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第32話 撤収作業
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「ギル、交代しよう。話が聞きたいだろ」
私はギルと交代した。彼らは詳細を話していた。そこへパクが来た。パクによると、おそらくあと十時間程度で完全撤収が出来るという。
「もう、昼間はこれに限る」
私はライフルを指した。
「少尉、それは、少尉だからこそで、正直、我々には無理です」
「そうです。当たらないか、殺しちまうか、二つに一つです」
ナオハラとゼミーが口々に言った。
「まあ、いいじゃない。疲れているし、人数も減ったし、ギルはオーバーワークのはずだ。警戒だけきっちりしよう。ライフルは禁じ手なのかもしれないけど、安全だよ」
私は自信満々そう言った。二人は納得したらしく、黙ってしまった。安全には代えられない。
ギルは眠ってしまった。私はナオハラに警戒を頼んで、自分もGPSを見つめると同時に、肉眼でも灰色の草原を見渡した。
時々、立ち上がると撃った。私が立ち上がると、人々は作業の手を止めて見入るようになった。
「おお、今度は肩だ!」
とか、
「レーザーガンだ!」
とか、興じていた。
「敵が見えたら、教えて欲しい」
私は怒鳴った。
「すぐ撃つ。GPSで確認しているが、みんなで監視したほうが安全だ」
彼らは喜んでいた。パクは深くうなずいていた。
「あ、向こうに一人いる」
作業員の方が早く見つけてくれたこともあった。
「よおし。見てろ」
狙って撃つ。
「おお、銃を飛ばした。すげぇ」
彼らは大喜びだった。
彼らは、自分たちの命を狙う敵に対して、本能的な憎しみを抱いていたのだ。
作業はそれまでと違い、のんびりムードが漂い、雑談が増え、効率は少し落ちたかもしれないが、確実になった。
今回、交代はなく、睡眠をとるはずのグループは、荷物やテントなどをGPSを基地へ運搬する作業に取りかかっていた。基地に戻れば、睡眠不足は解消できる。少なくとも、安全だ。
だが、そこへジェレミーから、かなりあわてた様子で、状況を尋ねる無線が入ってきた。
「えっ? のんびりしたものだよ。ギルなんか寝てるけど?」
「すまん、たたき起こしてくれ。ブラック隊が壊滅状態なんだ。ブルー隊は何人残っていて、何人出せる?」
「今は、四人でやってるが、そうだな。私一人でも大丈夫かも知れないな。
今は、昼間だからライフルで撃ってるんだ。グラクイが死なない程度にね。ギルや私なら出来るから。やつらは負傷すると、戸惑って巣へ戻って行ってしまうんだ。ライフルは射程が長いので、昼間は全く安全だ。ここの守備は、私一人で大丈夫だと思う」
ジェレミーは、ライフルの新しい活用法については良く分からなかったらしいが、今はそれよりブラック隊への対処の方が重要だった。彼は口早に言った。
「あんたがそう言うなら、三人全部貸してくれ。今はブラック隊の守備が全く無防備な状態なんだ。」
「どうなっちゃってるんだ。場所を指示してくれ。三人行ってもらうよ。直接行かせる。なんだったら、私が行ってもいい」
「助かる。だが、あんたのところは本当に大丈夫なのか?」
「ギルを残そう。彼なら一人でも大丈夫だろう。後で私と交代しよう。ブラック隊はライフルは持参して行ったのかな?」
話の合間に、ゼミーがギルを起こしに行った。
「ギル、しばらくここを守っていてくれないか。一人で。警戒のほうは、作業員たちが肉眼でしてくれる。ギルなら大丈夫だ。しばらくまかせてもいいか?」
「大丈夫ですよ、少尉。寝たら元気が出ました。作業員たちは有能ですよ。ちゃんと見張っててくれますから」
ギルは若いのに頼もしい。
「やつら、命がかかってるからな」
ブラック隊が守っていた地帯へ入った。
ロウがたった一人で、負傷したまま、レーザーで応戦していた。
「ロウ、どうなっている?」
移動のときの常で地面にたたきつけられて、体勢を立て直すと同時に叫んだが、一目見れば状況は飲み込めた。
何十匹ものグラクイが徐々に迫っているのだ。ロウは、口も利かなかった。ひたすらに撃っていた。制服のわき腹が破れて、はためいていた。横顔に一本赤い筋が走っていた。レーザーにやられたに違いない。男前に勲章が付いてしまった。
私はロウの隣に走った。
すぐに撃ち始めた。
肩、腕、手先、銃、一発もはずさない。作業員の中にも、かなり負傷した者がいるらしい。
ゼミーとナオハラもレーザーで撃ち始めたが、すぐに、それは終わった。
彼らがレーザーで確実に当てられる距離のグラクイたちは、すぐに負傷させられて戦闘不能に追いやられたのだ。
私は見張りをナオハラにやらせ、ゼミーに命じてロウを病院に連れて行かせる手配をした。ロウはすでにへばっていた。痛いに決まっている。
レーザーの届く範囲内のグラクイは数十匹しかいなかったので、一斉掃射作戦は三十分ほどですみ、一帯は安全になった。
ここでも、同じ手を使った。
私は、銃を振り回し、大声で叫んだ。
「ここへ近づくグラクイは、全部、私が始末する。
だから、安心して作業にかかってほしい。
昼間のうちなら、ライフルが使える。ライフルで殺さないように撃つので、そのあとはグラクイから危害を加えられる心配はなくなる。
グラクイが見えたら、すぐに教えてくれ。
全部、命中させて見せる。
それから、責任者は誰だ?」
赤ら顔の中年の男が近づいてきた。非常に緊張した顔つきをしていた。
「五人負傷しました。火傷です。病院に行かさにゃなりません」
「すぐに連れて行け。作業員は、誰に連絡取ることになっているんだ? 手配はついたのか?」
「連絡はすんでいます」
「じゃあ、連れて行け」
「グラクイが見えましたー!」
誰かが叫んだ。作業員が指を指す方向に三体見える。
「見てろ!」
私はありったけの大声で叫んだ。
三発撃った。すべて命中した。グラクイ三体が、倒れ動かなくなった。
作業員全員が、その有様を目で追った。さざめくような賞賛の声が広がった。
「ほかはいないか? すぐに教えてくれ。すぐ撃ち抜く。わかったな?」
あちこちから、了解という声が上がり、なにかしゃべっている様子だった。さっきのとこれで、だいぶ安心したようだ。少なくとも、もう、安全だ。
私には、ちょっと不思議だった。
ライフルで撃っても気絶するとは限らない。だからライフルの使用は最初から検討されなかった。
だが、切羽詰まって使ってみると、たとえ銃を吹っ飛ばされただけの場合でも、彼らは呆然と立ち止まり、そのあと卵の回収をせずに戻って行ってしまう。
多分、不測の事態に接すると、慎重で、定型的な行動を取りやすい彼ら本来の性質が出てしまうのだろう。
作業員連中も、最初は、倒れたグラクイを心配そうに眺めていた。
撃たれた後のグラクイは、もう、レーザーガンを使えないので、危険がないのはわかっていたが、それでも自分たちの方へ向かって来られるのはイヤだったのだろう。
だが、ふらふらと起き上がったグラクイが、いずれも例外なく、帰っていく様子を見て、大喜びだった。
私は一段落ついてから、作業員の長を呼び出した。
「君の名前はなんと言う?」
「ノアイユです」
「私はノルライド少尉だ。こっちはナオハラだ」
私はナオハラを指した。彼はちょっと気取って、頭を振って見せた。ゼミーはロウを病院に運ぶため、すでにいなかった。
「ノアイユ、まず、負傷した者を病院に誰かに搬送させてくれ。昼間の間に作業を終了させられるか? 昼間は絶対に安心だ。心配は要らない」
「少尉、また、二匹ほど近づいてきています。」
ナオハラが言った。
「よし」
私は立ち上がって、銃を構えた。もはや、見世物状態である。作業員全員が手を止めて、標的と私を食い入るように見つめていた。
銃声が響き渡り、白い煙が上がり、グラクイが折り重なった。作業員から、今度はオオーッという歓声、ため息と同時にパラパラと拍手が沸いた。最近、私はグラクイが気の毒になってきていた。
私はギルと交代した。彼らは詳細を話していた。そこへパクが来た。パクによると、おそらくあと十時間程度で完全撤収が出来るという。
「もう、昼間はこれに限る」
私はライフルを指した。
「少尉、それは、少尉だからこそで、正直、我々には無理です」
「そうです。当たらないか、殺しちまうか、二つに一つです」
ナオハラとゼミーが口々に言った。
「まあ、いいじゃない。疲れているし、人数も減ったし、ギルはオーバーワークのはずだ。警戒だけきっちりしよう。ライフルは禁じ手なのかもしれないけど、安全だよ」
私は自信満々そう言った。二人は納得したらしく、黙ってしまった。安全には代えられない。
ギルは眠ってしまった。私はナオハラに警戒を頼んで、自分もGPSを見つめると同時に、肉眼でも灰色の草原を見渡した。
時々、立ち上がると撃った。私が立ち上がると、人々は作業の手を止めて見入るようになった。
「おお、今度は肩だ!」
とか、
「レーザーガンだ!」
とか、興じていた。
「敵が見えたら、教えて欲しい」
私は怒鳴った。
「すぐ撃つ。GPSで確認しているが、みんなで監視したほうが安全だ」
彼らは喜んでいた。パクは深くうなずいていた。
「あ、向こうに一人いる」
作業員の方が早く見つけてくれたこともあった。
「よおし。見てろ」
狙って撃つ。
「おお、銃を飛ばした。すげぇ」
彼らは大喜びだった。
彼らは、自分たちの命を狙う敵に対して、本能的な憎しみを抱いていたのだ。
作業はそれまでと違い、のんびりムードが漂い、雑談が増え、効率は少し落ちたかもしれないが、確実になった。
今回、交代はなく、睡眠をとるはずのグループは、荷物やテントなどをGPSを基地へ運搬する作業に取りかかっていた。基地に戻れば、睡眠不足は解消できる。少なくとも、安全だ。
だが、そこへジェレミーから、かなりあわてた様子で、状況を尋ねる無線が入ってきた。
「えっ? のんびりしたものだよ。ギルなんか寝てるけど?」
「すまん、たたき起こしてくれ。ブラック隊が壊滅状態なんだ。ブルー隊は何人残っていて、何人出せる?」
「今は、四人でやってるが、そうだな。私一人でも大丈夫かも知れないな。
今は、昼間だからライフルで撃ってるんだ。グラクイが死なない程度にね。ギルや私なら出来るから。やつらは負傷すると、戸惑って巣へ戻って行ってしまうんだ。ライフルは射程が長いので、昼間は全く安全だ。ここの守備は、私一人で大丈夫だと思う」
ジェレミーは、ライフルの新しい活用法については良く分からなかったらしいが、今はそれよりブラック隊への対処の方が重要だった。彼は口早に言った。
「あんたがそう言うなら、三人全部貸してくれ。今はブラック隊の守備が全く無防備な状態なんだ。」
「どうなっちゃってるんだ。場所を指示してくれ。三人行ってもらうよ。直接行かせる。なんだったら、私が行ってもいい」
「助かる。だが、あんたのところは本当に大丈夫なのか?」
「ギルを残そう。彼なら一人でも大丈夫だろう。後で私と交代しよう。ブラック隊はライフルは持参して行ったのかな?」
話の合間に、ゼミーがギルを起こしに行った。
「ギル、しばらくここを守っていてくれないか。一人で。警戒のほうは、作業員たちが肉眼でしてくれる。ギルなら大丈夫だ。しばらくまかせてもいいか?」
「大丈夫ですよ、少尉。寝たら元気が出ました。作業員たちは有能ですよ。ちゃんと見張っててくれますから」
ギルは若いのに頼もしい。
「やつら、命がかかってるからな」
ブラック隊が守っていた地帯へ入った。
ロウがたった一人で、負傷したまま、レーザーで応戦していた。
「ロウ、どうなっている?」
移動のときの常で地面にたたきつけられて、体勢を立て直すと同時に叫んだが、一目見れば状況は飲み込めた。
何十匹ものグラクイが徐々に迫っているのだ。ロウは、口も利かなかった。ひたすらに撃っていた。制服のわき腹が破れて、はためいていた。横顔に一本赤い筋が走っていた。レーザーにやられたに違いない。男前に勲章が付いてしまった。
私はロウの隣に走った。
すぐに撃ち始めた。
肩、腕、手先、銃、一発もはずさない。作業員の中にも、かなり負傷した者がいるらしい。
ゼミーとナオハラもレーザーで撃ち始めたが、すぐに、それは終わった。
彼らがレーザーで確実に当てられる距離のグラクイたちは、すぐに負傷させられて戦闘不能に追いやられたのだ。
私は見張りをナオハラにやらせ、ゼミーに命じてロウを病院に連れて行かせる手配をした。ロウはすでにへばっていた。痛いに決まっている。
レーザーの届く範囲内のグラクイは数十匹しかいなかったので、一斉掃射作戦は三十分ほどですみ、一帯は安全になった。
ここでも、同じ手を使った。
私は、銃を振り回し、大声で叫んだ。
「ここへ近づくグラクイは、全部、私が始末する。
だから、安心して作業にかかってほしい。
昼間のうちなら、ライフルが使える。ライフルで殺さないように撃つので、そのあとはグラクイから危害を加えられる心配はなくなる。
グラクイが見えたら、すぐに教えてくれ。
全部、命中させて見せる。
それから、責任者は誰だ?」
赤ら顔の中年の男が近づいてきた。非常に緊張した顔つきをしていた。
「五人負傷しました。火傷です。病院に行かさにゃなりません」
「すぐに連れて行け。作業員は、誰に連絡取ることになっているんだ? 手配はついたのか?」
「連絡はすんでいます」
「じゃあ、連れて行け」
「グラクイが見えましたー!」
誰かが叫んだ。作業員が指を指す方向に三体見える。
「見てろ!」
私はありったけの大声で叫んだ。
三発撃った。すべて命中した。グラクイ三体が、倒れ動かなくなった。
作業員全員が、その有様を目で追った。さざめくような賞賛の声が広がった。
「ほかはいないか? すぐに教えてくれ。すぐ撃ち抜く。わかったな?」
あちこちから、了解という声が上がり、なにかしゃべっている様子だった。さっきのとこれで、だいぶ安心したようだ。少なくとも、もう、安全だ。
私には、ちょっと不思議だった。
ライフルで撃っても気絶するとは限らない。だからライフルの使用は最初から検討されなかった。
だが、切羽詰まって使ってみると、たとえ銃を吹っ飛ばされただけの場合でも、彼らは呆然と立ち止まり、そのあと卵の回収をせずに戻って行ってしまう。
多分、不測の事態に接すると、慎重で、定型的な行動を取りやすい彼ら本来の性質が出てしまうのだろう。
作業員連中も、最初は、倒れたグラクイを心配そうに眺めていた。
撃たれた後のグラクイは、もう、レーザーガンを使えないので、危険がないのはわかっていたが、それでも自分たちの方へ向かって来られるのはイヤだったのだろう。
だが、ふらふらと起き上がったグラクイが、いずれも例外なく、帰っていく様子を見て、大喜びだった。
私は一段落ついてから、作業員の長を呼び出した。
「君の名前はなんと言う?」
「ノアイユです」
「私はノルライド少尉だ。こっちはナオハラだ」
私はナオハラを指した。彼はちょっと気取って、頭を振って見せた。ゼミーはロウを病院に運ぶため、すでにいなかった。
「ノアイユ、まず、負傷した者を病院に誰かに搬送させてくれ。昼間の間に作業を終了させられるか? 昼間は絶対に安心だ。心配は要らない」
「少尉、また、二匹ほど近づいてきています。」
ナオハラが言った。
「よし」
私は立ち上がって、銃を構えた。もはや、見世物状態である。作業員全員が手を止めて、標的と私を食い入るように見つめていた。
銃声が響き渡り、白い煙が上がり、グラクイが折り重なった。作業員から、今度はオオーッという歓声、ため息と同時にパラパラと拍手が沸いた。最近、私はグラクイが気の毒になってきていた。
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