犯され探偵

白石潤之介

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狙いは、女子大生?

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 「別にそういうわけではありません」と和久わくさんの発言をわたしは、否定した。

 彼は、それでも愉快そうに口元に笑みを浮かべている。

 すると陽子ちゃんが――――
 「あたしも友香ちゃんの意見に、賛成です」と主張した。

 「間違えて看護師をおそったっていうのかい?」
 わたしと陽子ちゃんは、激しくうなずいた。

 すると彼は
 「なんで、女子大生ばかりを狙うんだい?」とわたしたちに質問した。

 わたしと陽子ちゃんは、答えられずに下を向いた。

 あくまで〝そうではないか〟というかんに過ぎない推理だったので、根拠こんきょを訊かれたら困ってしまうふたりだった。

 
 「まぁ、それはいいや――この居酒屋を指定したのには理由わけが、あるんだよ」
 「えっ!なぜですか?」とわたしは、彼に尋ねた。

 「その看護師さんは、この居酒屋で恋人と飲食して・・・その帰りに襲われたんだ」
 と彼は答えた。

 「付き合っている男性ひとがいたんだ、陽子ちゃんと同じじゃない」とわたしは、うっかり口を滑らせてしまった。
 
 「それは初耳だな、陽子さん、そうなのかい?」と彼は陽子ちゃんに真偽しんぎを確かめた。
 陽子ちゃんは、わたしの脇腹わきばらひじでつついて「友香ちゃん、それは内緒でしょ」と小声でささやいた。

 「聞こえたぞぉ、捜査情報を聞き出しといて俺には、内緒ないしょのことがあるんだ」
 「ごめんなさい!」とわたしと陽子ちゃんは、テーブルにぶつかるくらいの勢いで 頭を下げて謝った。

 「まぁいいさ、こちらもすべての情報は、話せないからな」と彼は言った。
 「やっぱり、そうなんですか?」とわたしは返答した。

 「あたりまえだろう、捜査のうえで支障があるものは――いくら可愛い友香ちゃんにだってしゃべれんさ」と彼は、わたしの瞳をじっと見つめながらつぶやいた。

 「この居酒屋で飲食したことや恋人が、いるってことは支障はないのですか?」
 「記者たちにも話していないことだけど・・・友香ちゃんは、特別だよ!なんと言っても名探偵さんだからね、教えたら調査して、犯行を推理してくれるからな――――こちらにとっても好都合なんだよ。何よりも犯人を捕まえて事件を収束しゅうそくさせることが、一番大事なことだからね」と彼は、しみじみ述懐じゅっかいした。

 わたしは、彼の思いがうれしく、また誇らしく思った。彼は、わたしを探偵と認めてくれている――――何と有り難く光栄なことか。

 


 そんな時、東京音頭とうきょうおんどがバッグの中から聞こえてきた。ごそごそとスマートフォンを引っ張り出して確認すると〝優作くん〟からの電話だった。





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