明日のキミは照れのち笑顔

あめいろ

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輝く舞台へ

第6話

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私がそう意を決して聞くと、行原の首はいとも簡単に縦に振られた。
「当たり前だろ」
世界がグラリと揺れた気がした。
てっきり、芸能界のスカウトといえば、女優やモデル、アイドルなんかを想像していたからだ。
芸人って、そんな馬鹿な。
思えば、おかしかった。自分のような平凡な女がスカウトなんて、天地がひっくり返っても、あるはず無かったのだ。
なのに、私は浮かれて、のこのこと、こんなころまで来てしまった。
正真正銘の大馬鹿者だ。
「ご、ごめんなさい!か、帰ります!」
私は踵を返すと、すぐに駆け出した。
「あ、待って!」
背後で彩奈の声が聞こえた気がしたが、無視した。
この人達に関わってはいけない。私がやりたいことは、ココにはないから。
私は見返したいのだ。凄い人になりたいのだ。
それは、少なくとも芸人なんかじゃない。
てか、あんな美女が何で芸人なんかしようとしてるんだ。あれだけ恵まれていて、何で自分を貶すようなことしてるんだ。
訳が分からない。
早くこの場から離れたかった。
しかし、劇場から出るまでに、背後から腕を掴まれてしまった。
「は、離して下さい......」
呼吸を乱しながら、声を絞り出す。
振り解こうとするも、掴んだ手は離れてくれない。
「わ、私には無理です......浮かれてただけなんです......あの、その.....それに、げ、芸人とか興味ないから......」
息も絶え絶えに、酸素が回らない脳みそをフル稼働して言葉を捻り出す。
「と、とにかく、ごめんなさい......私は」
「うるせぇ」
低い声が響く。
振り返ると、行原が先ほどと変わらない無表情な面で私を見つめていた。
「お前の事情なんて知るか。俺はお前が面白いと思った。だから誘った。そして、お前は来た。なら、出ろ」
「む、無茶苦茶ですよ!それに、私は芸人のスカウトだなんて、思ってなくて.....」
「面白そうだなって、最初に言っただろ」
「そんなんで、芸人だと思う訳ないじゃないですか!そ、それに、私は......」
そのときの私はどうかしていたのだろう。
酸欠で頭も回ってなくて、気が付いたら目の前の男に向かって吐き出していた。
自分の本音を。
「わ、私は、皆に羨ましがられる人生が送りたいんです!芸人じゃない!」
言った。言ってやった。これで諦めてくれ。
そう思った。
だが、行原の反応は違った。

「いいじゃん、ソレ」

そう言うと、彼は仏頂面を崩して、大きな声で笑ったのだった。

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