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第40話 門
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翌朝、二人は村を離れて、牧草地を黙って進んだ。エドワードたちは宿に残った。
「魔法力のない私たちは行っても仕方がありません。足手まといなだけです。それにレオ殿下から一緒に行くなと厳命されています。お二人は、遠くから見て、確認だけしてください」
エドワードも、門はないと思っていた。
ただ、彼はなにか不安だった。
「いいですか? 絶対に危ない真似はしないように。遠くから確認だけして帰ってきてくださいね」
「俺は今ほど乗馬クラブに感謝したことはない」
アレクはテクテクとウマを歩かせながら言った。
「あんなもん、全然、役に立たないと思ってたけど、ローザが馬に乗れるだなんて、大助かりだ。でなきゃ、荷物を運べない」
ローザは乗馬を自分の家で元々していたのだ。学園で習ったのではない。だが、それはどうでもよかった。
「なんで二人きりで出されたのかしら」
ローザの口は我知らず尖っていた。
「レオ殿下が言ってたろ。たとえエドワードでも、魔女の影響は免れ得ないって」
「普段は平気なのに? 私だって魔女なのよ?」
それも嘘臭い……とアレクは思っていた。全然、魔女らしくない。
アレクが黙って叔父の言うことを聞いたのは、まあ、ほかの理由からだった。
学園を離れて二人きり、危険なわけでもない。叔父のレオ殿下に、妙な荷物をどっさり渡されて持って行けと強要されたのには閉口したが、それだって大した問題ではない。
どうせ、そんな門なんか見つかるはずがない。
天気はいいし、そよそよと吹く風も心地よい。
学校を休んで、ローザと一緒に牧草地を優雅にウマで歩くだけだ。なんなら、遠回りでもしたいくらいだった。ローザは全然なにも考えていないらしいが、これは立派なデートだろう。
アレクは密かに浮かれていた。
「ローザの魔法力って、まあ、お前がエドワードに惚れたら、エドワードが頭痛を起こすとか、腹を壊すとか、そんな被害が出るヤツなんじゃないかな」
「ほんと、アレク様、可愛くない」
「帰ったら、不敬罪で逮捕するぞ」
ローザはプンプン怒り出したが、不敬罪で拘束か……アレクはちょっとやってみたくなった。
だが、突然、ローザがウマの足を止めた。
「あれだわ」
「え?」
遠くに大きな門が建っていた。
「あそこ」
ローザは指さしたが、アレクはさっぱりわからないという顔をしていた。
「あの大きな木は見える? 木の柵の途切れたところ」
「あ、ああ。それはわかる」
アレクは目を凝らした。何も見えない。
「そのすぐ右よ」
アレクは首を振った。
「なにもないよ?」
「近づいてみましょう」
「危険かもしれないぞ? あまり近づくな」
近づいていっているのかどうなのかも、アレクには分からない。見えないからだ。
「見えないよ。ずっと同じ牧草地だ。戻ろう」
アレクが不安げだった。
「見えないものとは戦えない。あることがわかれば十分だ」
「ウマを降りてみましょう」
「止めろよ!」
アレクは叫んだが、ローザはさっさとウマを降りて歩いていく。
「エドワードに言われたろ? 行くな!」
あわててアレクはローザの後を追った。門なんかどこにもない。
「石の門。表面に模様が彫ってある」
「見えないって」
「ほら、ここ」
ローザがアレクの手を取って門に手を触れさせようとした途端、アレクが叫んだ。
「これか!」
見えた。それは偉容を誇る門だった。思わずアレクは門を見上げた。
白い……大理石だろうか? 確かに表面にはなんだかわからない模様が彫ってあった。
突然、缶詰に書いてあった文様をアレクは思い出して、背中がゾッとした。あれと同じものなのだろうか?
彼はローザの手を振りほどいて、両手で門に触ろうとした。
だが、彼は空気をつかんだだけだった。門は消え去った。
アレクは呆然とした顔でローザを振り返った。
「門がない!」
「もしかすると……」
ローザがアレクの右手を握った。
「あ、見える」
空いている左手で、アレクは門に触れた。
冷たい石の感触がわかる。
「まさか」
門は存在した。そして、周りは三六〇度、全方向がすべて灰色の荒野だった。さっきまでの緑の牧草地はどこにも存在しない。
アレクは思わずローザの手を放して叫んだ。
「戻ろう! ローザ!」
ここは危険だ。訳が分からない。
再び緑の牧草地が目の前に広がった。
だが、ローザが消えた。見えない。すぐそばにいるはずなのに。
「ローザ?! どこ? どこだ?!」
頭がおかしい男のように、アレクは周りを見回して叫んだ。
「ローザ! ローザ! どこ?」
なぜ、いない?
「ローザ―!」
急に温かな手応えがあって、きゅっと手が握られた。
「アレク様」
門と灰色の荒野が広がる。ローザが目の前にいた。
「ローザ、戻ろう」
アレクは必死になって言った。
「ここはおかしい。こんなこと、あり得ない。ここは、パグスの村の一部のはずだ、こんな灰色の荒野のはずがない」
ローザは羊皮紙の地図をアレクに押し付けた。
『ようこそ、楽園へ』
文字が躍っている。読める?
『門内にようこそお越しくださいました。あなたは、救われました。心の荷物を下ろして、ゆっくりのんびり生きましょう』
なんだ? この新興宗教のお誘いみたいな文言は?
「魔法力のない私たちは行っても仕方がありません。足手まといなだけです。それにレオ殿下から一緒に行くなと厳命されています。お二人は、遠くから見て、確認だけしてください」
エドワードも、門はないと思っていた。
ただ、彼はなにか不安だった。
「いいですか? 絶対に危ない真似はしないように。遠くから確認だけして帰ってきてくださいね」
「俺は今ほど乗馬クラブに感謝したことはない」
アレクはテクテクとウマを歩かせながら言った。
「あんなもん、全然、役に立たないと思ってたけど、ローザが馬に乗れるだなんて、大助かりだ。でなきゃ、荷物を運べない」
ローザは乗馬を自分の家で元々していたのだ。学園で習ったのではない。だが、それはどうでもよかった。
「なんで二人きりで出されたのかしら」
ローザの口は我知らず尖っていた。
「レオ殿下が言ってたろ。たとえエドワードでも、魔女の影響は免れ得ないって」
「普段は平気なのに? 私だって魔女なのよ?」
それも嘘臭い……とアレクは思っていた。全然、魔女らしくない。
アレクが黙って叔父の言うことを聞いたのは、まあ、ほかの理由からだった。
学園を離れて二人きり、危険なわけでもない。叔父のレオ殿下に、妙な荷物をどっさり渡されて持って行けと強要されたのには閉口したが、それだって大した問題ではない。
どうせ、そんな門なんか見つかるはずがない。
天気はいいし、そよそよと吹く風も心地よい。
学校を休んで、ローザと一緒に牧草地を優雅にウマで歩くだけだ。なんなら、遠回りでもしたいくらいだった。ローザは全然なにも考えていないらしいが、これは立派なデートだろう。
アレクは密かに浮かれていた。
「ローザの魔法力って、まあ、お前がエドワードに惚れたら、エドワードが頭痛を起こすとか、腹を壊すとか、そんな被害が出るヤツなんじゃないかな」
「ほんと、アレク様、可愛くない」
「帰ったら、不敬罪で逮捕するぞ」
ローザはプンプン怒り出したが、不敬罪で拘束か……アレクはちょっとやってみたくなった。
だが、突然、ローザがウマの足を止めた。
「あれだわ」
「え?」
遠くに大きな門が建っていた。
「あそこ」
ローザは指さしたが、アレクはさっぱりわからないという顔をしていた。
「あの大きな木は見える? 木の柵の途切れたところ」
「あ、ああ。それはわかる」
アレクは目を凝らした。何も見えない。
「そのすぐ右よ」
アレクは首を振った。
「なにもないよ?」
「近づいてみましょう」
「危険かもしれないぞ? あまり近づくな」
近づいていっているのかどうなのかも、アレクには分からない。見えないからだ。
「見えないよ。ずっと同じ牧草地だ。戻ろう」
アレクが不安げだった。
「見えないものとは戦えない。あることがわかれば十分だ」
「ウマを降りてみましょう」
「止めろよ!」
アレクは叫んだが、ローザはさっさとウマを降りて歩いていく。
「エドワードに言われたろ? 行くな!」
あわててアレクはローザの後を追った。門なんかどこにもない。
「石の門。表面に模様が彫ってある」
「見えないって」
「ほら、ここ」
ローザがアレクの手を取って門に手を触れさせようとした途端、アレクが叫んだ。
「これか!」
見えた。それは偉容を誇る門だった。思わずアレクは門を見上げた。
白い……大理石だろうか? 確かに表面にはなんだかわからない模様が彫ってあった。
突然、缶詰に書いてあった文様をアレクは思い出して、背中がゾッとした。あれと同じものなのだろうか?
彼はローザの手を振りほどいて、両手で門に触ろうとした。
だが、彼は空気をつかんだだけだった。門は消え去った。
アレクは呆然とした顔でローザを振り返った。
「門がない!」
「もしかすると……」
ローザがアレクの右手を握った。
「あ、見える」
空いている左手で、アレクは門に触れた。
冷たい石の感触がわかる。
「まさか」
門は存在した。そして、周りは三六〇度、全方向がすべて灰色の荒野だった。さっきまでの緑の牧草地はどこにも存在しない。
アレクは思わずローザの手を放して叫んだ。
「戻ろう! ローザ!」
ここは危険だ。訳が分からない。
再び緑の牧草地が目の前に広がった。
だが、ローザが消えた。見えない。すぐそばにいるはずなのに。
「ローザ?! どこ? どこだ?!」
頭がおかしい男のように、アレクは周りを見回して叫んだ。
「ローザ! ローザ! どこ?」
なぜ、いない?
「ローザ―!」
急に温かな手応えがあって、きゅっと手が握られた。
「アレク様」
門と灰色の荒野が広がる。ローザが目の前にいた。
「ローザ、戻ろう」
アレクは必死になって言った。
「ここはおかしい。こんなこと、あり得ない。ここは、パグスの村の一部のはずだ、こんな灰色の荒野のはずがない」
ローザは羊皮紙の地図をアレクに押し付けた。
『ようこそ、楽園へ』
文字が躍っている。読める?
『門内にようこそお越しくださいました。あなたは、救われました。心の荷物を下ろして、ゆっくりのんびり生きましょう』
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