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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第三十二話 依頼達成
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「ど、どうしたの?」
我慢できなかったのかルーチェが話しかける。
「これを見てください」
シェーミがスマホの記事を俺たちに見せてきた。そこにはスヴェルニ王国で2年に1度開催されている学生たちによる武闘大会のスヴェルニ学園代表選抜の個人成績が表示されていた。
各校の代表の決め方はある程度同じで、スヴェルニ学園は学科別代表選抜、学園代表選抜を勝ち抜いた生徒が学園の代表として二学期に行われる。と言うか現在真っ最中の武闘大会に出場する事が出来る。
俺たちの中で言えば、一次予選、二次予選を勝ち抜いた生徒が本選に出場出来るってイメージだ。
そしてスヴェルニ王国でも優秀な生徒が集まることで有名なスヴェルニ学園。その学園の有名人と言えばルーベンハイト家の令嬢だろう。
魔力量、魔法属性の数とずば抜けており、戦闘センスも高く努力も惜しまない学園最強の女帝にして神童と噂されている存在だ。
その証拠に前回の武闘大会では一次予選、二次予選は全勝の1位通過。本選でも見事優勝を果たしている。
またその凛々しい美貌から男女問わずファンも沢山いる同世代の中では一番の有名人と言える存在だ。
しかし今回の学園代表選抜では10勝1敗と2位で学園代表となっていた。
そんな彼女に勝利したのがなんとジンだった。
その事実に俺たちは困惑していた。
「お、おい。これってどう言う事だ?ジンがあの神童に勝ったって事なのか?」
「それ以外ないでしょ!」
「下に試合結果の内容が書いてあります!」
「えっとなになに……序盤は両者の力は互角で試合は動かないと思われたが、軍務科4年1組イザベラ・レイジュ・ルーベンハイト選手の火、水、風、土、雷、光の上級魔法を同時発動するだけでなく、火と土、雷と光、水と風をそれぞれ合わせた融合魔法を見せつけ、尚且つ予想外とも言える奇策で、対戦相手の冒険科4年11組オニガワラ・ジン選手を翻弄し、誰もが勝利を確信したが、ずば抜けたタフネスさと強靭な精神力で立ち上がったジン選手はこまでに無いほどの力を発揮して見事イザベラ選手を場外&気絶による戦闘不能で勝利をおさめた。だってよ……」
「判定勝ちとかじゃなくて、あの神童を戦闘不能にして勝ったのか」
「信じられない……」
実力主義のこの帝国で魔力が無いと言うことは、完全な負け犬。能無し以下の存在と言っても過言ではない。
そんなジンがまさか世界的に有名な神童を倒した男だったとは思いもしなかった。
もう、これは迷う理由は無い。いや、この事実を知る前からジンをギルドにスカウトする事は俺たちの中で決まっていたが、この結果を知ったら是が非でも入って欲しい。
「明日、朝食の後にでもスカウトしてみる」
「そうね!少しでも早いほうがいいわ!」
ルーチェたちも俺の意見に賛成なようだ。
************************
9月23日日曜日。
まさか俺がここまで真面目に働いているとは思いもしなかった。
前世では日曜日は休日。ま、こっちでも休日だけど。
社畜として働いて居た時は日曜日も殆ど出勤していたっけ。ま、有給で休んだりしてたけど。そんな俺がまた休日に働くなんてな。
でもやはりモチベーション的には段違いだ。無理やり働かされるのと自分の意思で働くのでは天と地以上の差がある。
だからそこまで憂鬱でもないし、朝食だったすんなり喉を通る。
だけど少しだけ居心地が悪い。さっきからずっとこっちの様子を窺うような視線をロットたちが向けてくる。俺は別になにかした覚えは無いんだが。
それでも最初は無視していた。だけど流石にせっかくの食事が不味くなりそうだな。
「俺に何か用でもあるのか?」
そんな俺の言葉に身体をビクッとさせる。分かり易いな。
「い、いや、なんでもない。だから気にするな」
気にするなって。あのな。
「全員にチラチラと様子を窺うような視線を向けられたら誰だって気になるだろうが。言いたい事があるのならさっさと言ってくれないか」
「はぁ……そうだな。悪かった」
ようやく観念したか。
サンドイッチを食べるのを中断して俺はロットの話に集中する。
「それで話ってのは?」
「ジン、俺たちのギルドにこないか?」
「え?」
「初めてアイテムボックス持ちと知った時仲間に欲しいと思った。だけど魔力が無いと知った時考え直そうとも思ったが、昨日の戦いとスヴェルニ学園での結果を見たらお前ほどの逸材を放置するわけにはいかない。どうだ悪い話じゃないだろ?」
まさかスカウトの話だったとは。また何かやらかしたのかと思ってしまったじゃないか。
「確かに俺はフリーの冒険者だ。今後依頼をこなすにしてもフリーでは受けられない依頼だって出てくる。それを考えるなら確かにその話はありがたい」
「なら!」
「だけど悪いな。俺は自分のギルドを立ち上げることにした。既に仲間も1人確保してるし、なにより拠点となるビルも購入しちまったからな」
「そうか……」
「悪いな」
正直に言えばこいつ等の事は嫌いじゃない。だから俺がギルドを立ち上げる気になる前だったら喜んで入った。少し遅かっただけなのだ。
良い話を断るのは忍びないが、それでも俺は自分のギルドを立ち上げると決めたのだ。
朝食を終えた俺たちはホテルを出てハンヴィーで届け先である工場へと向かった。
対向車の殆どが俺たちと同じ軍用車か大型トラックばかりだ。
建ち並ぶビルも家電や武器と言った物ばかりが販売する企業ばかり。
20分程して到着したのは街外れの大きな工場だった。
車を降りると何かを削ったりしているような研磨音が外まで聞こえてくる。
中に入るとそこには外とは比べ物にならないほどの騒音が耳に届く。煩すぎて耳が馬鹿になりそうだ。
「レント!」
「ん?ぉおお!ロットか!随分と早いな!」
ベージュの短髪男性に話しかけるロット。関係からして知り合いのようだ。それにしてもこの騒音のなか良く話せるな。慣れているからか?
「頼まれていたレメント鉱石を持ってきたぞ」
「悪いな。なら今すぐに部下にでも運ばせるよ。お――」
「いや、その必要はないぜ」
「ん?どういうことだ?」
「ジン」
「なんだ?」
呼ばれたので前に行く。
「初めて見る顔だな。新しいメンバーか?」
「そうじゃない。ジン、悪いが挨拶してくれ」
「分かった。俺は仁。鬼瓦仁だ。最近冒険者になったばかりのフリーのEランク冒険者だ」
「フリーの冒険者だと。おいおいどう言う事だ?」
「実はこいつアイテムボックス持ちなんだ」
「なに!?」
信じられないと言わんばかりに驚愕の表情を浮かべる。ま、アイテムボックス持ちは希少だからな。当たり前の反応と言えるか。
「この依頼を受けてどうするかって時に偶然知り合ってな。救援依頼って事で引き受けて受けた」
「なるほど。俺の名前はレント・ハーヴ。ヴェルリン重工で現場監督を任されてる。ロットとはこの依頼の常連でな。こっちに別の依頼で来た時なんかたまに飲んだりする仲だ」
なるほど通りで親しそうだったわけだ。
「それで俺はどこにおけば良いんだ?」
「それならあっちの3番倉庫置いてくれ」
「分かった」
さっそく3番倉庫にレメント鉱石が入ったコンテナをアイテムボックスから取り出して置く。ま、取り出すって言うよりかは、出現させたって感じだけど。
すぐさまレントの部下が中身を確認してレントに報告する。
「問題ありません」
「分かった。ほら、これが依頼達成の証書だ」
「確かに。それじゃ俺たちはこれで帰るぜ」
「ああ、また依頼をした時は頼むぜ」
「任せろ」
そうロットは言うと俺たちはハンヴィーに乗って工場を後にした。
色んな工場が建ち並び黒煙を立ち上らせる。環境には悪いだろうが、自然破壊は人間の発展には必ずあるものだ。と言うよりも現在の技術力では切っても切り離せないと言うべきだろう。
ま、色々と技術が発展すればその必要も無くなるかもしれないが。
「それでこれからどうするんだ?」
「冒険者組合に向かう」
「そう言えば、依頼者が近くにいる場合は依頼者が組合側に報告するんじゃないのか?」
「確かに大半がそのケースだろうな。だけど今回みたいな救援依頼や他の場所へ荷物を届ける場合は証書の方が手っ取り早いんだ」
「なんでだ?」
「冒険者組合支部の管轄は国の領の広さって決まっている。ま、あまりにも広かったりしたら2つあったりする場合もあるけどな。依頼達成の報告をすると一旦、依頼を受けた支部に報告されるわけだが、そうすると他の支部にその事が伝わるのが数日後だったりするんだ。そうすると他の支部で依頼を達成報酬が貰えなかったりする」
「だけど銀行振り込みだろ。だったら別に問題ないんじゃないのか?」
「確かにそうなんだが、依頼達成時のお金はギルド専用の口座に振り込まれる仕組みになっている。そしてその口座を利用できるのはギルドマスターだけ。だから今回みたいに援助依頼がある場合は直ぐにはお金を支払うことが出来なくなるんだ。そうすると援助依頼を受けた冒険者を待たせる事になる。そしてそれは冒険者に信頼して貰えなくなる危険性だって出てくるわけだ」
「なるほど」
「だからまずはこの証書をここの冒険者組合に持っていって依頼達成を報告すると同時に救援依頼の達成も報告するそうすれば直ぐに報酬を救援依頼を受けてくれた冒険者に支払えるのと同時にギルド専用の口座に振り込まれるって仕組みだ」
「そう言うことか」
行っている依頼は同じでも、依頼内容が別物って事か。
ロットたちはレメント鉱石を届ける依頼を受けて。俺はそんなロットたちの手伝いをするって依頼を受けている。一緒に行動していても依頼内容が違えば金銭に動きが変わってくるってわけか。勉強になるな。
「でもそれってロットが救援依頼を達成した事を冒険者組合に報告すれば済む話じゃないのか?」
「確かにそうなんだが、昔それで事件があったんだ」
「事件?」
「所謂詐欺ってやつだな。目の前で電話をする不利をして電話をしなかったのさ。で、後になってお金が振り込まれて無い事に気がついた冒険者が訴えようとしたが、その時には既に救援依頼を出したギルドは姿を消していたってな。で、だから信頼を得て今後の関係を築きたい奴らは証書で依頼達成を行うのさ」
「なるほどな」
だけど、それって騙した奴は騙した奴で馬鹿だが、騙された奴も馬鹿だろ。依頼達成すれば組合から連絡があるんだから、それを確認すれば済む話だろうに。きっと騙された奴は相当のお人よしか、経験が浅い新人だったに違いない。
そんな事件を起こさないために俺たちは冒険者組合レペス支部へとやって来た。
受付嬢に今回の依頼と救援依頼達成を報告のため証書を渡す。
「はい、確認しました。それでは報酬はどうなさいますか?」
「俺たちは振込みだけどジンはどうする?」
「俺も振込みで頼む。いや、やっぱり現金で受け取る事にする。ちょっと欲しい物があるからな」
「分かりました。それではこちらが今回の救援依頼報酬になります」
マネートレーに乗せて渡された6万5000RKを俺は受け取った。
少しだけ金額が上がっていたのは救援達成の報酬だろう。え?少なくないかって?ま、今回はレメント鉱石の配達依頼達成の一部を貰うって形で依頼を受けているからこんなものだ。
念のためにポイントを見てみると残り179ポイントになっていた。
「確かに依頼達成を確認したぞ」
「よし。それじゃ次は盗賊集団の報告だな」
そう言えばそんな事もあったな。
ロットは直ぐに受付嬢にその事を報告する。
「分かりました。それでは確認できる物をお持ちですか?」
「ああ、死体がある」
「し、死体ですか。分かりました。それではあちらの部屋で出して貰っても構いませんか?」
「分かった」
俺たちは別室に向かって死体を出すことになった。
こんな場所で死体を出すわけにはいかないよな。
別室に行くなり男性の冒険者組合職員がやっていた。
「話を聞いています。それで死体はどこですか?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
現在の鬼瓦人の総資産。
援助依頼達成報酬 +6万5000RK
残高64万2426RK
5階建てビル
我慢できなかったのかルーチェが話しかける。
「これを見てください」
シェーミがスマホの記事を俺たちに見せてきた。そこにはスヴェルニ王国で2年に1度開催されている学生たちによる武闘大会のスヴェルニ学園代表選抜の個人成績が表示されていた。
各校の代表の決め方はある程度同じで、スヴェルニ学園は学科別代表選抜、学園代表選抜を勝ち抜いた生徒が学園の代表として二学期に行われる。と言うか現在真っ最中の武闘大会に出場する事が出来る。
俺たちの中で言えば、一次予選、二次予選を勝ち抜いた生徒が本選に出場出来るってイメージだ。
そしてスヴェルニ王国でも優秀な生徒が集まることで有名なスヴェルニ学園。その学園の有名人と言えばルーベンハイト家の令嬢だろう。
魔力量、魔法属性の数とずば抜けており、戦闘センスも高く努力も惜しまない学園最強の女帝にして神童と噂されている存在だ。
その証拠に前回の武闘大会では一次予選、二次予選は全勝の1位通過。本選でも見事優勝を果たしている。
またその凛々しい美貌から男女問わずファンも沢山いる同世代の中では一番の有名人と言える存在だ。
しかし今回の学園代表選抜では10勝1敗と2位で学園代表となっていた。
そんな彼女に勝利したのがなんとジンだった。
その事実に俺たちは困惑していた。
「お、おい。これってどう言う事だ?ジンがあの神童に勝ったって事なのか?」
「それ以外ないでしょ!」
「下に試合結果の内容が書いてあります!」
「えっとなになに……序盤は両者の力は互角で試合は動かないと思われたが、軍務科4年1組イザベラ・レイジュ・ルーベンハイト選手の火、水、風、土、雷、光の上級魔法を同時発動するだけでなく、火と土、雷と光、水と風をそれぞれ合わせた融合魔法を見せつけ、尚且つ予想外とも言える奇策で、対戦相手の冒険科4年11組オニガワラ・ジン選手を翻弄し、誰もが勝利を確信したが、ずば抜けたタフネスさと強靭な精神力で立ち上がったジン選手はこまでに無いほどの力を発揮して見事イザベラ選手を場外&気絶による戦闘不能で勝利をおさめた。だってよ……」
「判定勝ちとかじゃなくて、あの神童を戦闘不能にして勝ったのか」
「信じられない……」
実力主義のこの帝国で魔力が無いと言うことは、完全な負け犬。能無し以下の存在と言っても過言ではない。
そんなジンがまさか世界的に有名な神童を倒した男だったとは思いもしなかった。
もう、これは迷う理由は無い。いや、この事実を知る前からジンをギルドにスカウトする事は俺たちの中で決まっていたが、この結果を知ったら是が非でも入って欲しい。
「明日、朝食の後にでもスカウトしてみる」
「そうね!少しでも早いほうがいいわ!」
ルーチェたちも俺の意見に賛成なようだ。
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9月23日日曜日。
まさか俺がここまで真面目に働いているとは思いもしなかった。
前世では日曜日は休日。ま、こっちでも休日だけど。
社畜として働いて居た時は日曜日も殆ど出勤していたっけ。ま、有給で休んだりしてたけど。そんな俺がまた休日に働くなんてな。
でもやはりモチベーション的には段違いだ。無理やり働かされるのと自分の意思で働くのでは天と地以上の差がある。
だからそこまで憂鬱でもないし、朝食だったすんなり喉を通る。
だけど少しだけ居心地が悪い。さっきからずっとこっちの様子を窺うような視線をロットたちが向けてくる。俺は別になにかした覚えは無いんだが。
それでも最初は無視していた。だけど流石にせっかくの食事が不味くなりそうだな。
「俺に何か用でもあるのか?」
そんな俺の言葉に身体をビクッとさせる。分かり易いな。
「い、いや、なんでもない。だから気にするな」
気にするなって。あのな。
「全員にチラチラと様子を窺うような視線を向けられたら誰だって気になるだろうが。言いたい事があるのならさっさと言ってくれないか」
「はぁ……そうだな。悪かった」
ようやく観念したか。
サンドイッチを食べるのを中断して俺はロットの話に集中する。
「それで話ってのは?」
「ジン、俺たちのギルドにこないか?」
「え?」
「初めてアイテムボックス持ちと知った時仲間に欲しいと思った。だけど魔力が無いと知った時考え直そうとも思ったが、昨日の戦いとスヴェルニ学園での結果を見たらお前ほどの逸材を放置するわけにはいかない。どうだ悪い話じゃないだろ?」
まさかスカウトの話だったとは。また何かやらかしたのかと思ってしまったじゃないか。
「確かに俺はフリーの冒険者だ。今後依頼をこなすにしてもフリーでは受けられない依頼だって出てくる。それを考えるなら確かにその話はありがたい」
「なら!」
「だけど悪いな。俺は自分のギルドを立ち上げることにした。既に仲間も1人確保してるし、なにより拠点となるビルも購入しちまったからな」
「そうか……」
「悪いな」
正直に言えばこいつ等の事は嫌いじゃない。だから俺がギルドを立ち上げる気になる前だったら喜んで入った。少し遅かっただけなのだ。
良い話を断るのは忍びないが、それでも俺は自分のギルドを立ち上げると決めたのだ。
朝食を終えた俺たちはホテルを出てハンヴィーで届け先である工場へと向かった。
対向車の殆どが俺たちと同じ軍用車か大型トラックばかりだ。
建ち並ぶビルも家電や武器と言った物ばかりが販売する企業ばかり。
20分程して到着したのは街外れの大きな工場だった。
車を降りると何かを削ったりしているような研磨音が外まで聞こえてくる。
中に入るとそこには外とは比べ物にならないほどの騒音が耳に届く。煩すぎて耳が馬鹿になりそうだ。
「レント!」
「ん?ぉおお!ロットか!随分と早いな!」
ベージュの短髪男性に話しかけるロット。関係からして知り合いのようだ。それにしてもこの騒音のなか良く話せるな。慣れているからか?
「頼まれていたレメント鉱石を持ってきたぞ」
「悪いな。なら今すぐに部下にでも運ばせるよ。お――」
「いや、その必要はないぜ」
「ん?どういうことだ?」
「ジン」
「なんだ?」
呼ばれたので前に行く。
「初めて見る顔だな。新しいメンバーか?」
「そうじゃない。ジン、悪いが挨拶してくれ」
「分かった。俺は仁。鬼瓦仁だ。最近冒険者になったばかりのフリーのEランク冒険者だ」
「フリーの冒険者だと。おいおいどう言う事だ?」
「実はこいつアイテムボックス持ちなんだ」
「なに!?」
信じられないと言わんばかりに驚愕の表情を浮かべる。ま、アイテムボックス持ちは希少だからな。当たり前の反応と言えるか。
「この依頼を受けてどうするかって時に偶然知り合ってな。救援依頼って事で引き受けて受けた」
「なるほど。俺の名前はレント・ハーヴ。ヴェルリン重工で現場監督を任されてる。ロットとはこの依頼の常連でな。こっちに別の依頼で来た時なんかたまに飲んだりする仲だ」
なるほど通りで親しそうだったわけだ。
「それで俺はどこにおけば良いんだ?」
「それならあっちの3番倉庫置いてくれ」
「分かった」
さっそく3番倉庫にレメント鉱石が入ったコンテナをアイテムボックスから取り出して置く。ま、取り出すって言うよりかは、出現させたって感じだけど。
すぐさまレントの部下が中身を確認してレントに報告する。
「問題ありません」
「分かった。ほら、これが依頼達成の証書だ」
「確かに。それじゃ俺たちはこれで帰るぜ」
「ああ、また依頼をした時は頼むぜ」
「任せろ」
そうロットは言うと俺たちはハンヴィーに乗って工場を後にした。
色んな工場が建ち並び黒煙を立ち上らせる。環境には悪いだろうが、自然破壊は人間の発展には必ずあるものだ。と言うよりも現在の技術力では切っても切り離せないと言うべきだろう。
ま、色々と技術が発展すればその必要も無くなるかもしれないが。
「それでこれからどうするんだ?」
「冒険者組合に向かう」
「そう言えば、依頼者が近くにいる場合は依頼者が組合側に報告するんじゃないのか?」
「確かに大半がそのケースだろうな。だけど今回みたいな救援依頼や他の場所へ荷物を届ける場合は証書の方が手っ取り早いんだ」
「なんでだ?」
「冒険者組合支部の管轄は国の領の広さって決まっている。ま、あまりにも広かったりしたら2つあったりする場合もあるけどな。依頼達成の報告をすると一旦、依頼を受けた支部に報告されるわけだが、そうすると他の支部にその事が伝わるのが数日後だったりするんだ。そうすると他の支部で依頼を達成報酬が貰えなかったりする」
「だけど銀行振り込みだろ。だったら別に問題ないんじゃないのか?」
「確かにそうなんだが、依頼達成時のお金はギルド専用の口座に振り込まれる仕組みになっている。そしてその口座を利用できるのはギルドマスターだけ。だから今回みたいに援助依頼がある場合は直ぐにはお金を支払うことが出来なくなるんだ。そうすると援助依頼を受けた冒険者を待たせる事になる。そしてそれは冒険者に信頼して貰えなくなる危険性だって出てくるわけだ」
「なるほど」
「だからまずはこの証書をここの冒険者組合に持っていって依頼達成を報告すると同時に救援依頼の達成も報告するそうすれば直ぐに報酬を救援依頼を受けてくれた冒険者に支払えるのと同時にギルド専用の口座に振り込まれるって仕組みだ」
「そう言うことか」
行っている依頼は同じでも、依頼内容が別物って事か。
ロットたちはレメント鉱石を届ける依頼を受けて。俺はそんなロットたちの手伝いをするって依頼を受けている。一緒に行動していても依頼内容が違えば金銭に動きが変わってくるってわけか。勉強になるな。
「でもそれってロットが救援依頼を達成した事を冒険者組合に報告すれば済む話じゃないのか?」
「確かにそうなんだが、昔それで事件があったんだ」
「事件?」
「所謂詐欺ってやつだな。目の前で電話をする不利をして電話をしなかったのさ。で、後になってお金が振り込まれて無い事に気がついた冒険者が訴えようとしたが、その時には既に救援依頼を出したギルドは姿を消していたってな。で、だから信頼を得て今後の関係を築きたい奴らは証書で依頼達成を行うのさ」
「なるほどな」
だけど、それって騙した奴は騙した奴で馬鹿だが、騙された奴も馬鹿だろ。依頼達成すれば組合から連絡があるんだから、それを確認すれば済む話だろうに。きっと騙された奴は相当のお人よしか、経験が浅い新人だったに違いない。
そんな事件を起こさないために俺たちは冒険者組合レペス支部へとやって来た。
受付嬢に今回の依頼と救援依頼達成を報告のため証書を渡す。
「はい、確認しました。それでは報酬はどうなさいますか?」
「俺たちは振込みだけどジンはどうする?」
「俺も振込みで頼む。いや、やっぱり現金で受け取る事にする。ちょっと欲しい物があるからな」
「分かりました。それではこちらが今回の救援依頼報酬になります」
マネートレーに乗せて渡された6万5000RKを俺は受け取った。
少しだけ金額が上がっていたのは救援達成の報酬だろう。え?少なくないかって?ま、今回はレメント鉱石の配達依頼達成の一部を貰うって形で依頼を受けているからこんなものだ。
念のためにポイントを見てみると残り179ポイントになっていた。
「確かに依頼達成を確認したぞ」
「よし。それじゃ次は盗賊集団の報告だな」
そう言えばそんな事もあったな。
ロットは直ぐに受付嬢にその事を報告する。
「分かりました。それでは確認できる物をお持ちですか?」
「ああ、死体がある」
「し、死体ですか。分かりました。それではあちらの部屋で出して貰っても構いませんか?」
「分かった」
俺たちは別室に向かって死体を出すことになった。
こんな場所で死体を出すわけにはいかないよな。
別室に行くなり男性の冒険者組合職員がやっていた。
「話を聞いています。それで死体はどこですか?」
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帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
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