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第一話
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俺はゲイだ。
しかもどちらかというとオタクな部類の。
物心ついた時にはアニメやゲームで見るような超絶イケメンが大好きだった。
銀髪ロングヘアのタナロト様、黒髪ロングヘアのクラノ様、青髪のザッシュ様、それにそれに金髪碧眼のあの人に、赤い髪の吸血鬼様に、それこそときめいたキャラクターは数知れず。その中でも銀髪ロングヘアのタナロト様だけは別格で、現実世界にいたら全身全霊で口説き落とすんだ、と誓っていたほどだった。もちろんオタクなので当時は三次元の人間に興味などわかず、二次に限るよなって頷いて一人でタナロト様のポスター眺めて誕生日を祝ったしタナロト様グッズが出たら揃えるまで私財を注ぎ込んだし、とにかくとにかく愛していた。
しかしオタクの性欲は無限大だ。
ゲイであることを自覚していたし、幸運なことに顔立ちも悪くなかった俺。中身は残念オタクだとは言え、いつまでも童貞でいるつもりは毛頭無い。
正直二十歳を過ぎても二次元(夢)から覚めないことに危機感を覚えたのもあるけど、魔法使いになることだけは回避したかった。無類のイケメン好きで理想は鬼のように高い勘違いオタクには人類は無理だろと友人に散々言われたけど、そんなものは屁でもない。
なぜなら俺は可愛い。黙っていれば女受けも悪くない。理想が高いだけあって自分の身体にも気をつけていたし、服装だってチェックシャツだけは避けていた。
そうして持ち前の行動力で見事、二十歳の冬に男同士のセックスをクリアした。
タナロト様を思いながらアナニーに明け暮れていたのが功を奏し、初めてのちんこにも関わらずお尻でもめちゃくちゃ感じて叫び声をあげながらメスイキかました俺に、あんたにだけは掘られたくないわ、と相手から言われて相変わらず童貞ではあったけど。
ちなみにその時の相手とはまだ続いている。ス○バでナンパしたイケメンで、あとから高校生って知ったときは色々な意味で青ざめたわけだけど、大丈夫、今奴は大学生だ。つまりセーフ。
とは言えお互いつかず離れずのセフレであって、恋人同士ではない。俺は既に冴えないサラリーマンになったし、向こうは遊び納めの大学生だ。後腐れ無い者として溜まったら会う、なんていう気楽な関係で日々を過ごしていたわけだけど。
その日、俺は会社の歓迎会で酔っ払って、ひとり千鳥足で帰路についていた。駅から自宅までの通い慣れたなんてことのない住宅路。星が綺麗で、ぼんやり眺めながらこの星のどれかにタナロト様がいればいいなって思って笑う。
まあそんな体勢で歩いていたわけだから、無様に転んだのも自業自得だ。顎を強打してしばらく立ち上がれなかったけど、そんな状態の自分になんだか物凄く笑えてきてくすくす声を上げて笑いながら、よっと立ち上がった瞬間だった。
空気が、変わった。
なんていうか、うまく言葉で説明できないんだけど、確かにそれまで歩いていた通い慣れたあの空気感の場所じゃなくて、なんだがどこかぴりぴりと肌を刺すような鋭くて、知らない匂いのするような。
あれ? と俺は周囲を見渡した。
街灯に照らされていたはずの住宅路がいつの間にか生い茂った草木に囲まれ、建物一つ見当たらない。頭上を仰げば空に浮かぶ星の数が一気に増えたようで、きらきらと見たこともない夜空の輝きに目を瞬く。
「……ここ、どこ」
言ってから、俺もしかして天国に来ちゃったのかなって思った。
酔っ払って転んで、打ち所悪くて死んだんだって。
それでもいいかな、って今考えればマジでただの酔っ払いなんだけど、確かにそう思って、なんだかどこか解放されたような気分で足を踏み出した。
生い茂った草木をかき分けて、聴いたこともないはずの虫たちの声を耳にしながら、ひたすら歩いた。そうして、拓けた場所にたどり着いた瞬間、大勢の人間が跪き俺の顔を見た瞬間、平伏したのを見て思った。
あ、これ、ラノベでよくある展開って。
もしかして俺、とんでもない力を持ったキャラクターなんじゃ? と半笑いで酔っ払いの思考で確信したんだ。
しかもどちらかというとオタクな部類の。
物心ついた時にはアニメやゲームで見るような超絶イケメンが大好きだった。
銀髪ロングヘアのタナロト様、黒髪ロングヘアのクラノ様、青髪のザッシュ様、それにそれに金髪碧眼のあの人に、赤い髪の吸血鬼様に、それこそときめいたキャラクターは数知れず。その中でも銀髪ロングヘアのタナロト様だけは別格で、現実世界にいたら全身全霊で口説き落とすんだ、と誓っていたほどだった。もちろんオタクなので当時は三次元の人間に興味などわかず、二次に限るよなって頷いて一人でタナロト様のポスター眺めて誕生日を祝ったしタナロト様グッズが出たら揃えるまで私財を注ぎ込んだし、とにかくとにかく愛していた。
しかしオタクの性欲は無限大だ。
ゲイであることを自覚していたし、幸運なことに顔立ちも悪くなかった俺。中身は残念オタクだとは言え、いつまでも童貞でいるつもりは毛頭無い。
正直二十歳を過ぎても二次元(夢)から覚めないことに危機感を覚えたのもあるけど、魔法使いになることだけは回避したかった。無類のイケメン好きで理想は鬼のように高い勘違いオタクには人類は無理だろと友人に散々言われたけど、そんなものは屁でもない。
なぜなら俺は可愛い。黙っていれば女受けも悪くない。理想が高いだけあって自分の身体にも気をつけていたし、服装だってチェックシャツだけは避けていた。
そうして持ち前の行動力で見事、二十歳の冬に男同士のセックスをクリアした。
タナロト様を思いながらアナニーに明け暮れていたのが功を奏し、初めてのちんこにも関わらずお尻でもめちゃくちゃ感じて叫び声をあげながらメスイキかました俺に、あんたにだけは掘られたくないわ、と相手から言われて相変わらず童貞ではあったけど。
ちなみにその時の相手とはまだ続いている。ス○バでナンパしたイケメンで、あとから高校生って知ったときは色々な意味で青ざめたわけだけど、大丈夫、今奴は大学生だ。つまりセーフ。
とは言えお互いつかず離れずのセフレであって、恋人同士ではない。俺は既に冴えないサラリーマンになったし、向こうは遊び納めの大学生だ。後腐れ無い者として溜まったら会う、なんていう気楽な関係で日々を過ごしていたわけだけど。
その日、俺は会社の歓迎会で酔っ払って、ひとり千鳥足で帰路についていた。駅から自宅までの通い慣れたなんてことのない住宅路。星が綺麗で、ぼんやり眺めながらこの星のどれかにタナロト様がいればいいなって思って笑う。
まあそんな体勢で歩いていたわけだから、無様に転んだのも自業自得だ。顎を強打してしばらく立ち上がれなかったけど、そんな状態の自分になんだか物凄く笑えてきてくすくす声を上げて笑いながら、よっと立ち上がった瞬間だった。
空気が、変わった。
なんていうか、うまく言葉で説明できないんだけど、確かにそれまで歩いていた通い慣れたあの空気感の場所じゃなくて、なんだがどこかぴりぴりと肌を刺すような鋭くて、知らない匂いのするような。
あれ? と俺は周囲を見渡した。
街灯に照らされていたはずの住宅路がいつの間にか生い茂った草木に囲まれ、建物一つ見当たらない。頭上を仰げば空に浮かぶ星の数が一気に増えたようで、きらきらと見たこともない夜空の輝きに目を瞬く。
「……ここ、どこ」
言ってから、俺もしかして天国に来ちゃったのかなって思った。
酔っ払って転んで、打ち所悪くて死んだんだって。
それでもいいかな、って今考えればマジでただの酔っ払いなんだけど、確かにそう思って、なんだかどこか解放されたような気分で足を踏み出した。
生い茂った草木をかき分けて、聴いたこともないはずの虫たちの声を耳にしながら、ひたすら歩いた。そうして、拓けた場所にたどり着いた瞬間、大勢の人間が跪き俺の顔を見た瞬間、平伏したのを見て思った。
あ、これ、ラノベでよくある展開って。
もしかして俺、とんでもない力を持ったキャラクターなんじゃ? と半笑いで酔っ払いの思考で確信したんだ。
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