43 / 86
第43話 帰還
しおりを挟む
各階に投光機と人間を残しておかねばならなかった。
外に一台残しているので、五階の分の投光機はなかった。後は手持ち用ライトだけだ。
「コードの長さがぎりぎりで、ライトが届かないかもしれないですね」
ギルが言った。やはりこいつは頼りになる。こんなときでさえ冷静だ。
もう一度、機材をそろえて探索しに来直すか、今、確認するか。
私は銃を握ったまま、額をこすった。
「ドリルで天井に穴を開けよう。ギルできるか?」
今度来るまでに、建物の中にグラクイが再侵入していたら、話はまた最初からやり直しになる。
ギルは黙って身軽にそこらの机にのぼり、ドリルで小さな穴をうがつと中に少量の火薬をつめ、みなに合図して下がらせると、銃で撃った。
火薬に見事に引火して、天井にかなりの大きさの穴が開いた。小さなコンクリの塊がバラバラ落ちてきて、ほこりが舞い上がった。すかさず、ライトを最強にした。穴が大きいから、五階へも光が多少届く。階段を回るより、天井に穴を開けたほうが、手っ取り早い。
「うん。実にうまい具合だけど、真上に人がいたら少しまずいかな」
下の階では、爆発音に驚いた誰かが、何が起きたのかと怒鳴っていた。ベッグが無線で事情を説明した。
ギルとシンは、投光機を調整して、光源ライトが穴を照らせるように仕組んだ。これで、四階、五階両方を照らせる。
「そのかわり、手持ちライトは四階で使おう。四階が多少暗くなるから」
「シン、着いて来い。五階を一巡りしてこよう。ベッグ、ギル、ライトを頼む。」
今、四階にいるのは、ギル、シン、ベッグの4人だけだった。
私は背が低いので、机の上に椅子を乗せた。これで簡単に五階へ上がることができる。シンは腕だけであがってきて、緊張した顔でついてきた。
心配するほどのことはなかった。人間のほうはすぐに見つかった。よかった。だが、冷たい。
抱きかかえて引きずって、ギルが作った穴からそっとおろした。そのとき初めて何気なくその男の顔を見た。オリーンだった。
「もう一人いる」
シンが抱きかかえておろした。
だが、そのとき、まずいことが起こった。ライトのコードに人を引っ掛けてしまい、電気線が切れてしまったのだ。投光機がプチッと消えた。とたんに五階は真っ暗になった。
「シン、そのまま穴から落ちろ」
私は怒鳴った。四階には手動式ライトが残ってる。明るい。
シンはズシンと言う音ともに床に転げ落ちた。
「どうした、ノルライド少尉」
三階かどこかで誰かが怒鳴っていた。
続いて私が落ちようとした。
だが、そのとき後ろから、弾丸が耳元を掠めた。
私はそのまま下に落ちた。落ちた拍子に何かに当たって手から銃が離れた。投光機を蹴飛ばし、四階の床にしりもちをついた。ギルが「アッ」と叫んだ。
その天井の穴から、私に続いて、次々とグラクイが落ちてきたのだ。
なぜ、GPSが反応しなかったのだろう。
目の前にグラクイがいた。真っ白などんぐり眼が、表情の読めないどんぐり眼が、私を見据えている。振りかぶった手にはレーザー剣、私は手には何も持っていなかった。ついに終わるらしい。そうか、こんな風に終わるのか……
「ノルライドッ」
誰かが、大声で叫んだ。グラクイが一瞬、ひるんだ……ように見えた。銃声が複数同時に響き、私は誰かに突き飛ばされ、腰を打った。私も短銃を抜いた。
だが、すでに冷静なベッグが、至近距離から撃って、倒していた。
一応、撃たなくてもいいだろう。全員が銃を抜いていた。グラクイは全部で三匹いて、全部事切れていた。
肩が痛い。今度は左だ。見たくはなかったが、見た。制服の上から切りつけられていた。だが、腕はついている。よかった。うん、動く。後で考えよう。
「全部倒したか」
怒鳴った。
「全部倒しました」
ベッグだ。
「撤収しよう。これで全員だ」
ベッグとギルが仲間を抱き、三階まで一緒に降りた。
ライトがなかったので、一緒に行動するしかなかったのだ。バラけると危険だ。
なんで、GPSに映らなかったのだろう。おかしい。
三階には、救急隊が、今日でもう5度目だが、着いていて待ち受けていた。三階まで降りれば、投光機がある。ものすごく心配そうな様子のバーグ曹長が待っていた。
「大丈夫なのか、一体何の叫びだったんだ、ノルライド」
「グラクイがいたんだ。襲われた。全部で三匹来たが、撃ち殺した。投光機のコードを切ってしまったので、真っ暗になってしまったところを襲われたんだ。
いないはずだったのに。この分だと、この建物にはグラクイがまだ残っているのかもしれない。早く撤退しよう。もう、全員見つけ出したのだから。」
救急隊が出た後、全ての階の者が一斉にGPSで帰還することにした。
私の荷物はギルに持たせた。
ギルはちょっと妙な顔をしたが、黙って持ってくれた。
私は、自分の腕か肩だかがどうなっているのか、よくわかっていなかった。痛くて熱い。みんなは知らないだろうが、胴体のほうにまで熱いものが流れてきている。多分切られただけだと思うが、まずい。早く戻ろう。これ以上被害者が出てはまずい。
「あっ」
ナオハラが、口の中で叫んだ。ナオハラの視線は、私の腹の上で止まっていた。たぶん、血が染み出していたのだろう。ほかの連中は気がついていないみたいだった。
「いいから、合図を待て。こんなところを見るな」
私は左手をだらりとたらしたまま、ナオハラに怒鳴った。腕を垂らすと、今度は腕のほうから指先に向けて熱いものが広がっていくのがわかった。指先が熱い。
「こちら、3階。救急隊、完了。撤退の準備OKです」
『2階OK』
『1階OK』
「では、全員で戻ろう。行くぞ。」
全員がGPSを作動させた。
外に一台残しているので、五階の分の投光機はなかった。後は手持ち用ライトだけだ。
「コードの長さがぎりぎりで、ライトが届かないかもしれないですね」
ギルが言った。やはりこいつは頼りになる。こんなときでさえ冷静だ。
もう一度、機材をそろえて探索しに来直すか、今、確認するか。
私は銃を握ったまま、額をこすった。
「ドリルで天井に穴を開けよう。ギルできるか?」
今度来るまでに、建物の中にグラクイが再侵入していたら、話はまた最初からやり直しになる。
ギルは黙って身軽にそこらの机にのぼり、ドリルで小さな穴をうがつと中に少量の火薬をつめ、みなに合図して下がらせると、銃で撃った。
火薬に見事に引火して、天井にかなりの大きさの穴が開いた。小さなコンクリの塊がバラバラ落ちてきて、ほこりが舞い上がった。すかさず、ライトを最強にした。穴が大きいから、五階へも光が多少届く。階段を回るより、天井に穴を開けたほうが、手っ取り早い。
「うん。実にうまい具合だけど、真上に人がいたら少しまずいかな」
下の階では、爆発音に驚いた誰かが、何が起きたのかと怒鳴っていた。ベッグが無線で事情を説明した。
ギルとシンは、投光機を調整して、光源ライトが穴を照らせるように仕組んだ。これで、四階、五階両方を照らせる。
「そのかわり、手持ちライトは四階で使おう。四階が多少暗くなるから」
「シン、着いて来い。五階を一巡りしてこよう。ベッグ、ギル、ライトを頼む。」
今、四階にいるのは、ギル、シン、ベッグの4人だけだった。
私は背が低いので、机の上に椅子を乗せた。これで簡単に五階へ上がることができる。シンは腕だけであがってきて、緊張した顔でついてきた。
心配するほどのことはなかった。人間のほうはすぐに見つかった。よかった。だが、冷たい。
抱きかかえて引きずって、ギルが作った穴からそっとおろした。そのとき初めて何気なくその男の顔を見た。オリーンだった。
「もう一人いる」
シンが抱きかかえておろした。
だが、そのとき、まずいことが起こった。ライトのコードに人を引っ掛けてしまい、電気線が切れてしまったのだ。投光機がプチッと消えた。とたんに五階は真っ暗になった。
「シン、そのまま穴から落ちろ」
私は怒鳴った。四階には手動式ライトが残ってる。明るい。
シンはズシンと言う音ともに床に転げ落ちた。
「どうした、ノルライド少尉」
三階かどこかで誰かが怒鳴っていた。
続いて私が落ちようとした。
だが、そのとき後ろから、弾丸が耳元を掠めた。
私はそのまま下に落ちた。落ちた拍子に何かに当たって手から銃が離れた。投光機を蹴飛ばし、四階の床にしりもちをついた。ギルが「アッ」と叫んだ。
その天井の穴から、私に続いて、次々とグラクイが落ちてきたのだ。
なぜ、GPSが反応しなかったのだろう。
目の前にグラクイがいた。真っ白などんぐり眼が、表情の読めないどんぐり眼が、私を見据えている。振りかぶった手にはレーザー剣、私は手には何も持っていなかった。ついに終わるらしい。そうか、こんな風に終わるのか……
「ノルライドッ」
誰かが、大声で叫んだ。グラクイが一瞬、ひるんだ……ように見えた。銃声が複数同時に響き、私は誰かに突き飛ばされ、腰を打った。私も短銃を抜いた。
だが、すでに冷静なベッグが、至近距離から撃って、倒していた。
一応、撃たなくてもいいだろう。全員が銃を抜いていた。グラクイは全部で三匹いて、全部事切れていた。
肩が痛い。今度は左だ。見たくはなかったが、見た。制服の上から切りつけられていた。だが、腕はついている。よかった。うん、動く。後で考えよう。
「全部倒したか」
怒鳴った。
「全部倒しました」
ベッグだ。
「撤収しよう。これで全員だ」
ベッグとギルが仲間を抱き、三階まで一緒に降りた。
ライトがなかったので、一緒に行動するしかなかったのだ。バラけると危険だ。
なんで、GPSに映らなかったのだろう。おかしい。
三階には、救急隊が、今日でもう5度目だが、着いていて待ち受けていた。三階まで降りれば、投光機がある。ものすごく心配そうな様子のバーグ曹長が待っていた。
「大丈夫なのか、一体何の叫びだったんだ、ノルライド」
「グラクイがいたんだ。襲われた。全部で三匹来たが、撃ち殺した。投光機のコードを切ってしまったので、真っ暗になってしまったところを襲われたんだ。
いないはずだったのに。この分だと、この建物にはグラクイがまだ残っているのかもしれない。早く撤退しよう。もう、全員見つけ出したのだから。」
救急隊が出た後、全ての階の者が一斉にGPSで帰還することにした。
私の荷物はギルに持たせた。
ギルはちょっと妙な顔をしたが、黙って持ってくれた。
私は、自分の腕か肩だかがどうなっているのか、よくわかっていなかった。痛くて熱い。みんなは知らないだろうが、胴体のほうにまで熱いものが流れてきている。多分切られただけだと思うが、まずい。早く戻ろう。これ以上被害者が出てはまずい。
「あっ」
ナオハラが、口の中で叫んだ。ナオハラの視線は、私の腹の上で止まっていた。たぶん、血が染み出していたのだろう。ほかの連中は気がついていないみたいだった。
「いいから、合図を待て。こんなところを見るな」
私は左手をだらりとたらしたまま、ナオハラに怒鳴った。腕を垂らすと、今度は腕のほうから指先に向けて熱いものが広がっていくのがわかった。指先が熱い。
「こちら、3階。救急隊、完了。撤退の準備OKです」
『2階OK』
『1階OK』
「では、全員で戻ろう。行くぞ。」
全員がGPSを作動させた。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!
らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。
高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。
冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演!
リアには本人の知らない大きな秘密があります。
リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ひみつの姫君からタイトルを変更しました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる