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第三章 魔力無し転生者はランクを上げていく
第六十四話 眠りし帝国最強皇女 ㉟
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戦いが終わり、現在俺は戦闘ヘリに乗って左脚の治療を受けていた。
目の前ではボルキュス陛下の命令でやって来た人たちがライアンの指示の元、公園の調査を行っていた。
大半が軍人だが、その中には研究者と思われる人物も居た。
ジャンヌも隣の戦闘ヘリに乗って休んでいる。
命に別状はないが俺よりも酷い怪我らしく直ぐに病院に行って精密検査をしなければならないらしい。しかしもう少しこの場所を眺めていたいと言うジャンヌの要望で病院に向かっていない。
そのためジャンヌは治癒魔法で簡単な治療を受けている最中のようだ。因みに俺に対しては治癒魔法が使えないので止血用の粉薬を傷口に振りかけて包帯を巻いているだけだ。あの薬止血には良いらしいが、掛けられる時超痛い。思わず声が漏れたぐらいだからな。
それとリュドの遺体も俺とジャンヌが乗っている戦闘ヘリとは別の戦闘ヘリに乗せられている。奴の重さから考えて操縦士以外が乗ると飛べないそうだ。ま、あれだけの巨大じゃ無理だろうな。
「やあ、ジン君」
先ほどまで戦場だった現場を眺めているとライアンが話しかけて来た。
「怪我は痛むかい?」
「いや、大したことはない。明日には治って冒険者活動が出来る」
「相変わらず、ずば抜けた回復力だね」
シャルロットの時も直ぐ退院した事を知っているライアンはそう言って来た。ま、口調からして信じてはないだろが。
「それよりも俺と話していて大丈夫なのか?」
まだ現場調査は終わっていないにも拘わらず俺と話していたは拙いと思うが。
「被害者の事情聴取だから大丈夫だよ」
なるほど、そう言う建前か。
俺が察している事に察したライアンは帽子脱ぐと感謝の言葉を口にした。
「シャルロットだけじゃなくジャンヌまで助けてくれてありがとう」
「俺は冒険者として依頼を熟しただけだ。だからお礼を言われるような事じゃない」
「それでも1人の家族、人として感謝しているんだ。この場には部下たちがいるから頭を下げれないけど感謝の気持ちだけは伝えたくてね」
「ま、ライアン殿下がそう言うなら」
感謝されて嫌な人間なんていない。ほんと出来た皇子様だよ。あのクソったれな第3王子にも見習って欲しいぜ。
「それじゃ僕はまだ仕事があるから」
「また、皇宮で努力の強者さん」
「どういう意味だい?」
立ち去ろうとしたライアンは俺の言葉に疑問に感じたのか立ち去るのを止め振り返る。
「実はな――」
俺は改めてライアンに説明した。
どうしてリュドの野郎がこんな事をしでかしたのか出来るだけ事細かに説明したのだ。
「なるほど。そう言うことだったんだ……」
どこか共感できる部分でもあったのか、ライアンの顔に影が落ちる。
「もしかしたら環境が違えば僕も彼みたいになっていたかもしれないね」
「かもな。だけどライアン殿下は今もなおジャンヌ皇女殿下を追い抜こうとしている。強くなるために努力する。と言う点においてライアン殿下は間違いなくリュドだけじゃなくジャンヌの上を行く強者だ」
「そんな風に言われると恥ずかしいな。僕はただ兄として1人の男として負けたくないと思っただけなんだけどな」
気恥ずかしいのか若干頬を赤くしたライアン殿下は後頭部を掻きながら照れ臭そうに答える。
「理由なんてなんだって良い。それを今も続けている事が凄いんだ。だからこそライアンお前は努力する強者なんだ」
「そうかな」
「ああ。それに強者と言う立場に居る者にとって一番嬉しい事はまだ会ったことも無い強者と出会った事じゃない。下から自分を追いかけて追い抜こうと努力している奴が居る事なんだ」
「そうなのかい?」
意外だと目を見開けたライアンは怪訝な表情を浮かべ直して問い返してくる。
「だってそうだろ?強いと信じてくれている。そしてそれでもなお見放す事無く追い続けてくれている。これほど心強く、嬉しく感じる事はないからな」
「そうか……」
戦闘力の図式があるなら間違いなくその図式はピラミッド型だろう。
そしてそれは上に行けば行くほど孤独と感じる事が多くなる。
同等の強さを持った強者に出くわせば歓喜するのは間違いない。だがそんないつ会えるか分からない不確定要素しかない事を信じ続けるのは難しい。だが自分を追い抜こうとしている人物が居ると知っているだけで心は腐らないものだ。
まさに爺ちゃんの言った言葉通りだな。
人は1人でも生きていこうと思えば生きて行ける。だが心は1では生きて行けない。
「だから、ライアン殿下もいつまでもジャンヌ皇女殿下を追いかけ、そしていつか追い抜いてくれ」
「ああ、分かったよ」
互いに笑みを浮かべた俺たちは拳を突き合わせる。
話は終わりライアンは現場監督としての仕事に戻るため立ち去ろうとしたが、
「あ、それと――」
何かを思い出したのかライアンは俺の耳元に顔を近づけると俺にしか聞こえない小さな声で呟いた。
「(今回の事は僕だけじゃなく家族全員が君に感謝している。だから間違いなく指名依頼の依頼料は契約時に決めた金額よりも多く支払われるはずだよ)」
ほほぉ、それは良い事を聞いた。やはり人助けはするものだな。こんな素晴らしい話が聞けるんだから。
契約時に決めた金額は依頼内容が長期間である事、また相手が皇族である事を踏まえて150万RKと言う破格の金額だった。
以前、ボルキュス陛下から請けた依頼に比べれば安いと感じるかもしれないが、今回は探索や討伐系の依頼じゃなかった事もあり命の危険性が低いと言う冒険者組合の判断だったからだ。だがこれだけの事件が起きたんだ。既にマスコミも駆けつけて来ている。
頼むから目立たない事を祈ろう。いや、無理か?
皇宮に戻ってこれたのはライアンと話してから1時間が経過した後だった。まったくジャンヌの奴め、怪我人だって事を忘れていただろ。
俺は平気だったが、ボルキュス陛下やレティシアさん、特に事情を知ったシャルロットにお風呂に入る事を禁止されてしまった。この程度の怪我あの島では日常茶飯事だったから構わないんだがな。
因みにジャンヌは病院に連れていかれた。ま、外傷は少ないが万が一って事もあるしな。俺も病院に行くよう言われたが、面倒なのでどうにか断った。
心配してくれる皇族陣をどうにか説得するのは大変だったぜ。その甲斐もあって現在俺は寝室でメイドたちが用意してくれたタオルとお湯で体を拭いているわけだ。
体を拭き終わった俺は夕食まで寝させて貰う事にした。流石に疲れた。
夕食を終え、寝室で寛いでいるとドアがノックされる。
ドア向こうから感じる気配で誰なのか分かっているが、俺は常識としてドア向こうに立っている人物に問いかける。
「誰だ?」
「ジャンヌだ。入るぞ」
「ああ」
普通は入って良いか?じゃないだろうか。ま、別に見られて困るような物は置いていないし、慌てる状況でも無いので構わないが。
ドアを開けて入って来ると夕食時に見た時と同じ普段着姿のジャンヌは部屋に置いてあった椅子を動かして俺と対面する形で座る。なんだこの状況は。
「それで急に入ってきてどうしたんだ?」
俺は他愛もない話をする気が一切ないと言う事を伝えるためさっさと本題へ移動する。
「公園でのお礼を言って無かったと思ってな……」
ちゃんとしたお礼を言った事が無いのだろう。気恥ずかしそうに言ってくる。
なんだろう、堂々としていて気品に溢れていて凛々しいと感じる事もたまにあったが、俺が知っている普段のジャンヌは気の強い女性と言うイメージだ。
だが今のジャンヌはどれにも当てはまらない。どこかぎこちない。だからなのかこっちも落ち着かない。
しかしこっちまで態度を変えると話が進まないので平静を装って返事をする。
「別に気にする事じゃない。俺は依頼を熟しただけだからな」
うん、この答え数時間前にもライアンに言った気がする。と言うかこれ以外の答え方が分からない。
「そうだったな!貴様は仕事でしか私を助けない冷徹漢だったな!」
何故か分からないが急に怒り出してしまった。またか。ジャンヌの寝室の時もそうだったな。いったい何が気に喰わなかったのか知らないが、このままでは話が進まないからな。返事をさせて貰うぞ。
「確かに今回は依頼を請けたから仕事として助けた。それが冒険者として生きる俺の信念だからだ。だけどもう俺とジャンヌは友達だ。友達が危険な目に合っていたら無条件で助けるつもりだ」
「それは本当か?」
顔を合わせようとはしないジャンヌだが視線だけはこちらに向けている。まるで様子を窺っているようだ。
「勿論だ」
ま、俺としては嘘を言ったつもりは無いので肯定の返事をする。
「そうか」
何故か分からないが、ジャンヌの表情が柔らかくなった気がする。こっちを向いていないので確実ではないが。
「だが、私と貴様が友達とは随分と言い身分だな」
「あ」
そうだった。俺とジャンヌは今仕事上一緒に居るが本来は皇族と平民と言う立場の人間だ。
地位に圧倒的差がある中で平民である俺から友達宣言なんてするのはどう考えても不敬でしかない。真面目なジャンヌの事だ、最悪侮辱罪で捕まる恐れだってある。さ、最悪だ!
「ま、今回の件で助けて貰った恩もある。だから友達と認めてやる」
あ、あれ?これはもしかして大丈夫ってことなんだろうか。
疑問に感じながらジャンヌに視線を向けるが、さっきよりも首を回してこっちを見ようとしない。若干だが耳が赤いような気もする。それよりもそんなに首を回したら首の骨が折れるぞ。
「だからプライベートであれば、呼び捨てで呼ぶ事を許す。それが友達と言うものだからな」
ああ、なるほど。ようやく理解出来た。
ジャンヌは真面目過ぎるのだ。
もっと力を抜けば良いのにと思うが、それを言えば怒られるだろうから言わない。間違いなく人付き合いはシャルロットやイザベラの方が上だな。
「これから良しく、ジャンヌ」
「……ああ」
握手を求めて差し出した手をジャンヌはどこか恥ずかしそうに握り返して来る。その姿を見て俺は可愛いと思った。
「何が可笑しい?」
「いや、別に」
どうやら表情に出ていたらしく睨まれてしまった。
やっぱり可愛くない。ただ怖い。
「それよりジン」
「なんだ?」
握手を止め改めて座り直した時、今度はジャンヌから話しかけられた。
「お前はやはりあの………いや、なんでもない」
「?そうか」
なにを言いかけたのか気になるが、ジャンヌ本人が言いたくないのなら構わない。いつの日か話してくれるだろう。
それから他愛もない話を1時間ほどした後ジャンヌは部屋を出て行った。話した内容の大半は時々シャルロットが小悪魔化する問題についてだった。
結果だけ言えば俺もジャンヌも解決策を見つける事は出来なかった。
2月14日木曜日午前10時11分。
現在俺はリビングでテーブルに置かれたタブレットにサインをしていた。
内容は指名依頼の完了を意味する書類だ。
最近では依頼の完了報告は紙媒体の書類ではなくタブレットが主流だ。理由としては安上がりで迅速に処理出来るからだ。
その分信頼性が下がると言う問題点があるが、依頼主と依頼を請けた冒険者の直筆のサイン+拇印+毛細血管の認証の3つを使って依頼完了の報告書類を作るのだ。
直筆のサインと拇印だけでは不十分だが毛細血管は冒険者組合に依頼する際に登録されており、依頼完了時に毎回認証する必要があるのだ。
拇印も認証の1つとして採用されているが、複製される恐れがあるためそれだけでは不十分と判断された。そこで指紋同様に同じ形が無いとされている毛細血管を利用した認証システムを採用しているのだ。毛細血管だけは複製出来ないからな。
依頼完了のデータを冒険者組合に送り終わった俺は用意して貰ったホットコーヒーを飲み干す。それじゃ久しぶりにホームに帰りますか。
因みに足の怪我は昨晩ジャンヌが部屋を出た後に不思議の水を飲んで直した。ほんとあの水は便利だよな。だからと言って頻繁に使える物じゃない。そんなに量は多くないからな。
ソファーから立ち上がった俺を見てボルキュス陛下たちも理解したのだろう。
「ジン、改めて言わせてくれ。ジャンヌを護ってくれてありがとう」
ボルキュス陛下たちはそう言うとお辞儀をする。民たちには見せられない光景だな。皇族の大半が一介の冒険者に頭を下げるなんて光景は無い。ジャンヌは恥ずかしいのか頭を下げていないけど。
俺は返事をする事もなくただボルキュス陛下たちの感謝の言葉を受け止めた。
因みにこの場に居るのはボルキュス陛下とレティシアさん、エリーシャさん、ミア第4皇女、ジャンヌ、イオの6名だ。それ以外の皇族は学園や仕事で皇宮を離れている。今日出ていくと知ったシャルロットが悲しそうな表情で学園に向かった事は覚えている。グレンダが大変そうだったからな。
「また指名依頼をする事もあるだろう。その時は頼んだぞ」
「ギルドフリーダムは皆様のご依頼をお待ちしております」
会社のイメージアップとして礼儀正しいお辞儀で答える俺。それを見てクスクスと笑うレティシアさん。そんなに似合わなかったか?
最後に軽く言葉を交わした俺は皇宮を後にした。さ、久々のホームだ!存分に寝るぞ!
─────────────────────
【依頼】
依頼難易度 Bランク
依頼 指名
依頼内容 ジャンヌ・ダルク・ベルヘンスのメンタルケア
依頼状況 完了
依頼報酬+150万RK
緊急討伐×2 +800万RK
合計 +950万RK
【ギルド残高】
指名依頼依頼報酬2割
+190万RK
【1月の生活費】
光熱費 -3万8460RK
食費(外食費除く) -11万3630RK
通信費 -4400RK
ギルド口座残高 967万3131RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
指名依頼報酬 +760万RK
煙草3カートン -15600RK
スマホ代 -5800RK
残高 2803万3940RK
【冒険者ランク】
現在Aランク
依頼達成獲得ポイント +45P
緊急討伐獲得ポイント +95P(S-)
緊急討伐獲得ポイント +446P(ランクSS+)
Sランク昇格まで残り358ポイント
=================================
お久しぶりです、月見酒です。いや、本当に。
ようやく『眠りし帝国最強皇女編』が終わりました。
いや長かった。
まさか35話にもなるとは自分でも思っていませんでしたが、なにより長かったのは、この話を考え、公開スタートしてから完結させるまでが何より長かった!
最初の公開日が2018年12月31日。
最終話の公開日が2020年7月17日。
……うん、長い。と言うより掛かり過ぎですね。
真に申し訳ありません!
色々と事情がありまして、1年半もの月日が掛かってしまいました。
そして久々の更新にも拘わらず読んで下さった読者の皆様本当に有難う御座います!
これからは出来るだけ毎日投稿していくつもりです。もしかしたら数日更新できない日もあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。
さて、今後の展開ですが明日は本編ではなくSSを公開しようと思います。
その後は本編に戻りますが、イザベラたちがあの後どう過ごしていたのか、そして今どうな風になっているのかを書きたいと思っています。
ですので、もしかしたら1話全部使ってイザベラたちのお話になるかもしれません。
その後は鬼瓦仁の物語に戻ります。
それでは今後とも「魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~」をよろしくお願いします。
目の前ではボルキュス陛下の命令でやって来た人たちがライアンの指示の元、公園の調査を行っていた。
大半が軍人だが、その中には研究者と思われる人物も居た。
ジャンヌも隣の戦闘ヘリに乗って休んでいる。
命に別状はないが俺よりも酷い怪我らしく直ぐに病院に行って精密検査をしなければならないらしい。しかしもう少しこの場所を眺めていたいと言うジャンヌの要望で病院に向かっていない。
そのためジャンヌは治癒魔法で簡単な治療を受けている最中のようだ。因みに俺に対しては治癒魔法が使えないので止血用の粉薬を傷口に振りかけて包帯を巻いているだけだ。あの薬止血には良いらしいが、掛けられる時超痛い。思わず声が漏れたぐらいだからな。
それとリュドの遺体も俺とジャンヌが乗っている戦闘ヘリとは別の戦闘ヘリに乗せられている。奴の重さから考えて操縦士以外が乗ると飛べないそうだ。ま、あれだけの巨大じゃ無理だろうな。
「やあ、ジン君」
先ほどまで戦場だった現場を眺めているとライアンが話しかけて来た。
「怪我は痛むかい?」
「いや、大したことはない。明日には治って冒険者活動が出来る」
「相変わらず、ずば抜けた回復力だね」
シャルロットの時も直ぐ退院した事を知っているライアンはそう言って来た。ま、口調からして信じてはないだろが。
「それよりも俺と話していて大丈夫なのか?」
まだ現場調査は終わっていないにも拘わらず俺と話していたは拙いと思うが。
「被害者の事情聴取だから大丈夫だよ」
なるほど、そう言う建前か。
俺が察している事に察したライアンは帽子脱ぐと感謝の言葉を口にした。
「シャルロットだけじゃなくジャンヌまで助けてくれてありがとう」
「俺は冒険者として依頼を熟しただけだ。だからお礼を言われるような事じゃない」
「それでも1人の家族、人として感謝しているんだ。この場には部下たちがいるから頭を下げれないけど感謝の気持ちだけは伝えたくてね」
「ま、ライアン殿下がそう言うなら」
感謝されて嫌な人間なんていない。ほんと出来た皇子様だよ。あのクソったれな第3王子にも見習って欲しいぜ。
「それじゃ僕はまだ仕事があるから」
「また、皇宮で努力の強者さん」
「どういう意味だい?」
立ち去ろうとしたライアンは俺の言葉に疑問に感じたのか立ち去るのを止め振り返る。
「実はな――」
俺は改めてライアンに説明した。
どうしてリュドの野郎がこんな事をしでかしたのか出来るだけ事細かに説明したのだ。
「なるほど。そう言うことだったんだ……」
どこか共感できる部分でもあったのか、ライアンの顔に影が落ちる。
「もしかしたら環境が違えば僕も彼みたいになっていたかもしれないね」
「かもな。だけどライアン殿下は今もなおジャンヌ皇女殿下を追い抜こうとしている。強くなるために努力する。と言う点においてライアン殿下は間違いなくリュドだけじゃなくジャンヌの上を行く強者だ」
「そんな風に言われると恥ずかしいな。僕はただ兄として1人の男として負けたくないと思っただけなんだけどな」
気恥ずかしいのか若干頬を赤くしたライアン殿下は後頭部を掻きながら照れ臭そうに答える。
「理由なんてなんだって良い。それを今も続けている事が凄いんだ。だからこそライアンお前は努力する強者なんだ」
「そうかな」
「ああ。それに強者と言う立場に居る者にとって一番嬉しい事はまだ会ったことも無い強者と出会った事じゃない。下から自分を追いかけて追い抜こうと努力している奴が居る事なんだ」
「そうなのかい?」
意外だと目を見開けたライアンは怪訝な表情を浮かべ直して問い返してくる。
「だってそうだろ?強いと信じてくれている。そしてそれでもなお見放す事無く追い続けてくれている。これほど心強く、嬉しく感じる事はないからな」
「そうか……」
戦闘力の図式があるなら間違いなくその図式はピラミッド型だろう。
そしてそれは上に行けば行くほど孤独と感じる事が多くなる。
同等の強さを持った強者に出くわせば歓喜するのは間違いない。だがそんないつ会えるか分からない不確定要素しかない事を信じ続けるのは難しい。だが自分を追い抜こうとしている人物が居ると知っているだけで心は腐らないものだ。
まさに爺ちゃんの言った言葉通りだな。
人は1人でも生きていこうと思えば生きて行ける。だが心は1では生きて行けない。
「だから、ライアン殿下もいつまでもジャンヌ皇女殿下を追いかけ、そしていつか追い抜いてくれ」
「ああ、分かったよ」
互いに笑みを浮かべた俺たちは拳を突き合わせる。
話は終わりライアンは現場監督としての仕事に戻るため立ち去ろうとしたが、
「あ、それと――」
何かを思い出したのかライアンは俺の耳元に顔を近づけると俺にしか聞こえない小さな声で呟いた。
「(今回の事は僕だけじゃなく家族全員が君に感謝している。だから間違いなく指名依頼の依頼料は契約時に決めた金額よりも多く支払われるはずだよ)」
ほほぉ、それは良い事を聞いた。やはり人助けはするものだな。こんな素晴らしい話が聞けるんだから。
契約時に決めた金額は依頼内容が長期間である事、また相手が皇族である事を踏まえて150万RKと言う破格の金額だった。
以前、ボルキュス陛下から請けた依頼に比べれば安いと感じるかもしれないが、今回は探索や討伐系の依頼じゃなかった事もあり命の危険性が低いと言う冒険者組合の判断だったからだ。だがこれだけの事件が起きたんだ。既にマスコミも駆けつけて来ている。
頼むから目立たない事を祈ろう。いや、無理か?
皇宮に戻ってこれたのはライアンと話してから1時間が経過した後だった。まったくジャンヌの奴め、怪我人だって事を忘れていただろ。
俺は平気だったが、ボルキュス陛下やレティシアさん、特に事情を知ったシャルロットにお風呂に入る事を禁止されてしまった。この程度の怪我あの島では日常茶飯事だったから構わないんだがな。
因みにジャンヌは病院に連れていかれた。ま、外傷は少ないが万が一って事もあるしな。俺も病院に行くよう言われたが、面倒なのでどうにか断った。
心配してくれる皇族陣をどうにか説得するのは大変だったぜ。その甲斐もあって現在俺は寝室でメイドたちが用意してくれたタオルとお湯で体を拭いているわけだ。
体を拭き終わった俺は夕食まで寝させて貰う事にした。流石に疲れた。
夕食を終え、寝室で寛いでいるとドアがノックされる。
ドア向こうから感じる気配で誰なのか分かっているが、俺は常識としてドア向こうに立っている人物に問いかける。
「誰だ?」
「ジャンヌだ。入るぞ」
「ああ」
普通は入って良いか?じゃないだろうか。ま、別に見られて困るような物は置いていないし、慌てる状況でも無いので構わないが。
ドアを開けて入って来ると夕食時に見た時と同じ普段着姿のジャンヌは部屋に置いてあった椅子を動かして俺と対面する形で座る。なんだこの状況は。
「それで急に入ってきてどうしたんだ?」
俺は他愛もない話をする気が一切ないと言う事を伝えるためさっさと本題へ移動する。
「公園でのお礼を言って無かったと思ってな……」
ちゃんとしたお礼を言った事が無いのだろう。気恥ずかしそうに言ってくる。
なんだろう、堂々としていて気品に溢れていて凛々しいと感じる事もたまにあったが、俺が知っている普段のジャンヌは気の強い女性と言うイメージだ。
だが今のジャンヌはどれにも当てはまらない。どこかぎこちない。だからなのかこっちも落ち着かない。
しかしこっちまで態度を変えると話が進まないので平静を装って返事をする。
「別に気にする事じゃない。俺は依頼を熟しただけだからな」
うん、この答え数時間前にもライアンに言った気がする。と言うかこれ以外の答え方が分からない。
「そうだったな!貴様は仕事でしか私を助けない冷徹漢だったな!」
何故か分からないが急に怒り出してしまった。またか。ジャンヌの寝室の時もそうだったな。いったい何が気に喰わなかったのか知らないが、このままでは話が進まないからな。返事をさせて貰うぞ。
「確かに今回は依頼を請けたから仕事として助けた。それが冒険者として生きる俺の信念だからだ。だけどもう俺とジャンヌは友達だ。友達が危険な目に合っていたら無条件で助けるつもりだ」
「それは本当か?」
顔を合わせようとはしないジャンヌだが視線だけはこちらに向けている。まるで様子を窺っているようだ。
「勿論だ」
ま、俺としては嘘を言ったつもりは無いので肯定の返事をする。
「そうか」
何故か分からないが、ジャンヌの表情が柔らかくなった気がする。こっちを向いていないので確実ではないが。
「だが、私と貴様が友達とは随分と言い身分だな」
「あ」
そうだった。俺とジャンヌは今仕事上一緒に居るが本来は皇族と平民と言う立場の人間だ。
地位に圧倒的差がある中で平民である俺から友達宣言なんてするのはどう考えても不敬でしかない。真面目なジャンヌの事だ、最悪侮辱罪で捕まる恐れだってある。さ、最悪だ!
「ま、今回の件で助けて貰った恩もある。だから友達と認めてやる」
あ、あれ?これはもしかして大丈夫ってことなんだろうか。
疑問に感じながらジャンヌに視線を向けるが、さっきよりも首を回してこっちを見ようとしない。若干だが耳が赤いような気もする。それよりもそんなに首を回したら首の骨が折れるぞ。
「だからプライベートであれば、呼び捨てで呼ぶ事を許す。それが友達と言うものだからな」
ああ、なるほど。ようやく理解出来た。
ジャンヌは真面目過ぎるのだ。
もっと力を抜けば良いのにと思うが、それを言えば怒られるだろうから言わない。間違いなく人付き合いはシャルロットやイザベラの方が上だな。
「これから良しく、ジャンヌ」
「……ああ」
握手を求めて差し出した手をジャンヌはどこか恥ずかしそうに握り返して来る。その姿を見て俺は可愛いと思った。
「何が可笑しい?」
「いや、別に」
どうやら表情に出ていたらしく睨まれてしまった。
やっぱり可愛くない。ただ怖い。
「それよりジン」
「なんだ?」
握手を止め改めて座り直した時、今度はジャンヌから話しかけられた。
「お前はやはりあの………いや、なんでもない」
「?そうか」
なにを言いかけたのか気になるが、ジャンヌ本人が言いたくないのなら構わない。いつの日か話してくれるだろう。
それから他愛もない話を1時間ほどした後ジャンヌは部屋を出て行った。話した内容の大半は時々シャルロットが小悪魔化する問題についてだった。
結果だけ言えば俺もジャンヌも解決策を見つける事は出来なかった。
2月14日木曜日午前10時11分。
現在俺はリビングでテーブルに置かれたタブレットにサインをしていた。
内容は指名依頼の完了を意味する書類だ。
最近では依頼の完了報告は紙媒体の書類ではなくタブレットが主流だ。理由としては安上がりで迅速に処理出来るからだ。
その分信頼性が下がると言う問題点があるが、依頼主と依頼を請けた冒険者の直筆のサイン+拇印+毛細血管の認証の3つを使って依頼完了の報告書類を作るのだ。
直筆のサインと拇印だけでは不十分だが毛細血管は冒険者組合に依頼する際に登録されており、依頼完了時に毎回認証する必要があるのだ。
拇印も認証の1つとして採用されているが、複製される恐れがあるためそれだけでは不十分と判断された。そこで指紋同様に同じ形が無いとされている毛細血管を利用した認証システムを採用しているのだ。毛細血管だけは複製出来ないからな。
依頼完了のデータを冒険者組合に送り終わった俺は用意して貰ったホットコーヒーを飲み干す。それじゃ久しぶりにホームに帰りますか。
因みに足の怪我は昨晩ジャンヌが部屋を出た後に不思議の水を飲んで直した。ほんとあの水は便利だよな。だからと言って頻繁に使える物じゃない。そんなに量は多くないからな。
ソファーから立ち上がった俺を見てボルキュス陛下たちも理解したのだろう。
「ジン、改めて言わせてくれ。ジャンヌを護ってくれてありがとう」
ボルキュス陛下たちはそう言うとお辞儀をする。民たちには見せられない光景だな。皇族の大半が一介の冒険者に頭を下げるなんて光景は無い。ジャンヌは恥ずかしいのか頭を下げていないけど。
俺は返事をする事もなくただボルキュス陛下たちの感謝の言葉を受け止めた。
因みにこの場に居るのはボルキュス陛下とレティシアさん、エリーシャさん、ミア第4皇女、ジャンヌ、イオの6名だ。それ以外の皇族は学園や仕事で皇宮を離れている。今日出ていくと知ったシャルロットが悲しそうな表情で学園に向かった事は覚えている。グレンダが大変そうだったからな。
「また指名依頼をする事もあるだろう。その時は頼んだぞ」
「ギルドフリーダムは皆様のご依頼をお待ちしております」
会社のイメージアップとして礼儀正しいお辞儀で答える俺。それを見てクスクスと笑うレティシアさん。そんなに似合わなかったか?
最後に軽く言葉を交わした俺は皇宮を後にした。さ、久々のホームだ!存分に寝るぞ!
─────────────────────
【依頼】
依頼難易度 Bランク
依頼 指名
依頼内容 ジャンヌ・ダルク・ベルヘンスのメンタルケア
依頼状況 完了
依頼報酬+150万RK
緊急討伐×2 +800万RK
合計 +950万RK
【ギルド残高】
指名依頼依頼報酬2割
+190万RK
【1月の生活費】
光熱費 -3万8460RK
食費(外食費除く) -11万3630RK
通信費 -4400RK
ギルド口座残高 967万3131RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
指名依頼報酬 +760万RK
煙草3カートン -15600RK
スマホ代 -5800RK
残高 2803万3940RK
【冒険者ランク】
現在Aランク
依頼達成獲得ポイント +45P
緊急討伐獲得ポイント +95P(S-)
緊急討伐獲得ポイント +446P(ランクSS+)
Sランク昇格まで残り358ポイント
=================================
お久しぶりです、月見酒です。いや、本当に。
ようやく『眠りし帝国最強皇女編』が終わりました。
いや長かった。
まさか35話にもなるとは自分でも思っていませんでしたが、なにより長かったのは、この話を考え、公開スタートしてから完結させるまでが何より長かった!
最初の公開日が2018年12月31日。
最終話の公開日が2020年7月17日。
……うん、長い。と言うより掛かり過ぎですね。
真に申し訳ありません!
色々と事情がありまして、1年半もの月日が掛かってしまいました。
そして久々の更新にも拘わらず読んで下さった読者の皆様本当に有難う御座います!
これからは出来るだけ毎日投稿していくつもりです。もしかしたら数日更新できない日もあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。
さて、今後の展開ですが明日は本編ではなくSSを公開しようと思います。
その後は本編に戻りますが、イザベラたちがあの後どう過ごしていたのか、そして今どうな風になっているのかを書きたいと思っています。
ですので、もしかしたら1話全部使ってイザベラたちのお話になるかもしれません。
その後は鬼瓦仁の物語に戻ります。
それでは今後とも「魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~」をよろしくお願いします。
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といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
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不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
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萌の物語が始まる。
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