富豪デスゲーム

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一日目

仲間

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「ここって何処なの? わけが分からないよ」
 ドアを閉めて結衣に問いかける。
「私だって分からないよ」
 結衣が強く言う。その後、結衣はさらに続けた。
「私は、ホールから出ればこの施設って言うか、この建物から出れると思ってたの。でも、ホールに唯一ある扉を開いても、出口は無かった」
 ホールから出ても、あるのは長い廊下だった。両側の壁に扉があり、部屋の番号らしき数字がドアに彫られていた。

 ここは結衣の寝室だ。彩香の部屋はこの隣。
 ホールから廊下に出て、右側が男子部屋、左側が女子の部屋になっていた。寝室への扉しなかく、外へ出れるような扉はなかった。

 少しの間、沈黙が続いた。
「何のカード引いた?」
 先に口を開いたのは彩香。
「言えるわけ無いじゃん。これで生きるか死ぬか決まるんだよ?!」
「でも、私は言うよ。ハートの5を引いた」
「……なんで」
 結衣が疑問の顔を向ける。

 彩香は仲間が欲しかった。カードの内容を共有して、強いカードを持っている人を指名すれば、後は適当に人を決めればいいと思っていた。彩香は考えをすべて結衣に伝えた。
「なんか、彩香らしくないよ。人が死ぬかもしれないんだよ?!」
 その言葉に、彩香は言葉を詰まらせた。

再び沈黙が続く。
「……クローバーの3」
結衣が小さい声で呟いた。
「え?」
「私が引いたのはクローバーの3」
 結衣が落ち着いた声で言った。
 結衣が引いたのは3。3は最弱のカード。指名され、対戦したら確実に負ける。
「……」
 結衣に返す言葉が彩香の頭には浮かばなかった。

「……出て行って」
 今度は結衣が最初に口を開いた。
「一人で考えさせて」
 低く冷たい声に彩香は軽く頷くと、結衣の寝室を出て行った。
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