなご褒美はこれぐらいで良いだろう。

「レオリオ、エミリア、フェリシティー今のうちに倒せ!」
「「「了解!」」」
 戸惑いを隠せない残り二人を倒すことはレオリオたちにとって造作も無く呆気なく試合は終了した。

「勝者、チーム『AAAノーネーム』!」
 その瞬間、拍手喝采が轟いた。ま、褒め称えるものではなくどう見てもご褒美目当てだと分かるけど。
 さて、どうしたものか。少し悪ふざけが過ぎたな。完全にジュリアスは殺気立ってるしこのまま近づけば間違いなく俺は殺される。だがこのまま逃げれば間違いなく腐女子たちに殺されるまで追い回されるだろう。生きていられるか分からないが今後の事を考えるなら。

「ジュリアス」
「近づけば殺す」
 馬鹿者も言わず完全に処刑宣告。うん、死ぬな。

「後で殺されてやる。だから今は我慢してくれ」
「……分かった……」
 なんとか今は殺されずにすみそうだ。
 正直俺としてはありがたい。ジュリアスが本当は女であることを知っているのはここでは俺だけだ。そんなジュリアスに触れるのは持っても無いチャンス!
 と、言ったものの。どんなことをすれば良いんだ?ここは腐女子代表としてミューラ先生に聞くしかないか。

「ミューラ先生」
『なに?』
「良いモノって言ったけど何すればいい?」
『それはつまり私が望むシチュをやってくれると言うことかしら!』
「あ、ああ……」
 聞く相手間違えたかもしれない。完全に目が血走っている。

『そ、そうですね!とても悩みだろではあるけどやはりここは後ろから抱きしめて貰いましょうか!』
「後ろから抱きしめれば良いんだな」
 こんな感じか?BL漫画なんか前世でも読んだことなんてないから全然分からん。

『そうです!で、最後は肩に顎を乗せてみましょうか!』
 もう少し興奮を抑えてから言ってくれ。でもま、こんな感じか。

『キャアアアアアァァ!!!』
 うわっ、すげぇ歓声だな。そんなに良いのか。でもやっぱりジュリアスも女だな。

「すっげぇ良い匂いがする」
「っ!」
『キャアアアアアァァ!!!』
「いい加減離れろ!」
「痛って!」
 思いっきり突き飛ばしたジュリアスは恥ずかしさのあまりか逃げ出してしまった。こりゃ後で死ぬな俺。
 勝利と羞恥を手にして俺たちはステージを後にした。
 今日の日程が終わり生徒たちがそれぞれ自由行動となった。女子の間では真壁たちの話題が霞むほど俺とジュリアスの話題で持ちきりだった。
 で、俺はというと部屋に戻るなりジュリアスの制裁によって虫の息状態と化していた。ヤバイ本当に死ぬ。

「まったくお前のせいでとんだ恥をかいたではにか!」
「本当に悪かった」
「む、正直に謝られると調子が狂うな……」
「でも、これでお前が女だって微塵も考える奴は居ないだろうな」
「ジン、まさかそのために……」
「勿論考えなかったわけじゃないが。観客を見方につければレオリオたちも少しは闘いやすくなるだろうと思っただけだ。ま、その結果ジュリアスを辱めたことは確かだけどな」
「………」
「ん?どうかしたのか?」
「お前はそれで良いのか?」
「何がだ?」
「今回の事でお前が男好きだって思われたらどうするんだ?」
「別に気にしないな。それにあれはどう見ても俺の悪ふざけだって思われるだろうし」
「そ、そうか」
 別にジュリアスが気にしなくてもいいんだけどな。ま、それを言ったところで直ぐに直るものじゃないんだけど。

「さて俺は風呂に入って寝るとするか」
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