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子供の行方(全17話)
15.おみよの行方
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翌日、朝早くから移動を始めた日向は、哲太を訪ねた。
「おはようございます!」
「何だよ朝っぱらから。これからみんなと集まって飯を探しに行かなきゃなんねえんだよ」
「おみよちゃんの居所が掴めましたよ!」
「な!? いくらなんでも早すぎねえか?」
「運よく鶴松っていう番頭さんの手控えを見つけられたんです」
「本当に忍び込んできたのかよ」
「? そうですよ。そう言ったじゃないですか」
「確かにそうは言ってたけどよぉ……ふつう本当に忍び込むと思わねえだろ」
「まだまだ読みが甘いですね~」
「何かむかつくな。んで、どこにいるんだよ。こんなのんびり話をしてて良いのか?」
「そうそう、場所はわかりましたが、おみよちゃんの顔が分かる人にも来て欲しくて、お声がけに来ました」
「そういう事は早く言えよ! ちょっと待ってろ! 仲間に一声してすぐ行く!」
そう言うと哲太はすぐに走り出した。
「りょうかいでーす」
昨晩の忍び込んだ腕前からは想像もできないような気の抜けた声。
そして視線は哲太の走っていった反対方向。
何かを警戒しているのかと思いきや、視線の先には団子屋があった。
結局、朝早すぎて店が開いていなかったため団子は食えず、すぐに戻ってきた哲太と共に深川へと向かう日向。
「あれが深川仲町の白菊亭か。あそこにおみよがいるんだな」
「はい。時期的に言っても恐らく間違いないかと」
「んで、どうしたらいいんだよ。俺らじゃ遊郭になんて入れねえぞ」
「おみよちゃんは小職ですから、ここから見張っていれば雑用で外に出た時に見えるはずです」
「わかった。お前はどうするんだ」
「こっそり連れ出すために建物の構造を見てきます。あっ、くれぐれもおみよちゃんが出てきても声を掛けたりしないでくださいよ」
「なんでだよ! そのまま連れ帰っちゃえばいいじゃねえか」
「おみよちゃんだけならそうします。でもそうすると、花月屋に話が伝わり、この人身売買の主犯を取り逃がす恐れがあります」
「そりゃあ、そうだけどよぉ……」
「仕方ないです。計画を先に話しますね。視線は白菊亭から離さないように」
日向の計画というのは、次のような策だった。
花月屋を見張り、家出した子供が来るのを待つ。
その子供を舟に乗せた時点で、おみよを救出する。
そして、鶴松が戻る前のどこかで捕まえ、さらに証拠である彼の手控えを奪取する。
そのまま、鶴松を町奉行所へ突き出し、店主の金衛門を捕えさせるというものだ。
「結構待たなきゃなんねえ――あっ‼ おみよだ!」
「どれどれ。おー、あの子がおみよちゃんですか。可愛い子ですね」
「そうなん――じゃなくて! あいつここにいたんだな。……良かった。でも何だか元気ねぇな」
「やはり逃げ出さなかった事から予想した通り見張りが付いていますね。さすがにこの環境に連れてこられては仕方ないです」
「どうやって逃がすんだよ」
「そこは凄腕くノ一にお任せを」
「わかったよ。もう少し眺めて行っても良いか」
「ここからなら大丈夫ですよ。では私は準備があるので」
食い入るように白菊亭を眺める哲太を置いて日向は立ち去る。
「そうは言ったものの、私だけじゃ手が足りないんですよね。父上や定八様に協力を仰ぐと大事になっちゃいますし。予定通り、ひまりちゃんと薮田仁斎様にお出まし願いましょうかね」
※
日向は神保町に帰ると、日向は薮田家の屋敷に赴いた。
そこには薮田の爺様こと薮田仁斎と川村日葵が縁側で茶を飲んでいた。
二人の間には、串が数本乗ったお皿。
「あー! お団子食べてましたね! 私の分は?」
それを目敏く見つけた日向は大声を出す。
「儂は残しておけと言ったんじゃがな。日葵が食べてしまいおった」
「ちょっと!じいじも食べてたじゃない!」
「ずるいです……」
「悪かった、悪かった。今度買っておこう」
「約束ですよ!ひまりちゃんの食べた倍は用意してくださいね!」
「倍は言い過ぎじゃない?」
「いいえ! 私は昨夜から忍び働きしっぱなしでヘトヘトなんですよ!」
「悪かったわよ。だからこうして手伝うんじゃない」
「そうじゃ。状況は大詰めのようじゃ。早いうちに行動を決めておこう」
「わかりました。では段取りをお話します」
話し合いは半刻にも満たなかった。
気の合う者同士、お互いの考えは理解している。
三人は二手に分かれて行動する。
一人は白菊亭に潜入して、おみよを救出する。
暗くなってからの移動という事と、子供の足も考慮して舟を調達して向かう。
もう一組は、鶴松を捕獲する事。
あいつは比較的一人の行動が多い。
うまく人目につかない所で襲い掛かれば、難なく捕らえることができるだろうという判断のようだ。
そして選ばれた場所は、さんざん子供を拐かしてきた道。
つまり家出屋の別邸からの帰り道である。
二人は船着場について、花月屋の裏口へと向かう道で待ち伏せる。
その道は人通りも少なく、完全に一人になる。ここを狙わない手はないという結論に至った。
「じゃあ、仁斎様は御屋敷で待機。花月屋の見張りは、ひまりちゃんお願い。私は昼八つに交代して夜まで見張る」
それでいいかな?と日向は二人に尋ねると、問題ないと頷いた。
「おはようございます!」
「何だよ朝っぱらから。これからみんなと集まって飯を探しに行かなきゃなんねえんだよ」
「おみよちゃんの居所が掴めましたよ!」
「な!? いくらなんでも早すぎねえか?」
「運よく鶴松っていう番頭さんの手控えを見つけられたんです」
「本当に忍び込んできたのかよ」
「? そうですよ。そう言ったじゃないですか」
「確かにそうは言ってたけどよぉ……ふつう本当に忍び込むと思わねえだろ」
「まだまだ読みが甘いですね~」
「何かむかつくな。んで、どこにいるんだよ。こんなのんびり話をしてて良いのか?」
「そうそう、場所はわかりましたが、おみよちゃんの顔が分かる人にも来て欲しくて、お声がけに来ました」
「そういう事は早く言えよ! ちょっと待ってろ! 仲間に一声してすぐ行く!」
そう言うと哲太はすぐに走り出した。
「りょうかいでーす」
昨晩の忍び込んだ腕前からは想像もできないような気の抜けた声。
そして視線は哲太の走っていった反対方向。
何かを警戒しているのかと思いきや、視線の先には団子屋があった。
結局、朝早すぎて店が開いていなかったため団子は食えず、すぐに戻ってきた哲太と共に深川へと向かう日向。
「あれが深川仲町の白菊亭か。あそこにおみよがいるんだな」
「はい。時期的に言っても恐らく間違いないかと」
「んで、どうしたらいいんだよ。俺らじゃ遊郭になんて入れねえぞ」
「おみよちゃんは小職ですから、ここから見張っていれば雑用で外に出た時に見えるはずです」
「わかった。お前はどうするんだ」
「こっそり連れ出すために建物の構造を見てきます。あっ、くれぐれもおみよちゃんが出てきても声を掛けたりしないでくださいよ」
「なんでだよ! そのまま連れ帰っちゃえばいいじゃねえか」
「おみよちゃんだけならそうします。でもそうすると、花月屋に話が伝わり、この人身売買の主犯を取り逃がす恐れがあります」
「そりゃあ、そうだけどよぉ……」
「仕方ないです。計画を先に話しますね。視線は白菊亭から離さないように」
日向の計画というのは、次のような策だった。
花月屋を見張り、家出した子供が来るのを待つ。
その子供を舟に乗せた時点で、おみよを救出する。
そして、鶴松が戻る前のどこかで捕まえ、さらに証拠である彼の手控えを奪取する。
そのまま、鶴松を町奉行所へ突き出し、店主の金衛門を捕えさせるというものだ。
「結構待たなきゃなんねえ――あっ‼ おみよだ!」
「どれどれ。おー、あの子がおみよちゃんですか。可愛い子ですね」
「そうなん――じゃなくて! あいつここにいたんだな。……良かった。でも何だか元気ねぇな」
「やはり逃げ出さなかった事から予想した通り見張りが付いていますね。さすがにこの環境に連れてこられては仕方ないです」
「どうやって逃がすんだよ」
「そこは凄腕くノ一にお任せを」
「わかったよ。もう少し眺めて行っても良いか」
「ここからなら大丈夫ですよ。では私は準備があるので」
食い入るように白菊亭を眺める哲太を置いて日向は立ち去る。
「そうは言ったものの、私だけじゃ手が足りないんですよね。父上や定八様に協力を仰ぐと大事になっちゃいますし。予定通り、ひまりちゃんと薮田仁斎様にお出まし願いましょうかね」
※
日向は神保町に帰ると、日向は薮田家の屋敷に赴いた。
そこには薮田の爺様こと薮田仁斎と川村日葵が縁側で茶を飲んでいた。
二人の間には、串が数本乗ったお皿。
「あー! お団子食べてましたね! 私の分は?」
それを目敏く見つけた日向は大声を出す。
「儂は残しておけと言ったんじゃがな。日葵が食べてしまいおった」
「ちょっと!じいじも食べてたじゃない!」
「ずるいです……」
「悪かった、悪かった。今度買っておこう」
「約束ですよ!ひまりちゃんの食べた倍は用意してくださいね!」
「倍は言い過ぎじゃない?」
「いいえ! 私は昨夜から忍び働きしっぱなしでヘトヘトなんですよ!」
「悪かったわよ。だからこうして手伝うんじゃない」
「そうじゃ。状況は大詰めのようじゃ。早いうちに行動を決めておこう」
「わかりました。では段取りをお話します」
話し合いは半刻にも満たなかった。
気の合う者同士、お互いの考えは理解している。
三人は二手に分かれて行動する。
一人は白菊亭に潜入して、おみよを救出する。
暗くなってからの移動という事と、子供の足も考慮して舟を調達して向かう。
もう一組は、鶴松を捕獲する事。
あいつは比較的一人の行動が多い。
うまく人目につかない所で襲い掛かれば、難なく捕らえることができるだろうという判断のようだ。
そして選ばれた場所は、さんざん子供を拐かしてきた道。
つまり家出屋の別邸からの帰り道である。
二人は船着場について、花月屋の裏口へと向かう道で待ち伏せる。
その道は人通りも少なく、完全に一人になる。ここを狙わない手はないという結論に至った。
「じゃあ、仁斎様は御屋敷で待機。花月屋の見張りは、ひまりちゃんお願い。私は昼八つに交代して夜まで見張る」
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