グラクイ狩り〜真実の愛ってどこに転がってますか〜

buchi

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第82話 やる気出して告ってみた そのあと、どうする?

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 基地に帰ってから、私はパトロールの予定表を確認した。その中にどういうわけか少佐が一人パトロールに出る日があった。彼はパトロールなどするべき人物ではないのに。

 私は、その日を選んでパトロールに出ることにした。行き先は少佐のパトロール先だ。

 もし、ジェレミーがモニター盤を見ていたら、あきれ果てたかもしれない。

 少佐は私を好きじゃないかもしれなかった。そんな思いがまたもやちらりと胸をかすった。そんなはずは無かった。でも、いつだっていざとなるとそういう思いにとらわれてしまうのだ。

 私は砂嵐を巻き起こしながら、地面に着地し、それから少佐を探した。

 平原はいつもと同じに冷たい風が吹いていて、人っこ一人見当たらず、地平線まで見渡せた。いや、そんなことはない。少佐がいた。

 突然人影が現れたので、多分、彼は相当驚くはずだった。ひょろ長い彼は、銃を握り締め荒野に立ち、当然グラクイかと思って警戒してこちらを見ていた。

 私は、そのまままっすぐ少佐のほうへ歩いていった。

 こんなまねは初めてだ。私が自分から行動を起こしている。自分が自分じゃないような気がした。風が吹きすさぶ中、まっすぐ少佐の顔を見てざくざく近づいて行った。

 少佐は、いつでもそうだったが、顔の表情がまったく読めなかった。薄い色の髪と目は、一見なにも表していないようだった。
 彼は、立ったまま私をじっと見ていた。私だとわかると、あきれたといった表情をしてみせた。全然うれしそうじゃないな。彼は急いで、ライフルをおろしていた。

「危ないぞ。間違えて撃たれたらどうするつもりだ。何しに来た?」

 声が届くところまで近づくと、彼は言った。

「私用で」

 私は、すぐそばまで近づいた。

「仕事中だぞ?」

 私はゆがんだように笑った。

「十分ですみますよ。全然話が出来なかったから。それに、言わなくちゃいけないと思っていた。だから……」

「何を言う気だ」

 彼は、うたぐるような口調だった。

 少佐を見つめた。私は必死だった。手先がどんどん冷たくなってくる。心臓が動悸を打ち、息が上がってくる。ジャニスを撃ったときも、血みどろのパレット中佐を見つけたときも、全然こんな風にならなかったくせに、今はもう、息切れしていることを相手に気づかれないようにするので精一杯だった。

「これだけは言わなくてはならないと思った。私はあなたが好きだ」

 かなり意外だったらしく、少佐は黙り込んだ。

「そんなことだけを言いに来たのか」

 彼はあきれ果てたように言った。私は冷や汗をかいた。

 こんな告白があるか。こんな告白をされたら、たいていの男は引くだろう。確かにまずい。相手のことを全然考えていなかった。

 あれだけ気持ちを伝えてくれて、あれだけ尽くしてくれた彼に、せめて正直に気持ちを伝えないといけないと思った。私が言わなくちゃいけない、これ以上、彼に言わせてばかりではいけないと感じていた。
 でないと卑怯者になると思っていた。だが、その先の説明を突き詰めて考えていなかった。伝えるだけで終わりの自己満足のためなら、わざわざ言わなくたっていいのだ。結構うぬぼれの強い少佐は、そんなこと、多分、百も承知だろう。

 こんなじゃだめだ。私が聞きたかったのは、確認したかったのは、少佐は私を好きですかということだった。何回も証拠をみてきてはいた。でも、口に出して確認して、それから、あなたは私をどう扱うつもりですかと聞きたかったのだ。だが、うまく言えない。

 少佐は私の次の言葉を待っていた。でも、沈黙は長く続いた。私には、これ以上が出来ない。なにかして欲しいとか。でも、どうして欲しいのかということは考えていなかった。私はどうして欲しいんだろう。ダメだ。全然出来ない。

 私は簡単に目礼した。仕事に戻ろう。やるべきことは済ませた。及第点じゃないけど、せめて一歩だけ前に出られた。次回、告白することがあったら、もう少し考えてから実行しよう。(次回なんかあるんだろうか?)

「失礼します」

 彼は、さっと手を伸ばした。

「違うだろ。ほかになんか言ってごらん」

 簡単につかまってしまって、私は、多分まっかになって、なにもいえなかった。大変な場面に我が身を陥れてしまった。だめだ。まったく口が利けない。

「なにか言ってごらん。わざわざ来たんだろ」

 首を振って、彼の手から逃れようとしたが、これまた出来なかった。彼は私を抱き寄せ、つかまえた。

「ほんとに不器用だ。よくこんなで人妻がつとまったな」

 彼はもう笑っていた。じっと見つめる彼の目には、もう耐えられなくなって、下を向いていた。

「全部もらうといったよね、前に」

 何も答えられなかった。

「今日は、この前、ふたりでしたおとり作戦の続きをしようと思っていた。オレが今日わざわざパトロールを組んだのは、そのためだけだ。この二週間、ぜんぜん話しかけることができなかった。あんたから、話しかけないでくれオーラが出てたよ。どうしようかと思っていた。なにかアクションを起こさないと行ってしまう。でも、今日、あんたのほうから来てくれた。だから、続きをやろう。一緒になってくれ」

 私は下を向いたままだった。少佐は無理やり顔をあげさせ、目を覗き込んだ。

「目を見て。返事は?」

「……はい」

「はい……だけか?」

 目尻にしわを寄せて彼は笑った。

「やっと捕まえた。ずいぶん待った。もう一度好きだといってくれ。それから……」
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