戦神(せんじん)の魂と経験共有で強くなる~白き戦神の冒険譚~

ルキノア

文字の大きさ
5 / 65
序章

しおりを挟む
学園で起こった謎の魔物発生事件から数日。
アルノアは戦いの余韻を引きずりながら、これからのことについて考えていた。

あれ以来、大鎌からは声が聞こえなくなった。
戦闘の経験は適応の個性によって体に残っているものの、氷の魔法も纏う程度に留まり、以前のように力強く発現させることはできない。

学園の生徒たちから事件のことを尋ねられるたび、アルノアは「よく分からない」とだけ答えていた。
大鎌の声のことを話したところで、信じてもらえるはずもなく、ただ奇異の目で見られるだろうとわかっていたからだ。

そんな日常の一日。学園は休みで、アルノアはロイと共に小規模なダンジョンへの討伐依頼を受けることにした。

「今回はいつものダンジョンに行こうか」
「そうだな。一日で踏破できるし、効率もいい」

ダンジョンは各地に点在し、小規模なものはすでにマッピングされ、冒険者たちの狩り場となっている。一方、大型ダンジョンは踏破が難しく、得られる報酬も大きい分、挑むにはリスクが伴う。そのため、塔型ダンジョンの周辺には都市が形成されることが多い。

「今回は二人で行こう」
「他の奴らを連れて行ったらやることなくなりそうだしな」

ギルドで依頼を受けた二人は、軽い調子でダンジョンへと向かった。
しかし、その行動を密かに見ていた者たちがいることを、彼らは知らなかった――。

「アルノアがダンジョンに行くらしいぞ」
「ちょうどいい。この前手に入れたアーティファクトを試す機会だな」
「俺たちC級でも苦戦した場所だ。B級のアルノア様なら、ひとりでもなんとかなるだろう」
「ははっ、でもアーティファクトの仕掛けがわからなければ、戻ってこれないんだぞ?あいつ、詰むかもしれないな」
「それも自分の力を偽っている奴が悪いだけさ」

アルノアのB級ランクに不満を抱く者たちが、陰で不穏な計画を進めていた――。

ダンジョンの中では、アルノアとロイが順調に進んでいた。
「やっぱり、このダンジョンもそろそろ飽きてきたな」
「確かにな。火属性に弱い魔物ばかりだから、俺がいると簡単すぎる」

そんな会話の中、遠くから叫び声が聞こえた。

「助けてくれぇ!仲間がB級魔物に襲われてるんだ!」

声を上げた冒険者に位置を聞くと、ロイは即座に駆け出した。
「ここに出るB級なら、俺ひとりで倒せる。アルノアはその人を応急処置してから来てくれ」
「了解だ」

アルノアは怪我を負った冒険者を簡単に手当てし、案内されながら現場に向かう。

しかし、先に進んだその瞬間――
罠が発動し、アルノアの体は突然消え去った。

アルノアが目を覚ますと、そこは見知らぬダンジョンだった。
「ここは……どこだ?」

辺りを見回し、冒険者としての勘と漂う重圧から、この場所がただのダンジョンでないことを直感する。

「主の間……に似ているな」

冷たい汗をかきながら、アルノアは慎重に奥へと進み始めた――。

 アルノアは周囲を警戒しながら歩き続けた。空気はどこか重く、肌にまとわりつくような違和感があった。転移先のダンジョンはこれまでのものとは明らかに異質だった。通路の壁には、ひび割れた石が複雑な模様を描き、薄暗い光がほのかに浮かび上がる。

ふと足を止めたアルノアの目に、壁面に刻まれた大きな絵が飛び込んできた。

「これは……?」

描かれていたのは、一人の戦士が巨大な影のような存在と戦っている場面だった。戦士の手には大きな武器、どこかで見覚えのある形状の大鎌が握られている。その後ろには数人の仲間たちが描かれ、全員が必死に何かに立ち向かう様子がわかる。

さらにその隣には、巨大な破壊神のような存在が刻まれていた。その禍々しい姿は、まるでこの空間そのものを支配しているかのような威圧感を放っている。

アルノアはその絵に近づき、慎重に指でなぞるように触れた。

「この絵……どこかで見たことがある気がする。いや、まさか……」

幼い頃、村で聞かされたおとぎ話を思い出す。かつて破壊神が現れたとき、勇者とその仲間たちが立ち向かい、命を賭して世界を救ったという伝説。しかしその話はあくまで伝説であり、誰も真実として受け取っていなかった。

「勇者の話と……似ている。でも、ただの偶然にしては……」

アルノアはさらに壁画を観察した。破壊神と戦う場面の下には、いくつかの古代文字が刻まれているようだ。しかし、読み解くことはできなかった。ただ、その文字が彼の心に奇妙な既視感を与える。

「……エーミラティス。この壁画に描かれているのは、お前と関係があるのか?」

当然返事はない。大鎌は静まり返ったままだったが、アルノアはその場を離れようとはしなかった。むしろ、その絵の意味を知りたいという衝動に駆られていた。

ふと絵の隅に、かすかに輝く部分があることに気づいた。近寄ってみると、そこには大鎌に似た形状のアーティファクトらしきものが描かれ、光のような筋が大鎌から伸びて破壊神へと届いていた。

「……破壊神を倒す鍵、ってことなのか?」

そのとき、背後で微かな音がした。周囲を見渡しても何もいない。しかし、空間そのものが彼の行動を監視しているかのような感覚が全身を包む。

「……まずはここから出る方法を探さないと」

アルノアは慎重に足を踏み出し、さらに奥へと進む。頭の中では、壁画に描かれていた光景が何度も繰り返し浮かんでいた。

 ――――。

一方、ロイは教えられた場所に到着していたが、そこに魔物の姿はなかった。

「B級の魔物が逃げた?そんなことあるのか」
「いや、まあ助かったからいいじゃねぇか」

不審に思いながら戻ろうとしたその時、慌てた声が響いた。
「大変だ!アルノアさんが罠でどっかに飛ばされた!」

ロイは焦りながら罠のあった場所へ急行する。
だが、罠はすでに作動せず、何の反応もない。

「これじゃ、どこに飛ばされたかわからない……ギルドに報告するしかないな」

ロイは険しい表情でギルドに向かう。
(嫌な予感がする……頼む、無事でいてくれアルノア)

ロイたちはギルドに戻り、アルノアが転移した原因を探っていた。転移罠がどのような仕組みで発動したのか、そして彼がどこへ行ってしまったのか――その答えを見つけるべく、周囲の冒険者たちや受付員に情報を求めていた。

「このダンジョンにそんな転移罠があるなんて話、聞いたことがない。何か特別なアイテムが使われたんじゃないか?」

ギルドの受付員が首をひねりながら答えると、ロイは苛立ちを隠しきれない表情で続けた。

「確かにアルが転移した場所は何度も踏破されたダンジョンだ。それなのに突然、未発見の罠が発動するなんて、誰かが仕掛けたとしか思えないだろ?」

周囲で話を聞いていた別の冒険者が、ふと口を開く。

「そういえば、最近ギルドに登録されてないアーティファクトが出回ってるって話を聞いたぞ。転移系の効果を持つものらしいが、詳細は不明だ」

「アーティファクト……。そうか、あいつらの仕業かもしれないな」

ロイは拳を握りしめた。心当たりがある。アルノアのB級ランクに不満を抱いている連中だ。あいつらがアルノアを陥れるために仕掛けた可能性が高い。

「そいつらの顔は分かるか?何か手がかりでもいい。俺たちで追い詰めてやる」

ロイの隣で話を聞いていた冒険者の一人が小声で答える。

「直接は見てないが……あの連中が何か持ち出したのは確かだ。」

ロイはその情報をもとに、捜索を急ぐことを決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...