犯され探偵

白石潤之介

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美味しいコーヒー

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 わたしと優作くんは、事務所でコーヒーを飲みながら議論を続けた。

 その結果、高田馬場での被害者の〝看護師さん〟に状況を尋ねるべきでは――という意見に落ち着いた。しかし、所轄の監視下に置かれているだろう?女性を特定できるか?

 「やっぱり、ここは友香ちゃんが和久さんって刑事を懐柔かいじゅうするしかないでしょ」と優作くんは、わたしに丸投げする。

 「簡単に言わないでよ!相手は友香に優しいけど――――うん十年のキャリアで、百戦練磨ひゃくせんれんまのベテラン刑事デカよ!」

 「そこを最近、色っぽくなってきた友香ちゃんの色気で落としてよ」と優作くんは、雇われ所長の片鱗へんりんやプライドもかえりみずお気楽なものです。

 さらに、優作くんは
「コーヒーは、豆から挽いて飲むのが美味しいよ、友香ちゃん」って寝ぼけたことを言っている。

「挽き立てのコーヒーが、飲みたいならミルとか自分で買ってくればいいでしょ!」と突っぱねて言ってやった。

「え~、経費で落ちないの?」と駄々をこねる優作くん。

「事務所のインスタントコーヒーが、お気に召さないなら隣の大手コーヒー・チェーン店で飲んできたら如何いかがかしら?」と言ってやった。

すると優作くんは、ホントに
「隣のカフェの美味しいコーヒーを飲んできまーす!」と捨て台詞ぜりふを残して事務所を出て行った。

 そんなに、事務所のインスタントコーヒーが、不味まずいか?もう一杯淹れて飲んでみた。うちの事務所のコーヒーは、大手コーヒーメーカーからレンタルしている〝マシン〟で淹れるものです。

 だから、市販のインスタントに比べてクオリティーは高いはずだけど――

 マグカップに、お湯をドボドボ入れて作るコーヒーとは違うように感じるけど、それでも優作くんは大手コーヒー・チェーン店の味がお好みなんだ!

 そもそも、このコーヒーマシンを導入しようと提案したのは〝優作くん〟なんだけどなぁ。飽きっぽいのよねぇと思いながら、きょう3杯目のコーヒーを飲み干した。

 そして、和久さんに飲みに行きませんか?という趣旨しゅしのメールを作成して、送信した。

 安直あんちょくな考え方だけど、お酒が入れば〝口の堅い〟和久さんも話してくれるのでは、と思い誘ったのであった。

 わたしが帰り支度かえりじたくをしようかと席を立とうとしたとき、優作くんがコンビニのレジ袋を抱えて事務所に戻ってきた。

 「何ごと?」と優作くんに聞くと彼は、にんまりとしてレジ袋を差し出した。

 中には・・・

 






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