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第2章 特訓
7.修業1(特訓、特訓、夜食)
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髭殿が指定の神社近くに、二つの長屋を借りて虎之助の槍修行が始まった。
修業の場所となる神社は、昔天狗が住んでいたと言われる神社で、山の頂にあった。
長屋から神社に辿り着く為には700段以上の階段を昇らなければならない。
普通に昇っても、20分は余裕でかかる階段である。階段数の多さはも、大変だが、階段の傾斜が強く、降りる時には、大の大人でも転げ落ちたら無事ではいられないと怖がるほど急であった。
そんな急な階段を、髭殿は虎之助にノルマとして、毎日3人のうち一人背負って上り下りする事を課した。
3人の稽古内容は、主に6通りである。稽古は、12尺(360㎝)の木槍を使用して行う。
神社まで昇ると、先ずは3人一組になり、①約束稽古※1、②打ち込み稽古※2、③かかり稽古※3、④互角稽古※4を行う。
稽古中は、髭殿が横で3人を観察し、一人一人の弱点を指摘し、打ち込みの鋭さ、受けの精度を評価し、その場で伝える。
3人の動きや心に、ミスや隙があれば、容赦なく罵声が飛びかう厳しい稽古である。この基礎稽古が8時から12時迄続く。
昼食と休憩が終わると、髭殿が3人に⑤引き立て稽古※5を行う。それが終わると、3人が実戦形式の⑥模擬試合を髭殿と行う。
これが3人の毎日行う修業内容の流れであったが、修業は彼らの想像以上に過酷なモノであった。
理由は髭殿である。
普段の髭殿は、非常に物静かな方で口調も優しく、シノと話す時は、愛娘と話す笑顔を絶やさない父親の様な雰囲気である。
しかし、神社の入り口をくぐり、木槍を持つと正に人格が豹変し、鬼軍曹になるのである。
最も、怖いのが模擬戦の時の彼である、鬼軍曹から、最終形態の鬼にかわり、形相は悪鬼そのもの、容赦なく彼らを打ちのめした。
模擬戦の時の彼は、相手の急所を的確に狙い、淡々と躊躇せず打ち込んでくるのである。最初の一打で、急所を突かれて悶絶していると、別の急所へ更に攻撃を打ち込んでくる。初日の日、髭殿の攻撃で虎之助は失神し、ほかの二人も失神はしなかったが、半分逃げる様な体で降参した程である。
髭殿は、トドメの打ち込みの際に、髭殿は、必ず『往生せいやぁ~!!。』という大声を放つのだが、虎之助は初めての試合時は聞いたと思ったら、目覚めると長屋の布団で寝ていたという有様であった。
ほぼ最初の一週間は、目覚めるとシノが心配そうに虎之助の顔を覗いている、そんな日が続いた。
一打一打、殺気を込めて急所を付いてくる髭殿の猛攻は、あくる日もあくる日も容赦なく続いた。
虎之助の生来の身体の丈夫さと、若い時特有の驚異的な回復力のお蔭もあって、大けがもせず修業は続けられた。
最初の1週間は、修業疲れの為、シノが毎日準備してくれる夜食(主にうどん)にも手を付ける事ができなかった3人であるが、日が経つにつれ、体も慣れ、10日も過ぎる頃にはシノの夜食を美味しく食べる風景が4人の生活の日常になった。
シノも、4人が美味しそうに残さず食べてくれるので、料理をするのがだんだん好きになり、毎日少しでも変化をつけて食事を作るようにしたりして、料理の腕を磨いた。
たまに顔を出すイトも、自分の持っている料理の作り方をシノへその都度教えていった。
3人は、槍術を、シノは料理の道を修行しているような感じであった。
日々は流れ、季節は秋から冬へ、冬から新年へ変わる頃、虎之助が髭殿の猛攻をしのぎ、虎之助の方からも攻撃を返せる様になった。
そんな頃、秀長が虎之助の実力を確認しに長屋を訪れた。
秀長がまず驚いたのが、虎之助、力士、久次郎の槍術の進歩と、彼らの身体が一回り大きくなった事だった。
筋肉が付き、脂肪が落ち顔は幼さが消え、正に精悍な顔つきになっていたのである。
『長頼殿、其方の御蔭で虎之助はもちろん、他の二人も、槍使いとして何処に出しても、可笑しくないレベルになった。礼を申しますぞ!』
秀長がそういうと、髭殿は、少し眉の間に皺をよせ、秀長の耳にだけ聞こえる様に呟いた。
『今のレベルでも、並みの達人になら、充分通じるぐらいになりました。しかし未だ未だ、森長可殿と戦うには、あやつの十文字槍と戦うには、未だ修業が足りませぬ。』
『3人には、槍使いの基本と、戦場で行う命のやり取りを想定した実戦的な槍使いを、模擬戦で体に教え込みましたが、未だ教える事が出来ていないものが有りまする。秀長殿、実は・・・・。』
用件を聞いた秀長は、改めて髭殿深々と頭を下げた。髭殿は、1通の手紙を、秀長に渡した。
『ところで、長頼殿、少しお顔がふっくらとされたのでは・・・?』秀長は恐る恐る、自分の正直な感想を長頼に投げかけた。
『・・・・、実はこの2カ月、毎日シノ殿が作ってくれる夜食が美味しくて、美味しくて、ついつい、若い3人は、全然肥らないのですが、私は少しづつ肥ってしまって、やはり、齢ですかな・・。まあ、今後気を付けますよ。次、秀長殿が来られる時には、もとに戻っている事でしょう・・・ははは。酒やめようかなぁ・・。』
そんな会話をした後、秀長は長浜城へ帰っていった。
※1約束稽古
前もって打つところを決め、基本に従った打ちを行い、姿勢や打ち、間合い、足捌きなどを体で覚える稽古。
※2打ち込み稽古
あらかじめ打ち込む部位を決めておいて、元立ち※6の作ってくれた隙を打ち込む基本的な稽古。
※3かかり稽古
元立ちに対して、自分で相手の隙をみつけ、自分の意志で打ちかかる稽古。
元立ちは、打つタイミングが悪いときや、遅れたときなどは、いなしたり、反対に打ってでます。正しい打突、間合い、機会、気持ちを集中する稽古
※4互角稽古
技術や修業の度合いの同じ程度のものが、互いに学んだ技、体力、気力をすべて出し合い、
一本試合のように打ち込むことを学ぶ稽古。
※5引き立て稽古
指導者や上位者が元立ちとなり、下位者の技能が向上する様にに引き立てる稽古
※6元立ち 打突を受ける側
修業の場所となる神社は、昔天狗が住んでいたと言われる神社で、山の頂にあった。
長屋から神社に辿り着く為には700段以上の階段を昇らなければならない。
普通に昇っても、20分は余裕でかかる階段である。階段数の多さはも、大変だが、階段の傾斜が強く、降りる時には、大の大人でも転げ落ちたら無事ではいられないと怖がるほど急であった。
そんな急な階段を、髭殿は虎之助にノルマとして、毎日3人のうち一人背負って上り下りする事を課した。
3人の稽古内容は、主に6通りである。稽古は、12尺(360㎝)の木槍を使用して行う。
神社まで昇ると、先ずは3人一組になり、①約束稽古※1、②打ち込み稽古※2、③かかり稽古※3、④互角稽古※4を行う。
稽古中は、髭殿が横で3人を観察し、一人一人の弱点を指摘し、打ち込みの鋭さ、受けの精度を評価し、その場で伝える。
3人の動きや心に、ミスや隙があれば、容赦なく罵声が飛びかう厳しい稽古である。この基礎稽古が8時から12時迄続く。
昼食と休憩が終わると、髭殿が3人に⑤引き立て稽古※5を行う。それが終わると、3人が実戦形式の⑥模擬試合を髭殿と行う。
これが3人の毎日行う修業内容の流れであったが、修業は彼らの想像以上に過酷なモノであった。
理由は髭殿である。
普段の髭殿は、非常に物静かな方で口調も優しく、シノと話す時は、愛娘と話す笑顔を絶やさない父親の様な雰囲気である。
しかし、神社の入り口をくぐり、木槍を持つと正に人格が豹変し、鬼軍曹になるのである。
最も、怖いのが模擬戦の時の彼である、鬼軍曹から、最終形態の鬼にかわり、形相は悪鬼そのもの、容赦なく彼らを打ちのめした。
模擬戦の時の彼は、相手の急所を的確に狙い、淡々と躊躇せず打ち込んでくるのである。最初の一打で、急所を突かれて悶絶していると、別の急所へ更に攻撃を打ち込んでくる。初日の日、髭殿の攻撃で虎之助は失神し、ほかの二人も失神はしなかったが、半分逃げる様な体で降参した程である。
髭殿は、トドメの打ち込みの際に、髭殿は、必ず『往生せいやぁ~!!。』という大声を放つのだが、虎之助は初めての試合時は聞いたと思ったら、目覚めると長屋の布団で寝ていたという有様であった。
ほぼ最初の一週間は、目覚めるとシノが心配そうに虎之助の顔を覗いている、そんな日が続いた。
一打一打、殺気を込めて急所を付いてくる髭殿の猛攻は、あくる日もあくる日も容赦なく続いた。
虎之助の生来の身体の丈夫さと、若い時特有の驚異的な回復力のお蔭もあって、大けがもせず修業は続けられた。
最初の1週間は、修業疲れの為、シノが毎日準備してくれる夜食(主にうどん)にも手を付ける事ができなかった3人であるが、日が経つにつれ、体も慣れ、10日も過ぎる頃にはシノの夜食を美味しく食べる風景が4人の生活の日常になった。
シノも、4人が美味しそうに残さず食べてくれるので、料理をするのがだんだん好きになり、毎日少しでも変化をつけて食事を作るようにしたりして、料理の腕を磨いた。
たまに顔を出すイトも、自分の持っている料理の作り方をシノへその都度教えていった。
3人は、槍術を、シノは料理の道を修行しているような感じであった。
日々は流れ、季節は秋から冬へ、冬から新年へ変わる頃、虎之助が髭殿の猛攻をしのぎ、虎之助の方からも攻撃を返せる様になった。
そんな頃、秀長が虎之助の実力を確認しに長屋を訪れた。
秀長がまず驚いたのが、虎之助、力士、久次郎の槍術の進歩と、彼らの身体が一回り大きくなった事だった。
筋肉が付き、脂肪が落ち顔は幼さが消え、正に精悍な顔つきになっていたのである。
『長頼殿、其方の御蔭で虎之助はもちろん、他の二人も、槍使いとして何処に出しても、可笑しくないレベルになった。礼を申しますぞ!』
秀長がそういうと、髭殿は、少し眉の間に皺をよせ、秀長の耳にだけ聞こえる様に呟いた。
『今のレベルでも、並みの達人になら、充分通じるぐらいになりました。しかし未だ未だ、森長可殿と戦うには、あやつの十文字槍と戦うには、未だ修業が足りませぬ。』
『3人には、槍使いの基本と、戦場で行う命のやり取りを想定した実戦的な槍使いを、模擬戦で体に教え込みましたが、未だ教える事が出来ていないものが有りまする。秀長殿、実は・・・・。』
用件を聞いた秀長は、改めて髭殿深々と頭を下げた。髭殿は、1通の手紙を、秀長に渡した。
『ところで、長頼殿、少しお顔がふっくらとされたのでは・・・?』秀長は恐る恐る、自分の正直な感想を長頼に投げかけた。
『・・・・、実はこの2カ月、毎日シノ殿が作ってくれる夜食が美味しくて、美味しくて、ついつい、若い3人は、全然肥らないのですが、私は少しづつ肥ってしまって、やはり、齢ですかな・・。まあ、今後気を付けますよ。次、秀長殿が来られる時には、もとに戻っている事でしょう・・・ははは。酒やめようかなぁ・・。』
そんな会話をした後、秀長は長浜城へ帰っていった。
※1約束稽古
前もって打つところを決め、基本に従った打ちを行い、姿勢や打ち、間合い、足捌きなどを体で覚える稽古。
※2打ち込み稽古
あらかじめ打ち込む部位を決めておいて、元立ち※6の作ってくれた隙を打ち込む基本的な稽古。
※3かかり稽古
元立ちに対して、自分で相手の隙をみつけ、自分の意志で打ちかかる稽古。
元立ちは、打つタイミングが悪いときや、遅れたときなどは、いなしたり、反対に打ってでます。正しい打突、間合い、機会、気持ちを集中する稽古
※4互角稽古
技術や修業の度合いの同じ程度のものが、互いに学んだ技、体力、気力をすべて出し合い、
一本試合のように打ち込むことを学ぶ稽古。
※5引き立て稽古
指導者や上位者が元立ちとなり、下位者の技能が向上する様にに引き立てる稽古
※6元立ち 打突を受ける側
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