雑用係βとα勇者にΩの呪いがかかった話

星井

文字の大きさ
10 / 30

第十話*



 黒王が俺に乳白色の石を持たせたのは、単に俺が哀れだったからだろう。 
 自ら術を組み込んだとは言え、その効力の強さを知っているのも彼だけだ。

「憎しみあう二人が仕組まれた運命に屈するのなら、私の目的は自ずと遂行される」

 なんて訳のわからないことを言って奴はいつの間にか消えていたけれど、俺はもうそれどころではなかった。
 入れ替わりに来たのは白魔導士の女だ。
 案の定発情期に入った俺の姿を目にやると、光のような速さで俺を転移させ、アレスの宿部屋に放り出したのだ。

「これほどのまでの香りをかつて感じたことがあっただろうか。もしやアレス、貴方にもなにか異変があったのでは」

 女はそう問うたが、偽発情期に入った俺の姿を目にした途端、勇者は見事に理性がぶっ飛んで、間髪入れずに服を剥ぎ取りちんぽを突き入れてきたので恐らく耳に入ってなかっただろう。
 衝撃で叫び声を上げ快楽に悶え転がる俺の両足首を掴み、ずんずんと抽送が繰り返される。その圧倒的な存在に脳髄が痺れるほどの悦楽と多幸感にひいひい泣いた。
 ちんぽを挿れられて揺さぶられるだけなのに、信じられないくらいの気持ち良さが襲う。充足感に酔い痴れ、この男の子種を欲しがるただのメスになった己にすら興奮する。
 大嫌いなその目つき、不機嫌そうに顰められた眉、何も発することがないくちびる。
 ただその視線だけは燃えるように熱く鋭く、俺を見ている。
 すると俺の身体は火が付いたように勝手に震え、力強く掴まれる部分から徐々に熱が広がっていく。ぐちゅぐちゅと繋がった箇所を抉られると嫌でもこの男に支配されているという被虐的な悦びが湧き上がる。

「おっ♡ おっ♡ すき、すき、ちん、ぽっ♡」
「は、またこんなにフォロモン垂れ流して、誰彼構わず誘ったんだろ?」
「ちがっ♡ ちがう♡ これが好きっ♡ これしからいぃぃ~♡♡」
「嘘つけ! 俺の他にも銜え込みたくて離れたんだろ!」
「ああっ♡ はげしっ♡ ちがっ♡ こ、のちん、ぽ♡ ちんぽぉ……っ♡♡」

 白魔導士の存在など忘れ、疼く尻穴の最奥に白濁を出され、正面から、後ろから、壁に手をついて、勇者の上に乗っかって。ただひたすらにその衝動に流され、気持ち良さに喘ぎ泣いて性交を続ける。
 ほとんど何も口にせず、水分だけを口移しで摂りながら、そうしてまた舌を絡め合ううちに腰が勝手に揺れていく。
 俺たちは再度飽きもせず繋がりあった。
 それは正に偽物のフェロモンに屈した、αとβの姿だった。



 事態を深刻に受け止めたのは俺だけじゃない。
 右の尻が焼けるように熱くて、薄ら目を開けた。
 からからに喉が渇いていたが、それよりも鉛のように思い身体に力が入らず、ようやく首を尻に向けるので精一杯だ。
 視線の先で、アレスが俺の尻に手をかざしている。
 うつ伏せでベッドに倒れ込んでいる裸の俺を難しい表情で見下ろす勇者は、もう理性を纏ったいつもの姿だ。
 発情期が去った。
 あれだけ欲しいと泣きわめき、念願のちんぽに歓喜した身体の飢えは既に消え去っている。
 残ったのは死体のように重い俺の身体と、惨めな男二人だけ。
 はあ、と溜め息をついて肘をついて顎を預ける。
 勇者が俺を一瞥する。

「……術は解けそうか」

 魔法を唱える勇者は、苛ついたように眉を顰めて次にかざしていた手を放した。
 「クソ」と、悪態をついた男が睨むように俺を見て口を開く。

「解こうとするとお前の匂いがきつくなる」
「それって……」
「恐らく解除魔法をかけるとフェロモンが発せられる仕組みだ」

 構わずに続けると再度発情期のようなフェロモンが発せられ、その香りは次第に強さを増していく。そうなるとαは発情期を引き起こし、術を続けることができずフェロモンに飲み込まれる。アレスはそう言って、疲れたように天を仰いだ。
 つまりまだ、術式を解く方法がない。
 全裸でベッドに座り込んだアレスを見ながら、もぞもぞと身体を動かす。身体の節々が痛くて、尻の穴なんか言わずもがなだ。だが今はこいつがいるので無視しよう。
 気に食わない者同士とはいえ、ひたすら性交に耽った仲でもある。今更全裸だろうがなんだろうがどうでもいい。
 のろのろと起き上がる俺をアレスは見向きもせずただ空を見つめていた。恐らくその頭は今フル回転していて、色々と考えているのだろう。
 やっとのことでベッドの上であぐらをかく。
 俺、あと数日は動ける気がしない。誰かに薬でも頼むか。
 勇者を見て、まずないな、と首を横に振り、白魔導士の女を思い出したが尻穴を治療されるのはさすがに御免だ、と溜め息をつく。

「整理しよう」

 返事はない。
 予想通りなので構わず続けた。

「俺は偽フォロモンを出す術式を刻まれた。結果は見ての通り、αで勇者のお前ですら逆らえない強力なものだ」

 深い青の瞳がこちらを見た。

「これはたぶん、Ωの発情期と同じなんだな」
「……αが屈するものは唯一それだけだ」
「今回術のせいで発情期に陥った俺は、他のαにもΩに見られてた」

 うろ覚えではあるが、あのとき誰かが俺を見ていた。そのときに「つがい以外とやってもつらいだけだ」とその言葉が妙に耳に残っていた。
 誰も俺をβだと思わなかった。

「でも俺の身体はβだ」
「当然だ。いくら黒王が強力な魔法を使えたとしても人の身体を弄ることは出来ない。お前の発情期は恐らく暗示に近いもので、それを魅力魔法と紐付けているだけだ」

 なるほどよくわからん。
 そういった魔法があるのか。
 引っかかることはひとまず無視をしてアレスを見ると、奴は俺をじっと見たあとにフイと視線を逸らした。

「……で、俺の呪いはお前でも解くことができない。そういうわけだな?」

 ぐ、と眉間に皺が寄った。
 こちらを見ることがないまま、アレスは言った。

「……お前のフェロモンに慣れるか、黒王をぶち殺すかどちらかだ」
「慣れるって?」

感想 4

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

落ちこぼれオオカミ、種族違いのため群れを抜けます

椿
BL
とあるオオカミ獣人の村で、いつも虐げられている落ちこぼれの受けが村を出ようと決意したら、村をあげての一大緊急会議が開催される話。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?