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第5章
69話 大切なものは。
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「速報です!現在、龍都全体が異様な黒い雲に包まれています。住民の皆さんは念のため、屋内に避難していてください。」
ニュースキャスターの焦りの声が響く中、
地面を踏みしめる音が近づいてくる。
「おかえり...ひかり。」
「ただいま。あ、あと、もう皆の記憶に僕らはいないから...キャラも戻して大丈夫だよミカヅキ。」
「そ、そうですか...任務お疲れなのです、輝。」
「僕らの仕事はこれでおしまい。きっと彼らがこの場所をもっと平和にしてくれるよ。」
「そうなるといいですねぇ...」
「よし!じゃあ、帰るかー!ユキにいい報告できるぞー!」
「またユキの話ですか...もう...」
2人の影はどこか遠くへと消えた。
「椿、私達の力じゃ、あの高さまでは届かない。どうするつもりなの。」
翼を広げ黒く染まった空で旋回するアグリ。
「...宙。出番だ。」
椿は宙の方を向く。
「で、出番?お、おう!!」
突如話を振られ戸惑うも、覚悟を決める。
「天龍。カイモリ・ソラ!!」
今度は宙が結界に包まれる。
紗由里と同じように少し飛び上がると、
椿の隣に転移していた。
すると、
「...椿。」
宙は天に舞う黒い翼を見つめながら、名前を呼ぶ。
「ん?」
「今、こんなこと言うのもなんだけどさ...俺、椿と親友になれてよかったよ。」
「...あぁ、俺もだ。」
「「アライルッ!!」」
2人の声が重なったと同時に、
2人の体は空高く飛ばされていた。
それに気付いたのかアグリは龍都中心部へと進み始めた。
逃がすまいと、2人は天龍の力を乱発し、大空を移動する。
「椿!!龍都の地下空間にあるコアってわかる?」
「あぁ...もちろんだ。奴はあれを狙ってるに違いない。急ぐぞ。」
3体の影が黒い空を貫きながら進む。
「どれだけ...追ってこようが無駄だぁ!!...我は...我はぁ!!!」
急に止まったアグリはその場に浮遊する。
「我は最強、だろ?聞き飽きたわそんなセリフ。」
「椿、見て!!地上の建物が...」
そう言われ、椿は地上を見下ろす。
すると、黒い雲が街を侵食し、
多くの建物は崩壊し始めていた。
「やるしかねぇ...」
「あぁ!」
2人は両手を前に突き出すが、
アグリは既に滅龍の結界を貼っていた。
「...滅龍の結界はさっきの紗由里ぐらいのパワーがないと削れない。」
突き出した両手を下げる椿。
「諦めて...降伏...するのだ。この...世界は...我のために...!!」
言葉を続けようとしたその瞬間。
いきなり、結界が破裂したのだ。
「...なんで...?!」
再び宙は地上を見下ろすと、
「椿、宙!!!ぐずぐすしてねぇで...さっさと決めやがれぇえええええ!!」
飛龍に跨り、ロケットランチャーを構えていたのは、ガイア。
「...へっ...今度こそ決めるぜ。宙。」
「...終らせよう。」
「「イーリアス・ハデイル」」
空気の刃が回転しながらアグリの体に突き刺さっていく。
「我はぁ...我はぁ...」
徐々に翼にもダメージをくらい、落下していくアグリ。
「我はぁ............」
「アグリ・ローザン...最後に言っておく!!」
椿は意識が遠のいていくアグリにも聴こえるように大声で叫ぶ。
「俺が...いや、俺らが......」
「「最強だああああああああ!!」」
────────────────────
「つーばきー、皿とってー。」
「はいはい...。」
「あ、椿くんこっちもあと3枚!!」
「はぁ...自分で取れよ...」
「今年のプレゼントはやっぱり極上のツバソラ...ッ!!」
「陽菜は今年もずーっとそんなんだったねー。」
今日はクリスマスだ。
何故か、俺らのクラスの奴らが
ここ、レイストン邸でクリスマスパーティーをしている。
俺にとっては迷惑極まりないことだけど、
これはつまり、龍都に再び平和が訪れたってことだ。
あの戦いのあと、
滅龍をはじめとする九神龍の力は全てこの世界から消えた。
紗由里や、宙、ガイアにアグリも、元々の四龍の遣いへと戻ってしまった。
だが、そのことを誰一人として気にしていない。
平和が訪れるのであれば、それはそれでいいんだろう。
そして結局俺、茅崎 椿の『強欲龍』の力とは何だったのか。
未だにはっきりとは分からない。
まず、あの時誰に助けられて地上に出ることが出来たのかすら分からないのだ。
ただ、その誰かが俺のことを
「英雄」と呼んだことだけは何故か記憶に残っているのだ。
とにかく、
アグリを破ったことで黒い雲は晴れ、
またいつものような青い空が戻った。
俺にとって大切なものと言ったら、
この「龍都」全てだ。
大切なもののために戦い、平和を得た俺は本当に。
────「英雄」なのかもしれない。
【い】古の石版
【ま】マリス・マルク
【ま】回り違えた2つの歯車
【で】出来損ないの力
【あ】アグリ・ローザン
【り】理解不能な絶対的能力
【が】我欲に満ちた龍を狩る力
【と】届かないものだとしても
【う】運命の銃弾
【ご】強欲
【ざ】The reverse story 『逆転の物語』
【い】怒りと不屈の力
【ま】前に進む
【し】漆黒の翼
【た】大切なものは。
いままでありがとうございました!
つづく
ニュースキャスターの焦りの声が響く中、
地面を踏みしめる音が近づいてくる。
「おかえり...ひかり。」
「ただいま。あ、あと、もう皆の記憶に僕らはいないから...キャラも戻して大丈夫だよミカヅキ。」
「そ、そうですか...任務お疲れなのです、輝。」
「僕らの仕事はこれでおしまい。きっと彼らがこの場所をもっと平和にしてくれるよ。」
「そうなるといいですねぇ...」
「よし!じゃあ、帰るかー!ユキにいい報告できるぞー!」
「またユキの話ですか...もう...」
2人の影はどこか遠くへと消えた。
「椿、私達の力じゃ、あの高さまでは届かない。どうするつもりなの。」
翼を広げ黒く染まった空で旋回するアグリ。
「...宙。出番だ。」
椿は宙の方を向く。
「で、出番?お、おう!!」
突如話を振られ戸惑うも、覚悟を決める。
「天龍。カイモリ・ソラ!!」
今度は宙が結界に包まれる。
紗由里と同じように少し飛び上がると、
椿の隣に転移していた。
すると、
「...椿。」
宙は天に舞う黒い翼を見つめながら、名前を呼ぶ。
「ん?」
「今、こんなこと言うのもなんだけどさ...俺、椿と親友になれてよかったよ。」
「...あぁ、俺もだ。」
「「アライルッ!!」」
2人の声が重なったと同時に、
2人の体は空高く飛ばされていた。
それに気付いたのかアグリは龍都中心部へと進み始めた。
逃がすまいと、2人は天龍の力を乱発し、大空を移動する。
「椿!!龍都の地下空間にあるコアってわかる?」
「あぁ...もちろんだ。奴はあれを狙ってるに違いない。急ぐぞ。」
3体の影が黒い空を貫きながら進む。
「どれだけ...追ってこようが無駄だぁ!!...我は...我はぁ!!!」
急に止まったアグリはその場に浮遊する。
「我は最強、だろ?聞き飽きたわそんなセリフ。」
「椿、見て!!地上の建物が...」
そう言われ、椿は地上を見下ろす。
すると、黒い雲が街を侵食し、
多くの建物は崩壊し始めていた。
「やるしかねぇ...」
「あぁ!」
2人は両手を前に突き出すが、
アグリは既に滅龍の結界を貼っていた。
「...滅龍の結界はさっきの紗由里ぐらいのパワーがないと削れない。」
突き出した両手を下げる椿。
「諦めて...降伏...するのだ。この...世界は...我のために...!!」
言葉を続けようとしたその瞬間。
いきなり、結界が破裂したのだ。
「...なんで...?!」
再び宙は地上を見下ろすと、
「椿、宙!!!ぐずぐすしてねぇで...さっさと決めやがれぇえええええ!!」
飛龍に跨り、ロケットランチャーを構えていたのは、ガイア。
「...へっ...今度こそ決めるぜ。宙。」
「...終らせよう。」
「「イーリアス・ハデイル」」
空気の刃が回転しながらアグリの体に突き刺さっていく。
「我はぁ...我はぁ...」
徐々に翼にもダメージをくらい、落下していくアグリ。
「我はぁ............」
「アグリ・ローザン...最後に言っておく!!」
椿は意識が遠のいていくアグリにも聴こえるように大声で叫ぶ。
「俺が...いや、俺らが......」
「「最強だああああああああ!!」」
────────────────────
「つーばきー、皿とってー。」
「はいはい...。」
「あ、椿くんこっちもあと3枚!!」
「はぁ...自分で取れよ...」
「今年のプレゼントはやっぱり極上のツバソラ...ッ!!」
「陽菜は今年もずーっとそんなんだったねー。」
今日はクリスマスだ。
何故か、俺らのクラスの奴らが
ここ、レイストン邸でクリスマスパーティーをしている。
俺にとっては迷惑極まりないことだけど、
これはつまり、龍都に再び平和が訪れたってことだ。
あの戦いのあと、
滅龍をはじめとする九神龍の力は全てこの世界から消えた。
紗由里や、宙、ガイアにアグリも、元々の四龍の遣いへと戻ってしまった。
だが、そのことを誰一人として気にしていない。
平和が訪れるのであれば、それはそれでいいんだろう。
そして結局俺、茅崎 椿の『強欲龍』の力とは何だったのか。
未だにはっきりとは分からない。
まず、あの時誰に助けられて地上に出ることが出来たのかすら分からないのだ。
ただ、その誰かが俺のことを
「英雄」と呼んだことだけは何故か記憶に残っているのだ。
とにかく、
アグリを破ったことで黒い雲は晴れ、
またいつものような青い空が戻った。
俺にとって大切なものと言ったら、
この「龍都」全てだ。
大切なもののために戦い、平和を得た俺は本当に。
────「英雄」なのかもしれない。
【い】古の石版
【ま】マリス・マルク
【ま】回り違えた2つの歯車
【で】出来損ないの力
【あ】アグリ・ローザン
【り】理解不能な絶対的能力
【が】我欲に満ちた龍を狩る力
【と】届かないものだとしても
【う】運命の銃弾
【ご】強欲
【ざ】The reverse story 『逆転の物語』
【い】怒りと不屈の力
【ま】前に進む
【し】漆黒の翼
【た】大切なものは。
いままでありがとうございました!
つづく
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