5 / 5
第1章
初任務2
しおりを挟む
「よし、任務開始だ」
ダニエルの目つきが変わった。
門を開けたその先には大通りが広がっていた。にもかかわらず、そこは異様な静けさが漂っていた。
「おかしくねえか? 人の声一つしないぜ。本当にこの街にゾンビいんのか?」
辺りを見回したが、人の姿はない。
「もしかしたら、一カ所に固まっているかも。防衛なら人手が多い方がいいはずです」
得意げに考察を披露したブラッドにダニエルは首を振った。
「だとしたら最悪だな。もし、防衛が崩れたらどうする? 全員まとめて集団感染だ」
「だとしたら、間違いなく危ない!」
慌てて走り出そうとするブラッドを手で止める。
「馬鹿かお前は。確信のない想像というか、妄想を本気にするな。まず依頼主を探すことが俺たちのやることだ」
移動の時の口調と比べて、説得力のあるような声にブラッドは冷静さを取り戻す。
「最初に言っておくが、余計な正義感は捨てた方がいい。俺たちでも、全ての人間が救えるわけじゃない。時には目の前で死んでいく人をただ見ることしか出来ないことだってある」
任務中の自然な会話の中で放たれた言葉は、ブラッドにとっては深く刺さるものがあった。『QUIET』で多くの人を救い、自分の憧れる正義になるために入隊したのだ。それが時には自ら救いの手を出さないことがあるなんてブラッドは信じられないでいた。
突然、ブラッドの胸元が振動する。アドラーから受け取った通信機だった。受信のスイッチを入れて耳に当てる。
「なにしてんだ。早く応答しろ」
エドウィンの声だった。ダニエルの話ではもやもやしていた心のつっかえが焦りに変わった。
「すみません。どうしましたか、隊長」
「この先に大きな十字路がある。そこを左に曲がった先が送信場所だ。まず、そこの捜索を頼む」
「了解しました」
通信機をしまうところを見てダニエルが聞く。
「なんだって?」
ブラッドは指示を伝える。
「十字路を左か。やっぱ、あの塔なんじゃないか?」
ダニエルが指差すのは、フェデリカに入る前から見えていた、あの高い建物だった。フェデリカに入ってから気づいたことだが、その建物の上部には大きな時計が付いており、時計塔の役割をしているようだった。しかし、その時計は1時57分で止まっている。
「にしても本当に不気味な街だな。こんなに静かで、人もいないし」
愚痴をこぼすダニエルだったが、時計塔を目指す以外に選択肢はない。
「とりあえず行きましょう」
今度はブラッドが前を歩き出した。
ダニエルの目つきが変わった。
門を開けたその先には大通りが広がっていた。にもかかわらず、そこは異様な静けさが漂っていた。
「おかしくねえか? 人の声一つしないぜ。本当にこの街にゾンビいんのか?」
辺りを見回したが、人の姿はない。
「もしかしたら、一カ所に固まっているかも。防衛なら人手が多い方がいいはずです」
得意げに考察を披露したブラッドにダニエルは首を振った。
「だとしたら最悪だな。もし、防衛が崩れたらどうする? 全員まとめて集団感染だ」
「だとしたら、間違いなく危ない!」
慌てて走り出そうとするブラッドを手で止める。
「馬鹿かお前は。確信のない想像というか、妄想を本気にするな。まず依頼主を探すことが俺たちのやることだ」
移動の時の口調と比べて、説得力のあるような声にブラッドは冷静さを取り戻す。
「最初に言っておくが、余計な正義感は捨てた方がいい。俺たちでも、全ての人間が救えるわけじゃない。時には目の前で死んでいく人をただ見ることしか出来ないことだってある」
任務中の自然な会話の中で放たれた言葉は、ブラッドにとっては深く刺さるものがあった。『QUIET』で多くの人を救い、自分の憧れる正義になるために入隊したのだ。それが時には自ら救いの手を出さないことがあるなんてブラッドは信じられないでいた。
突然、ブラッドの胸元が振動する。アドラーから受け取った通信機だった。受信のスイッチを入れて耳に当てる。
「なにしてんだ。早く応答しろ」
エドウィンの声だった。ダニエルの話ではもやもやしていた心のつっかえが焦りに変わった。
「すみません。どうしましたか、隊長」
「この先に大きな十字路がある。そこを左に曲がった先が送信場所だ。まず、そこの捜索を頼む」
「了解しました」
通信機をしまうところを見てダニエルが聞く。
「なんだって?」
ブラッドは指示を伝える。
「十字路を左か。やっぱ、あの塔なんじゃないか?」
ダニエルが指差すのは、フェデリカに入る前から見えていた、あの高い建物だった。フェデリカに入ってから気づいたことだが、その建物の上部には大きな時計が付いており、時計塔の役割をしているようだった。しかし、その時計は1時57分で止まっている。
「にしても本当に不気味な街だな。こんなに静かで、人もいないし」
愚痴をこぼすダニエルだったが、時計塔を目指す以外に選択肢はない。
「とりあえず行きましょう」
今度はブラッドが前を歩き出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる