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第40話 貴族学園の武芸の達人
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翌日、学園に行くと、突如行われることに決まったダンスパーティの話題で持ちきりだった。
「エレクトラ様は参加されますの?」
「もちろん行きませんことよ」
私は答えた。
いくらドレスがあったところで、婚約者候補がいる。
武芸大会は見てみたいが、ダンスパーティに参加はできない。アーネスティン様のところに住まいを移しても事情は変わらない。
「でも、武芸大会はぜひ見に行こうと思いますの。よくわからないですけど、楽しそうですわ」
「本当に。かっこいい殿方を見るチャンスですわ!」
貴族学園の男子生徒の大半は出場しない。と言うかできない。
「貴族学園から出る方はいますの?」
アイリス嬢とアラベラ嬢はちょっと気まずそうな顔をしたが、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が出場するのだと教えてくれた。
「あの三人は武芸自慢なんですの」
「それなのに、女性被虐待趣味なのですか?」
「しっ。その言葉を口にしてはいけませんわ」
あわててアラベラ嬢が止めに来た。
「禁句になりましたわ。噂が噂を呼んで、しかもマズいことにアン様とステラ様が噂を信じておしまいになって」
うわあ。嫌な展開だなー。
「得意そうな顔をして、これ見よがしにあの三人の周りをウロウロなさるのです」
嫌がらせか。
「三人とも武芸の達人なので、相手が女性でも、あんまりは腹が立つと手が出るのではないかと、みんな心配しているのです。それで、出来るだけあの方々を刺激しないよう、気をつかっているのですわ」
ううむ。そんなことに気を遣う羽目になるとは。学園全体が不幸に見舞われているではないの。
「まあ、そんなところに武芸大会と、特別に今年はダンスパーティが一緒に開かれることになったので、大喜びですわ」
「誰が?」
念のため私は確認した。
「もちろん生徒全員がですわ」
明るくアラベラ様が言った。
「ドレスがなくても、武芸大会の見学は楽しいですわ。素敵な殿方を拝見できるではありませんか」
「なるほど」
皆、思うことは同じね。
「まあ、それにややこしいあの性癖の三人が、ご機嫌ですからね。これで噂を払しょくできると考えているようですわ」
「でも、そんなことより、騎士学校や、もしかすると王立高等学院からも、武芸の達人が参加されるかもしれません。そちらの方が楽しみですわ!」
モートン様が通っておられた王立高等学院の方々か。モートン様は今は隣国に留学中だし、あの体格では出場は無理だろう。でも、私は興味が湧いた。
アラベラ嬢がメガネを掛け直してキリッと言った。
「王立高等学院は文武両道ですから。優秀な上に武芸に長けていらっしゃるだなんて、素晴らしいですわね」
女性たちは楽しそうで、すっかり盛り上がっているが、さっきから周りの男性陣から何とも言えないしめやかな空気が漂ってきていた。
貴族学園の男性陣は、優雅さには定評があるが、武芸については何も聞いたことがない。
あまりその話題で盛り上がると、彼らがかわいそうかも。
「ダンスパーティが催されることになったので、女性も観戦できますし、そのあとのダンスパーティでは踊っていただけるかもしれません」
「ん?」
それ以上、この話は止めてあげて……と言いかけた私だったが、騎士学校や王立高等学院のかっこいい男性たちと踊れると聞いて、力こぶが入ってしまった。
そう。ルイス様たちが女性被虐待趣味なら、私は、かっこいい男性が好き。武芸に優れる男性も大いに評価したい。
これは誰に行ってもはばかることがない、ふつうの趣味だと思うの。
古くて地味なドレスだけど、アーネスティン様のお針子をお借りして手直ししてもらって、ダンスパーティに参加してみよう。私は心に決めた。
「エレクトラ様は参加されますの?」
「もちろん行きませんことよ」
私は答えた。
いくらドレスがあったところで、婚約者候補がいる。
武芸大会は見てみたいが、ダンスパーティに参加はできない。アーネスティン様のところに住まいを移しても事情は変わらない。
「でも、武芸大会はぜひ見に行こうと思いますの。よくわからないですけど、楽しそうですわ」
「本当に。かっこいい殿方を見るチャンスですわ!」
貴族学園の男子生徒の大半は出場しない。と言うかできない。
「貴族学園から出る方はいますの?」
アイリス嬢とアラベラ嬢はちょっと気まずそうな顔をしたが、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が出場するのだと教えてくれた。
「あの三人は武芸自慢なんですの」
「それなのに、女性被虐待趣味なのですか?」
「しっ。その言葉を口にしてはいけませんわ」
あわててアラベラ嬢が止めに来た。
「禁句になりましたわ。噂が噂を呼んで、しかもマズいことにアン様とステラ様が噂を信じておしまいになって」
うわあ。嫌な展開だなー。
「得意そうな顔をして、これ見よがしにあの三人の周りをウロウロなさるのです」
嫌がらせか。
「三人とも武芸の達人なので、相手が女性でも、あんまりは腹が立つと手が出るのではないかと、みんな心配しているのです。それで、出来るだけあの方々を刺激しないよう、気をつかっているのですわ」
ううむ。そんなことに気を遣う羽目になるとは。学園全体が不幸に見舞われているではないの。
「まあ、そんなところに武芸大会と、特別に今年はダンスパーティが一緒に開かれることになったので、大喜びですわ」
「誰が?」
念のため私は確認した。
「もちろん生徒全員がですわ」
明るくアラベラ様が言った。
「ドレスがなくても、武芸大会の見学は楽しいですわ。素敵な殿方を拝見できるではありませんか」
「なるほど」
皆、思うことは同じね。
「まあ、それにややこしいあの性癖の三人が、ご機嫌ですからね。これで噂を払しょくできると考えているようですわ」
「でも、そんなことより、騎士学校や、もしかすると王立高等学院からも、武芸の達人が参加されるかもしれません。そちらの方が楽しみですわ!」
モートン様が通っておられた王立高等学院の方々か。モートン様は今は隣国に留学中だし、あの体格では出場は無理だろう。でも、私は興味が湧いた。
アラベラ嬢がメガネを掛け直してキリッと言った。
「王立高等学院は文武両道ですから。優秀な上に武芸に長けていらっしゃるだなんて、素晴らしいですわね」
女性たちは楽しそうで、すっかり盛り上がっているが、さっきから周りの男性陣から何とも言えないしめやかな空気が漂ってきていた。
貴族学園の男性陣は、優雅さには定評があるが、武芸については何も聞いたことがない。
あまりその話題で盛り上がると、彼らがかわいそうかも。
「ダンスパーティが催されることになったので、女性も観戦できますし、そのあとのダンスパーティでは踊っていただけるかもしれません」
「ん?」
それ以上、この話は止めてあげて……と言いかけた私だったが、騎士学校や王立高等学院のかっこいい男性たちと踊れると聞いて、力こぶが入ってしまった。
そう。ルイス様たちが女性被虐待趣味なら、私は、かっこいい男性が好き。武芸に優れる男性も大いに評価したい。
これは誰に行ってもはばかることがない、ふつうの趣味だと思うの。
古くて地味なドレスだけど、アーネスティン様のお針子をお借りして手直ししてもらって、ダンスパーティに参加してみよう。私は心に決めた。
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