The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第3章 アンダーグラウンド

006【1】

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「う……う~ん……あれ?ここは……」

キョウスケが目覚めると、そこは暗く冷たい狭い小部屋の中だった。目の前には鉄格子が張り巡らされている。

「どうやらやっと目が覚めたみたいだな……」

聞き慣れた声がし、キョウスケが隣を振り返るとそこではグレイが丸まっていた。

「グレイ……ここは?」

「おそらくだが、ここは魔王親衛隊の駐屯施設の地下牢だろう。俺も体が痺れてうまく身動きがとれなかったから詳しいことまでは分からない」

「そっか……僕達このままどうなるんだろう」

「さあな……ただ重罪をふっかけられるのは目に見えているかな」

「重罪……」

グレイの言葉に、一気に体の底から恐怖がこみ上げてくるキョウスケ。
ここにきて、改めてキョウスケは魔界の恐ろしさを実感する。魔界とは強い者だけが上にのし上がり、生きていける弱肉強食の世界。
人間世界のような救済処置など一切なく、例えば人間世界では逮捕されても情状酌量という措置があるが、魔界にはそんなものは一切ない。
強い者が犯罪者と言えば、その者は犯罪者となり。極刑と言えばその者の首は撥ねられる。そういう世界だったのだ。

「すまない……カコさんと約束したにも関わらず、お前を守れなかった」

グレイは丸まったまま、顔を俯ける。

「グレイのせいじゃないよ……それにグレイは逃げろって言ったのに僕は逃げなかったんだから。僕のせいでもある」

キョウスケも目を伏せる。
自分の身勝手な行動でグレイを困らせてしまった、その罪悪感を感じていた。

「……そういえばミレイはっ!?」

はっ、と顔を上げるキョウスケ。
牢の中にはキョウスケとグレイ以外には誰も入っておらず、他にも牢はあったが全て空だった。

「俺が気づいた時にはミレイはいなかった。兵士に別の場所に連れていかれたか、はたまた逃げ延びたか……俺にも分からない」

「…………」

キョウスケは黙ってしまう。
喧嘩も頻繁にし、時には彼女の尻に敷かれ、時には怒鳴られたキョウスケだったが、それでも隣にミレイがいるだけで何故か安心できた。
しかしそんな彼女が、今はいない。それだけでキョウスケの不安は増していった。

「グレイ……怖いよ僕……」

「…………」

キョウスケはうずくまり、震える。
デビルサモナーとはいえ、彼はまだ十二歳。大人であっても知らない世界を旅し、突然捕まって牢獄にぶち込まれれば恐怖するだろう。
子供のキョウスケにとって、それがどれだけ精神的に苦痛なものかは計り知れないものだった。

「ヘッヘッへッ……やっぱりデビルサモナーとはいえ、お坊っちゃんはお坊っちゃんか」

突然、キョウスケとグレイとは異なる声が地下牢に響き渡る。
しかしどこかで聞いた声、そしてクセのある笑い声だった。

「……っ!まさかジャックさん!!」

うずくまっていたキョウスケだったが、はっと顔を上げる。
それと同時に、先程まで丸まっていたグレイも立ち上がった。

「ありゃりゃ、すぐバレちまった。もうちょっと勿体ぶれると思ったんだけどねぇ」

ヘッヘッと相変わらずの笑い声をあげながら、ジャックはキョウスケ達が入っている牢の鉄格子の前にやって来る。

「盗賊ジャックただいま参上!……てな?」

「フッ……ここは牢屋だぞ。盗賊が盗むようなお宝はここには無いぞ」

グレイがそう言うと、チッチッチッとジャックは人差し指を横に振る。

「盗賊がお宝だけ盗むって考えてる内は素人さ。なんせオイラは何でも盗めちゃう……例えばこんな物もね?」

するとジャックはキョウスケ達の前に両手を開いてみせる。しかし何も無い。
今度はジャックが両手を握りしめ、そしてまた開くと、そこにはジャラジャラと鍵のついたキーホルダーが出てきた。

「おぉ!マジックだぁ!!」

ジャックの持ち芸を見て、キョウスケは素直に喜び、拍手をする。
牢獄の中がマジックショーの舞台となっていた。

「ありがとうありがとう!そいじゃ次は……」

「おい!芸を見せるのは後にしてくれ。今は一刻も争う時なんだ」

「まあまあちょい待ちなって」

急かすグレイを制すように、ジャックは複数個の鍵の着いたキーホルダーを見せてくる。

「こんなに鍵が着いてるんだ。普通この中からこの牢の鍵一つを選び出すなんて困難だと思わないかい?」

「ま……まぁ確かに……」

鍵は全部で四十本近くある。この中には牢の鍵もあればダミーの鍵も含まれており、全てを試していては膨大な時間がかかってしまう。
しかし、ジャックは不敵な笑いをする。

「ヘッヘッへッ……そんじゃ今からこの中の一本だけを使って一発でこの牢の錠を開けてみせるよ」

「えぇ!!!」

「そんな無茶な……」

キョウスケは身を乗り出し食いつき、グレイは呆れる。
どう考えてもそんなこと出来るはずがない、誰もが思った。
しかしジャックはまず牢の錠をしっかりチェックし、次に鍵の形に着目する。素人目には全て同じように見える鍵だが、鍵幅、キー溝、鍵山とその全てが微妙に異なり、ジャックにはそれが見分けられていた。
これは先程までの手品とは異なり、盗賊としての自分の技術を見せていた。

「……よしこれだ!間違いない!」

ジャックは四十本近くある鍵の中から一本の鍵を選出する。その鍵にこれといった特徴があるわけでもなく、どの鍵とも変わらない普通の鍵だ。
それでもジャックは迷いなく鍵を錠に差し込み、回す。
すると、ガシャンという金属音が鳴り、牢の錠はものの見事に開いた。

「おおおおお!!スゴーイ!!!」

「まさかこんなことが……」

キョウスケは感嘆の声をあげ拍手し、グレイは目を丸くする。
種も仕掛けもない、まるで魔法のようなものを見ているようなそんな感覚だった。

「ヘッヘッへッ!キョウスケくらいオーバーに驚いてくれるとオイラもやりがいがあるってもんだ」

「おいおい……俺だって十分驚いたぞ」

そんなやり取りをしながら、鉄格子を開きキョウスケとグレイは牢を出る。
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