山姥(やまんば)

野松 彦秋

文字の大きさ
46 / 46
最終章 脱出

16.カーテンコール(後編)

しおりを挟む
宿泊研修の事件から十数年後、勝平小学校のグランドで一人の男性教員が体育の授業の準備をしている。

『佐上先生、励んでるか?』

『あ、加賀谷教頭、おはようございます。』

中年の女性が、手のひらをグウにして、若い男性教員の肩を軽く叩く。

苦笑いをする男性教員は、照れながら、片手で自分の頭を撫でる。

『まさか、先生が教頭先生になって勝平小学校に戻って来られるとは・・』

『それは、こっちのセリフよ。10何年ぶりに、勝平小学校に戻ったら、以前の教え子が居るんだもの』

『それも二人も・・』

『そうですよね、まあ。教員採用試験に何度か失敗した自分と、すんなり先生になれた松本の・・』

『タイミングが丁度あってしまったようで、縁でしょうかね』

『それより、加賀谷教頭、だいぶお腹が目立ってきましたが、そろそろお休み取らなくて大丈夫ですか?』

『ウチは、旦那様が優しいからね、未だもうちょっと頑張りたいと思ってるんだけど・・』

はじめさんたら、高齢出産なんだからって、毎日の様に言うの、女性に年の事を言うなんて、失礼よね』

『私も、大変なのよ。いっぺんに生まれてくれば良いのに、数年あけて授かるんだもの、やっと3人目よ』

『・・・。まあ、おめでたい事です。それだけ、愛されているって事ですよ・・』

『あらっ、アナタも言う様になったわね。私達の結婚式の時には、あんなに小さかった男の子だったのに』

二人がそんな会話をしていると、後ろから二人の女の子たちがやって来た。

『教頭先生、佐上先生、おはようございます。』

『君は・・確か・・』

『あっ、じゃあ、私は午後からの職員会議の準備があるから、行くわね。』

加賀谷教頭は、そう言って立ち去ろうとした。

しかし、一旦忘れた事を思い出したように、立ち止まり声をかける。

『佐上先生、来月にでも、皆で遊びに来て!カッチ君、ナオケン君、松本先生の4人で、我が家のバーベキュー大会に招待するわ!』

哲也は、同意の合図として恩師に軽く会釈をする。それを確認した福岡先生、いや加賀谷先生は満足そうな顔で職員室に戻って行った。

『あっ、ゴメンゴメン、それで何か話があるのかな?』

『はい、私、5年3組の松本先生のクラスの者です。鎌田です。』

『松本先生に相談したら、佐上先生にも話をしてみてって言われて・・』

『実は、私の妹が一昨日、不思議な女の子に出会って、それからちょっと怖い事が起き始めたんです』

『ホラ、桜子ッ、アナタも自分で説明しなきゃ』

『お姉ちゃん、いいよ、恥ずかしい、きっと幽霊だなんて、信じてもらえないよ』

前の子に引っ張られてきた女の子は、緊張した顔でそう言った。

二人は、姉妹だった。

『幽霊の件だったら、先生の幼馴染に、プロがいるよ。知ってるかな、勝平寺の3代目、自称2代目清明、野田和尚・・』

お姉さんと、妹は二人そろって首を振る。

『後ね、考古学の教授の卵の幼馴染もいるんだ。世界の不思議はオレが解明するって言ってる、勇気のある男もね』

『だから、大船に乗ったつもりで、何でも相談してくれていいよ!』

『実は、松本先生を入れて僕たちはチームなんだ。困った子供達を助けるチーム』

『4人で絶対君たちを助けてみせるよ!!』

哲也は、優しい笑顔でそう宣言したのである。

その言葉を聞いて、二人の姉妹の顔から、不安が消え、安心した表情を見せる。

そして時代と使命は受け継がれていくのであった。

(完)


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

処理中です...