【完結】地味・ボンヤリの伯爵令嬢、俺様系王子様と一緒に魔女討伐に抜擢される

buchi

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第36話 魔女とは? レオ殿下による解説と討伐計画

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「魔女なのかどうか、わからない。もしかしたら男かも。ただ、確実にそれはある。そして、唯一、わかっているのは、そいつが人の心のどこかを惑わせる点だ」

「人の心?」

「頭と言った方がいいかも知れない」

ローザは猛烈に疑わしそうに、王弟陛下を見た。

「それじゃあ、見れないじゃないですか? 人の頭の中なんか、わかりませんよね?」

「だから、魔女は視ることができないと言われている。いや、言われていたんだ」

「でも、魔女ってなんなのか分かりませんけど、倒したら、なにか解決するんですか? 逆に祟られたりしませんか?」

レオ殿下がため息をついた。

「仕方ない。そもそもの話から始めよう。およそ三百年前の話だ。その当時、大魔女が存在していたのだ」

「大魔女……」

「素晴らしい魔力のある立派な魔女で、世の為、人の為、仕事に邁進していた」

「素晴らしい魔力の持ち主じゃった」

ローゼンマイヤー先生は、熱心にローザを見つめた。彼はこの前、アレクが引っ張り出してきた金箔で装飾された古書を手にしていた。

「その魔女が突然働くのが嫌になったと、誰にも見えない魔法の国を作って、閉じ籠もりになったのだ」

「なんだ。そのおとぎ話は」

アレクが容赦なく突っ込んだ。

「記録にいくつか記載が残っておる。ここにもじゃ」

ローゼンマイヤー先生が古書のページを指した。

「それは百年前の話だ。大魔女と呼ばれる人物がいたが、なにもかもがうまくいかない、面倒くさくなったと言って、仕事をおっぽり出して失踪した。魔法の国へ行くと言い残し、姿を消した。狂ったと言われるかもしれないが、現実に生きるよりいいと手紙が残されていた」

ローザはあとじさった。狂うなんて嫌だ。

「そんな魔法の国、あるわけないだろ」

常識人のアレクが言う。

「あるんだよ。表ざたにならないだけだ。どこの国にも闇の世界は存在する。知られるわけにはいかない世界がひっそりとね」

濃い褐色の髪をロング目に伸ばしているレオ殿下が、アレクの言葉を強く否定した。


レオ殿下が王族らしい服装をしているところを見たことがないとローザは思った。

今日も派手なデザインのマントを身に着け、革の光り具合からして違うような上等のブーツを履いている。ただし、現在の流行とは無縁。ゴーイングマイウェイ。いたずらっ子のような目は生き生きと輝き、実際なかなかのイケオジなのだが、独自路線のイケオジは評価に悩む。

はっきり言えば、うさん臭い。

「魔女は肉体的には決して強くない。力で勝つのは容易だ。だが、白の魔法力のない者には、魔女もその根城も視えないのだ」

「俺は嫌だ。そもそも俺の魔法は黒だ。役に立たない」

「白の魔法をシャットアウトできるのは黒の魔法だけだ。アレク、お前の力は最強だ」

「最強?」

アレクはちょっと気を良くしたのか、聞き返した。

「大魔女たちはいずれも白の魔女。人間の心に影響を与える。だが、黒の魔法使いは白の魔法の影響を受けないのじゃ」

ローゼンマイヤー先生が説明した。

「ヤツらは、感性のある、つまり白の魔力のある人間を集めているんだ。魔力のある人間は引っかかっらないように用心しなくちゃね」

レオ殿下が熱心に説明した。

「レオ殿下程度の微弱な魔法力でもか?」

アレクは真面目に聞いたのだが、レオ殿下はこの質問にはたちまち機嫌を悪くした。

「強力な白の魔女の場合は、感性がない人間でも影響されるんだ。魔力持ちの私は当然危ないんだ! 見ろ!」

レオ殿下は手を出した。
指に太い指輪を付けていた。

ローゼンマイヤー先生は帽子を指した。
「わしは、これじゃよ」

「なんなのですか? それは?」
ローザが不思議そうに尋ねた。

「この帽子はな、白の魔法の影響を受けないための魔道具なんじゃよ。レオ殿下の指輪も同じ魔道具じゃ」

ローザと目が合ったエドワードは、にっこり笑った。

「私は何も付けてませんよ?」

「え?」

「私は魔法力がゼロですからね。感性がないんです。だから要らない」

なんだかエドワードは、いつも普通だ。普通っていいな。ローザは思った。

ローゼンマイヤー先生は反論した。

「ダメじゃ。エドワードだって、普通に暮らす分には魔道具なんか要らないが、白の魔女と戦うなら魔道具は必須だ。白の魔女が本気で影響を及ぼそうと思えば、魔法力の有無など関係ない。普段は、魔女たちは魔法力のない人間に関心はないのだ」

ローザとアレクはどうも嫌な予感がした。レオ殿下が言葉を続けた。

「白の魔法の誘惑に対抗できるのは強力な黒の魔法力の持ち主だけだ。それがようやく見つかったのだ。二十年間、待ち続けた甲斐があった」

「は?……二十年間?」

「二十年前に作ったんだ。あの検査道具。誰か引っかからないかなーって」

「え?」

「なにしろ、あれでフェアラム学園の入学時に貴族の子弟のほぼ全員のテストができる。平民の子どもにも各教会で受けさせている。国を挙げてのチェック体制を敷いた」

なるほど。そう言うわけだったのか。ローザとアレクは半目になった。そんなにしてまで、魔法力の持ち主を探し回るだなんて……すごいエネルギーだ。

二人はレオ殿下をしみじみと眺めた。服装といい努力の方向といい、無駄な方向へエネルギッシュな男なのではあるまいか。

「だが、これまで、役に立ちそうな程の魔法力のある人間は、誰一人見つからなかった」

レオ殿下は悔しそうだった。

「心が折れそうになった。だが、去年、お前が見つかった。ただ、魔力の色は黒。とても強い力だが、それでは魔女と仮に名付けられた存在を認識できない。役に立たない」

「じゃあ、僕は抜けてもいいですよね?」

アレクがすかさず聞いた。だが、レオ殿下は強硬だった。

「ダメだ。そして、今年は待ちに待った白の魔女だ。その上魔法力は膨大だ。少しバカなのが難点だが」

「バカじゃないわよ! 失礼ね。地図がちょっとわからないくらいで」

ローザが思わず口をはさんだが、絶好調のレオ殿下の演説は続いた。

「白の魔女が見つかった。このチャンスを逃すわけには行かない。ましてや、黒の騎士も見つかったのだ。こんなチャンスは二度とない。二人いなければ、魔女は倒せない」

「「はい?」」

ローザとアレクは二人、ハモって聞き返した。

「さっきから言ってるだろ? ローザが見つけて、アレクが倒すんだ。ざっとそんな感じだ」
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