29 / 65
フレスガドル
精霊王との決着
しおりを挟む
アルノアが必死にシエラの魔力の中に自分の意思を乗せようとしているのを感じて、ユリウスは声をかける。
「アルノア!俺たちもサポートする!お前だけに全部任せるつもりはない!」
アルノアは魔力に思いを乗せて仲間に放つ。
「助かる!でもシエラの中心に俺の魔力を送り込むのは俺自身がやる……俺の個性ならシエラへの負担を限りなく減らせる!」
ユリウスは頷き、さらに魔力を集中させて精霊の暴走する力を封じ込めるための結界を強化した。
「分かった。シエラはお前に任せる!精霊の方は俺たちが全力で抑える!」
デクスターが分析結果を報告する。
「暴走の中心にいるシエラの魔力が精霊の力に完全に飲み込まれそうだ!だが、アルノアの魔力がそれに干渉している……今がチャンスだ!」
「今なら精霊はアルノアの魔力干渉によって力を出し切れない。とにかくアルノアの魔力をかき消そうとする精霊の攻撃を何としても妨害し続けるんだ!」
エーミラティスの力を宿したアルノアの姿が、暴走するシエラの前に立ちはだかる。荒れ狂う風の中、エーミラティスはその存在感を際立たせ、鋭い声を放った。
「名を聞こうか。その力、ただの精霊ではないな。」
風の暴力が一瞬だけ止まり、精霊の形をした存在がアルノアを見据えるように現れる。そして、その声は威厳に満ちていた。
「我は風の精霊王。大気と嵐を統べる存在なり。」
エーミラティスは一瞬だけ目を細める。
「ほう……風の精霊王が人間の器を用いてまで何を企む?」
精霊王の目が冷たい光を帯びる。
「貴様、戦神エーミラティスよ。本物ならばその疑問の答えは分かっているはずだ。」
精霊王の言葉にエーミラティスは短く笑う。
「ふん、精霊王ともあろうものが、己の力を抑えもせず人間に害を及ぼすとは……下劣よのう。」
精霊王はその言葉に動じることなく、静かに答えた。
「下劣だと?もしお前が本物の戦神エーミラティスならば、再び破壊の時が迫っていることを知っていよう。確かめないわけにはいかぬ。そのためならば、多少の犠牲を払うことなど厭わない。」
その言葉には揺るぎない意志があった。精霊王の存在がシエラを侵してまで姿を現した理由がそこにある。
エーミラティスは短く嘆息し、嘲笑混じりの声を響かせた。
「犠牲、か……。さすがは精霊王ともなれば、人間一人の命など取るに足らぬものと思っているようだな。」
「必要な犠牲だ。貴様が再びこの地に戦いをもたらす存在か否か――それを知るためには、力を見極めるほかあるまい。」
「ならば問おう――お前たち精霊が我を恐れる理由は何だ?」
精霊王の目が鋭く光る。
「恐れる?違う。我ら精霊が恐れているのは、破壊そのものだ。お前がその象徴だからこそ、再び現れたお前の力を確認する必要があるのだ。」
エーミラティスは鋭い目で精霊王を見据え、静かに言った。
「ならば、確かめるがいい。ただし、我を侮ったこと、後悔させてやろう。」
精霊王の力を前にしても、エーミラティスは一歩も引かない。その威風堂々たる姿はまさに戦神の名にふさわしい。
その戦いの中で、アルノアの意識もまた揺らぐことなく、シエラの中へと魔力を送り込む作業を続ける。彼は心の中で静かに思った。
(エーミラティスがこの精霊王と戦っている間に、シエラを救い出す。それが俺の役目だ……!)
エーミラティスの力を借りて精霊王と戦う一方で、アルノアはシエラの中に意識を送り続けていた。彼の魔力はシエラの暴走した魔力に触れ、わずかに繋がりを持ち始める。
「シエラ、聞こえるか?」
シエラの心の奥底に語りかけるアルノアの声は、優しくも力強かった。
「お前はこんなところで負ける奴じゃないだろ。お前自身の力で、この状況を変えるんだ!」
シエラの心が揺れる。暴走する魔力の嵐の中、彼女の意識がわずかに浮上し始める。
「……アルノア?」
その微かな声を感じ取ったアルノアはさらに魔力を送り込み、彼女に呼びかけ続ける。
「俺を信じろ。お前ならできる!その精霊に支配されるんじゃなく、お前自身が立ち上がれ!」
シエラの中で激しく渦巻いていた精霊の力に、彼女自身の魔力が反応する。そして、アルノアの魔力が彼女の力と一体化し、暴走する精霊の魔力を引き離し始めた。
シエラの魔力が精霊の力を押し返し、ついに精霊の顕現が揺らぎ始める。風の嵐が収まり、精霊王の姿がかすかに薄れていく。
「……もう限界か。」
精霊王の声はどこか穏やかだった。その目がアルノアとシエラに向けられる。
「お主は確かに、かの戦女神であった……。つまり、あの破壊と再生の時代が再び訪れることになるのだろう。」
エーミラティスに向けたその言葉には、確信にも似た何かがあった。
そして精霊王はアルノアを見つめる。
「戦神を連れし小僧……お主の力もまた、それを感じさせるものだ。お前たちの道がどうなるのか……興味深い。」
精霊王の姿がさらに薄れていく中、穏やかな声が響いた。
「小娘よ、無理やり顕現してすまなかったな。だが、これで終わりだ。」
その声にシエラは涙を浮かべながら口を開いた。
「……あなた、今ようやく気づいた。小さい頃からずっと、私を守ってくれていた精霊よね。」
その言葉に、精霊王の目が柔らかく細められる。
「そうだ。お前が幼き頃より、常に風となり、影となりお前を守ってきた。それを忘れたことも責めはしない。」
「忘れていたわけじゃない……ただ、ずっと気づけなかっただけ。ありがとう……本当にありがとう……。」
精霊王の力がシエラから完全に離れると、彼女はアルノアの腕の中に倒れ込む。その表情は穏やかで、どこか安心しているようだった。
エーミラティスは、精霊王が消えゆく最後の瞬間に呟いた。
「……精霊王よ、次に会う時はこう穏やかでは済まぬかもしれんぞ。」
精霊王の声がかすかに返ってきた。
「その時が来るならば、その時こそ全力で応じよう。」
嵐のような戦いの気配が消え、静寂が訪れる。アルノアはエーミラティスの力を引き戻しながら、シエラをそっと支えた。
「大丈夫か、シエラ?」
シエラは疲れた声で微笑みながら答える。
「ええ……ありがとう、アルノア。」
アルノアたちの周囲には、暴風が過ぎ去った後の綺麗な空が広がっていた。
エーミラティスと精霊王の言葉はどこか不安な雰囲気を帯びていた。この対話と戦いが、新たな物語の幕を引く大きなきっかけとなるのだった。
「アルノア!俺たちもサポートする!お前だけに全部任せるつもりはない!」
アルノアは魔力に思いを乗せて仲間に放つ。
「助かる!でもシエラの中心に俺の魔力を送り込むのは俺自身がやる……俺の個性ならシエラへの負担を限りなく減らせる!」
ユリウスは頷き、さらに魔力を集中させて精霊の暴走する力を封じ込めるための結界を強化した。
「分かった。シエラはお前に任せる!精霊の方は俺たちが全力で抑える!」
デクスターが分析結果を報告する。
「暴走の中心にいるシエラの魔力が精霊の力に完全に飲み込まれそうだ!だが、アルノアの魔力がそれに干渉している……今がチャンスだ!」
「今なら精霊はアルノアの魔力干渉によって力を出し切れない。とにかくアルノアの魔力をかき消そうとする精霊の攻撃を何としても妨害し続けるんだ!」
エーミラティスの力を宿したアルノアの姿が、暴走するシエラの前に立ちはだかる。荒れ狂う風の中、エーミラティスはその存在感を際立たせ、鋭い声を放った。
「名を聞こうか。その力、ただの精霊ではないな。」
風の暴力が一瞬だけ止まり、精霊の形をした存在がアルノアを見据えるように現れる。そして、その声は威厳に満ちていた。
「我は風の精霊王。大気と嵐を統べる存在なり。」
エーミラティスは一瞬だけ目を細める。
「ほう……風の精霊王が人間の器を用いてまで何を企む?」
精霊王の目が冷たい光を帯びる。
「貴様、戦神エーミラティスよ。本物ならばその疑問の答えは分かっているはずだ。」
精霊王の言葉にエーミラティスは短く笑う。
「ふん、精霊王ともあろうものが、己の力を抑えもせず人間に害を及ぼすとは……下劣よのう。」
精霊王はその言葉に動じることなく、静かに答えた。
「下劣だと?もしお前が本物の戦神エーミラティスならば、再び破壊の時が迫っていることを知っていよう。確かめないわけにはいかぬ。そのためならば、多少の犠牲を払うことなど厭わない。」
その言葉には揺るぎない意志があった。精霊王の存在がシエラを侵してまで姿を現した理由がそこにある。
エーミラティスは短く嘆息し、嘲笑混じりの声を響かせた。
「犠牲、か……。さすがは精霊王ともなれば、人間一人の命など取るに足らぬものと思っているようだな。」
「必要な犠牲だ。貴様が再びこの地に戦いをもたらす存在か否か――それを知るためには、力を見極めるほかあるまい。」
「ならば問おう――お前たち精霊が我を恐れる理由は何だ?」
精霊王の目が鋭く光る。
「恐れる?違う。我ら精霊が恐れているのは、破壊そのものだ。お前がその象徴だからこそ、再び現れたお前の力を確認する必要があるのだ。」
エーミラティスは鋭い目で精霊王を見据え、静かに言った。
「ならば、確かめるがいい。ただし、我を侮ったこと、後悔させてやろう。」
精霊王の力を前にしても、エーミラティスは一歩も引かない。その威風堂々たる姿はまさに戦神の名にふさわしい。
その戦いの中で、アルノアの意識もまた揺らぐことなく、シエラの中へと魔力を送り込む作業を続ける。彼は心の中で静かに思った。
(エーミラティスがこの精霊王と戦っている間に、シエラを救い出す。それが俺の役目だ……!)
エーミラティスの力を借りて精霊王と戦う一方で、アルノアはシエラの中に意識を送り続けていた。彼の魔力はシエラの暴走した魔力に触れ、わずかに繋がりを持ち始める。
「シエラ、聞こえるか?」
シエラの心の奥底に語りかけるアルノアの声は、優しくも力強かった。
「お前はこんなところで負ける奴じゃないだろ。お前自身の力で、この状況を変えるんだ!」
シエラの心が揺れる。暴走する魔力の嵐の中、彼女の意識がわずかに浮上し始める。
「……アルノア?」
その微かな声を感じ取ったアルノアはさらに魔力を送り込み、彼女に呼びかけ続ける。
「俺を信じろ。お前ならできる!その精霊に支配されるんじゃなく、お前自身が立ち上がれ!」
シエラの中で激しく渦巻いていた精霊の力に、彼女自身の魔力が反応する。そして、アルノアの魔力が彼女の力と一体化し、暴走する精霊の魔力を引き離し始めた。
シエラの魔力が精霊の力を押し返し、ついに精霊の顕現が揺らぎ始める。風の嵐が収まり、精霊王の姿がかすかに薄れていく。
「……もう限界か。」
精霊王の声はどこか穏やかだった。その目がアルノアとシエラに向けられる。
「お主は確かに、かの戦女神であった……。つまり、あの破壊と再生の時代が再び訪れることになるのだろう。」
エーミラティスに向けたその言葉には、確信にも似た何かがあった。
そして精霊王はアルノアを見つめる。
「戦神を連れし小僧……お主の力もまた、それを感じさせるものだ。お前たちの道がどうなるのか……興味深い。」
精霊王の姿がさらに薄れていく中、穏やかな声が響いた。
「小娘よ、無理やり顕現してすまなかったな。だが、これで終わりだ。」
その声にシエラは涙を浮かべながら口を開いた。
「……あなた、今ようやく気づいた。小さい頃からずっと、私を守ってくれていた精霊よね。」
その言葉に、精霊王の目が柔らかく細められる。
「そうだ。お前が幼き頃より、常に風となり、影となりお前を守ってきた。それを忘れたことも責めはしない。」
「忘れていたわけじゃない……ただ、ずっと気づけなかっただけ。ありがとう……本当にありがとう……。」
精霊王の力がシエラから完全に離れると、彼女はアルノアの腕の中に倒れ込む。その表情は穏やかで、どこか安心しているようだった。
エーミラティスは、精霊王が消えゆく最後の瞬間に呟いた。
「……精霊王よ、次に会う時はこう穏やかでは済まぬかもしれんぞ。」
精霊王の声がかすかに返ってきた。
「その時が来るならば、その時こそ全力で応じよう。」
嵐のような戦いの気配が消え、静寂が訪れる。アルノアはエーミラティスの力を引き戻しながら、シエラをそっと支えた。
「大丈夫か、シエラ?」
シエラは疲れた声で微笑みながら答える。
「ええ……ありがとう、アルノア。」
アルノアたちの周囲には、暴風が過ぎ去った後の綺麗な空が広がっていた。
エーミラティスと精霊王の言葉はどこか不安な雰囲気を帯びていた。この対話と戦いが、新たな物語の幕を引く大きなきっかけとなるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる