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第9章 世代交代への動き
10.狂王復活
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帰蝶の祝言が3ヶ月後に迫った、年末である。
美濃の国道三の次男斎藤孫四郎龍重は、もう直国の為に嫁いでいく妹帰蝶の息災を願いある寺を訪れていた。その名目は、嘘であり、目的は別にあった。
宋から来たという、一人の男が願いを叶えるという祈祷を行うという。
孫四郎は、半身半疑でそれに付き合ったのであった。
孫四郎の願いとは、兄義龍に代わって父道三の跡取りになる事である。
男は自分を道士であり、徐福と名乗った。
男の肌は、気味が悪い程白く、唇は女性用の紅を使用しているのではないかと思われるほど赤かった。
宋から来たという男は、願いを叶える為には、生贄を殺し、神にささげ祈祷をする必要があると孫四郎に説明した。
子どもがいる家族を、生贄に捧げる事で、偉大な王の魂を呼び戻す。
偉大な王が蘇れば、その王は孫四郎に大きな力を与えるであろうと説明していた。
16歳の孫四郎は、正直男の言う事を信じていなかった。
(どうせ、こ奴も、詐欺師に違いない、目的は金か、私に取入り、父道三の権力に伴う甘い汁を啜るのが目的の蟻だと・・)、孫四郎は思っていた。
幼き日、城に仕える下人の一人を自分のワガママで、殺したと父は自分を厳しく攻めた。
孫四郎は、正直その父の怒りが理解できなかった。
『人の上に立つ者は、命を軽んじる事はもってのほかである』
『己以上のモノとして、考える事が出来なければ、民はついて来ぬぞ』
父はそう言い、生まれて初めて私をの顔を殴り、そう説いた。
(己以上に尊い、そんなワケある訳が無い)
(字も書けん、読めない者達、自分より劣る者達がどうして、自分より尊いのじゃ?)
(あ奴らは、私達支配者が居るから、生きていけるのじゃ)
(高貴な私達と、民たちの命を一緒に考えるなどバカげた話である)
(過去の偉大な王が、私に力を与えてくれる為に必要であれば、民の命の一つや二つ、安いモノじゃ)
その孫四郎の気持ちを、見透かした様に、徐福と名乗る男は薄笑みを浮かべながら、孫四郎に生贄の命を奪う許可を求める。
男の目を見てしまった、孫四郎はその怪しい瞳の輝きに、まるで引き込まれる様に、頷いた。
私は、父や兄を越える力を、得る。それは、生を受けた時に既に決まっていた事のように、当然だと孫四郎は思った。
その様は、徐福と名乗る怪しげな道士が、孫四郎に催眠術をかけたようであった。
孫四郎が頷くと、怪しげな道自らが持つ短刀を使い、先ずは幼子から、そして、その両親の首を掻き切った。
『ち・・ち、はは・・』
子どもは最後に両親に助けを求めようとしたが、喉を掻き切られ、息が吸えず、言葉も出ず絶命した。
子どもの両親は、その光景を見て、気が狂うように暴れようとしたが、笑みを浮かべた悪魔が、その二人の首も、楽しむように掻き切ったのである。
その時である。突然、稲妻が鳴り響き、雨が降り始めたのである。
雷が孫四郎の目の前の木に落ちる。
その迫力に、己の死を感じ、慌て蓋めく孫四郎の前に、一人の男が現れる。
高貴な衣を来た、一人の中年の男である。
(朕の事を呼んだのは、お主か・・・)
(この真人である、朕を、呼び覚ましたのはお主か・・)
(孫四郎よ、其方の願い、叶えてやる、その代わり、お主、朕の願いを聞いてくれるか?)
(・・・・・どうじゃ??)
恐怖に震えた顔で、孫四郎は、どうしたらよいか分からない。
『どうした、なぜ、答えぬ・・・』
『・・・・朕が怖いか、・・・もう一度だけ、聞くぞ』
孫四郎は、生まれて初めてみた、人外の存在に恐怖を覚え、その恐怖から逃れたいが為に・・。
してはならない事をしてしまった。
悪霊の願いを、聞くと、頷いてしまったのである。
『それでは、お主の身体、朕が使うぞ・・・』
高貴な衣を来た中年の男は、そう言うと、透き通る身体の腕を、孫四郎の胸元へ入れる。
『ヒィッ、何を・・・・』
それが孫四郎の断末魔の悲鳴であった。
孫四郎の心臓を掴み、握り・・潰した。
糸が切られた人形の様に、孫四郎はその場に倒れる。
其れを見ていた、ひとりの孫四郎の家来が、主君の異変に驚き、孫四郎に近寄る。
『龍重様!・・・』
数名の家来達も、次々と・・・近寄ろうとしたが、その者達を、鎌の様なモノを持った徐福が次々と切り殺す。
『・・・・・・お前、何奴・・』
即死を免れたモノが、最期の疑問を投げかけようとしたが、終わらぬ内に力尽きた。
『・・・私か、私は偉大なる真人、始皇帝様の忠実なる者・・・』
男は、そう言うと、その場にしゃがみ込み、転生の秘術を唱え始める。
『オンバラ・・ソヤカ・・オンバラソヤカ・・』
地獄の淵から亡者を蘇えさせる呪が、その場に響き渡る。
倒れていた孫四郎の身体が、突然立ち上がる。
『・・・・趙高・・・朕を蘇らせたのはお前か・・』
『・・・ハッ、長い間、お待ちしておりました、我が王』
寺には、生あるものは死に絶え、妖気漂う二人の話し合う影だけが居たのである。
美濃の国道三の次男斎藤孫四郎龍重は、もう直国の為に嫁いでいく妹帰蝶の息災を願いある寺を訪れていた。その名目は、嘘であり、目的は別にあった。
宋から来たという、一人の男が願いを叶えるという祈祷を行うという。
孫四郎は、半身半疑でそれに付き合ったのであった。
孫四郎の願いとは、兄義龍に代わって父道三の跡取りになる事である。
男は自分を道士であり、徐福と名乗った。
男の肌は、気味が悪い程白く、唇は女性用の紅を使用しているのではないかと思われるほど赤かった。
宋から来たという男は、願いを叶える為には、生贄を殺し、神にささげ祈祷をする必要があると孫四郎に説明した。
子どもがいる家族を、生贄に捧げる事で、偉大な王の魂を呼び戻す。
偉大な王が蘇れば、その王は孫四郎に大きな力を与えるであろうと説明していた。
16歳の孫四郎は、正直男の言う事を信じていなかった。
(どうせ、こ奴も、詐欺師に違いない、目的は金か、私に取入り、父道三の権力に伴う甘い汁を啜るのが目的の蟻だと・・)、孫四郎は思っていた。
幼き日、城に仕える下人の一人を自分のワガママで、殺したと父は自分を厳しく攻めた。
孫四郎は、正直その父の怒りが理解できなかった。
『人の上に立つ者は、命を軽んじる事はもってのほかである』
『己以上のモノとして、考える事が出来なければ、民はついて来ぬぞ』
父はそう言い、生まれて初めて私をの顔を殴り、そう説いた。
(己以上に尊い、そんなワケある訳が無い)
(字も書けん、読めない者達、自分より劣る者達がどうして、自分より尊いのじゃ?)
(あ奴らは、私達支配者が居るから、生きていけるのじゃ)
(高貴な私達と、民たちの命を一緒に考えるなどバカげた話である)
(過去の偉大な王が、私に力を与えてくれる為に必要であれば、民の命の一つや二つ、安いモノじゃ)
その孫四郎の気持ちを、見透かした様に、徐福と名乗る男は薄笑みを浮かべながら、孫四郎に生贄の命を奪う許可を求める。
男の目を見てしまった、孫四郎はその怪しい瞳の輝きに、まるで引き込まれる様に、頷いた。
私は、父や兄を越える力を、得る。それは、生を受けた時に既に決まっていた事のように、当然だと孫四郎は思った。
その様は、徐福と名乗る怪しげな道士が、孫四郎に催眠術をかけたようであった。
孫四郎が頷くと、怪しげな道自らが持つ短刀を使い、先ずは幼子から、そして、その両親の首を掻き切った。
『ち・・ち、はは・・』
子どもは最後に両親に助けを求めようとしたが、喉を掻き切られ、息が吸えず、言葉も出ず絶命した。
子どもの両親は、その光景を見て、気が狂うように暴れようとしたが、笑みを浮かべた悪魔が、その二人の首も、楽しむように掻き切ったのである。
その時である。突然、稲妻が鳴り響き、雨が降り始めたのである。
雷が孫四郎の目の前の木に落ちる。
その迫力に、己の死を感じ、慌て蓋めく孫四郎の前に、一人の男が現れる。
高貴な衣を来た、一人の中年の男である。
(朕の事を呼んだのは、お主か・・・)
(この真人である、朕を、呼び覚ましたのはお主か・・)
(孫四郎よ、其方の願い、叶えてやる、その代わり、お主、朕の願いを聞いてくれるか?)
(・・・・・どうじゃ??)
恐怖に震えた顔で、孫四郎は、どうしたらよいか分からない。
『どうした、なぜ、答えぬ・・・』
『・・・・朕が怖いか、・・・もう一度だけ、聞くぞ』
孫四郎は、生まれて初めてみた、人外の存在に恐怖を覚え、その恐怖から逃れたいが為に・・。
してはならない事をしてしまった。
悪霊の願いを、聞くと、頷いてしまったのである。
『それでは、お主の身体、朕が使うぞ・・・』
高貴な衣を来た中年の男は、そう言うと、透き通る身体の腕を、孫四郎の胸元へ入れる。
『ヒィッ、何を・・・・』
それが孫四郎の断末魔の悲鳴であった。
孫四郎の心臓を掴み、握り・・潰した。
糸が切られた人形の様に、孫四郎はその場に倒れる。
其れを見ていた、ひとりの孫四郎の家来が、主君の異変に驚き、孫四郎に近寄る。
『龍重様!・・・』
数名の家来達も、次々と・・・近寄ろうとしたが、その者達を、鎌の様なモノを持った徐福が次々と切り殺す。
『・・・・・・お前、何奴・・』
即死を免れたモノが、最期の疑問を投げかけようとしたが、終わらぬ内に力尽きた。
『・・・私か、私は偉大なる真人、始皇帝様の忠実なる者・・・』
男は、そう言うと、その場にしゃがみ込み、転生の秘術を唱え始める。
『オンバラ・・ソヤカ・・オンバラソヤカ・・』
地獄の淵から亡者を蘇えさせる呪が、その場に響き渡る。
倒れていた孫四郎の身体が、突然立ち上がる。
『・・・・趙高・・・朕を蘇らせたのはお前か・・』
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