13 / 75
第2章 改名
4.将軍の本音
しおりを挟む
宗治の部屋に、細川輝経が血相を変えて来たのは義昭たちへ食事を出した時間からそれ程時間が経っていない頃だった。
『清水殿、義昭様が本日の食事について聞きたい事が有るとお呼びじゃ。急いで一緒に来て下さらんか?』と呼びに来たのであった。
『義昭様が、食欲が無く、又一人で静かに食べたいというので、食膳を寝ておられる部屋に運ばせたのだが、いきなり誰がこの料理の献立を考えたのか、献立を考えた者を呼んで来いと、えらくご立腹でな、スマン。』と輝経は宗治に義昭の様子を大まかに説明したのであった。
『細川殿、それでは献立を考えた者を呼んで、私とその者二人で義昭様の部屋に向いたいのですが、宜しいか?』と宗治は輝経に久之助を同行させる事の可否を聞いた。
『良いが、急いで下され、義昭様の今の様子だと、待たせすぎるとマズイ事になりそうじゃ・・。』と輝経は答えた。
『直ぐでござる。この場でお待ちを。』と輝経を部屋で待たせ、宗治自ら久之助を呼びに行く。
事前に、この様な事もあろうかと、久之助を近くの部屋に留めておいた宗治も、義昭がご立腹という言葉を聞いた為、心は動揺していた。
(やはり、わらび餅の件だろうか?即興で作ったわらび餅が京の味とは全く違ったのかもしれん、やはり、試食の判定を原三郎にさせたのが悪かったのだろうか?しかし、ワシ自信も食べたが、美味かったし・・やはり高貴な方とワシら下民の者の舌を一緒だと考えたのがいけなかったのか・・)と歩きながら悪い方向にばかリ思考がいってしまっていたのである。
久之助が待機している部屋の前に立ち、襖を開ける前に『久之助、将軍様がお呼びじゃ、ワシと一緒に来てくれ!。』と言って襖を開けた。
襖を開けると、久之助は部屋の中央で立っていた。表情はやはり来たかという様なバツの悪そうな顔をしており、予想していた最悪の展開が訪れた事に、その現実に少したじろいでいる表情であった。
『ハイ、畏まりました。』『覚悟はしておりましたが、やはり来ましたか・・。』と小さい声で宗治に自分の感想を正直に伝えた。
『細川殿曰く、義昭様はご立腹との事だ。ヤバい事になった。手はあるのか・・・?』と宗治は更に低い声で久之助に聞く。
『・・・・。』、久之助は答えず、ただ頷いた。『殿、御供致します。』と久之助が言うと、二人は急ぎ細川輝経が待つ部屋に急ぎ向かったのである。
輝経と合流し、義昭の部屋の前まで来ると、輝経は義昭に呼びかける。『義昭様、清水殿並びに、本日の献立を考えた者を連れて参りました。
『・・・・ウム、入れ!』と部屋の中から、義昭の声が聞こえてきた。その声は不機嫌そうに聞こえる声だった。
3人が部屋に入ると、ムスッとした表情の将軍が布団の横に置かれた食膳の前に座っていた。
『お休みの処、失礼致します。』と宗治が呼びかけ、宗治、久之助、輝経の順番に部屋に入ろうとすると、義昭は輝経に向かって『輝経、お前は良い、自分の部屋に戻っておれ!』とぶっきらぼうな大きい声で命じたのであった。
『ハッ、それでは部屋に戻りますが、何かございましたお呼び下さい。』と輝経は一人だけ一歩下がり廊下に出て襖を閉めようとする。
宗治と久之助が最後に見た輝経の表情は、これから将軍の怒りの捌け口になると予想される二人への憐れみと、そのトバッチリを回避できる事が確定した自分に安堵するという二つの感情が同居した何とも言えない表情をしていた。
輝経は、丁重に襖を閉め、緊張の舞台から逃げる様に退場したのであった。
『義昭様、本日準備した食事が御気に召しませんでしたでしょうか?』と宗治が義昭に恐る恐る確認する。
『・・・今日我の食事の献立を考えたのはどちらじゃ?』と二人に聞く。
宗治は、緊張のあまり直ぐに回答出来ない、『私でございます』と久之助は緊張しながらも答えたのであった。
『我が何でその方らを呼んだと思う?』と緊張している久之助に脅すような大きな声で続けて聞く義昭。
『・・・分かりませぬ。』と低い声で久之助が答える。
『本当に分からんのか?もう一度聞くぞ!』と義昭のその声は正に威圧的な尋問する様な声だった。
『・・・わらび餅でしょうか?』という久之助の言葉は、観念し、自白する音が含まれていた。
『そうだ、わらび餅じゃ、いや、こんなモノ、わらび餅とは言えぬ、子供だましのまがい物じゃ!。』と義昭は言葉を吐き捨てるように言った。
義昭の言葉に、宗治は図星をつかれ、静かに驚愕していた。
(子供騙し、まさにそのとおり、試食し、判定したのは我が子の原三郎、何故、幼子に試食させ決める事を許可したのか・・ワシは馬鹿じゃ、大バカ者じゃ・・。)と宗治は、言葉は出さず、黙って一生分の冷や汗をかいていたのであった。
『其方、京に行った事あるのか?ないじゃろう!』
『わらび餅も、食った事ないのではないか?食べた事があれば、こんなモノ作らんわ!!。』と義昭は大声で久之助を怒鳴りつけたのであった。
義昭に怒鳴りつけられた久之助は、当然、慌てふためいていたが、『・・・ハイ。京へは行った事が有りませぬ。正直、わらび餅も自分では食べた事がなく、食べた事が有る者から、材料と作り方を聞いて作りました。』と緊張しながらも、物おじせず答えたのであった。
(終わった・・ワシは切腹するのじゃ、40歳、思えば短い人生だった。切腹の理由はわらび餅のまがい物を作った為、何とも恥ずかしい理由じゃ、・・・まあ、それも人生か・・。)と久之助の答えている姿を見ながら、宗治は心の中で悟りの境地に達していた。
『私達が作ったわらび餅が御口に合わなかったのであれば、私がこの身を持って償いますので、どうかお許し下さい。』
『本日、義昭様が我々の城にお入りの際、お元気がなく、其れを案じた我が主から、何か義昭様をお元気にさせる、励ませるモノを準備するように命じられ、京の御菓子を出せば、義昭様が喜んでくださると思い・・・、私の様な下民の者が浅はかでございました。何卒お許し下さい。』とその場で頭を下げ、畳に頭を擦りつけ、頭を上げたと思うと、その場で腹を切ろうと、服を脱ぎ始めたのであった。
其れを見た宗治も、『腹を切らなければならないのは、責任者である私でございます!。』と同じく服を脱ごうとした。
『このウツケ者共が! 未だ我の話が終わっておらぬわ!』と二人を静止する様に再び怒鳴りつける。その声は、昼間の弱弱しい声と同一人物と思えないぐらい大きく、力強かった。
『其方、どうして京の菓子を我に出そうとしたのじゃ。』と義昭が言う。
『義昭様が、いつの日か京に返り咲き、天下を平定して下さる事を願い、私達が作ったわらび餅とは比べ物にならないぐらい美味しい本物のわらび餅を食べれる日を願い、出したのでございます。!』と久之助は涙ながらに言った、訴えたのである。
『この痴れ者が、身の程知らずが何を言う!!。』と義昭はその日一番の大きい声で、久之助を怒鳴ったのであった。しかし、その目は涙で濡れていた。
『ごもっとも!!』と久之助と宗治は、併せたかのように同時に同じ言葉を言い、同時に頭を下げたのであった。
『輝経!其処にいるのじゃろ、急ぎ此の者達の食膳を準備し、我の部屋に運んでくるのじゃ、我は今日此の者達と食事をするぞ!!酒も持って来させよ!!。』
『ハッハハァ、直ぐに。』と部屋の外から、細川輝経の声が聞こえた。
二人の心が天に通じたのか、義昭の心に通じたのか、指示する義昭の声は、大きく力強かったのである。
『清水殿、義昭様が本日の食事について聞きたい事が有るとお呼びじゃ。急いで一緒に来て下さらんか?』と呼びに来たのであった。
『義昭様が、食欲が無く、又一人で静かに食べたいというので、食膳を寝ておられる部屋に運ばせたのだが、いきなり誰がこの料理の献立を考えたのか、献立を考えた者を呼んで来いと、えらくご立腹でな、スマン。』と輝経は宗治に義昭の様子を大まかに説明したのであった。
『細川殿、それでは献立を考えた者を呼んで、私とその者二人で義昭様の部屋に向いたいのですが、宜しいか?』と宗治は輝経に久之助を同行させる事の可否を聞いた。
『良いが、急いで下され、義昭様の今の様子だと、待たせすぎるとマズイ事になりそうじゃ・・。』と輝経は答えた。
『直ぐでござる。この場でお待ちを。』と輝経を部屋で待たせ、宗治自ら久之助を呼びに行く。
事前に、この様な事もあろうかと、久之助を近くの部屋に留めておいた宗治も、義昭がご立腹という言葉を聞いた為、心は動揺していた。
(やはり、わらび餅の件だろうか?即興で作ったわらび餅が京の味とは全く違ったのかもしれん、やはり、試食の判定を原三郎にさせたのが悪かったのだろうか?しかし、ワシ自信も食べたが、美味かったし・・やはり高貴な方とワシら下民の者の舌を一緒だと考えたのがいけなかったのか・・)と歩きながら悪い方向にばかリ思考がいってしまっていたのである。
久之助が待機している部屋の前に立ち、襖を開ける前に『久之助、将軍様がお呼びじゃ、ワシと一緒に来てくれ!。』と言って襖を開けた。
襖を開けると、久之助は部屋の中央で立っていた。表情はやはり来たかという様なバツの悪そうな顔をしており、予想していた最悪の展開が訪れた事に、その現実に少したじろいでいる表情であった。
『ハイ、畏まりました。』『覚悟はしておりましたが、やはり来ましたか・・。』と小さい声で宗治に自分の感想を正直に伝えた。
『細川殿曰く、義昭様はご立腹との事だ。ヤバい事になった。手はあるのか・・・?』と宗治は更に低い声で久之助に聞く。
『・・・・。』、久之助は答えず、ただ頷いた。『殿、御供致します。』と久之助が言うと、二人は急ぎ細川輝経が待つ部屋に急ぎ向かったのである。
輝経と合流し、義昭の部屋の前まで来ると、輝経は義昭に呼びかける。『義昭様、清水殿並びに、本日の献立を考えた者を連れて参りました。
『・・・・ウム、入れ!』と部屋の中から、義昭の声が聞こえてきた。その声は不機嫌そうに聞こえる声だった。
3人が部屋に入ると、ムスッとした表情の将軍が布団の横に置かれた食膳の前に座っていた。
『お休みの処、失礼致します。』と宗治が呼びかけ、宗治、久之助、輝経の順番に部屋に入ろうとすると、義昭は輝経に向かって『輝経、お前は良い、自分の部屋に戻っておれ!』とぶっきらぼうな大きい声で命じたのであった。
『ハッ、それでは部屋に戻りますが、何かございましたお呼び下さい。』と輝経は一人だけ一歩下がり廊下に出て襖を閉めようとする。
宗治と久之助が最後に見た輝経の表情は、これから将軍の怒りの捌け口になると予想される二人への憐れみと、そのトバッチリを回避できる事が確定した自分に安堵するという二つの感情が同居した何とも言えない表情をしていた。
輝経は、丁重に襖を閉め、緊張の舞台から逃げる様に退場したのであった。
『義昭様、本日準備した食事が御気に召しませんでしたでしょうか?』と宗治が義昭に恐る恐る確認する。
『・・・今日我の食事の献立を考えたのはどちらじゃ?』と二人に聞く。
宗治は、緊張のあまり直ぐに回答出来ない、『私でございます』と久之助は緊張しながらも答えたのであった。
『我が何でその方らを呼んだと思う?』と緊張している久之助に脅すような大きな声で続けて聞く義昭。
『・・・分かりませぬ。』と低い声で久之助が答える。
『本当に分からんのか?もう一度聞くぞ!』と義昭のその声は正に威圧的な尋問する様な声だった。
『・・・わらび餅でしょうか?』という久之助の言葉は、観念し、自白する音が含まれていた。
『そうだ、わらび餅じゃ、いや、こんなモノ、わらび餅とは言えぬ、子供だましのまがい物じゃ!。』と義昭は言葉を吐き捨てるように言った。
義昭の言葉に、宗治は図星をつかれ、静かに驚愕していた。
(子供騙し、まさにそのとおり、試食し、判定したのは我が子の原三郎、何故、幼子に試食させ決める事を許可したのか・・ワシは馬鹿じゃ、大バカ者じゃ・・。)と宗治は、言葉は出さず、黙って一生分の冷や汗をかいていたのであった。
『其方、京に行った事あるのか?ないじゃろう!』
『わらび餅も、食った事ないのではないか?食べた事があれば、こんなモノ作らんわ!!。』と義昭は大声で久之助を怒鳴りつけたのであった。
義昭に怒鳴りつけられた久之助は、当然、慌てふためいていたが、『・・・ハイ。京へは行った事が有りませぬ。正直、わらび餅も自分では食べた事がなく、食べた事が有る者から、材料と作り方を聞いて作りました。』と緊張しながらも、物おじせず答えたのであった。
(終わった・・ワシは切腹するのじゃ、40歳、思えば短い人生だった。切腹の理由はわらび餅のまがい物を作った為、何とも恥ずかしい理由じゃ、・・・まあ、それも人生か・・。)と久之助の答えている姿を見ながら、宗治は心の中で悟りの境地に達していた。
『私達が作ったわらび餅が御口に合わなかったのであれば、私がこの身を持って償いますので、どうかお許し下さい。』
『本日、義昭様が我々の城にお入りの際、お元気がなく、其れを案じた我が主から、何か義昭様をお元気にさせる、励ませるモノを準備するように命じられ、京の御菓子を出せば、義昭様が喜んでくださると思い・・・、私の様な下民の者が浅はかでございました。何卒お許し下さい。』とその場で頭を下げ、畳に頭を擦りつけ、頭を上げたと思うと、その場で腹を切ろうと、服を脱ぎ始めたのであった。
其れを見た宗治も、『腹を切らなければならないのは、責任者である私でございます!。』と同じく服を脱ごうとした。
『このウツケ者共が! 未だ我の話が終わっておらぬわ!』と二人を静止する様に再び怒鳴りつける。その声は、昼間の弱弱しい声と同一人物と思えないぐらい大きく、力強かった。
『其方、どうして京の菓子を我に出そうとしたのじゃ。』と義昭が言う。
『義昭様が、いつの日か京に返り咲き、天下を平定して下さる事を願い、私達が作ったわらび餅とは比べ物にならないぐらい美味しい本物のわらび餅を食べれる日を願い、出したのでございます。!』と久之助は涙ながらに言った、訴えたのである。
『この痴れ者が、身の程知らずが何を言う!!。』と義昭はその日一番の大きい声で、久之助を怒鳴ったのであった。しかし、その目は涙で濡れていた。
『ごもっとも!!』と久之助と宗治は、併せたかのように同時に同じ言葉を言い、同時に頭を下げたのであった。
『輝経!其処にいるのじゃろ、急ぎ此の者達の食膳を準備し、我の部屋に運んでくるのじゃ、我は今日此の者達と食事をするぞ!!酒も持って来させよ!!。』
『ハッハハァ、直ぐに。』と部屋の外から、細川輝経の声が聞こえた。
二人の心が天に通じたのか、義昭の心に通じたのか、指示する義昭の声は、大きく力強かったのである。
0
あなたにおすすめの小説
輿乗(よじょう)の敵 ~ 新史 桶狭間 ~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
美濃の戦国大名、斎藤道三の娘・帰蝶(きちょう)は、隣国尾張の織田信長に嫁ぐことになった。信長の父・信秀、信長の傅役(もりやく)・平手政秀など、さまざまな人々と出会い、別れ……やがて信長と帰蝶は尾張の国盗りに成功する。しかし、道三は嫡男の義龍に殺され、義龍は「一色」と称して、織田の敵に回る。一方、三河の方からは、駿河の国主・今川義元が、大軍を率いて尾張へと向かって来ていた……。
【登場人物】
帰蝶(きちょう):美濃の戦国大名、斎藤道三の娘。通称、濃姫(のうひめ)。
織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。
斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。
一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃の国主になる。幕府から、名門「一色家」を名乗る許しを得る。
今川義元:駿河の戦国大名。名門「今川家」の当主であるが、国盗りによって駿河の国主となり、「海道一の弓取り」の異名を持つ。
斯波義銀(しばよしかね):尾張の国主の家系、名門「斯波家」の当主。ただし、実力はなく、形だけの国主として、信長が「臣従」している。
【参考資料】
「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社
「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳) KADOKAWA
東浦町観光協会ホームページ
Wikipedia
【表紙画像】
歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる