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4.徐福と姜文【1】(出会い)
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徐福は、秦の国で方士をしていた。
方士とは、瞑想、占い、気功、錬丹術、等の方術によって不老長寿の仙人になろうとする修行者である。
元々は斉の国の都の評判の良い医者の息子であったが、18歳の時とある一件で斉の国の王に父を殺され、徐福も殺されそうになり命からがら逃げ、追われる身となったのである。
その後、徐福は現実の世界に絶望し、長い間逃亡しながら、秦の国の人里離れた山奥に辿り着く。
その地で自給自足をしながら、彼は隠者(世捨て人)として生活を始める。
徐福は、若い時から医者である父から医術や一般教養を学び、医術の延長として不老不死に興味を持ち、独学にて神仙思想を研究していた。
そんな彼が、隠者生活の中、仙人を目指す様になったのは当然の成り行きだったのかもしれない。
山奥で独り修業をする様になって10年が過ぎた頃、山でケガをした者と偶然出会う。
医術を持つ徐福はその者を助け治療した事が、彼のその後の運命を変えたのであった。
助けた男は、村に帰った後、お礼として酒を持って再び徐福の元へ現れる。
その日を境に、山奥にいる医者の噂を聞きつけ、病になった者、ケガを負った者が救いを求め、徐福の住む山奥を訪れる様になったのである。
生来お人好しの徐福は、頼まれたら断れない男であり、訪れる者達の問題に、持てる知識の全てを使い、その者達を治療したのである。
徐福の事を、山の周辺に住む人々は、仙人と思い敬愛を込め酒仙様と呼んだ。
その噂は、秦の都にも伝わり、人里離れた山奥に一人の酒好きな仙人がいると信じられるようになった。
そんな暮らしが10年続いた頃、徐福の元に一人の大ケガを負った少年が担ぎこまれる。
徐福の献身的な治療で、少年の命は助かった。しかし、その少年は徐福の住む山の周辺の村の者では無かった。
少年が回復し、彼の言葉を聞いて徐福は彼が何処から来たかが分かった。
彼の言葉は、徐福の故郷、斉の国の言葉であった。
『ワシは、徐福という。少年、お主の名前は何という?』
『・・・姜文。』と、少年は恐る恐る自分の名を名乗る。
『姜の姓の者とは、お主、もしや姜斉と縁のある一族の者か・・・。』と、徐福は驚いた様に再度聞く。
『・・・。』、姜文は沈黙する。
(ワシの質問の意味を知っていての沈黙か、フフッ、こんな幼い子供がワシの質問の意味も分かる訳もないのう。)
『お主の出自等関係ないか?お主、帰る場所があるのか?無ければ、ワシの元で、ワシを手伝ってくれぬか?手伝ってくれれば、食べさせる事ぐらいは出来るのだが・・・。』と、徐福は言い、少年に向けてとびっきりの笑顔をみせた。
『・・・・。』、少年は相変わらず言葉を発しなかったが、力強く2回頷いた。その表情は笑顔であった。
『もしかして、お主は天がワシに巡り合わせてくれたワシの太公望かもしれぬな・・ハハハッ!。』と、少年の笑顔をみて、徐福は豪快に笑った。
徐福と姜文の故郷斉の国は、周王の軍師であった太公望が受領して開いた国である。
太公望の姓は、姜であり、姜氏が長年斉の国を治める王であったのだが、紀元前386年に、田氏に滅ぼされ、国を乗っ取られてしまっていた。
後顧の憂いをなくすという事で、田氏は権力を掌握すると姜の者達を一族郎党皆殺したのである。
その為、姜文が姜氏の血を継ぐ者の筈の訳はないと徐福は自分の中で結論づけた。
(理由は、どうであれ、国には戻れない者同士、巡り合ったのじゃ。何かの縁じゃな・・。)
徐福が姜文に食べさせる粥を、お椀に盛りながら、これから始まる二人の新しい生活を考えていると、二人のいる家の外に複数の者達が近づいてくる気配を感じた。
『ヒヒ~ン。』と一頭の馬が泣いた。
『酒仙様、酒仙様はいらっしゃるか?我は、始皇帝様の使いである。お話がしたい!!』
使いの男は、大きな声で同じ言葉を3度繰り返えした。
方士とは、瞑想、占い、気功、錬丹術、等の方術によって不老長寿の仙人になろうとする修行者である。
元々は斉の国の都の評判の良い医者の息子であったが、18歳の時とある一件で斉の国の王に父を殺され、徐福も殺されそうになり命からがら逃げ、追われる身となったのである。
その後、徐福は現実の世界に絶望し、長い間逃亡しながら、秦の国の人里離れた山奥に辿り着く。
その地で自給自足をしながら、彼は隠者(世捨て人)として生活を始める。
徐福は、若い時から医者である父から医術や一般教養を学び、医術の延長として不老不死に興味を持ち、独学にて神仙思想を研究していた。
そんな彼が、隠者生活の中、仙人を目指す様になったのは当然の成り行きだったのかもしれない。
山奥で独り修業をする様になって10年が過ぎた頃、山でケガをした者と偶然出会う。
医術を持つ徐福はその者を助け治療した事が、彼のその後の運命を変えたのであった。
助けた男は、村に帰った後、お礼として酒を持って再び徐福の元へ現れる。
その日を境に、山奥にいる医者の噂を聞きつけ、病になった者、ケガを負った者が救いを求め、徐福の住む山奥を訪れる様になったのである。
生来お人好しの徐福は、頼まれたら断れない男であり、訪れる者達の問題に、持てる知識の全てを使い、その者達を治療したのである。
徐福の事を、山の周辺に住む人々は、仙人と思い敬愛を込め酒仙様と呼んだ。
その噂は、秦の都にも伝わり、人里離れた山奥に一人の酒好きな仙人がいると信じられるようになった。
そんな暮らしが10年続いた頃、徐福の元に一人の大ケガを負った少年が担ぎこまれる。
徐福の献身的な治療で、少年の命は助かった。しかし、その少年は徐福の住む山の周辺の村の者では無かった。
少年が回復し、彼の言葉を聞いて徐福は彼が何処から来たかが分かった。
彼の言葉は、徐福の故郷、斉の国の言葉であった。
『ワシは、徐福という。少年、お主の名前は何という?』
『・・・姜文。』と、少年は恐る恐る自分の名を名乗る。
『姜の姓の者とは、お主、もしや姜斉と縁のある一族の者か・・・。』と、徐福は驚いた様に再度聞く。
『・・・。』、姜文は沈黙する。
(ワシの質問の意味を知っていての沈黙か、フフッ、こんな幼い子供がワシの質問の意味も分かる訳もないのう。)
『お主の出自等関係ないか?お主、帰る場所があるのか?無ければ、ワシの元で、ワシを手伝ってくれぬか?手伝ってくれれば、食べさせる事ぐらいは出来るのだが・・・。』と、徐福は言い、少年に向けてとびっきりの笑顔をみせた。
『・・・・。』、少年は相変わらず言葉を発しなかったが、力強く2回頷いた。その表情は笑顔であった。
『もしかして、お主は天がワシに巡り合わせてくれたワシの太公望かもしれぬな・・ハハハッ!。』と、少年の笑顔をみて、徐福は豪快に笑った。
徐福と姜文の故郷斉の国は、周王の軍師であった太公望が受領して開いた国である。
太公望の姓は、姜であり、姜氏が長年斉の国を治める王であったのだが、紀元前386年に、田氏に滅ぼされ、国を乗っ取られてしまっていた。
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その為、姜文が姜氏の血を継ぐ者の筈の訳はないと徐福は自分の中で結論づけた。
(理由は、どうであれ、国には戻れない者同士、巡り合ったのじゃ。何かの縁じゃな・・。)
徐福が姜文に食べさせる粥を、お椀に盛りながら、これから始まる二人の新しい生活を考えていると、二人のいる家の外に複数の者達が近づいてくる気配を感じた。
『ヒヒ~ン。』と一頭の馬が泣いた。
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